星を取りに行こう!

古紫汐桜

文字の大きさ
上 下
6 / 11

星を取りに行くんだ!

しおりを挟む
 ドンの背中は楽だけれど、進むのがゆっくりなので中々先に進みません。
でも、チィやニィよりも長く生きているドン。トトとカカがチィやニィくらいの年齢の頃の話や、二人も同じようにドンの背中に乗って旅に出た話を聞かせてくれて、旅は益々楽しくなりました。
 やがて太陽が真っ赤に染まり、山のお家に帰るように山の中へと沈んで行きます。
その美しい夕日を、ドンと3人で立ち止まり眺めました。
「ニィ、お空が真っ赤だね」
キャッキャッとはしゃぐチィに
「チィ。こういう時は、美しいと言うんだよ」
ニィはそう言うと、真っ赤なそらが紫色へと変わって行くのを眺めていました。
ドンは顔を夕日に照らされながら、キラキラと瞳を輝かせて夕日を見つめるニィとチィを優しく見守ります。
やがて太陽が山のお家に帰ってしまい、空は一面深い紺色へと色を変えて行きました。月明かりと、小さく無数に瞬く星空が広がる森は真っ暗です。
でも、二人はちっとも怖くはありませんでした。
だって、お星さまは夜空に輝くものなのですから。
 優しいドンの背中に揺られながら、二人はどんどん森の奥へと入って行きます。
するとカラスの3兄弟、フゥ、クゥ、スゥが声を掛けてきました。
「あれ? 子猫の兄弟、こんな遅くにどこ行くの?」
フゥに声を掛けられて、視線をカラスの三兄弟に向けると
「二人のお母さんが心配していたよ」
と、クゥが心配そうに続けます。
「森は暗くなると怖いんだよ」
スゥの言葉に
「星を取りに行くんだよ! それに、ニィとドンが一緒だから、怖くなんかないよ」
チィが笑顔で答えます。
そんなチィの言葉に顔を見合わせる三羽のカラス達。
何やらコソコソと話をしています。
(きっとトトとカカに居場所を教えて、迎えに来させてしまう)
ニィはそう思い
「チィの夢を叶えて上げたいんだ。だから、星の住む泉へ行かせて! それに、今はドンが運んでくれているから怖くなんか無いよ」
ニィの必死の言葉に、三兄弟のカラスは背中を向けて相談を始めました。
(折角、ここまで来たのに……)
祈るような気持ちで見つめていると、カラスのクゥが「カー」と一際高く鳴いたのです。
すると、森の奥からプラチナ色に輝くペガサスのルゥが現れたのです。
クゥはルゥに
「二人が星の住む泉へ行きたいらしい。亀のドンの足だと遅くなるから、二人を送ってあげてくれないか?」
とお願いしてくれたのだ。
するとドンも
「あぁ!良かった。俺も、きみのもとへ二人を届けるつもりだったんだよ。二人の大切なサンドイッチを分けて貰ったんだ。頼むから、二人を連れて行ってくれないか?」
そう言って、ルゥに頭を下げてくれました。そんなドンの姿を見て、慌ててニィとチィも頭を下げました。
ペガサスのルゥはクゥとドンの話に相槌を打ちながら
「チィとニィの家の、トトとカカにはお世話になっているからな。願いを叶えては上げたいのだが……」
そう言うと、深い溜め息を吐いたのです。
ニィとチィが不安で顔を見合わせると
「あの泉へ行くには、森の守り神。シュウの許可が必要なんだよ」
と答えたのです。
しおりを挟む

処理中です...