星を取りに行こう!

古紫汐桜

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星の住む泉

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二人の話を聞いて、シュウは優しく微笑むと
「お前達の気持ちは良く分かった。その気持ちに免じて、二人にだけは特別に見せてやろう」
そう言うと、シュウは星の住む泉がある住人を見回し
「お前達も、見るだけなら構わないだろう?」
と質問しました。
シュウに問われた森の住人達は
「シュウがそう言うなら……」
そう言うと、皆が頷きました。
ニィがチィと驚いて顔を見合わた後、シュウと星の住む泉がある森の住人達に
「ありがとうございます」
そう言って深く頭を下げました。
そんなニィを見て、チィも慌てて
「ありがとうございます」
と頭を下げた姿を、みんなが優しい目をして見守ってくれました。
そんな二人にシュウは優しく微笑むと、空を見上げて大きく遠吠えをしたのです。
すると森がゆらゆらと動き出し、目の前に森の奥へと進む道が広がりました。
するとルゥが、ニィとチィに自分の背中に乗るように言いました。
「さぁ!僕の背中に乗れば、あっという間に星の住む泉に到着するよ」
ニィとチィはルゥにお礼を言うと、プラチナ色に輝くルゥの背中に跨ります。
ルゥは二人が乗ったのを確認すると
「しっかり捕まるんだよ」
そう言って、疾風のように走り出しました。ニィに抱えられるように座っているチィは、ニィに
「ニィ、凄いよ! どんどん景色が過ぎて行くよ!」
そう言ってキャッキャッとはしゃいでいます。ニィはそんなチィを見て、遠かったけれど来て良かったと心から思いました。
暗い森を少し走った先に、青く光り輝く泉が見え始めてきました。
「チィ、ニィ。あの青く光る場所が、星の住む泉だよ」
と、ルゥが走りながら教えてくれます。
チィはルゥの背中で既に興奮しています。
「ニィ、見て!湖が青く光っているよ」
星のようにチカチカと点滅している光が、どんどんと近付いて来ます。
ルゥの背中で、二人の期待は最高潮に高まります。
そして遂に、二人は「星の住む泉」へと辿り着きました。
そこには、無数に輝く蛍が飛んでいました。
「星って……、蛍の事だったのか……」
ニィがポツリと呟くと、チィはまん丸の目を大きく見開いて
「ニィ……、お星様がたくさんいるよ!」
そう叫んだのです。
蛍を初めて見たチィには、無数に点滅しては飛び回る蛍が星にみえたのです。
「ニィ……美しいね」
今日覚えたばかりの言葉を呟き、微笑みました。
すると、数匹の蛍がフワリフワリとニィとチィの周りに飛んで来たのです。
「ニィ!どうしょう!!」
慌てるチィに、ニィが優しく微笑むと、蛍がチィの鼻先に留まりました。
チカ……チカ……と、淡く青白く点滅する蛍。ニィとチィは時間を忘れて、幻想的な美しさに心を奪われました。
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