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シルヴァの空白の半年間

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魔石で力を封じられ、両手を後ろに拘束されながらシルヴァを見下ろすあの男が見える。
あの日、西の果ての村で会ったルーファス公爵の姿だ。
何人もの男達に身体を魔石で作られた部屋の地べたに押さえつけられて
『シルヴァ王子……これで貴方は、私の奴隷だ』
熱く熱した焼きゴテがシルヴァの右腕に押し当てられ、シルヴァの声にならない悲鳴が上がる。
『右腕の印は、性奴隷。王家の気高き王子が、私の性奴隷になるなんて!この日をどれほど待ち侘びたか!』
「ふざけるな!誰が貴様など!」
睨み上げたシルヴァの髪の毛を掴み、苦痛に歪む顔を見下ろし
「貴方はこの部屋にいる限り、力は使えない。使えば使うだけ、その力は私のモノになる」
そいつの指にはめられた黒い石に、ユラリと青い炎が浮かぶ。
「魔石を王家から盗んだのは、お前だったのか!」
「シルヴァ王子……いや、今はもう私の奴隷のただのシルヴァ。王家の人間はみな、この魔石に力を吸わせて殺してしまいました。簡単でしたよ。この石はなんと素晴らしい石なんでしょうね」
嬉しそうに笑うルーファスを、シルヴァが愕然とした顔で見上げた。
「父上と叔父上を……殺した?」
「えぇ……貴方以外は、王家の人間は国民の前で皆殺しです。あの、国民が絶望に打ちひしがられた姿は堪らない」
楽しそうに笑うルーファスを睨み上げると
「あぁ……しかし、何故かあなたにそっくりなエリザ姫が何処を探しても見つからない。折角、私の妻にと思っていたのに……」
残念そうに呟くと、ルーファスはニタリと気色悪い笑顔を浮かべて
「でも、私が本当に欲しいのは貴方だ。シルヴァ」
頬をベロリと舐められ、シルヴァの顔が嫌悪に歪む。
「さぁ……貴方の魔力を、私に頂きますよ」
幾つもの手が伸びて、暴れ回るシルヴァの衣類を剥いで行く。
「止めろ!汚い手で触れるな、無礼者!」
力を発動したその時、シルヴァの身体がガクンと落ちた。
「な……んだ?」
「この指輪はね、私の意思で貴方の魔力を吸い取れるんですよ。今、貴方は意識しか思い通りにならない」
楽しそうに笑い、シルヴァの綺麗な肌に手を這わす。
「あぁ……思った通りに美しい。あなたのまがい物など足元にも及ばぬ美しさだ」
部屋のベッドに運ばれ、両手足を拘束されているシルヴァは
「殺せ!こんな辱めを受けるくらいなら……」
「あぁ、そうだ。自害など考えないで下さいね。貴方が私に歯向かう度に、国民を1人ずつ殺しますよ。自害した場合、貴方の身の回りを世話していた物をこの部屋で皆殺しにします」
シルヴァの目が大きく見開かれる。
「大丈夫ですよ。貴方が大人しく抱かれていれば、国民は平和だ」
首筋を這うルーファスの舌を、シルヴァは大人しく受け止めた。
来る日も来る日も陵辱され、シルヴァの心は壊れていった。光り輝く美しさは見る影を失い、食事も水もほとんど取らずにルーファスが自分を飽きるのを待つしか無いと、心を閉ざした。
「シルヴァ……困りますよ。貴方がそんなんだから」
そう言って、目の前に髪の毛を一束見せて来た。
それは、見覚えのある髪の毛だった。
「あぁ……」
シルヴァの目が絶望に見開かれる。
シルヴァを子供のように可愛がってくれたマリアの髪の毛だった。
その瞬間、最後の心の糸がプツリと切れた音がした。

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