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ヒロインと再会&これが本物の悪役令嬢!

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「あなた、平民のくせに生意気なのよ!」
廊下を歩いていると、悪役令嬢モノには必須の声が聞こえた。
(そうそう!悪役令嬢モノはこうじゃなくちゃ!)
と頷き掛けて、ハッと我に返る。
(そうだ!今はゲームじゃないんだ!)
慌てて声のした方に走って行くと、苦い思い出の裏庭にヒロインとヒロインを取り囲む悪役令嬢達の姿が見えた。
「平民が、由緒正しき魔法学園で勉強しているなんて、虫唾が走りますわ!」
「本当に!しかも、図々しくもアティカス王子の隣の席に座るなんて!」
「アティカス様が、あんたみたいに平民臭くなったらどうなさるおつもり!」
口々に罵倒する令嬢の中心に居るのは、確かセヴァランス家の分家に当たるロイズ家のエミリアだ。
薄紫の髪の毛を巻き髪にして、華やかな雰囲気は間違いない。
「お待ちなさい!貴女方、なにをなさっていらっしゃるの!」
叫んでヒロインの前に立ちはだかってしまったものの.......、5人対2人。
勝ち目は.......あるのかなぁ?
そう思いながらもエミリアに
「こんな事をしても、何にもならなくてよ!」
と叫ぶと
「あ~ら!どなたかと思ったら、バルフレア家のフレイア様では無いですか」
そう言って、私の顔を睨み付けて来た。
「あら、エミリア様。フレイア様と言ったら、入学早々に倒れられた方ですわよね?」
「そんな病弱で、アティカス様の妻としての役目が務まるのかしら?」
クスクスと笑いながら、今度は私を標的にしたらしい。
私はチラリとヒロインを見ると、目で逃げるように合図を送り、ヒロインはダッシュで逃げ出した。
「あ!ちょっと待ちなさいよ!」
追いかけようとしたエミリアの取り巻きの一人に、エミリアは私を睨んだまま
「放っておきなさい。あんな平民より、もっとタチの悪い女がここに自分から飛び込んでいらしたのですから」
そう言うと
「フレイア様。入学式さえも出られないようなひ弱な方が、立派な世継ぎを産めるのか心配ですわ」
と嫌味たっぷりで呟いた。
すると他の令嬢達も
「エミリア様。もしかしたら、アティカス様の気を引く為に演技なさったのかもしれませんよ」
「そうですわよ!ご覧遊ばせ、あの血色の良い顔が病弱な訳ありませんもの!」
と言い出し
「怖いですわね~」
と口々に言い出した。
私は心の中で(うわ~、うぜぇ~)と思いながら、顔に出さずに黙って聞いていると
「アティカス様も、お可愛そうですわよねぇ~。バルフレア家の令嬢だからと、好きでも無いお相手と結婚させられるなんて」
と言われ、確かに!と同意。
思わず
「そうですわよね」
なんて同意しちゃったのよね。
そうしたら、エミリアがカッとなった顔をして
「そう思っていらっしゃるのなら、さっさと婚約破棄なさればよろしのでは無くて!」
と叫ばれたのだ。
「まぁ!では、エミリア様がアティカス様の婚約者になって下さるのね!わかりました!私から、アティカス様にお伝えいたしますわ」
これ幸いと喜ぶと、エミリアはドレスのスカートを握り締めて
「ふざけないで!あなたは4家紋に産まれたから、そんな事を言えるのですわ!」
エミリアはそう叫び
「私だって.......私だって.......、セヴァランス家の本家に産まれていたら、お妃候補の一人に選ばれていたのに!」
と続けた。
その姿を見て
(あぁ.......エミリアは、アティカスが本当に好きなんだ.......)
そう思った。
そう考えると、大好きな人の隣に並ぶ女が、私みたいな気の強い悪役顔の実家の地位だけが高い女に腹も立つよね。
ふと.......ルイス様がシャーロット  様と仲良く並んでいた姿を思い出し、涙が込み上げて来た。
「分かる.......分かりますわ!」
涙ぐみながらエミリアの手を取り
「アティカスとあなたの恋を協力するから、こんな事は止めなさい」
諭すように言うと、エミリアは益々顔を真っ赤にして私の手を叩き落とし
「馬鹿にしないで!大体、大した魔力も無いくせに魔法学園に入学して来て、アティカス様と手を繋いで通学なさるような方なんて信じられませんわ!」
と叫ばれた。


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