悪役令嬢に転生したけど、モブキャラに恋をしたらいけませんか？

恋すると、みんな乙女脳になるみたいです

　寮に戻り、今日の出来事をサラに報告すると、サラは
「その右手、包帯いたしましょうか？」
と、包帯を手にした。
さすがに包帯したら、又、レイモンド兄様が大騒ぎするからと丁重にお断りした。
就寝する時に、既に手を洗ってしまっているし、お風呂にも入った後ではあるけれど、そっとルイス様が触れた手の甲に唇を重ねた。
（さすがに、そのままは恥ずかしくて出来なかった）
『フレイア、僕は』
あの時、ルイス様は何と言おうとしていたのかしら？
もう、私の知っている乙女ゲームとはかなり話が変わっているから、この先どうなるのかが分からなくて不安になる。
そして、何やら自分が少女漫画のヒロインみたいな事を考えているのと、男子が好きな子の縦笛を舐めていた話のような変態は行動に今更真っ赤になる。
ベッドに飛び込み
「はぁ……ゲームだったら、今日のルイス様が私をお姫様抱っこして医務室に運ぶシーン。美麗スチルで欲しかった！」
そう呟いてから、ハタと
「あ！記念で言うなら、手の甲にチュッ……も欲しいけど……ダメ！恥ずか死ぬ！」
と叫んでベッドでジタバタと暴れていると
「お嬢様……。嬉しかったのは分かりますが、暴れ過ぎです！」
……サラに怒られてしまった。
こんな時、自分に絵の才能があれば再現するのだけれど……。
美術部の方に描いてもらうとか？
ダメダメ！依頼する時点で、頭おかしい人扱いされちゃう。
……こんな時、前世の世界だったら簡単に写メ撮って貰えるのになぁ～。
そっと目を閉じると、ルイス様との一連の流れが蘇ってしまう。
「はぁ……」
深い溜め息を吐くと、寝転んだまま天井を見上げた。
エミリア達の事件以来、私の環境が激変し過ぎて正直、戸惑っている。
第一、毎日毎日イケメンに追っかけ回され、生クリームタップリのスポンジケーキを口に突っ込まれたような甘い口説き文句を言われた日にゃ、胸焼けしそうだわ。
特にカイル！小野崎Dの声で
「おはよう、子猫ちゃん」
って！
本当に『子猫ちゃん』言う奴、初めて見たわ！
ジャックスに至っては、距離感バグりまくりで至近距離で話そうとするから逃げると、わざと近付いて来て
「きみの困った顔が可愛くて、つい意地悪したくなる」
そう言いながら、毎回、髪の毛を一掴み掴んでキスして来やがる。
その度、レイモンド兄様に頭を鷲掴みされてるのに、本当に懲りないのよね。
この二人に比べたら、アティカス王子が一番まともだった。
だから、父様も兄様もアティカス王子を婚約者に選んだのだと察した。
攻略対象なだけあって、顔が無駄にイケメンだから本当にタチが悪い。
その点、私のルイス様は、控え目で紳士よね。
なんて考えながら、ベッドに潜り込んだ。
どうか夢の中で、又、ルイス様と幸せなひと時が過ごせますように……。
そう祈りを込めて、瞼を閉じた。