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デート~ジャックス②~

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「あの……そういう事でしたら、気になさらないで下さい。つまり、ジャックス様のお母様が、私とお話をなさりたいというだけですものね」
小さく笑って答えると
「フレイア嬢に嫌われるような事は、決してしないと誓う」
真っ赤な顔のままそう答えた。
「わかりました、大丈夫ですよ。国王様や妃殿下様とのお茶会に比べたら、ドンと来いですよ!」
胸を叩いて言うと、急にジャックスがしおしおと萎れて行く。
疑問に思ってジャックスの顔を見ると
「アティカス王子とは、もうそこまで……。では、俺達の結婚の申し出はご迷惑でしたね」
しょんぼりとした顔で呟くジャックスに
「あ!違います、違います!アティカス様とは、です!」
思わず『親友』に力が入った状態で答えてしまった。
するとジャックスはパァッと明るい顔になり
「では、まだ俺達にも多少の見込みはあると思って良いのですね!」
そう言われて、私は困ってしまった。
私はルイス様が大好きだけど、正直、ルイス様の気持ちが分からない。
答えに困っていると、馬車が止まってドアが開かれた。
「着いてしまいましたね」
そう言って先に降りると、私に手を差し出して馬車から降りるのをエスコートしてくれた。
昨日のカイルといい、今日のジャックスといい。彼等と居ると、童話のお姫様になった気分にさせられてしまう。
馬車を降りて見上げた屋敷は、バルフレア家が緑豊かな物語に出てくるような屋敷だとするならば、ワーロック家は重厚なビルのような屋敷だった。
ドアが開き、私はジャックスにエスコートされながら中に招き入れられた。
すると
「ジェイ兄様~!」
と、小さな女の子が走り寄り、ジャックスに抱き着いて来た。
「アメリア、お客様がいらしているんだ。ご挨拶は?」
と声を掛けた顔は、私と話をしているレイモンド兄様のように優しい。
すると青い髪の毛にスカイブルーの瞳で、明らかにジャックスの妹がスカートを摘み
「はじめまして。アメリア・ワーロックです」
と、可愛らしくご挨拶をしてくれた。
その愛らしさに、私のハートは鷲掴みよ!
「はじめまして。私は、フレイア・バルフレアと申します」
同じようにご挨拶すると、スカイブルーの大きな瞳をキラキラさせると
「まぁ!あなたがフレイア様!」
と、手を叩いて喜んでいる。
「?」
(何故に、こんなに歓迎されている?)
そう思っていると
「兄様がいつも仰っているの。フレイア様がいらっしゃるから、私は自由な身でいられると。そうでなければ、私かミューレンバーグ家のメアリー様がゼド様の婚約者になっておりましたもの」
と言われて納得した。
「アメリア様は、ゼド様の……王家に嫁ぎたいと思わないのですか?」
ふと質問すると
「思いませんわ!だって、木登りも魚釣りも、かけっこだって出来なくなりますもの!」
そう言われて、思わず苦笑いを返す。
「フレイア様。これからの女性は、男性に頼って生きているだけではダメですわ!それに私、カイル様のお嫁さんになりたいのですもの」
アメリアの言葉に私が目を点にしてジャックスの顔を見ると、ジャックスが手で目を覆い空を見上げている。
(……なんだろう。デジャブ感が、半端無い)
私はアメリアに視線を戻し
「あの……ちなみに、アメリア様はお幾つですか?」
そう質問してみた。
するとアメリアは得意げに笑うと
「5歳になりましたわ!」
と答えた。
「えっと……」
私が戸惑っていると
「もしかして、フレイア様も年齢差を考えていらっしゃるの?あと10年もしたら、私だって立派なレディーですわ」
ドヤ顔で言われてしまった。
(あなたが15歳になったら、カイルは28歳なんだけどね)
と心の中で呟いていると
「まぁ、まぁ!フレイア様、ようこそ!」
階段から優雅な足取りでワーロック公爵夫人が現れた。
美人と言うより可愛らしい方で、ラベンダー色の髪の毛にピンクの瞳をしていた。
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