あざとさを捨てた令嬢は、若き公爵に溺愛される

古紫汐桜

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泣く女神、走るソフィアとバカ王子 ~生理的に無理!~

この女神、どうしてこうも緊張感がないのかしら?

私は訝しげに彼女を見ながら、尋ねた。

「なんで、そこまでしてくれるの?」

女神は少し寂しそうに微笑むと、こう答えた。

「あなたは本来、婚約者と結婚して幸せになるはずだったのです。
それを──元ソフィアである彼女のせいで……」

そう言った途端、女神はぽろりと涙をこぼした。

「えぇっ!?
泣きたいのは、こっちなんですけど!!」

思わずツッコミを入れる私。

「だってぇ……!
あんな女に好き勝手されるなんて、耐えられないのです!
だから、せめてあなたには、この世界で幸せになってほしいのです!」

その真剣な訴えに、私は頬をかきながら小さく笑った。

「……ありがとう。女神様の気持ち、受け取らせていただくわ」

「大丈夫!
あなたなら、絶対に幸せな未来を掴めますからっ!」

……その元気だけは、本物ね。



──そして、学園に到着。

この世界の魔法学園は、私たちの世界で言う大学のような場所らしい。
十八歳以上で魔法を使える国民は、身分に関係なく通わされる学校だ。

門をくぐり、校舎へと向かって歩いていると、女子たちから遠巻きに見られ、ひそひそと噂話が飛び交う。

……針のむしろ状態とは、このことね。

彼女、よくこんな環境で平気だったわね。
ある意味、鋼のメンタルだわ。

「あら。
今日は、他の殿方をはべらせていらっしゃらないのですね」

その声に振り返ると、悪役令嬢・レミリア様が立っていた。

気の強そうな吊り目、美しい真紅の髪にルビーの瞳。
そう──漫画版『キミセカ』のヒロインであり、真紅の薔薇の化身と謳われるほどの、美少女だ。



その完璧な美貌に、思わず見惚れてしまった。

「あら、あなた。
今日は首が揺れていませんのね」

……おおっ!?
早速、気付いてくださった!!

そう。
あの後、女神にお願いして“首が揺れない”ようにしてもらったのだ。

首が揺れるのは、赤べこだけで十分よ!
しかも、あれで世界を見ると酔うのよね。

女神パワーで揺れなくなった首を馬車の窓で確認した時、思わずガッツポーズしたほどよ!

(うん!
首は揺れてないわ!
私……ついに勝ったのね!)

──そんな私の努力に気付いてくれるなんて、レミリア様、さすがです!

「髪型も……変えたのですわね。
その方が、すっきりしていてよろしくてよ?」

嫌いであろう私にさえ、ちゃんと褒め言葉をくださる。

……マジで天使なの?

「ありがとうございます!」

キラキラした目でお礼を言うと──

「レミリア!
貴様、またソフィアを虐めているのか!」

どこからともなく飛び込んできたのは、彼女の婚約者であり、問題のバカ王子・クリフォード。

(うわぁ……出た。
顔だけイケメン系バカ。)

近づいてくるたび、私は後ずさりする。

「愛しのソフィア、どうしたんだい?」

両手を広げ、満面の笑みでこちらに向かってくる。
その目付きが……なんて言うの?

身体を舐め回すような、視姦しているかのような、ねっとりとした視線。
ぞわりと鳥肌が立った。

(いや、無理無理無理!
顔だけで中身ゼロとか一番苦手!
しかも、そのねっとりした視線がキモい!)

「ご……ごめんなさい!
生理的に無理!」

そう叫んで、私は全力で逃げ出した。

その背中を、レミリア様とクリフォード王子が呆然と見つめていたのは、言うまでもない。
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