水鏡~千年の時を越えて、今、再び動き出す悲恋~

古紫汐桜

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第一章

遥と幸太2

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おずおずと近づく幸太に
「幸太、あんたが嫌ってる冬夜。あいつが1番、幸太を買ってるんだよ」
呟いた遙に
「嘘だ! 冬夜さん、いつも僕に雑用ばっかりやらせて……。僕の事、いつもいつも『僕ちゃん』って呼ぶんですよ!」
と、幸太が叫んだ。
遙は深い溜息を吐いてから
「口止めされてたんだけどね……」
そう言って1枚の書類を出して幸太に手渡した。
内容は、今回の取材に関して幸太の同行許可申請書だった。
「これ……」
遙に幸太が笑顔を向けると
「喜ぶ前に、申請者の名前を見て」
と、遙がピシャリと言う。
幸太が疑問に思いながら視線を落とすと、そこには『申請者:日下部冬夜』と書かれていた。

 今、幸太が働いている編集社『透陽社』は、遙が社長の小さな編集社だ。
元々、大学時代のサークルが発端の編集社で、都市伝説の検証を記事にしていた。
バカ売れすることはないが、安定した売れ行きを保ちながら現在に至る。
幸太は遙とは違う大学に通っていたにも関わらず、遙のサークルに入り浸り、就職活動もせずに遙の編集社に無理矢理バイトとして置いて貰っている。
元々、幸太の父親は幾つかの会社を経営していることから、遙は幸太が遊び半分で働いているのだろうと社員にはしていない。
なので事務職はサークル時代からの仲間3人で回していて、幸太はPCオタクな事からPC関連の事を扱っているのみだった。
そんな中、会社組織にした時に、遙がフリーカメラマンだった冬夜を社員として連れて来たのが3年前。
冬夜のカメラの腕は確かで、個別にグラビア等の写真も担当している。
少ない売上でも赤字にならないのは、冬夜のお陰であるのを幸太も分かっていた。
ただ、頭と心がイコールにはならない現実がある。
そして何より気に入らないのは、事務職の人が居るのに、資料探しや写真の整理。機材の管理を全て幸太に押し付けるのだ。
だから余計、冬夜に当たってしまうのだ。
「あのさ……」
ぼんやり考えていた幸太に、遙がゆっくりと話し始めた。
「冬夜は……多分、社内で1番幸太を買ってるんだよ。あいつの機材、私には絶対に触らせないよ。それだけじゃない。写真だって資料探しだって、あいつが頼めば他の事務さんは喜んでやってくれると思う。でもね、冬夜は幸太にしか頼まない。何でか分かる?」
遙の言葉に、幸太は重い口を開けて
「馬鹿にしてるからでしょう」
そう呟いた。
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