水鏡~千年の時を越えて、今、再び動き出す悲恋~

古紫汐桜

文字の大きさ
28 / 119
第三章

悲しい過去

しおりを挟む
 冬夜は意を決して、遥達に自分の生い立ちから、大切な人が亡くなってしまう話まで、すべてを話した。
その間、幸太と遥は黙ったまま、ただ冬夜の言葉に耳を傾けていた。

「僕も……冬夜さんの意見と同じ見解です。
おそらく翠にとって、冬夜さんは“孤独でなければならなかった”んだと思います」

「ここからは……僕が話して大丈夫ですか?」
幸太が二人に視線を向けて確認すると、静かに話し出した。

「まず、僕達三人は前世で何らかの関係があり、ここに呼び込まれた。
でも、翠が此処へ呼び込んだのは、冬夜さん一人のはずなんです」

「え? じゃあ私達は?」
遥が驚いて声を上げる。

「──招かれざる客ですね」

「でも……招待状は三通きていたよな?」
「ええ。おそらく僕達に届いた招待状は偽物。もしくは、翠に近しい能力を持つ存在が出したんだと思います」

「翠に近しい能力って……他にも鬼がいるのか?」
「……翠というのは、元々実体のない存在なんです」

「昔、日本には鬼の血を引く一族がいました。しかしその一族は、千年前──藤原家の分家で麓の村を治めていた藤原頼政によって根絶やしにされたんです」

「根絶やし……!?」
「はい。ただし唯一、翠だけは殺せなかった。何故なら、彼はすでに鬼になっていたからです」

「実は……僕の頭には、おそらく三郎太だった頃の記憶が蘇っています。
ただ、その三郎太本人は、僕の魂の中で自らの存在を消しているようなんです。
だから前世の記憶を断片的に知ることはできても、僕にはこの世界の文字が読めないみたいなんです」

幸太はそう言って静かに目を開いた。
「僕と遥先輩がここへ来たのは、千年前の“呪われた運命の針”を止めるためなんだと思うんです」

「運命の針を止めるって……どうやって?」
「きっと、この屋敷の中にヒントがあるはずです。──例えば、この日記のように」

「それで……僕には文字が読めません。
だから、遥先輩は千年前のことが書かれた書物を探して下さい」

幸太の言葉に、遥は小さく頷いた。
「分かった……」

「冬夜さんは……」
「一人でフラフラするな、だろう?」
冬夜が鬱陶しそうに言うと、幸太は首を振った。
「いえ。翡翠を探し出して下さい」

「翡翠って……死んだんだろ? 巫女だったんだよな?」
「それはおそらく、藤原頼政の関係者が書かせた偽の情報です」

「気を失っている間に見えた記憶ですが……翡翠と翠はコインの裏と表。一つの身体に二つの存在が混在しています。
翡翠は“鬼神”、翠は“悪鬼”なんです」

「ということは……私達を呼んだのは」
「ええ。おそらく“翡翠”でしょう」
幸太は遥の問いに頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】曖昧な距離で愛している

山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...