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第六話 ~矛盾性運命論~ ②
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―ハッピーイエロークリニック・診察室―
コクテツ「って言うのがココまでの流れ」
先 生 「ほぉう… それで俺に神頼みしに来たって事か」
スパイク「まあ、そういう事ですね。それで、お願いなんですが… どうか彼女の
死亡診断書を書いていただけませんか」
先 生 「いいぜ、だがな…」
スパイク「何か問題でも」
先 生 「コイツが死んだ後、コイツの動く死体はどうすりゃいいんだ?」
スパイク「それは… 普通に生活してもらえれば」
先 生 「甘いなぁ、メガネ君。俺がコイツの死亡診断書を書いてしまえばコイツ
は心臓が動いてようが、健康診断で異常が無かろうが死体になっちまう
んだ。つまりぃ… コイツへの社会的保障はおろか、人権も何にも無い
「物」になっちまう訳だ」
シテツ 「えっ、ソレ困る!」
先 生 「ほらな、誰も命はあっても死体にはなりたくねぇんだよ。甘い、甘い、
完熟マンゴーにメープルシロップ掛けたくらい甘い!」
シテツ 「甘党でも引くレベルですね…」
ハ ル 「やっぱ脳天吹っ飛ばした方が、道理が通るんじゃねえか?」
シテツ 「ちょ! 銃向けないで!」
先 生 「本当に死んでる方が俺は楽で良い」
シテツ 「私は死にたくも、死体になりたくもない!」
レ イ 「シールド警部補! 探しましたよ、早く戻ってください!」
ハ ル 「警部補殿お呼びですよ」
レ イ 「バード刑事も戻ってください! 発砲の経緯をお聞きします」
スパイク「だとよ、代わりに行ってこい」
ハ ル 「俺が変えた運命だ、俺が解決する」
スパイク「俺も町医者にディスられたまま帰りたくないんだよな」
スパイク「ピアース君、俺とハルは別の大事件を追っているから戻れないと伝えて
おいてくれないか」
ハ ル 「俺の顛末書はいつも通り郵送しとくって言っといてくれ」
レ イ 「そんなぁ… 私、手ぶらじゃ帰れませんよぉ」
コクテツ「じゃあ、帰らなきゃいいんじゃない?」
レ イ 「そっか!」
レ イ 「それで、大事件って何ですか?」
ハ ル 「本来なら、あの発砲の際に俺の横でアホ警部補様がタバコを吸って俺が
クシャミをする。で、狙いが外れた弾が人質だったあの子に当たり彼女
は即死するはずだったらしい」
レ イ 「だったらしいって… そっちの方が大事件じゃないですか!」
スパイク「その起きるはずの大事件が起きないという大事件が発生しているんだ」
レ イ 「でも、起きるはずの大事件が起きなかったからと言って大事件を起こす
のも大事件ですよ」
スパイク「だけど大事件を起こさないままでいるのも大事件なんだ」
コクテツ「どう動こうが結局大事件に当たる。ソレが運命」
先 生 「つまり、今取るべき行動は無数の大事件の中から一番被害が少ない大事
件を引き起こすことって訳だ」
シテツ 「ちなみに、私が死ぬのは?」
先 生 「限りなく正解だろ」
ハ ル 「嬢ちゃん、死んでるはずだしな」
スパイク「本人も理解しているなら、殺されても理不尽ではないだろう」
レ イ 「よく分からないけど… そういう流れなんですよね?」
コクテツ「しーちゃんが死んでも、よっちゃんにゾンビにしてもらうから大丈夫」
シテツ 「あれ? 私が死ぬ前提って、既に人権が無い気がしてきた…」
ハ ル 「てゆうか、これって満場一致って事だよな?」
先 生 「じゃ、殺るか」
シテツ 「ちょちょ! 待って、待って! えっ? 何でみんな銃向けてるの!
ていうかコク姉、何でショットガン持ってるの!」
コクテツ「護身用」
シテツ 「オーバーキルだよ!」
レ イ 「きゃぁっ!」
J B 「何で私に銃を向けているのかしら?」
レ イ 「背後から人のおっぱい揉んだら当然ですよ!」
J B 「嫌ね、私とシテツちゃんのいつものコミュニケーションじゃない」
シテツ 「ジャクリーンさん、人違いです。轍洞院シテツはこっち」
J B 「あら? シテツちゃんが二人も… つまり、神様が私に愛玩用のシテツ
ちゃんを用意してくれたのね」
シテツ 「んな訳あるかっ!」
J B 「冗談よ。でも間違えたのは本当なの、ごめんなさいね」
レ イ 「いえ、ただ… 自分で言うのもなんですが、私とシテツさんが別人だと
普通に分かると思うんですが」
J B 「どうしてかしら?」
レ イ 「だって服装とか髪型全然違いますよ」
シテツ 「そうそう。そもそも顔も…」
J B 「そんなコロコロ変わる物で人を見分けられるって感心するわ」
シテツ 「いや、他に何で見分けろと…」
J B 「骨格よ、私はそれで人を覚えるの。特に女の子は顔や格好なんてすぐに
変わるものよ」
J B 「いいわ、貴方ちょっと来てもらえるかしら?」
レ イ 「私? どうしてですか」
J B 「いちいち腕の長さとかを測るのよりも簡単に説明するためよ」
J B 「すぐ戻るので待っていてもらえますか」
先 生 「ああ、無理に戻らんでもいいぞ」
コクテツ「しーちゃん、アレがいつものってJBとどんな関係なの?」
シテツ 「いや、アレ嘘だから。あんな事されたら私も銃向けるよ」
先 生 「スマンな、ウチのナースのせいで話が途切れてしまって」
スパイク「いえ、結論は出ているので慌てることは無いですよ」
先 生 「そうだな。じゃ、改めて…」
シテツ 「結局、私が死ぬのか……」
先 生 「誰か他に死んだ方がいい奴がいるならそっちを殺す」
ハ ル 「おい、何で俺を指さす…」
スパイク「お前こそ俺を見てただろ…」
先 生 「ほう、候補が二人も居るのか。なら、それぞれの推薦理由を聞こうか」
スパイク「度重なる規律違反だ。そもそも、コイツが撃たなければ彼女が今回死ぬ
可能性なんか無かった」
先 生 「なるほどな」
ハ ル 「概ね認める。だがな、今回初めてやった訳じゃねえ。そいつは俺が必ず
犯人に鉛弾ぶち込もうとするのも、タバコの煙でクシャミするのも知っ
ているんだぜ。その上で何か対策したか?」
スパイク「現場に来させないようにしたぞ」
ハ ル 「来てからは?」
スパイク「対策どうこうの前にお前が勝手にぶっ放した」
ハ ル 「そんなの言い訳だろ。「来た時の事は何も考えていませんでした」って
正直に言えばいいんだよ」
スパイク「待て、それならお前が撃つ前提で話を進めているのはおかしいだろ」
ハ ル 「刑事は銃持ってる時点で遅かれ早かれ撃つんだよ。それが駄目なら全員
から取り上げろ!」
スパイク「俺や他の刑事をお前なんかと一緒にするな! お前は結果的に逮捕され
てないだけであって、やってることは悪人どもと変わらないんだよ!」
コクテツ「なんかマジで喧嘩を始めちゃいましたね…」
先 生 「死ねばいいって思ってんだから、普段からああなんだろ」
ハ ル 「俺を逮捕するならしてみろ! …でも、お前らが悪人を捕まえていって
悪人が全部居なくなったらどうすんだ?」
スパイク「そりゃ良い事じゃないか」
ハ ル 「分かってねぇな。悪人が誰一人居ないんじゃ、そいつらをしょっ引く俺
たち警察も要らないって事だろ? なのに、お前はそれが良いって…
お前は自分の失職を希望するのかよ、このトンチキ」
スパイク「トンチキはお前だ。悪人が居なくても平和を維持するために警察は必要
だから何の問題も無いんだよ」
ハ ル 「その理論、全く分からん」
スパイク「警察が無かったら悪人が出たとき対処できないだろ」
ハ ル 「悪人が出てんじゃ平和守れてないだろ。少なくとも一瞬は崩れてるぞ」
スパイク「出さないためにも必要なんだよ!」
ハ ル 「急に言ってること変わってないか? てゆうか、常に悪人を警戒してる
時点で平和じゃねえだろ」
シテツ 「これって決着つくのかな…」
先 生 「あの二人じゃ無理だな」
コクテツ「平行線どころか、真逆のベクトルだもんね…」
J B 「待たせたわね。さ、入って」
レ イ 「はい」
一 同 「!」
J B 「どうかしら、これでも見間違えるのはおかしい?」
コクテツ「私でも分からない…」
シテツ 「そりゃ言い過ぎでしょ、確かに私っぽい感じはするけど」
先 生 「お前が自分で思っている以上に瓜二つだぞ」
レ イ 「自分の格好が分からないので、何も言えませんが… そんなに似ている
んですか?」
J B 「鏡持ってくるわね」
J B 「じゃあ、この前に並んで」
シテツ 「えっ… 嘘……」
レ イ 「ヤダ、ヤダ気持ち悪い!」
シテツ 「ソレ、こっちの台詞! そっちが後から化けたんでしょ」
レ イ 「いきなりこんな格好させられたんですよ、私も被害者ですよ」
先 生 「しかし… 骨格だけであそこまで似せられるものなのか?」
J B 「もちろん、化粧品も同じものを使いました。服のサイズもそろえてあり
ますし、ソフト面も同一にしないと違和感が出ますからね」
コクテツ「何でJBがしーちゃんの使ってる化粧品知ってるの?」
J B 「私と彼女の仲だからよ」
J B 「ところで、シテツちゃん」
シテツ?「はい」
シテツ 「いや、何で婦警さんが答えるの! シテツは私」
レ イ 「あっ… すみません、着替えさせられている間ずっとそう呼ばれていた
ので。つい、反射的に…」
シテツ 「ジャクリーンさん、何でそんなことするんですか!」
J B 「あまりにも似ていたから、つい呼びたくなったのよ」
先 生 「なぁ、轍洞院」
コクテツ「何です?」
先 生 「お前、妹が死ぬ運命って映像か何かを見たものなのか?」
コクテツ「いえ… 私は間接的に教えてもらった感じです。本来の運命を見た人に
その内容を話してもらう形ですね」
先 生 「つまり、100%お前の妹が死ぬ訳じゃないんだな」
コクテツ「どういうことです?」
先 生 「お前の妹に非常によく似た他の誰かが死んだ場合、運命を見た奴が勘違
いしてお前の妹が死んだと思い込んだ可能性があるって事だ」
コクテツ「あぁ… それはあるかも」
先 生 「そして、俺たちの目の前には…」
先 生 「よく似た誰かが居る」
コクテツ「……。 先生、頭良すぎですよ」
先 生 「おい、刑事のお二人さん」
スパイク「何ですか」
先 生 「ちょっと相談がある」
ハ ル 「コイツを殺すのか?」
スパイク「お前が死ね!」
先 生 「ちょうどその件で… ジャクリーンもちょっと来てくれ!」
レ イ 「えっ… 皆さん何でこっちに銃を……」
先 生 「唐突で悪いんだが、お前が死ねばこの事件が一番丸く収まるという結論
に達した」
レ イ?「それ、最初っから一緒じゃないですか」
先 生 「あ? どういうことだ」
レ イ?「私が轍洞院シテツです」
一 同 「え?」
シテツ?「皆さんが話し合ってる間にちょっと驚かそうと服を交換したんですよ」
シテツ?「いや、それ嘘だから」
シテツ?「えっ、ちょ… 何で否定するの!」
シテツ?「私が轍洞院シテツだから」
シテツ?「シテツは私!」
先 生 「轍洞院、どっちを信じればいい?」
コクテツ「……。 分かんない」
スパイク「何か本人しか知らない事を質問すればいいんじゃないか」
コクテツ「えっと…」
コクテツ「口座の暗証番号を答えて!」
スパイク「そりゃそうだけど…」
シテツ?「4102!」
シテツ?「1048!」
スパイク「言っちゃったよ…」
ハ ル 「でも、答えが割れたからいいだろ。で、どっちだ」
コクテツ「えっ? 知らない」
スパイク「俺の言い方が悪かった。彼女とあなたしか知らない質問をしてほしい」
コクテツ「じゃあ… 夕べの晩ご飯の内容でいいですか?」
スパイク「ええ、頼みます」
コクテツ「昨日の晩ご飯の内容を答えて」
シテツ?「レバニラ炒め」
シテツ?「レバニラ炒め」
スパイク「今度は一緒か…」
コクテツ「どっちも違うんだけど…」
ハ ル 「一緒なのに違うってどういう事なんだ」
コクテツ「私が作ったのはニラレバ炒めです」
ハ ル 「ああ… そういう事か…」
スパイク「この件、味方に妨害されている気がするんだが」
ハ ル 「待てよ、逆に俺らがピアースの事を質問するのはどうよ?」
スパイク「答えは共に「分かりません」だろうがな…」
ハ ル 「そうだな」
J B 「ちょっとしたDNA検査でも掛けてみる?」
先 生 「俺もそれがいいと思うぜ」
スパイク「結果が出るまでの時間は」
J B 「特別な方法を使えばすぐ出るわ」
ハ ル 「やってもらうしかねえだろ」
スパイク「そうだな… お願いします」
J B 「分かったわ」
J B 「唾液を調べるけど、どっちからがいいかしらね」
シテツ?「…。私は後でお願いします」
J B 「じゃあ、いつもの格好のシテツちゃんからね」
シテツ?「はい」
J B 「じゃあ、口を開けて」
シテツ?「はい… んんっ!」
スパイク「アレが検査…」
ハ ル 「どう見ても無理矢理キスしてるだけだろ」
先 生 「ああ、無理矢理キスしてるだけだ」
J B 「ハイ、おしまい」
シテツ?「検査って言いましたよね…」
J B 「ええ、私の舌で貴方の唾液と粘膜を調べさせてもらったわ」
J B 「次は貴方…」
シテツ?「ひぃ…」
J B 「と言いたいところだけど、やる必要は無いようね」
J B 「なぜなら、貴方が偽者だから」
シテツ?「そんなのデタラメでしょ!」
J B 「本物のシテツちゃんなら、検査って何をするか分かっていたでしょ?」
シテツ?「だから後を選びました」
シテツ?「それって検査って言うより心理テストじゃないですか」
J B 「判断材料の一つよ。それと、貴方にはほんの少しだけヤニっぽい苦みが
あったけど、タバコ嫌いのシテツちゃんにはあり得ない要素よ」
シテツ?「タバコなんて吸ってません!」
J B 「ええ、吸っているなんて量ではないけど。吸っている人の近くにある程
度の時間は居たと考えているわ」
スパイク「あっ、それ俺だ! ピアース君とはタバコを吸いながら話してた」
J B 「決まりね」
レ イ 「うわぁぁ! 放して! 嫌だ、死にたくない!」
J B 「もう一つだけ、貴方が偽者だと分かった理由があるの」
J B 「貴方、キスが上手すぎるのよ…」
スパイク「ピアース君、我々は命を賭して市民を守るのが使命なんだ。辛いだろう
が今がその時なんだ」
レ イ 「じゃあ、警部補がその使命果たしてくださいよ!」
ハ ル 「コイツにそんな期待すんなよ。俺にも…」
レ イ 「何で私なの… 嫌だよこんなの……」
先 生 「お二人さん、その小娘を俺に預けてくれないか」
スパイク「どうしてですか」
先 生 「医者としてのケジメだな。嫌々死なすのは胸クソが悪い」
シテツ 「待って、私はやたらと殺そうとしてませんでしたか」
先 生 「お前は例外だ」
先 生 「この件はきちっとケリを付ける。だから、せめて彼女には納得してもら
った上で最期を迎えさせたい」
スパイク「……。」
ハ ル 「俺たちじゃ無理なことだ、任せようぜ」
スパイク「ああ、分かってる」
第六話 ③ へ続く…
コクテツ「って言うのがココまでの流れ」
先 生 「ほぉう… それで俺に神頼みしに来たって事か」
スパイク「まあ、そういう事ですね。それで、お願いなんですが… どうか彼女の
死亡診断書を書いていただけませんか」
先 生 「いいぜ、だがな…」
スパイク「何か問題でも」
先 生 「コイツが死んだ後、コイツの動く死体はどうすりゃいいんだ?」
スパイク「それは… 普通に生活してもらえれば」
先 生 「甘いなぁ、メガネ君。俺がコイツの死亡診断書を書いてしまえばコイツ
は心臓が動いてようが、健康診断で異常が無かろうが死体になっちまう
んだ。つまりぃ… コイツへの社会的保障はおろか、人権も何にも無い
「物」になっちまう訳だ」
シテツ 「えっ、ソレ困る!」
先 生 「ほらな、誰も命はあっても死体にはなりたくねぇんだよ。甘い、甘い、
完熟マンゴーにメープルシロップ掛けたくらい甘い!」
シテツ 「甘党でも引くレベルですね…」
ハ ル 「やっぱ脳天吹っ飛ばした方が、道理が通るんじゃねえか?」
シテツ 「ちょ! 銃向けないで!」
先 生 「本当に死んでる方が俺は楽で良い」
シテツ 「私は死にたくも、死体になりたくもない!」
レ イ 「シールド警部補! 探しましたよ、早く戻ってください!」
ハ ル 「警部補殿お呼びですよ」
レ イ 「バード刑事も戻ってください! 発砲の経緯をお聞きします」
スパイク「だとよ、代わりに行ってこい」
ハ ル 「俺が変えた運命だ、俺が解決する」
スパイク「俺も町医者にディスられたまま帰りたくないんだよな」
スパイク「ピアース君、俺とハルは別の大事件を追っているから戻れないと伝えて
おいてくれないか」
ハ ル 「俺の顛末書はいつも通り郵送しとくって言っといてくれ」
レ イ 「そんなぁ… 私、手ぶらじゃ帰れませんよぉ」
コクテツ「じゃあ、帰らなきゃいいんじゃない?」
レ イ 「そっか!」
レ イ 「それで、大事件って何ですか?」
ハ ル 「本来なら、あの発砲の際に俺の横でアホ警部補様がタバコを吸って俺が
クシャミをする。で、狙いが外れた弾が人質だったあの子に当たり彼女
は即死するはずだったらしい」
レ イ 「だったらしいって… そっちの方が大事件じゃないですか!」
スパイク「その起きるはずの大事件が起きないという大事件が発生しているんだ」
レ イ 「でも、起きるはずの大事件が起きなかったからと言って大事件を起こす
のも大事件ですよ」
スパイク「だけど大事件を起こさないままでいるのも大事件なんだ」
コクテツ「どう動こうが結局大事件に当たる。ソレが運命」
先 生 「つまり、今取るべき行動は無数の大事件の中から一番被害が少ない大事
件を引き起こすことって訳だ」
シテツ 「ちなみに、私が死ぬのは?」
先 生 「限りなく正解だろ」
ハ ル 「嬢ちゃん、死んでるはずだしな」
スパイク「本人も理解しているなら、殺されても理不尽ではないだろう」
レ イ 「よく分からないけど… そういう流れなんですよね?」
コクテツ「しーちゃんが死んでも、よっちゃんにゾンビにしてもらうから大丈夫」
シテツ 「あれ? 私が死ぬ前提って、既に人権が無い気がしてきた…」
ハ ル 「てゆうか、これって満場一致って事だよな?」
先 生 「じゃ、殺るか」
シテツ 「ちょちょ! 待って、待って! えっ? 何でみんな銃向けてるの!
ていうかコク姉、何でショットガン持ってるの!」
コクテツ「護身用」
シテツ 「オーバーキルだよ!」
レ イ 「きゃぁっ!」
J B 「何で私に銃を向けているのかしら?」
レ イ 「背後から人のおっぱい揉んだら当然ですよ!」
J B 「嫌ね、私とシテツちゃんのいつものコミュニケーションじゃない」
シテツ 「ジャクリーンさん、人違いです。轍洞院シテツはこっち」
J B 「あら? シテツちゃんが二人も… つまり、神様が私に愛玩用のシテツ
ちゃんを用意してくれたのね」
シテツ 「んな訳あるかっ!」
J B 「冗談よ。でも間違えたのは本当なの、ごめんなさいね」
レ イ 「いえ、ただ… 自分で言うのもなんですが、私とシテツさんが別人だと
普通に分かると思うんですが」
J B 「どうしてかしら?」
レ イ 「だって服装とか髪型全然違いますよ」
シテツ 「そうそう。そもそも顔も…」
J B 「そんなコロコロ変わる物で人を見分けられるって感心するわ」
シテツ 「いや、他に何で見分けろと…」
J B 「骨格よ、私はそれで人を覚えるの。特に女の子は顔や格好なんてすぐに
変わるものよ」
J B 「いいわ、貴方ちょっと来てもらえるかしら?」
レ イ 「私? どうしてですか」
J B 「いちいち腕の長さとかを測るのよりも簡単に説明するためよ」
J B 「すぐ戻るので待っていてもらえますか」
先 生 「ああ、無理に戻らんでもいいぞ」
コクテツ「しーちゃん、アレがいつものってJBとどんな関係なの?」
シテツ 「いや、アレ嘘だから。あんな事されたら私も銃向けるよ」
先 生 「スマンな、ウチのナースのせいで話が途切れてしまって」
スパイク「いえ、結論は出ているので慌てることは無いですよ」
先 生 「そうだな。じゃ、改めて…」
シテツ 「結局、私が死ぬのか……」
先 生 「誰か他に死んだ方がいい奴がいるならそっちを殺す」
ハ ル 「おい、何で俺を指さす…」
スパイク「お前こそ俺を見てただろ…」
先 生 「ほう、候補が二人も居るのか。なら、それぞれの推薦理由を聞こうか」
スパイク「度重なる規律違反だ。そもそも、コイツが撃たなければ彼女が今回死ぬ
可能性なんか無かった」
先 生 「なるほどな」
ハ ル 「概ね認める。だがな、今回初めてやった訳じゃねえ。そいつは俺が必ず
犯人に鉛弾ぶち込もうとするのも、タバコの煙でクシャミするのも知っ
ているんだぜ。その上で何か対策したか?」
スパイク「現場に来させないようにしたぞ」
ハ ル 「来てからは?」
スパイク「対策どうこうの前にお前が勝手にぶっ放した」
ハ ル 「そんなの言い訳だろ。「来た時の事は何も考えていませんでした」って
正直に言えばいいんだよ」
スパイク「待て、それならお前が撃つ前提で話を進めているのはおかしいだろ」
ハ ル 「刑事は銃持ってる時点で遅かれ早かれ撃つんだよ。それが駄目なら全員
から取り上げろ!」
スパイク「俺や他の刑事をお前なんかと一緒にするな! お前は結果的に逮捕され
てないだけであって、やってることは悪人どもと変わらないんだよ!」
コクテツ「なんかマジで喧嘩を始めちゃいましたね…」
先 生 「死ねばいいって思ってんだから、普段からああなんだろ」
ハ ル 「俺を逮捕するならしてみろ! …でも、お前らが悪人を捕まえていって
悪人が全部居なくなったらどうすんだ?」
スパイク「そりゃ良い事じゃないか」
ハ ル 「分かってねぇな。悪人が誰一人居ないんじゃ、そいつらをしょっ引く俺
たち警察も要らないって事だろ? なのに、お前はそれが良いって…
お前は自分の失職を希望するのかよ、このトンチキ」
スパイク「トンチキはお前だ。悪人が居なくても平和を維持するために警察は必要
だから何の問題も無いんだよ」
ハ ル 「その理論、全く分からん」
スパイク「警察が無かったら悪人が出たとき対処できないだろ」
ハ ル 「悪人が出てんじゃ平和守れてないだろ。少なくとも一瞬は崩れてるぞ」
スパイク「出さないためにも必要なんだよ!」
ハ ル 「急に言ってること変わってないか? てゆうか、常に悪人を警戒してる
時点で平和じゃねえだろ」
シテツ 「これって決着つくのかな…」
先 生 「あの二人じゃ無理だな」
コクテツ「平行線どころか、真逆のベクトルだもんね…」
J B 「待たせたわね。さ、入って」
レ イ 「はい」
一 同 「!」
J B 「どうかしら、これでも見間違えるのはおかしい?」
コクテツ「私でも分からない…」
シテツ 「そりゃ言い過ぎでしょ、確かに私っぽい感じはするけど」
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レ イ 「自分の格好が分からないので、何も言えませんが… そんなに似ている
んですか?」
J B 「鏡持ってくるわね」
J B 「じゃあ、この前に並んで」
シテツ 「えっ… 嘘……」
レ イ 「ヤダ、ヤダ気持ち悪い!」
シテツ 「ソレ、こっちの台詞! そっちが後から化けたんでしょ」
レ イ 「いきなりこんな格好させられたんですよ、私も被害者ですよ」
先 生 「しかし… 骨格だけであそこまで似せられるものなのか?」
J B 「もちろん、化粧品も同じものを使いました。服のサイズもそろえてあり
ますし、ソフト面も同一にしないと違和感が出ますからね」
コクテツ「何でJBがしーちゃんの使ってる化粧品知ってるの?」
J B 「私と彼女の仲だからよ」
J B 「ところで、シテツちゃん」
シテツ?「はい」
シテツ 「いや、何で婦警さんが答えるの! シテツは私」
レ イ 「あっ… すみません、着替えさせられている間ずっとそう呼ばれていた
ので。つい、反射的に…」
シテツ 「ジャクリーンさん、何でそんなことするんですか!」
J B 「あまりにも似ていたから、つい呼びたくなったのよ」
先 生 「なぁ、轍洞院」
コクテツ「何です?」
先 生 「お前、妹が死ぬ運命って映像か何かを見たものなのか?」
コクテツ「いえ… 私は間接的に教えてもらった感じです。本来の運命を見た人に
その内容を話してもらう形ですね」
先 生 「つまり、100%お前の妹が死ぬ訳じゃないんだな」
コクテツ「どういうことです?」
先 生 「お前の妹に非常によく似た他の誰かが死んだ場合、運命を見た奴が勘違
いしてお前の妹が死んだと思い込んだ可能性があるって事だ」
コクテツ「あぁ… それはあるかも」
先 生 「そして、俺たちの目の前には…」
先 生 「よく似た誰かが居る」
コクテツ「……。 先生、頭良すぎですよ」
先 生 「おい、刑事のお二人さん」
スパイク「何ですか」
先 生 「ちょっと相談がある」
ハ ル 「コイツを殺すのか?」
スパイク「お前が死ね!」
先 生 「ちょうどその件で… ジャクリーンもちょっと来てくれ!」
レ イ 「えっ… 皆さん何でこっちに銃を……」
先 生 「唐突で悪いんだが、お前が死ねばこの事件が一番丸く収まるという結論
に達した」
レ イ?「それ、最初っから一緒じゃないですか」
先 生 「あ? どういうことだ」
レ イ?「私が轍洞院シテツです」
一 同 「え?」
シテツ?「皆さんが話し合ってる間にちょっと驚かそうと服を交換したんですよ」
シテツ?「いや、それ嘘だから」
シテツ?「えっ、ちょ… 何で否定するの!」
シテツ?「私が轍洞院シテツだから」
シテツ?「シテツは私!」
先 生 「轍洞院、どっちを信じればいい?」
コクテツ「……。 分かんない」
スパイク「何か本人しか知らない事を質問すればいいんじゃないか」
コクテツ「えっと…」
コクテツ「口座の暗証番号を答えて!」
スパイク「そりゃそうだけど…」
シテツ?「4102!」
シテツ?「1048!」
スパイク「言っちゃったよ…」
ハ ル 「でも、答えが割れたからいいだろ。で、どっちだ」
コクテツ「えっ? 知らない」
スパイク「俺の言い方が悪かった。彼女とあなたしか知らない質問をしてほしい」
コクテツ「じゃあ… 夕べの晩ご飯の内容でいいですか?」
スパイク「ええ、頼みます」
コクテツ「昨日の晩ご飯の内容を答えて」
シテツ?「レバニラ炒め」
シテツ?「レバニラ炒め」
スパイク「今度は一緒か…」
コクテツ「どっちも違うんだけど…」
ハ ル 「一緒なのに違うってどういう事なんだ」
コクテツ「私が作ったのはニラレバ炒めです」
ハ ル 「ああ… そういう事か…」
スパイク「この件、味方に妨害されている気がするんだが」
ハ ル 「待てよ、逆に俺らがピアースの事を質問するのはどうよ?」
スパイク「答えは共に「分かりません」だろうがな…」
ハ ル 「そうだな」
J B 「ちょっとしたDNA検査でも掛けてみる?」
先 生 「俺もそれがいいと思うぜ」
スパイク「結果が出るまでの時間は」
J B 「特別な方法を使えばすぐ出るわ」
ハ ル 「やってもらうしかねえだろ」
スパイク「そうだな… お願いします」
J B 「分かったわ」
J B 「唾液を調べるけど、どっちからがいいかしらね」
シテツ?「…。私は後でお願いします」
J B 「じゃあ、いつもの格好のシテツちゃんからね」
シテツ?「はい」
J B 「じゃあ、口を開けて」
シテツ?「はい… んんっ!」
スパイク「アレが検査…」
ハ ル 「どう見ても無理矢理キスしてるだけだろ」
先 生 「ああ、無理矢理キスしてるだけだ」
J B 「ハイ、おしまい」
シテツ?「検査って言いましたよね…」
J B 「ええ、私の舌で貴方の唾液と粘膜を調べさせてもらったわ」
J B 「次は貴方…」
シテツ?「ひぃ…」
J B 「と言いたいところだけど、やる必要は無いようね」
J B 「なぜなら、貴方が偽者だから」
シテツ?「そんなのデタラメでしょ!」
J B 「本物のシテツちゃんなら、検査って何をするか分かっていたでしょ?」
シテツ?「だから後を選びました」
シテツ?「それって検査って言うより心理テストじゃないですか」
J B 「判断材料の一つよ。それと、貴方にはほんの少しだけヤニっぽい苦みが
あったけど、タバコ嫌いのシテツちゃんにはあり得ない要素よ」
シテツ?「タバコなんて吸ってません!」
J B 「ええ、吸っているなんて量ではないけど。吸っている人の近くにある程
度の時間は居たと考えているわ」
スパイク「あっ、それ俺だ! ピアース君とはタバコを吸いながら話してた」
J B 「決まりね」
レ イ 「うわぁぁ! 放して! 嫌だ、死にたくない!」
J B 「もう一つだけ、貴方が偽者だと分かった理由があるの」
J B 「貴方、キスが上手すぎるのよ…」
スパイク「ピアース君、我々は命を賭して市民を守るのが使命なんだ。辛いだろう
が今がその時なんだ」
レ イ 「じゃあ、警部補がその使命果たしてくださいよ!」
ハ ル 「コイツにそんな期待すんなよ。俺にも…」
レ イ 「何で私なの… 嫌だよこんなの……」
先 生 「お二人さん、その小娘を俺に預けてくれないか」
スパイク「どうしてですか」
先 生 「医者としてのケジメだな。嫌々死なすのは胸クソが悪い」
シテツ 「待って、私はやたらと殺そうとしてませんでしたか」
先 生 「お前は例外だ」
先 生 「この件はきちっとケリを付ける。だから、せめて彼女には納得してもら
った上で最期を迎えさせたい」
スパイク「……。」
ハ ル 「俺たちじゃ無理なことだ、任せようぜ」
スパイク「ああ、分かってる」
第六話 ③ へ続く…
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