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憤死の最も多い国
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--ピピピ。銀河データベースヘ、ヨウコソ。
ここは銀河データベース第10057支部。今日も局員たちが、銀河中の情報収集に励んでいます。
調査対象は、とある恒星の第3惑星。現地の知的生命体では、この星を『地球』と呼んでいるそうです。
「局長。『地球』の知的生命体について、また興味深い概念を発見しました」
「ほう、何かね」
「『地球』の知的生命体、通称地球人には、『憤死』なる死亡形態があるようなのです」
「死亡形態とは穏やかじゃないな。それで、どういったものなのかね」
「ええ、明確な定義があるわけではないですが、怒りのあまりそのまま倒れて死亡したり、腹立たしい出来事が原因で伏せてしまい失意のうちに死亡したり、激昂がゆえに起こした行動で死に至ったり、自殺してしまう。こういった事例を指す概念のようです」
「憤りから死に至る、か。地球人は極めて繊細な生命体だな」
「はい。もう少し、調査を進めることにします」
--ピピピ。『憤死』ノ情報ガ、銀河データベースニ登録サレマシタ。ピピピ。
「局長。先日の『憤死』について、さらなる調査結果を得ました」
「よろしい。報告したまえ」
「この『憤死』なる現象、発生する地域に非常に偏りがあり、特にこの『日本』と呼ばれる地域での発生率が異常なのです」
「地域によって、か。この『日本』といる地域の地球人は、とりわけ義憤を感じやすい、ということなのかね」
「そうかもしれません。こちらを、見てください」
ブゥゥゥゥーン。投影ヲ開始シマス。自動翻訳処理ハ正常デス。
「こちらは地球人で広く読まれている、『新聞』という媒体なのですが、ほら、ここに」
「なるほど。"残念ながら憤死"、とあるな」
「そして見てください。同じ『新聞』の、この部分です」
「なになに。"惜しくも憤死"、"際どいが憤死"、それから、"再度憤死"、……何?」
「ええ。今まで報告されていませんでしたが、地球人は死亡後、生命活動を再開することがあるのかもしれません」
「それは大発見だな。もし本当なら、この知的生命体の監視レベルを上げる必要があるかもしれん」
「はい。再度、調査を進めることにします」
--ピピピ。『日本』ヲ、最モ『憤死』ガ発生スル地域トシテ、銀河データベースニ登録シマシタ。ピピピ。
「局長。例の『憤死』について、さらなる情報を入手しました」
「わかった、続けたまえ」
「『日本』において多く発生していることは以前の報告の通りですが、調査により、特定の施設で『憤死』が起きていることがわかったのです」
「ふむ、興味深いな」
「『新聞』によると、とりわけ『憤死』が発生しているのは、ここ。『神宮球場』と『甲子園球場』なる施設です」
「そうか。これまでの報告を見るに、自殺の名所のような施設なのかもしれんな」
「そのようです。そしてここでは、『野球選手』なる地球人が活動しているようです」
「自殺者か何かの隠語かもしれん。施設の映像はあるかね」
「はい。詳細な映像を用意してあります」
ブゥゥゥゥーン。投影ヲ開始シマス。
「構造は土草の部分とそれを取り囲む建造物に分かれており、察するに、建造物は『憤死』を見届ける多数の地球人を収容するものと思われます」
「ほう、生命活動の停止を集団で見物するというのか。『日本』の地球人は、ずいぶんと野蛮な感性を持っているようだな」
「そして土の上に4つ配置されたこの白い物体。分析の結果、この物体上で『野球選手』が『憤死』することがわかっています」
「そうか、合点が行ったぞ。その物体はおそらく自死を行う地点を示すものなのだな」
「私も、そう思います。そして、この五角形の物体上での『憤死』が最も多いようです」
「憤りのあまり自死を選ぶ地球人、いや、『野球選手』だったか。その中でも際立ったものには特別な形が用意されるのかもしれんな」
「可能性はあります。この、白色の五角形の物体は、『ホームベース』というようです」
「なるほど、なかなか興味深い報告であった。今後も、期待しているぞ」
--ピピピ。『野球選手』ヲ、『憤死』ノ確率ガ最モ高イ知的生命体トシテ、銀河データベースニ登録シマシタ。ピピピ。
--ピピピ。『ホームベース』ヲ、最モ『憤死』ガ発生スル地点トシテ、銀河データベースニ登録シマシタ。ピピピ。
ふん-し【憤死】
1. 憤って死ぬこと。憤慨のあまり死ぬこと。
2. 野球で、ランナーが惜しいところでアウトになること。
ここは銀河データベース第10057支部。今日も局員たちが、銀河中の情報収集に励んでいます。
調査対象は、とある恒星の第3惑星。現地の知的生命体では、この星を『地球』と呼んでいるそうです。
「局長。『地球』の知的生命体について、また興味深い概念を発見しました」
「ほう、何かね」
「『地球』の知的生命体、通称地球人には、『憤死』なる死亡形態があるようなのです」
「死亡形態とは穏やかじゃないな。それで、どういったものなのかね」
「ええ、明確な定義があるわけではないですが、怒りのあまりそのまま倒れて死亡したり、腹立たしい出来事が原因で伏せてしまい失意のうちに死亡したり、激昂がゆえに起こした行動で死に至ったり、自殺してしまう。こういった事例を指す概念のようです」
「憤りから死に至る、か。地球人は極めて繊細な生命体だな」
「はい。もう少し、調査を進めることにします」
--ピピピ。『憤死』ノ情報ガ、銀河データベースニ登録サレマシタ。ピピピ。
「局長。先日の『憤死』について、さらなる調査結果を得ました」
「よろしい。報告したまえ」
「この『憤死』なる現象、発生する地域に非常に偏りがあり、特にこの『日本』と呼ばれる地域での発生率が異常なのです」
「地域によって、か。この『日本』といる地域の地球人は、とりわけ義憤を感じやすい、ということなのかね」
「そうかもしれません。こちらを、見てください」
ブゥゥゥゥーン。投影ヲ開始シマス。自動翻訳処理ハ正常デス。
「こちらは地球人で広く読まれている、『新聞』という媒体なのですが、ほら、ここに」
「なるほど。"残念ながら憤死"、とあるな」
「そして見てください。同じ『新聞』の、この部分です」
「なになに。"惜しくも憤死"、"際どいが憤死"、それから、"再度憤死"、……何?」
「ええ。今まで報告されていませんでしたが、地球人は死亡後、生命活動を再開することがあるのかもしれません」
「それは大発見だな。もし本当なら、この知的生命体の監視レベルを上げる必要があるかもしれん」
「はい。再度、調査を進めることにします」
--ピピピ。『日本』ヲ、最モ『憤死』ガ発生スル地域トシテ、銀河データベースニ登録シマシタ。ピピピ。
「局長。例の『憤死』について、さらなる情報を入手しました」
「わかった、続けたまえ」
「『日本』において多く発生していることは以前の報告の通りですが、調査により、特定の施設で『憤死』が起きていることがわかったのです」
「ふむ、興味深いな」
「『新聞』によると、とりわけ『憤死』が発生しているのは、ここ。『神宮球場』と『甲子園球場』なる施設です」
「そうか。これまでの報告を見るに、自殺の名所のような施設なのかもしれんな」
「そのようです。そしてここでは、『野球選手』なる地球人が活動しているようです」
「自殺者か何かの隠語かもしれん。施設の映像はあるかね」
「はい。詳細な映像を用意してあります」
ブゥゥゥゥーン。投影ヲ開始シマス。
「構造は土草の部分とそれを取り囲む建造物に分かれており、察するに、建造物は『憤死』を見届ける多数の地球人を収容するものと思われます」
「ほう、生命活動の停止を集団で見物するというのか。『日本』の地球人は、ずいぶんと野蛮な感性を持っているようだな」
「そして土の上に4つ配置されたこの白い物体。分析の結果、この物体上で『野球選手』が『憤死』することがわかっています」
「そうか、合点が行ったぞ。その物体はおそらく自死を行う地点を示すものなのだな」
「私も、そう思います。そして、この五角形の物体上での『憤死』が最も多いようです」
「憤りのあまり自死を選ぶ地球人、いや、『野球選手』だったか。その中でも際立ったものには特別な形が用意されるのかもしれんな」
「可能性はあります。この、白色の五角形の物体は、『ホームベース』というようです」
「なるほど、なかなか興味深い報告であった。今後も、期待しているぞ」
--ピピピ。『野球選手』ヲ、『憤死』ノ確率ガ最モ高イ知的生命体トシテ、銀河データベースニ登録シマシタ。ピピピ。
--ピピピ。『ホームベース』ヲ、最モ『憤死』ガ発生スル地点トシテ、銀河データベースニ登録シマシタ。ピピピ。
ふん-し【憤死】
1. 憤って死ぬこと。憤慨のあまり死ぬこと。
2. 野球で、ランナーが惜しいところでアウトになること。
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