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2/3話 [約7千文字]
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正午を過ぎたぐらいでしょうか、私とアルは隣町へと行くために、乗り合いの馬車へと乗り込み、田舎道を進んでいます。
道中でお父様のことを想うと、どうしても涙が出てきてしまい、その都度アルは優しく私の背中をさすってくれました。
私の方がお姉さんなのだからと、心を強く持っても、すぐにまた涙が溢れてしまいます。
どうも、私はとても弱い人間のようで、この先一人では到底生きていけそうにありません。
ですが、不思議とアルと一緒ならこの先も生きていけると思えるし、アルは私にそう感じさせてくれるのです。
私はこの六年間、気づいていなかった自分の気持ちに、私の人生にとってアルがこれほどまでに大きな存在になっていたことに、ようやく気づくことができたのでしょう。
家に来た時はまだあんなに小さくて頼りなかったのに、昨日あの男の汚い手から身をなげうって守ってくれるほどに逞しくなっていた、私のことを守ると言ってくれた男の子。
今まで弟として見ていたなんて嘘、きっとどこかで男の子としてみていたのです。
きっとあなたが私の王子様だったのでしょう。
そんな王子様を横目でちらっと見てみると、その王子様の瞳にも涙が滲んでいました。
やっぱり、私の王子様は弱っちいです。
でも、無理もありません、アルにとってもお父様は父親同然の存在だったのでしょうし、なにより先ほど家を出る時に私ばかり泣いて駄々をこねたのが情けなくなってしまいます。
そんなことを考えていると、私のお腹がクゥっと音を立てて、隣からもクゥっと音が聞こえてきます。
私とアルの目が合い、涙で頰を濡らしながらも、お互いの顔からくすっと笑みがこぼれました。
「不思議ね。こんなに悲しいのにお腹はすくものね。」
「隣町に着いたら、何か美味しいものでも食べようよ。」
隣町に着いた時の些細な楽しみができた直後、馬車が急停車しました。
バランスを崩した私をアルは力強く支えてくれたのですが、体が密着すると胸の鼓動が急に高鳴り、顔が熱くなってしまいます。
私はとっさにアルから体を話すと、反対方向へ体を向けて縮こまりました。
「どうしたのベティ? お腹痛いの?」
「……大丈夫だから。」
今までアルに触れてもこんな気持ちになったことは無いし、私自身もその反応にびっくりして、思わずアルへそっけない言葉を返してしまいました。
それはともかく、こんな何もない道端で止まるなんて、何かがおかしいです。
乗り合いの客も異変に気付いたのか、馬車内がガヤガヤと不安げな声で溢れます。
外から何か話し声が聞こえ、次に何か土の地面にドサっと落ちる音が聞こえました。
そのあと何人かの足音が聞こえてきますが、馬車は布で覆われており、後部しか開いておらず、外を確認することができません。
たまに金属が擦れる音も聞こえるため、足音の人たちは鎧を着ているようです。
その人達は徐々に馬車の後部へと迫ってきて、ついに三人の兵士のような男達が姿を現しました。
その兵士の一人が持つ剣を見た乗客が叫びました。
「血!?」
剣は既に鞘から抜かれており、その剣には、まだ空気に触れて間もないであろう鮮やかな血がこびりついていました。
その量からも切り傷程度ではなく、相手が致命傷を負ったであろう事は、誰にでも容易に想像できました。
馬車の中は恐怖に染まり、皆手拭や皮袋などを頭に掲げわなわなと震えています。
そんな乗客の様子など気にすることもなく、兵士の中の一人が前に出ました。
「この中にベティという娘とアルという小僧はいるか。」
その言葉を聞いた途端、私の体がびくっと震えてしまい、兵士達がその様子を見逃すわけもなく、馬車の外から三人の視線が私へ向けられました。
その視線が恐ろしくて、よりいっそう震えてしまいます。
「大丈夫だから。」
恐怖で固まっていた私の耳元でアルはささやくと、臆する事なく馬車の中で勇敢に立ち上がりました。
その姿を見ると、なんだかアルから勇気を分けてもらったような気がして、体の震えが止まり、私も立ち上がると、アルの手をぎゅっと握りました。
「僕がアルだ。」
「私がベティよ。」
兵士の一人が私達をいちべつすると、馬車から降りるように命令してきました。
馬車から地面までは大きな段差があり、先に降りたアルは笑顔で私へと手を差し出してくれました。
いつものアルの手だというのに、今日に限っては大きく見えて、こんな時だと言うのに、なんだかその手を握るのが恥ずかしくて、アルとまともに顔を合わせられません。
「よし、しばらくここで待っていろ。」
兵士達は私達を取り囲むと、微動だにせず何かを待っているようでした。
何を待っているのか聞きたくても、この兵士達は質問する隙も与えてくれず、ましてや逃げるようなことをすれば何をされるかわかりません。
不安になりあたりを見渡していると、馬車の隣に誰かが倒れているのが見えましたが、全く動く気配がなく、その場に横たわったままです。
目を凝らして見てみると、服に血がべったりとついているのが見えました。
思わず声を上げそうになりましたが、ぐっと息を飲み込み、なんとか平静を保ちます。
先ほど地面に何かが落ちた音が聞こえましたが、どうやら馬車の御者が殺されて地面に崩れ落ちた音だったようです。
叫び声が聞こえなかったのは、一人の兵士と話している間に別の兵士の剣で殺され、即死だったのでしょう。
その周りには三頭の馬が見えますので、きっとこの馬に乗って私達を追いかけてきたに違いありません。
そして、私達を足止めして、本体が来るのを待っている。
きっとあの男が来る。
「雨……」
気づけば空は分厚い雲に覆われて、あたりは薄暗くなり、御者の死体が徐々に闇へと飲み込まれていくようです。
雨はやがて本降りとなり、あたり一面が雨の音で包まれました。
それなのに、兵士達は微動だにせず、まるで操り人形のように、私達を囲んでいます。
御者を斬った剣に残った血が、雨に流されて土に吸い込まれていくのを見て、私もあんなふうに水に溶けて流れて、土に染み込んで、自然に還れたらどんなに楽なことかと思ってしまったところで、まだそうするのは早いとでも言うかのように、私の手がアルに強く握られました。
驚いた私はアルの顔を見ると、今朝アルがお父様と向かい合った時の決意の目がそこにはありました。
しばらく雨に打たれて待っていると、遠くから馬車が近づいてくるのが見えました。
馬車が目の前まで来ると止まり、やはりあの男の甲高い声が聞こえてきます。
「これはこれは、また会ったな。」
男は従者に傘を持たせて馬車から降りてくると、なんとも白々しい言葉を投げかけてきました。
私達の足止めのために兵士を送り込んだのは、この男に違いないのに。
「娘、貴様の父親は全く勝手でな。剣を作らないなら娘をもらうと言ったのに、剣も作らんし、娘もやらんと言うのだ。」
男はやれやれとでも言うかのように両手を上げると、呆れたような顔を私達へ向けてきました。
「そんな聞き分けのない父親には罰を与えねばならん。」
「聞き分けのないのはお前だろ!」
我慢ができなくなったのか、アルが飛び出しましたが、兵士の蹴りを腹部に受けて地面を転がってしまいます。
「アル!」
男は濡れた地面に転がる泥だらけのアルを見ると楽しそうに笑い、その男の下衆な顔を見た私は、腹の底から男への憎悪が湧いてくるのを感じました。
ひとしきり笑った男は、もう一人の従者に何か指示をすると、従者が馬車から誰かを連れてきて、私達の前に座らせました。
「お、お父様……」
そこには、顔中をあざだらけにしたお父様が、縄で縛られ濡れた地面に座らされていました。
再びお父様に逢えたことへの喜びと、でもそのお父様は傷だらけで、助けたくても身動きが取れないこの絶望的な状況で、私の矛盾だらけの感情は、この雨で濡れた地面の泥ようにかき乱され、自分が今どんな顔をしているかすらわかりません。
「けっひゃっひゃっひゃっ! 娘よ、良い顔をしているな! 良いぞっ! 良いぞっ!!」
男の甲高く不愉快な笑い声が、雨音にも負けじとあたり一面に響きました。
私には全くわからない、どうして笑っているのか、この男の神経が私には全くわからない。
「おやっさんを離せ!」
アルは再び男へと駆け出そうとしますが、今度は兵士に頭部を押さえつけられ、泥の水溜りに顔を押し付けられてしまいます。
「やっ……やめて! アルを離して!」
アルは水溜りで息ができずにもがいています。
もう見てはいられませんでした。
「おい、そいつはこれから使うんだから殺すなよ。」
男が兵士へと指示すると、兵士はその手をアルから離しました。
アルは、泥水を飲んでしまったのか、咳き込み、ゼーゼーと息をしています。
「そいつが背負ってる剣をよこせ。」
男は、今朝アルがお父様からもらった剣に目をつけたようです。
兵士はアルの剣を無造作に引き剥がそうとしますが、
「やめろ……」
アルは残された力で精一杯抵抗しますが、兵士は容赦なくアルに蹴りを食らわせ続けます。
「ダメ! アルが死んじゃう!」
思わずアルの元へ駆け寄ろうとしましたが、残る兵士に止められてアルの元まで行くことができません。
ついに、アルは剣を守りきることができず、兵士に剣を奪われてしまいました。
「ほう、これが噂に聞くロランドの剣か。」
その名前を聞いたお父様が体をびくりと震わせました。
「俺をその名前で呼ぶんじゃない。」
男はお父様がそう反応するのがわかっていたのか、口元を吊り上げると蔑むようにお父様を見ました。
「そうだったな。この名前はそこのガキには聞かれたくないのだよな? あのガキが思い出しちまうかもしれないしなぁ。ロランド。」
「やめろ……」
男はお父様の反応を楽しむかのように、ケタケタと笑いながら話しを続けます。
「貴様の先祖は、あのカール大帝が聖騎士ローランへ授けたと言う、名剣デュランダルを打ったそうじゃないか。その技を代々受け継ぐ貴様も昔は都市で剣を打っていたのだろ? だが今はこの農村でくすぶっている。実に興味深いのだよ。 ロランド。」
「やめろ」
お父様の制止の言葉が全く届いていないかのように、男は興奮した様子で身振り手振りを交えて語っています。
「だけど、既にあのガキの正体も、貴様の女が死んだ理由も、もう全部調べはついてるのだよ。いつまでも娘に隠し事は、良くないんじゃないかなぁ? ロランド。」
「やめろ!!」
もしかすると、あの男がこれから語ろうとしていることは、私が知ってはいけないと自分に言い聞かせてきた、知ってしまったら私達家族三人がバラバラになってしまう真実なのかもしれません。
そんな私達にとって残酷な結果をもたらすかもしれない、そんな真実を叩きつける事を、あの男は狂気的に笑い、楽しんでいるのでしょう。
「ロランドを押さえつけておけ。」
男がそういうと、兵士はお父様を地面へと押さえつけて喋れないようにしました。
そして、男は私達の過去を楽しそうに語り出しました。
◇
ロランド、ロランド、ロランド……。
僕の父さんと母さんは殺された。
この剣を持った盗賊に殺された。
ロランド、ロランド、ロランド……。
母さんは僕を庇って死んだ。
父さんはこの剣を持っていた奴と刺し違えて死んだ。
ロランド、ロランド、ロランド……。
僕はそれを見てるだけで、何もできなかった。
だから、何だか僕の中のもやもやが晴れないんだ。
ロランド、ロランド、ロランド……。
わからない、とにかく父さんと母さんを殺したこの剣でいっぱい殺そう。
そしたら、このもやもやも晴れていく気がする。
ロランド、ロランド、ロランド……。
いっぱい殺したけど、ぜんぜんもやもやが晴れないや。
きっと殺す相手が違うんだ。
ロランド、ロランド、ロランド……。
そうだ、この剣のせいで、父さんと母さんは死んだんだ。
この剣に刻まれている名前は……。
「ロランド……」
ねぇ。ロランドって人がいるところを教えて?
「ひぃっ! 助けて!!」
ねぇ。お姉さん、僕の言っていることがわかる?
「ロランド……」
ねぇ。この人どこにいるの?
「ロ、ロランド、ロランドって、ロランドに会いたいのね? た、確か隣町にロランドっていう鍛冶屋があるらしいわよ! ね、教えたからちゃんと見逃してよね?」
へぇ。隣町ね、ありがとう。お姉さん優しいね。
「ロランド……」
ねぇ。優しいお姉さん。僕の気持ち受け取ってよ。
「え? ちょっと、待って! いやぁぁっ!!」
「ロランド……」
ここにロランドがいるのかな。
どんな人なんだろう、緊張するなぁ。
剣を作る人だから、きっとこっちの煙の出てる小屋にいるのかな?
「ロランドー、ご飯できたわよー」
あ、女の人がロランドを呼んでる。
今小屋から出てきたおじさんがロランドかな。
聞いてみよう。
「ロランド……」
「ん? 子供? 私はロランドだよ、君は誰だ?」
やっぱりロランドだ、やっと、
「見ぃつけた。」
僕のもやもや晴らしてよ。
「それは私が打った剣……」
『ザクッ!』
あれ? 君じゃないんだけどな。
「ア、アンリっ!! どうして!?」
そうだよ、どうして?
君はどうして僕の邪魔をするの?
「あなた、なんて悲しい目をしているの?」
でもこの人、何だか暖かくて、母さんに包まれているようだ。
もっと、もっと僕を抱きしめてよ。
「母さん」
「かわいそうな子。私があなたの心を持って行ってあげる……」
あぁ。なんだか僕の中のもやもやが、この人の中に溶けていくように無くなっていく。
とっても心地がいいよ。
父さん、母さん。
「アンリぃぃっ!!」
そうだ、僕は全部思い出したよ。
◇
男は全てを語りました。
アルの両親はお父様が打った剣で殺された事。
その恨みを晴らすためにアルはお父様を殺しにきた事。
お母様はお父様を庇ってアルに殺された事。
アルがこの事を覚えていなかったのは、私のお母様を殺した時のショックで、これ以前の記憶を失っていたから。
そんなアルに責任を感じたお父様は、もう剣は作らないと誓い、自分への戒めも込めてアルを引き取ったのです。
当時、祖父母の家へと遊びに行っていた私はこの真実を知りませんでしたし、もちろん知らなかった方が幸せだったでしょう。
私が弟同然に、もしくはそれ以上に頼り慕ってしまった王子様は、お母様の仇だったのですから。
私はアルの事をどうしたら良いのでしょうか、でもやっぱりアルの事は。
「うぅぅ。あぁぁ。あぁぁぁぁーー!!」
突然、倒れていたはずのアルが、頭を押さえ咆哮をあげながら立ち上がりました。
「アルっ!?」
「ほう、思い出しおったか。おい、この剣をあのガキに渡してやれ。」
男はアルの剣を鞘にしまい兵士に渡すと、兵士はアルの方へと歩き出し、そのままアルへと差し出しました。
すると、アルは鞘ではなく剣の柄をそのまま握ると、兵士が持つ鞘から剣を一気に引き抜きました。
次の瞬間、鞘を持っていた兵士の鎧が裂け、血が噴き出しました。
兵士は自分の剣でアルの斬撃を受け止めたつもりだったようですが、その剣と鎧すらもアルの剣が斬り裂き、兵士の肉を斬り裂いていました。
たかだか子供の剣さばきのはずですが、人を殺すことへの一切の迷いがない動きと、お父様が打った最高の斬れ味の剣が合わさり、返り血を大量に浴びたアルの姿は、最悪の殺人鬼へと変貌してしまったように見えました。
「ひっ!!」
その残虐な光景を目の当たりにして、私は思わず声を漏らしてしまいます。
あのアルが、いたずら好きだけど、根は真面目で仕事に一生懸命で、私を守ると言ってくれたアルが、壊れてしまいました。
アルは、倒れて今にも絶命しようと痙攣している兵士など、ただの道端に落ちている石ころであるかのように気にもとめず、歩き始めました。
その向かう先には、縄で縛られたお父様がいます。
「ロランド……」
その様子を見て、男は満足そうに高々と笑っています。
「素晴らしい! 素晴らしいぞアルとやら! そうだ、目の前にいる男は、お前の両親の仇のロランドだ! 娘の見ている前でじっくりと殺してやれ!」
そんな男の声など届いている様子もなく、アルはふらふらと、淡々とお父様までの距離を詰めていきます。
身の危険を感じたのか、兵士はお父様から離れていきましたが、お父様は依然として縄で縛られているため動く事ができません。
「ベティ」
ようやく喋れるようになったお父様が、私へと話しかけてくれました。
私は、先ほど聞かされた真実の整理ができておらず、正直、お父様と何を話したら良いのかすら分からない状態です。
ですが、お父様は残り少ない言葉で、私へ何かを伝えてくれようとしています。
「私はアルに殺されるだろう。」
今まさに受け入れる事を拒もうとしている現実を、お父様は私にしっかりと受け入れろと言っています。
この現実から目をそらしてはいけないと。
「だが、決してアルを恨んではいけない。」
そんな事、できる自信がありません。
アルがお父様を殺してしまったら、自身のアルへの気持ちに気づいてしまった私は、アルをどう思うのでしょうか。
この先、アルを失っても一人で生きていけるのでしょうか。
今にも目の前の不安に押しつぶされそうな頭の中で、そんな事を考えられるはずもありません。
私は、聞き分けのない子供のように、ただお父様を失う事が怖くて泣きじゃくりました。
「ロランド……」
そうしているうちにも、アルはゆっくりとお父様へと近づいていきます。
「ベティ、アルを信じるんだ。」
お父様はそう言うと、アルの方へと向き直りました。
アルはついにお父様の前までたどり着くと、剣を振り下ろしました。
「お父様っ!」
お父様の左腕が斬り落とされ、腕が地面に転がりました。
血があんなにいっぱい出て、早く止血をしないとお父様が死んでしまう。
そう思い、私はめいいっぱいもがきますが、兵士に押さえつけられて身動きをとることもできません。
流石の兵士達も、その光景を直視することができず、俯いているようです。
ですが、あの男は、お父様を指差して笑っているのです。
「アル! もうやめて!」
こんな光景を見せられて、私はどうにかなりそうです。
なのに、お父様は逃げも喚きもせず、ただアルの顔を見上げています。
「アル、いい子だ……俺が全部受け止めてや……」
アルはお父様の言葉を最後まで聞くこともなく、お父様の胸へ無慈悲に剣を斬りつけました。
「いやぁぁ!!」
アルを信じるんだ。
それが、お父様が私に残した言葉でした。
つづく
道中でお父様のことを想うと、どうしても涙が出てきてしまい、その都度アルは優しく私の背中をさすってくれました。
私の方がお姉さんなのだからと、心を強く持っても、すぐにまた涙が溢れてしまいます。
どうも、私はとても弱い人間のようで、この先一人では到底生きていけそうにありません。
ですが、不思議とアルと一緒ならこの先も生きていけると思えるし、アルは私にそう感じさせてくれるのです。
私はこの六年間、気づいていなかった自分の気持ちに、私の人生にとってアルがこれほどまでに大きな存在になっていたことに、ようやく気づくことができたのでしょう。
家に来た時はまだあんなに小さくて頼りなかったのに、昨日あの男の汚い手から身をなげうって守ってくれるほどに逞しくなっていた、私のことを守ると言ってくれた男の子。
今まで弟として見ていたなんて嘘、きっとどこかで男の子としてみていたのです。
きっとあなたが私の王子様だったのでしょう。
そんな王子様を横目でちらっと見てみると、その王子様の瞳にも涙が滲んでいました。
やっぱり、私の王子様は弱っちいです。
でも、無理もありません、アルにとってもお父様は父親同然の存在だったのでしょうし、なにより先ほど家を出る時に私ばかり泣いて駄々をこねたのが情けなくなってしまいます。
そんなことを考えていると、私のお腹がクゥっと音を立てて、隣からもクゥっと音が聞こえてきます。
私とアルの目が合い、涙で頰を濡らしながらも、お互いの顔からくすっと笑みがこぼれました。
「不思議ね。こんなに悲しいのにお腹はすくものね。」
「隣町に着いたら、何か美味しいものでも食べようよ。」
隣町に着いた時の些細な楽しみができた直後、馬車が急停車しました。
バランスを崩した私をアルは力強く支えてくれたのですが、体が密着すると胸の鼓動が急に高鳴り、顔が熱くなってしまいます。
私はとっさにアルから体を話すと、反対方向へ体を向けて縮こまりました。
「どうしたのベティ? お腹痛いの?」
「……大丈夫だから。」
今までアルに触れてもこんな気持ちになったことは無いし、私自身もその反応にびっくりして、思わずアルへそっけない言葉を返してしまいました。
それはともかく、こんな何もない道端で止まるなんて、何かがおかしいです。
乗り合いの客も異変に気付いたのか、馬車内がガヤガヤと不安げな声で溢れます。
外から何か話し声が聞こえ、次に何か土の地面にドサっと落ちる音が聞こえました。
そのあと何人かの足音が聞こえてきますが、馬車は布で覆われており、後部しか開いておらず、外を確認することができません。
たまに金属が擦れる音も聞こえるため、足音の人たちは鎧を着ているようです。
その人達は徐々に馬車の後部へと迫ってきて、ついに三人の兵士のような男達が姿を現しました。
その兵士の一人が持つ剣を見た乗客が叫びました。
「血!?」
剣は既に鞘から抜かれており、その剣には、まだ空気に触れて間もないであろう鮮やかな血がこびりついていました。
その量からも切り傷程度ではなく、相手が致命傷を負ったであろう事は、誰にでも容易に想像できました。
馬車の中は恐怖に染まり、皆手拭や皮袋などを頭に掲げわなわなと震えています。
そんな乗客の様子など気にすることもなく、兵士の中の一人が前に出ました。
「この中にベティという娘とアルという小僧はいるか。」
その言葉を聞いた途端、私の体がびくっと震えてしまい、兵士達がその様子を見逃すわけもなく、馬車の外から三人の視線が私へ向けられました。
その視線が恐ろしくて、よりいっそう震えてしまいます。
「大丈夫だから。」
恐怖で固まっていた私の耳元でアルはささやくと、臆する事なく馬車の中で勇敢に立ち上がりました。
その姿を見ると、なんだかアルから勇気を分けてもらったような気がして、体の震えが止まり、私も立ち上がると、アルの手をぎゅっと握りました。
「僕がアルだ。」
「私がベティよ。」
兵士の一人が私達をいちべつすると、馬車から降りるように命令してきました。
馬車から地面までは大きな段差があり、先に降りたアルは笑顔で私へと手を差し出してくれました。
いつものアルの手だというのに、今日に限っては大きく見えて、こんな時だと言うのに、なんだかその手を握るのが恥ずかしくて、アルとまともに顔を合わせられません。
「よし、しばらくここで待っていろ。」
兵士達は私達を取り囲むと、微動だにせず何かを待っているようでした。
何を待っているのか聞きたくても、この兵士達は質問する隙も与えてくれず、ましてや逃げるようなことをすれば何をされるかわかりません。
不安になりあたりを見渡していると、馬車の隣に誰かが倒れているのが見えましたが、全く動く気配がなく、その場に横たわったままです。
目を凝らして見てみると、服に血がべったりとついているのが見えました。
思わず声を上げそうになりましたが、ぐっと息を飲み込み、なんとか平静を保ちます。
先ほど地面に何かが落ちた音が聞こえましたが、どうやら馬車の御者が殺されて地面に崩れ落ちた音だったようです。
叫び声が聞こえなかったのは、一人の兵士と話している間に別の兵士の剣で殺され、即死だったのでしょう。
その周りには三頭の馬が見えますので、きっとこの馬に乗って私達を追いかけてきたに違いありません。
そして、私達を足止めして、本体が来るのを待っている。
きっとあの男が来る。
「雨……」
気づけば空は分厚い雲に覆われて、あたりは薄暗くなり、御者の死体が徐々に闇へと飲み込まれていくようです。
雨はやがて本降りとなり、あたり一面が雨の音で包まれました。
それなのに、兵士達は微動だにせず、まるで操り人形のように、私達を囲んでいます。
御者を斬った剣に残った血が、雨に流されて土に吸い込まれていくのを見て、私もあんなふうに水に溶けて流れて、土に染み込んで、自然に還れたらどんなに楽なことかと思ってしまったところで、まだそうするのは早いとでも言うかのように、私の手がアルに強く握られました。
驚いた私はアルの顔を見ると、今朝アルがお父様と向かい合った時の決意の目がそこにはありました。
しばらく雨に打たれて待っていると、遠くから馬車が近づいてくるのが見えました。
馬車が目の前まで来ると止まり、やはりあの男の甲高い声が聞こえてきます。
「これはこれは、また会ったな。」
男は従者に傘を持たせて馬車から降りてくると、なんとも白々しい言葉を投げかけてきました。
私達の足止めのために兵士を送り込んだのは、この男に違いないのに。
「娘、貴様の父親は全く勝手でな。剣を作らないなら娘をもらうと言ったのに、剣も作らんし、娘もやらんと言うのだ。」
男はやれやれとでも言うかのように両手を上げると、呆れたような顔を私達へ向けてきました。
「そんな聞き分けのない父親には罰を与えねばならん。」
「聞き分けのないのはお前だろ!」
我慢ができなくなったのか、アルが飛び出しましたが、兵士の蹴りを腹部に受けて地面を転がってしまいます。
「アル!」
男は濡れた地面に転がる泥だらけのアルを見ると楽しそうに笑い、その男の下衆な顔を見た私は、腹の底から男への憎悪が湧いてくるのを感じました。
ひとしきり笑った男は、もう一人の従者に何か指示をすると、従者が馬車から誰かを連れてきて、私達の前に座らせました。
「お、お父様……」
そこには、顔中をあざだらけにしたお父様が、縄で縛られ濡れた地面に座らされていました。
再びお父様に逢えたことへの喜びと、でもそのお父様は傷だらけで、助けたくても身動きが取れないこの絶望的な状況で、私の矛盾だらけの感情は、この雨で濡れた地面の泥ようにかき乱され、自分が今どんな顔をしているかすらわかりません。
「けっひゃっひゃっひゃっ! 娘よ、良い顔をしているな! 良いぞっ! 良いぞっ!!」
男の甲高く不愉快な笑い声が、雨音にも負けじとあたり一面に響きました。
私には全くわからない、どうして笑っているのか、この男の神経が私には全くわからない。
「おやっさんを離せ!」
アルは再び男へと駆け出そうとしますが、今度は兵士に頭部を押さえつけられ、泥の水溜りに顔を押し付けられてしまいます。
「やっ……やめて! アルを離して!」
アルは水溜りで息ができずにもがいています。
もう見てはいられませんでした。
「おい、そいつはこれから使うんだから殺すなよ。」
男が兵士へと指示すると、兵士はその手をアルから離しました。
アルは、泥水を飲んでしまったのか、咳き込み、ゼーゼーと息をしています。
「そいつが背負ってる剣をよこせ。」
男は、今朝アルがお父様からもらった剣に目をつけたようです。
兵士はアルの剣を無造作に引き剥がそうとしますが、
「やめろ……」
アルは残された力で精一杯抵抗しますが、兵士は容赦なくアルに蹴りを食らわせ続けます。
「ダメ! アルが死んじゃう!」
思わずアルの元へ駆け寄ろうとしましたが、残る兵士に止められてアルの元まで行くことができません。
ついに、アルは剣を守りきることができず、兵士に剣を奪われてしまいました。
「ほう、これが噂に聞くロランドの剣か。」
その名前を聞いたお父様が体をびくりと震わせました。
「俺をその名前で呼ぶんじゃない。」
男はお父様がそう反応するのがわかっていたのか、口元を吊り上げると蔑むようにお父様を見ました。
「そうだったな。この名前はそこのガキには聞かれたくないのだよな? あのガキが思い出しちまうかもしれないしなぁ。ロランド。」
「やめろ……」
男はお父様の反応を楽しむかのように、ケタケタと笑いながら話しを続けます。
「貴様の先祖は、あのカール大帝が聖騎士ローランへ授けたと言う、名剣デュランダルを打ったそうじゃないか。その技を代々受け継ぐ貴様も昔は都市で剣を打っていたのだろ? だが今はこの農村でくすぶっている。実に興味深いのだよ。 ロランド。」
「やめろ」
お父様の制止の言葉が全く届いていないかのように、男は興奮した様子で身振り手振りを交えて語っています。
「だけど、既にあのガキの正体も、貴様の女が死んだ理由も、もう全部調べはついてるのだよ。いつまでも娘に隠し事は、良くないんじゃないかなぁ? ロランド。」
「やめろ!!」
もしかすると、あの男がこれから語ろうとしていることは、私が知ってはいけないと自分に言い聞かせてきた、知ってしまったら私達家族三人がバラバラになってしまう真実なのかもしれません。
そんな私達にとって残酷な結果をもたらすかもしれない、そんな真実を叩きつける事を、あの男は狂気的に笑い、楽しんでいるのでしょう。
「ロランドを押さえつけておけ。」
男がそういうと、兵士はお父様を地面へと押さえつけて喋れないようにしました。
そして、男は私達の過去を楽しそうに語り出しました。
◇
ロランド、ロランド、ロランド……。
僕の父さんと母さんは殺された。
この剣を持った盗賊に殺された。
ロランド、ロランド、ロランド……。
母さんは僕を庇って死んだ。
父さんはこの剣を持っていた奴と刺し違えて死んだ。
ロランド、ロランド、ロランド……。
僕はそれを見てるだけで、何もできなかった。
だから、何だか僕の中のもやもやが晴れないんだ。
ロランド、ロランド、ロランド……。
わからない、とにかく父さんと母さんを殺したこの剣でいっぱい殺そう。
そしたら、このもやもやも晴れていく気がする。
ロランド、ロランド、ロランド……。
いっぱい殺したけど、ぜんぜんもやもやが晴れないや。
きっと殺す相手が違うんだ。
ロランド、ロランド、ロランド……。
そうだ、この剣のせいで、父さんと母さんは死んだんだ。
この剣に刻まれている名前は……。
「ロランド……」
ねぇ。ロランドって人がいるところを教えて?
「ひぃっ! 助けて!!」
ねぇ。お姉さん、僕の言っていることがわかる?
「ロランド……」
ねぇ。この人どこにいるの?
「ロ、ロランド、ロランドって、ロランドに会いたいのね? た、確か隣町にロランドっていう鍛冶屋があるらしいわよ! ね、教えたからちゃんと見逃してよね?」
へぇ。隣町ね、ありがとう。お姉さん優しいね。
「ロランド……」
ねぇ。優しいお姉さん。僕の気持ち受け取ってよ。
「え? ちょっと、待って! いやぁぁっ!!」
「ロランド……」
ここにロランドがいるのかな。
どんな人なんだろう、緊張するなぁ。
剣を作る人だから、きっとこっちの煙の出てる小屋にいるのかな?
「ロランドー、ご飯できたわよー」
あ、女の人がロランドを呼んでる。
今小屋から出てきたおじさんがロランドかな。
聞いてみよう。
「ロランド……」
「ん? 子供? 私はロランドだよ、君は誰だ?」
やっぱりロランドだ、やっと、
「見ぃつけた。」
僕のもやもや晴らしてよ。
「それは私が打った剣……」
『ザクッ!』
あれ? 君じゃないんだけどな。
「ア、アンリっ!! どうして!?」
そうだよ、どうして?
君はどうして僕の邪魔をするの?
「あなた、なんて悲しい目をしているの?」
でもこの人、何だか暖かくて、母さんに包まれているようだ。
もっと、もっと僕を抱きしめてよ。
「母さん」
「かわいそうな子。私があなたの心を持って行ってあげる……」
あぁ。なんだか僕の中のもやもやが、この人の中に溶けていくように無くなっていく。
とっても心地がいいよ。
父さん、母さん。
「アンリぃぃっ!!」
そうだ、僕は全部思い出したよ。
◇
男は全てを語りました。
アルの両親はお父様が打った剣で殺された事。
その恨みを晴らすためにアルはお父様を殺しにきた事。
お母様はお父様を庇ってアルに殺された事。
アルがこの事を覚えていなかったのは、私のお母様を殺した時のショックで、これ以前の記憶を失っていたから。
そんなアルに責任を感じたお父様は、もう剣は作らないと誓い、自分への戒めも込めてアルを引き取ったのです。
当時、祖父母の家へと遊びに行っていた私はこの真実を知りませんでしたし、もちろん知らなかった方が幸せだったでしょう。
私が弟同然に、もしくはそれ以上に頼り慕ってしまった王子様は、お母様の仇だったのですから。
私はアルの事をどうしたら良いのでしょうか、でもやっぱりアルの事は。
「うぅぅ。あぁぁ。あぁぁぁぁーー!!」
突然、倒れていたはずのアルが、頭を押さえ咆哮をあげながら立ち上がりました。
「アルっ!?」
「ほう、思い出しおったか。おい、この剣をあのガキに渡してやれ。」
男はアルの剣を鞘にしまい兵士に渡すと、兵士はアルの方へと歩き出し、そのままアルへと差し出しました。
すると、アルは鞘ではなく剣の柄をそのまま握ると、兵士が持つ鞘から剣を一気に引き抜きました。
次の瞬間、鞘を持っていた兵士の鎧が裂け、血が噴き出しました。
兵士は自分の剣でアルの斬撃を受け止めたつもりだったようですが、その剣と鎧すらもアルの剣が斬り裂き、兵士の肉を斬り裂いていました。
たかだか子供の剣さばきのはずですが、人を殺すことへの一切の迷いがない動きと、お父様が打った最高の斬れ味の剣が合わさり、返り血を大量に浴びたアルの姿は、最悪の殺人鬼へと変貌してしまったように見えました。
「ひっ!!」
その残虐な光景を目の当たりにして、私は思わず声を漏らしてしまいます。
あのアルが、いたずら好きだけど、根は真面目で仕事に一生懸命で、私を守ると言ってくれたアルが、壊れてしまいました。
アルは、倒れて今にも絶命しようと痙攣している兵士など、ただの道端に落ちている石ころであるかのように気にもとめず、歩き始めました。
その向かう先には、縄で縛られたお父様がいます。
「ロランド……」
その様子を見て、男は満足そうに高々と笑っています。
「素晴らしい! 素晴らしいぞアルとやら! そうだ、目の前にいる男は、お前の両親の仇のロランドだ! 娘の見ている前でじっくりと殺してやれ!」
そんな男の声など届いている様子もなく、アルはふらふらと、淡々とお父様までの距離を詰めていきます。
身の危険を感じたのか、兵士はお父様から離れていきましたが、お父様は依然として縄で縛られているため動く事ができません。
「ベティ」
ようやく喋れるようになったお父様が、私へと話しかけてくれました。
私は、先ほど聞かされた真実の整理ができておらず、正直、お父様と何を話したら良いのかすら分からない状態です。
ですが、お父様は残り少ない言葉で、私へ何かを伝えてくれようとしています。
「私はアルに殺されるだろう。」
今まさに受け入れる事を拒もうとしている現実を、お父様は私にしっかりと受け入れろと言っています。
この現実から目をそらしてはいけないと。
「だが、決してアルを恨んではいけない。」
そんな事、できる自信がありません。
アルがお父様を殺してしまったら、自身のアルへの気持ちに気づいてしまった私は、アルをどう思うのでしょうか。
この先、アルを失っても一人で生きていけるのでしょうか。
今にも目の前の不安に押しつぶされそうな頭の中で、そんな事を考えられるはずもありません。
私は、聞き分けのない子供のように、ただお父様を失う事が怖くて泣きじゃくりました。
「ロランド……」
そうしているうちにも、アルはゆっくりとお父様へと近づいていきます。
「ベティ、アルを信じるんだ。」
お父様はそう言うと、アルの方へと向き直りました。
アルはついにお父様の前までたどり着くと、剣を振り下ろしました。
「お父様っ!」
お父様の左腕が斬り落とされ、腕が地面に転がりました。
血があんなにいっぱい出て、早く止血をしないとお父様が死んでしまう。
そう思い、私はめいいっぱいもがきますが、兵士に押さえつけられて身動きをとることもできません。
流石の兵士達も、その光景を直視することができず、俯いているようです。
ですが、あの男は、お父様を指差して笑っているのです。
「アル! もうやめて!」
こんな光景を見せられて、私はどうにかなりそうです。
なのに、お父様は逃げも喚きもせず、ただアルの顔を見上げています。
「アル、いい子だ……俺が全部受け止めてや……」
アルはお父様の言葉を最後まで聞くこともなく、お父様の胸へ無慈悲に剣を斬りつけました。
「いやぁぁ!!」
アルを信じるんだ。
それが、お父様が私に残した言葉でした。
つづく
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