魔王、猫になる。

むもむも

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第2話 魔王、こみゅ将になる。

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 我輩は魔王である。名はトラ吉。

 我輩がこの世に猫として転生してから1年が過ぎた。

 まぁ、焦ることはない。

 魔族の時の流れは、人間のそれとは桁が違うのだ。

 魔界に戻る前に、この世を我輩のものにしてからでも遅くはなかろう。

 たとえこの肉体が滅んだとしても、魔王であるこの魂は滅ぶことはない。

 代わりの肉体を探せばよいだけのこと。

 ゆっくりと体制を整え、機を伺えばよいだけである。

 そう、体制とは重要であり、我も1人で世界を統べようなどと浅はかな考えは持ってはおらん。

 統治を成すには忠実なるしもべが必要なのである。

 実際に我輩も魔界では数え切れないほどの忠実なるしもべを操り統治を成していた。

 先代の魔王達は力で統治を成そうとしたが、それでは全てを手に入れることはできなかったのだ。

 つまり、使うのは力ではなく頭である。

 前段が長くなったが、我は今、その忠実なるしもべが毎朝の日課である我輩への忠誠を誓いに来るのを、王座である「こつばんきょうせいちぇあー」に腰掛けて待っておるところだ。
※表紙の写真を参照

 この王座を主人から奪い取ったのはまた別の話にしよう。

 そう、この1年何もしていなかったわけではない。

 少しずつではあるが準備を進めているのだ。

「あ! ちゃーちゃん! ほらチャッピーがまた来てくれたよ!」

 うむ、主人①よ見張りご苦労であった。

 このチャッピーと呼ばれている者は「のら猫」と呼ばれる職業の戦士である。

 「のら」という意味は我輩にはわからぬが、そんなことはどうでも良い。

 なぜなら、一目見ただけでわかるほどの野性味溢れるその肉体美。

 戦士以外の何者でもなかろう。

 こうして毎朝、この戦士は我輩への忠誠を誓いにわざわざ足を運んでくるのだ。

 どれ、我輩もその期待に応えなければならんだろう。

 その方法は簡単である。

 力には力を。

 我輩の力をコヤツに見せつければ良いだけのこと。

 しかし、この体では幾分迫力に欠けてしまうのが難点である。

 それを補うために、我輩は王座から勢いをつけてチャッピーの待つ窓辺へと駆けて行き、網戸と呼ばれる網目状の窓に爪を引っ掛けて直立するのだ。

 直立するのにも、もちろん意味がある。

 猫という生物は、自分の頭上にいる者が下の者を制すると聞く。

 これで、我輩の威厳も示せたであろう。

「シャーー!」

 どうだ、チャッピーのその声、我輩への忠誠の現れである。

「こら! ちゃーちゃんちゃんと仲良くしないとダメじゃない!」

「まぁ仕方ないよ、家猫だから他の猫との接し方がわからないんだよ。」

 主人①と②はいつもこう言うが、こればかりは、猫同士でなくてはわかるまい。

「う゛~~……」

 お、次は地鳴りのようなチャッピーの声。

 これは、我輩への絶対的な服従の意を示しているのだ。

 その証拠に、チャッピーの目を見るがいい。

 我輩の目をまっすぐ誠実に見ているではないか。

 今日も良い忠誠心であったぞ、チャッピー。

 その忠誠心ならば、貴様はしもべでも幹部候補である。

 期待しておるぞ。

「まったく、ちゃーちゃんは相変わらずコミュ障だなぁ。」

 主人②よ、当たり前であろう。

 我輩は魔王であるぞ。

 その「こみゅ将」という言葉、我なりに解釈したが、おそらくこの世界の将軍に値する爵位であろう?

 我は生まれながらにして将軍であるぞ。

 まぁ、改めて言われても悪い気はせんがな。

「あ! ちゃーちゃん! 子チャッピーもきたよ!」

 む、今日はチャッピーの従者であるco-チャッピーも来ているとな。

 これは腕がなるというものだ。


ーーー別日ーーー


 今日は雨か。

 おそらく、本日はチャッピー達は来ないであろう。

 水は猫の大敵と聞く。

 我輩はこの屋敷から出たことが無いためわからぬが、猫は雨に濡れると魔力を奪われてしまうといった類の理由であろう。

 魔界では魔力を吸収する雨を降らせる魔法も存在するのだ。

 流石の我輩もそこまでの無理強いはせぬ。

「ちゃーちゃん、今日はチャッピーが来ないから元気ないねー。寂しいんだろうね。」

 主人①よ、何を馬鹿な事を。

 我輩が寂しいなどという感情を持ち合わせているはずがなかろう……本当だぞ……。

 魔王の器たるや、しもべの愚行すらも背負ってやらねばなるまい。

 チャッピーよ、今日はゆっくり休むが良い。

 そう、その時が来るまでは。

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