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27話
しおりを挟む「なんでお前嘘をついた。」
それを聞いた瞬間、俺は息が止まった。
なんでばれた?嘘がばれたってことは俺の気持ちがばれたってこと?いやこの様子だったらバレてないのかも。それよりもなんて答えればいい?
俺を責めるように見つめる蓮の強い眼差しに俺は恐怖を覚えた。前までは嫌われても睨まれても、俺を見つめてくれるだけで、蓮の瞳に俺が映るだけで、すごく嬉しかった。しかし、今湧き上がるのは喜びなんかではなく、ただただここから逃げ出したい、怖いと言う気持ちだけだった。
「おい、何黙り込んでんだ。」
「…」
「聞いてんのかよ!!」
蓮は苛立ちを隠せず、怒鳴り声と共に壁をドン、と叩く。俺は震えが止まらなかった。息もなんだかうまくできない。…早く本当のこと言わなくてはいけない。でも声が出ない。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
「…た……すけ…て…。…はや、てッ……!!」
俺は無意識に颯に助けを求めた。
その時ドワが開く音がした。そこに立っていたのはもう帰ったはずの颯だった。助けてとは言ったが、まさか本当に来てくれるとは思わなくて、驚きが隠せない。
「…はや、て……なん、で……??」
「悠は俺が守るから。」
颯はそう言って俺を優しく抱きしめた。俺は緊張が途切れ、涙が溢れて止まらなかった。颯の前では泣くのが我慢できない。今までどんな時も我慢してきたのに…
「悠、保健室に行こっか。おれが連れて行くからそのままでいいよ。」
そう言って颯は小柄な俺を軽々と持ち上げる。男なのにお姫様抱っことは少し恥ずかしいがここは甘えとこう。
「おい!まだ話は終わってない。」
「…またお前か。」
「これは俺とそいつの問題だ。部外者が首を突っ込むな。」
「…悠を保健室に連れて行ってから戻ってくる。…それまで待ってろ。」
「…は?なんでお前が」
「それが嫌なら帰れ。」
蓮の言葉を遮る颯はいつもの優しい声じゃなく冷たくて無機質な声だった。でも俺に触れている手はとても優しくて不思議にも全然怖くなかった。颯が歩いている間、俺はずっと颯の顔を見てた。なぜだか颯の顔を見てると、胸がギュってなる。でもそれが全然いやじゃなくてむしろ心地よかった。すると颯が俺の視線に気づいて、あんまり見ないでよ、って恥ずかしそうに顔を逸らすから、保健室に着くまでずっと見つめてやった。
「…よし。じゃあ悠はここにいてね。俺は戻ってくるよ。」
「…ごめん。颯…。」
さすがに友達だとしても、ここまで頼りにならない俺に嫌気がさしただろう。…俺は本当に情けなくて自分が嫌になった。
「悠は気にしなくていい。…それよりも悠に確かめとかなくちゃいけない事がある…」
「なに??」
「悠はまだあいつ…橘が好き??」
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