メイドとして皇宮に潜入したら、皇太子殿下に気に入られました(旧タイトル:ひとつぶの星屑(エトワール))

葉山心愛

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潜入編

48.新たな地位(三)

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ステラは朝早く、カレンと一緒にリサの部屋を訪れた。けれど気合が入っているのは自分よりもカレンの方で、リサの部屋に入った瞬間に飾られている服を見てステラは目を丸くする。

――貴族の娘がデートに着ていくような、可愛らしいドレス。今までのステラには縁がなかったような華やかな服だった。

「これを、私が……?」

ステラは戸惑いを隠せなかった。こういう服は姉が着るもの、自分には似合わないと思ってきた。

「無理です、似合いません」そう断ろうとしたが、カレンとリサが顔を揃えて「大丈夫!」「絶対に似合う!」と背中を押す。

渋々袖を通し、リサの手で軽く化粧まで施されると――鏡に映る自分がまるで別人のように思えた。

「すごく似合ってる!」
「本当にきれい……」

カレンとリサの声に、ステラは照れながらも心の奥が少し温かくなる。

和気あいあいと準備が進む中、リサが尋ねた。

「殿下がお迎えに?」
「いえ、皇宮の門の前で待ち合わせです」

答えた途端、カレンが「待ち合わせ!?恋人同士みたい!」と叫び、ステラの頬は一気に熱を帯びた。リサもそれに気づき、ふと目を細める。――今までのステラとは違う反応だった。

二人に見送られ、ステラは待ち合わせの場所へ。外出届を出していたため門番にあっさり通されると、そこにはすでに髪色を変えたレオナルドが立っていた。

思わず「殿――」と声を上げそうになったが、彼が唇に指をあてた。

「以前に言ったでしょう、レオと呼ぶように」

その仕草に、ステラの胸は大きく跳ね上がる。

「さて、参りましょうか」

差し出された手に導かれるようにして、ステラは頬を赤らめながら応じた。

こうして、二人の最初の“デート”が始まった。

ステラはレオナルドの手を取ったまま歩いていた。

以前とは違う胸の高鳴りを覚え、動揺を隠しきれない。まるで――これは本当にデートではないかと錯覚してしまうほどだった。ちらりと横を見れば、レオナルドが優しく笑い返してくる。その笑みにステラはますます心臓が早鐘を打ち、手のひらに汗がにじむ。伝わってしまわないかと不安になった。

やがて二人が辿り着いたのは、見覚えのない店だった。

「ここは、ユリウスに頼んで侍女におすすめを聞いた、一番評判の店なんだ」

レオナルドは得意げにそう言って扉を開いた。

店内に入ると、レオナルドは真剣そのものの表情で服を手に取り、ステラに似合うかどうかを吟味している。

「これはどうだろう、いや、こっちの方が……」

まるで自分のことのように一生懸命選ぶ姿が可笑しく、ステラは思わず吹き出してしまった。

「なにを笑っている?」

怪訝そうに尋ねられても、「なにも」と答えつつ、口元は緩みっぱなし。店主もまた、そんな二人のやり取りをほほえましそうに見つめていた。

レオナルドが選んだ数着を試着することになり、ステラはしぶしぶ更衣室へ。一着目を着て出てきた瞬間、レオナルドの瞳が輝いた。

「やっぱり似合うな」

その満足げな声に、ステラの頬はほんのり熱を帯びた。

次々に試着を重ね、結局すべてを購入することに。レオナルドが支払いを済ませ、店主に「皇宮まで届けてくれ」と頼むと、ステラは慌てて口を開いた。

「お給料が入ったら、必ずお返しします」
「いや、別にいい」

即座に断られるが、ステラは一度言い出したら引かない性格だった。レオナルドもそれをよく知っている。むっとした表情を浮かべるステラを見て、彼は小さく笑った。

「じゃあ……また二人で出かけたとき、ご飯をごちそうしてくれ」
「割に合わないじゃないですか」
「それでいい」

レオナルドがあっさり引き下がったので、ステラはしぶしぶ頷いた。

やり取りを横で見ていた店主は、やはり恋人同士にしか見えないといった顔で目を細めていた。
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