可愛い双子猫獣人の愛が重くて激しい

雪音鈴

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可愛い双子の愛が怖い(前編)

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「わーい、ルチアだー」

「ルチアだー」

 元気な双子の従兄弟いとこ――レオーネ(兄)とレナート(弟)。そんな彼らの少し高めの可愛らしい声に癒される。クリクリとした大きい翡翠色の瞳に褐色の肌、フワフワの黒い猫毛の髪にその間からのぞくピンと立った猫耳、黒いノースリーブのハイネックにそのツヤツヤの膝が見えるカーキ色の短パン……極めつけに、そのキュートなお尻からは長くしなやかな黒猫のしっぽが生えている。もちろん、獣人用に短パンには尻尾が通る穴があいているので、尻尾はそこから出ている。

 ちなみにこの双子、あまりにも似すぎててまったく区別がつけられないのが難点だ。一応、レオーネが髪の分け目が右寄り、レナートが左寄りなのだが、それも簡単に変えられるので、マジでどっちがどっちだか分からない……。

 まあ、どちらも可愛いことには変わりないので、正直、【ショタ万歳!!!!】と叫んでしまいそうになるのは仕方がない。だってこの子達、本当にあざとかわいすぎなんです……。

 1年前にすでに成人の儀をすませた彼らだが、獣人の成人年齢というのは15歳なので、やはりまだあどけなさが残っている。

 ちなみに、私と彼らは8歳差――20歳で新世校しんせいこうという全種族を対象とした大学のような学校に入学し、規定通り4年で卒業した私はそのまま地元である獣人の村に帰ってきたのだが、彼らは成人(15歳)になってすぐに入学し、1年だけ新世校に通い、私と一緒に村に戻ってきてしまった。新世校は成人した種族だけを受け入れるので、彼らの入学資格は去年からだったのだが、たった1年で学びたいことは学んだからとサッサと帰ってきた彼らには驚かされっぱなしだ。

 まあ、結局、私も新世校でも恋人はできず、何故か下僕ができる始末だったので、ある意味開いた口がふさがらない状態ではあるんだけどね……。

 そして、どこまでも私の傍にといたがった下僕――じゃなかった……金髪金目の綺麗な男、シェロンもこの村に来ているが、恋愛的なラブという意味での≪好き≫ではなく、あくまでもライクという意味の≪好き≫にしか届かなかった。

 そんなわけで、なんやかんやと揉め事はあったが、地元に引き返してきた私は、定期的にこの村を訪れて研究成果の報告をしてくれるネガティブヤンデレ人魚様や森の精霊を定期的にに来てくれる精霊王様に加え、歴代の魔王を越えた軍勢を率いる身となった魔王様が定期的に魔力の発散がてらうちの村の若い戦士を鍛え上げてくれているというよく分からない状況を過ごしている。

 うん、私もそこまで鈍感☆ではない。皆がライクではなくラブの方の意味で慕ってくれているのは分かっている。そして皆の悪い部分を抜き取れた(と思ってる)今、正直、皆さんかなりの有料物件だ。村に来てくれたあの変態ストーカーさんにおいても、かなりいい物件。何より、まあ、この世界なら誰でもそうだが……全員イケメンなのだ。でも、なんだか、今の状況に満足してしまっていて、前に進めないのが実状。

(ああ、もしかして、これが逆ハーENDってやつなんだろうか?)

 逆ハー……逆ハーレムなるものは、この世界の元となった乙女ゲーム本編にはなかった。何しろこのゲーム、【ヤミゲー】と称されるほどに攻略対象の病み具合が半端ない。攻略対象皆さんの執着度(普通なら好感度なるモノのはずなのだが――うん、ここら辺にゲーム制作者の悪意を感じてしまう)が異常すぎるほどに高すぎて、逆ハーなんてものが成り立つ前に、他の奴らなんていらないよねー的なノリで殺戮タイムに突入する。

(……正直、誰とも結ばれていないんなら、バッドエンドのような状態なのかな?)

 その考えに、思わずため息をつきたくなる。

 そもそも、彼らの気持ちに気付かないように振舞っている今の自分が卑怯な気がしてならない。皆はやっぱり大切な友人で……だからこそ、間違った選択をしたくない。じゃあ、自分の心の整理が付くまで――と自分自身に甘い言い訳をして、彼らの愛情表現をひたすらかわし続けているのが今である。そんな逃げの体勢に入ったままの自分がなんとも情けなく、嫌だ。

 どうしても、恋愛事に関しては上手くやれない……。経験値がとびっきり低いのもそうだが、彼らとの関係性が崩れてしまうのが――今の居心地のいい状態が壊れてしまうのが――とてつもなく怖いのだ。

 恋愛以外に関してはわりと決断力が早く猪突猛進タイプなのに、本当に不甲斐ない……。やはり、前世のトラウマがまだ引っかかっているのだろうか……。

「ねぇねぇ、ルチアー、ちゃんと話聞いてた?」

「ボクらが話してたのに上の空だったよねー」

「え、あ、ごめんごめん。なんだった?」

 双子の話を聞きながら、今は彼らの部屋へと招き入れられていた。部屋はアジアンモダン系のコーディネートと言えばいいのだろうか? 茶色を基調とした落ち着いた室内に幾何学模様が描かれたカーペット、家具は衣装タンスとダブルベッドのみ――とかなり少なく、生活感がない気がするが、双子の趣味の物は別の部屋にあるため、仕方がないのかもしれない。

 その趣味の部屋というのは、一度も見せてもらったことがないので、正直何があるのか気になっていたりする……。

「「…………」」

 思わず思考を巡らせてしまっていた私だが、じぃっと上目使いで私を見上げてくる双子の愛くるしい視線を感じ、ハッとする。

(いけない、いけない……最近、今後の行く末が心配で余計なことばっかり考えちゃっててダメだわ――うん……やっぱりなんとかしなくちゃダメだよね、例えば、あの中の誰かと恋人になるとか――)

「ねぇ、ルチア……ボクらのこと、ちゃんと見てる?」

「う、うん、ちゃーんと見てるよ!」

 再び思考の世界に旅立とうとしていたため慌てて頷くが、双子は猫耳をペタンと倒し、目を潤ませた。

「…………ううん、ルチアはちゃんと見てくれてないよ」

 シュンと落ち込む彼らにオロオロとしてしまう。

「ご、ごめんね。上の空で――」

「ねぇ、ルチア、ボクらのことどう思う?」

「え――どうって……可愛いなあって思ってるよ?」

「ボクらのこと、好き?」

「うん、好きだよー」

 思わず双子の頭をナデナデするが、双子は尻尾まで力なく垂れ下がらせる。

「ルチアはやっぱりボクらのこと分かってない――」

「見てくれてない――」

「え?」

 可愛い双子にこんなに悲しげな表情をさせてしまっている自分自身をぶん殴りたい衝動に駆られる。ここで私が彼らを見分けられたら良いのだが、この双子、やはり見分けがまったくつけられない。ちなみに、言い訳にしたくはないが、彼らの両親や兄弟ですら彼らの区別をつけられていないらしい……。

「そ、そりゃあ、いまだにどっちがレオーネでどっちがレナートだか分からないけど、さ……そこは、その、ごめんね」

「ああ、それはもちろんだよ。区別をつけられちゃったら、それこそボクらがボクらじゃなくなっちゃうからね」

「うんうん、ルチアに区別されちゃったらケンカになっちゃうもんね。ボクらは二人で1つなのが一番だよね」

(あ、あれぇ……? じゃあ、双子はなんであんなに悲しげな表情をしたんだろう?)

「そ、そっか……まあ、区別はつけられなそうだから、いつも通り仲良くしてね?」

 疑問は残ったが、私は黒い猫耳が元気よく立った彼らのフワフワの頭を撫でる。

「もちろんだよ。でも、ルチアとはもっともっと仲良くしたい!」

「そうそう、だから、ルチアはもっともっとボクらを見てくれなくちゃ!!」

 バッといきなり双子の片割れ――おそらく、髪の分け目が左寄りなのでレナート――に飛び付かれ、後ろへと倒れそうになったが、私の背中はもう一方の片割れ――おそらく、レオーネ――にやんわりと受け止められた。どちらも小さいとは言え、やはり獣人。俊敏さは今の段階でも相当なもので、今後の成長が怖いくらいだ。

 「はい、捕まえた」

 後ろからレオーネに両方の手首を捕らえられ、右の耳元で彼にしては低い――男を感じさせるような声で囁かれる。

「え? ええと、こ、これはどういうことなのかなー?」

 心臓が早鐘を打っているのを隠すように努めて明るい声を出してみるが、顔はひきつってしまっているだろう。

 そんな私の反応を見たレナートは、ニンマリと悪い笑みを浮かべて更に顔を近づけてきた。

「どういうって――もちろん、こういうことだよ?」

「ッ――!?」

 初めに感じたのは唇への柔らかい熱。何が起こってるのか分からないまま、ヌルリと口内に侵入してきた熱い舌に自分の舌を絡めとられ、軽く吸われる。途端、全身に電気が流れたような言い様のない感覚が駆け巡る。その感覚から逃げるように懸命にもがくが、後ろからしっかりとレオーネに拘束されていて上手く動けない。下手をすると私の怪力で可愛い双子を瀕死寸前にしかねないので手加減したのもアダとなっている気がする。

「フフ、ルチア、気持ちいいの?」

「ンッ――」

 右の耳を甘噛みしながら、後ろにいるレオーネが耳に直接響くように囁く。しばらく、そうしてレナートに良いようにされ、目を白黒させながら息も絶え絶えになっていると、レオーネが焦れたように甘えた声を出す。

「ねーぇー、次はボクの番」

「アッ――」

 グッと顔を横に向けられ、私の口内を犯していたレナートの舌が離れるのを惜しむかのように、彼との間に銀色の糸が紡がれる。痺れた舌がようやく解放される――と思ったが、今度は後ろにいるレオーネの舌が私のそれを吸い上げ、舌の痺れからは解放されるどころか、熱まで上がる始末だ。

 そちらに気をとられていると、前にいるレナートが服の隙間から脇腹を撫で上げてきた。その瞬間に何故か腰から背にかけてゾクゾクとえもいわれぬ感覚にみまわれる。新世校にいた時と違い、村での私の私服はいわゆる民族衣装……非常にゆるゆるした楽な物だ。形状は少し着物に似ている。

 彼が服についていた紐をシュルリとほどくと、ハラリと着物状になっている合わせの部分が開き、胸があらわになる。ショーツは基本はいているが、ブラジャーなるものをつけないのが私達の村の習わしだ。最初は落ち着かなかったが今では普通のこの状態が、今日この時ばかりは恥ずかしいと感じられる。

 少々冷たい外気が火照った体を滑っていくが、それぐらいでは冷めないほどの熱を口内で繋がったままのレオーネから引き出され続け、その熱さに頭がクラクラしてくる。

 そうこうしているうちにレナートが優しく両胸を揉み始め、その動きに体がピクリと反応してしまう。いよいよ雲行きが怪しくなり、双子に怪我させることを覚悟して抵抗しようと身体に力を込める――が、何故かいつもの怪力が上手く出せない!?

(ハッ! まさか、この子達――!?)

 そこでハタと気付く。そう、双子はただディープなキスをしているだけじゃなく――

(ヤバイ――これはマジでヤバイ!!!)

「ン――!! ン――!?」

 魔力で外界の音が遮断された静かな双子の部屋――ピチャピチャという羞恥心を煽る卑猥な水音が続くその部屋の中で、私の声無き抗議の声が響くのだった……。
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