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☆ Familiar17 ☆ 愛しいあの人のカケラ
しおりを挟む※今回の話には、R指定にはならない程度ではありますが、少々血の描写等が含まれます。注意してご覧ください。
↓ ↓ ↓
砕けた結晶の眩い光が収まり、目を開くが、まだチカチカして状況が分からない。
先程の影響で身体を縛っていた縄は千切れたようだ。ふらつく身体を支えるように床に手を付くと、ヌルリとした熱い何かに触れた。
驚いて手を離そうとしたが、見覚えのある黒いローブの破片を前にして、身体が動いてくれない。そうしている間に、焼け付くような熱さの何かが頬をつたい、ぺチャリと落ちる。そこにあるのは、赤黒く染まったあの人のカケラ……。
「あ、え――?」
かすれた声が意図せず口から洩れた。
手が――体が――心が――震える。
(ナニ、ガ――起キタ?)
……理解したくない。認めたくない。
目の前に広がる赤い紅い朱い黒い光景、濃密な大切な人の香り。手に触れたままの、まだ熱いあの人の温度――その全てに脳が――胃が――精神が――拒絶反応を起こす。
「グレ、イ、ス――?」
すがるように震える声で愛しい人の名を呼べば、手に触れていた愛しいその人のカケラが、応えるようにピクリと動いたような気がした。
「アハ、アハハハ! やった! やりました! とうとう僕は、殺ったんだ! アハ、アハハハハハ!」
耳障りな音が聞こえる。
「やっと、やっとやっとやっと、グレイスを殺せた! 殺せたんだ! アハ、アハハ! ざまーみろ!」
「ああああぁぁぁぁぁぁ! ア゛ァアア゛アアアァァァ!!!」
ノイズを頭からふり払うように私は力の限り吠える。血に濡れた髪をかきむしり、獣のように咆哮を続け、ようやく、全ての元凶である雑音へと目を向ける。
「貴様アアア゛ァァッ! ブッッ殺す!!!」
「ハハ、主人を失った君に何ができるっていうんですか! 使い魔の君はもう消えるだけじゃないですか!?」
目の前の害虫が黒い狐面を外し、口を歪めて笑う。その虫唾が走る顔にギリリと奥歯が砕けるほど強く噛みしめる。
私の周囲に淡く白い光の粒子が集まり、私の激情に呼応するかのように一度大きく脈打つ。
「ほら、もう、ご主人様の元へのお迎えが来ているじゃないですか。君はもうすぐ消える。あの世でご主人様と末永くお幸せにってね! アハ、アハハハヒッ――」
耳障りな音を聞きたくなくて私は魔法で一気に奴の元まで飛躍し、右手の中で燃え上がった青い炎を叩きつけるように奴へと投げつける。奴は無様にも腰を抜かしたが、奴の前に飛び出してきた人陰によってその炎は叩き落とされた。
「邪魔するなアアアアァァァァア゛アアァ!」
「ガッ――」
小さな杭型の氷塊を大気中の水蒸気から複数形成し、極限まで回転速度を上げたそれらをピストルのように手の平から発射させる。人影は氷塊を防ぎきれず、壁にはりつけにされた。その反動でカランと白い狐面が落ちたが、今の私には彼女を気にする余裕などなかった。
「死ねえええぇぇぇ!!!」
さっきの青い炎とは違い、明らかに禍々しいオーラを放つどす黒い炎を両手の平の間に形成させ、それを打ち込むように奴への距離を縮める。
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