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しおりを挟む「ほぉ、お前があの領主が掌中の珠として磨き上げてきた娘か。噂に違わず美しい」
レナの全身を不躾な視線で眺めまわしながらその男はそう口にした。
眼帯を付けた隻眼の彼こそが、狼将軍ことローガンであった。光の加減で金色に見える片目が、ぎらぎらとレナを睨みつけている。灰色交じりの黒髪が狼の毛並みに良く似ていて、狼将軍の名はここから来たのかもしれないとレナはぼんやりと考えた。
将軍というだけあって軍人らしくたくましい体つきをしたローガンの前に立たされていると、自分はなんとちっぽけな存在なのだろうと本能的な恐怖で身を縮める。
「で、肝心の領主一家はどこだ。お前は養女の筈だろう。まさか逃げたのか」
「……」
「だんまりか」
口を開かないレナの様子をどこか面白がるようにローガンは口元を歪めた。
大きな掌が伸びてレナの顎を掴む。
無理矢理に顔を上げるように引き上げられ、ローガンとまっすぐに顔を向き合わせた。
ひとつだけの瞳が妖しく煌めいている。
「大事に育てられていただけあって本当に磨き上げられた娘だ。しかも忠誠心までも持っているとは、よく教育したものよ。それともお前が野心家なのか」
ひどい棘の混じるローガンの言葉にレナは眉根を寄せる。
レナが黙っているのは決して忠誠心からなどではない。もう彼らに関わることに疲れた、それだけだった。
そんなレナをしげしげと見つめていたローガンは、顎を掴んでいた手を離すとレナの身体を軽々と持ち上げた。
「きゃっ?! 何をするのですか!!」
「ようやく口をきいたな。何をするかだと? 当然訊問だ。知っている事を全て話してもらおう」
「……私は何も知りませんし、話しません! 降ろしてください!!」
「その我慢がどこまでもつのか楽しみだ」
腕の中で暴れるレナをまるで家畜のように抱え上げ、ローガンは歩き出す。
そしてそのまま馬車に押し込められたレナは、ローガンたちが済む砦に連行されたのだった。
砦について数日のうちはただの尋問ばかりだったが、何も話さないレナに焦れたのか、ローガンは石壁に囲まれた冷たい部屋にレナを閉じ込めた。
苦痛を与える拷問を覚悟していたレナに与えられたのは、ローガン自らの手による肉欲の責めだった。
手を縛られつりさげられる不安定な体勢にさせられ、与えられる未知の感覚にレナは身悶えし泣き喚く。
許してと叫ぶレナの純潔は、ローガンにより手酷く散らされた。
その行為が一度で終わるわけもなく、ローガンはそれから毎日のようにレナの身体を組み敷いた。
抱きながら、ローガンは領主の圧政について、事細かにレナに言って聞かせた。
どれほど領民たちが苦しみ、子どもが飢えたかを訴える。
のうのうと領主の屋敷で大切にされていたレナに、その恨み全てをぶつけるような乱暴な行為。
起き上がれないほどに抱きつぶされる日々。
嫌だ辛いと泣き叫ぶのに、ローガンの手管にかかればレナの身体はあっというまに熱に浮かされてしまう。
淫らな女だと蔑まれて否定する事も出来なかった。
いつの間にか与えられたレナの部屋には大きな寝台一つしかない。
昼夜を問わず、気が向いた時に現れるローガンに抱かれるためだけの場所。
食事を届けてくる高齢のメイドが、起き上がることもできないレナを憐れに思ったのか、かいがいしく世話を焼いてくれた。
だが、会話をしてはいけないと言いつけられているらしく、レナがどんなに話しかけてもメイドは悲しげに首を振るばかり。
それでもレナは不思議と辛いとは思わなかった。
相手が変っただけで、義兄と結婚していても同じような生活だったろうし、王太子とて男だ。
結局は抱かれるためにレナは育てられた。
ローガンは最初の行為こそ手酷いものだったが、最近は言葉を除けばレナを痛めつけるような事はしない。
たくましく傷だらけの身体を最初は恐ろしいと思ったが、それだけこれまでたくさんの戦場を駆け抜けてきた証拠だと思えば、何故か愛おしくさえ思えた。
むしろレナを抱きながら暴言を吐くローガンの表情の方が、レナの心を苛んだ。
酷い事を言っているのはローガン筈なのに、何故か彼の方は苦しそうで泣きそうに瞳を歪めているのだ。
本当は優しい人なのではないかと思うような時さえあった。
レナの名を呼びながら唇を奪い身体を貫く瞬間の彼は、いつも何かに祈るような顔をしていた。
(ローガンさまの瞳は、彼に良く似ているんだわ)
レナはローガンの瞳が幼い記憶に残っている『彼』と良く似ている事にようやく気が付いた。
孤児院で一番仲のよかった二つ年上の少年。あの頃、レナより小さくてやせっぽちで。でも正義感だけは誰よりも強かった。
養女になると決めた時、別れるのがつらくて挨拶もできなかった相手。幼い初恋だった。
彼の髪色はローガンとは違い真っ黒だったので、似ているのは瞳だけだ。
(初恋の人に瞳が似ているから抱かれても平気だなんて、現金な女ね)
ベッドの上でぼんやりとまどろみながら、レナは自嘲気味に笑った。
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