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2巻 娶られた雪は愛し子を慈しむ
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序章
今でも瞼に焼き付いているのは、真っ暗で狭い箱の中。
箱から絶対に出ないよう、膝を抱き、目を閉じ、身体を丸め、息をひそめていた。
そうしていなければ、この命すら消えてしまうから。
泣いても叫んでも喚いても、誰も助けてはくれないと。
必要のない存在だと、生まれてこなければよかったのだと言われた。
どこにも居場所なんてないし、誰も手をさしのべてはくれない。
愛してくれる人などこの世にはいない。
そう教えられた。
でも。
もしも誰かが手を取ってくれる日が来たら。
それはきっと、夢のように幸せなことだろう。
一章 平穏な日々
「今日もいい天気ね」
肌を焼くような夏の日差しを手のひらで遮りながら、雪花は目を細めた。
夏の初めに仕立てた明るい水色の衣は風を通す生地なので、日陰にいれば心地いいが、日差しの下を歩いているとうっすら汗をかいてしまう。
長く伸ばした髪は邪魔にならぬように軽くひとつにまとめているが、後れ毛が肌に貼りつくのはどうにもならない。
(今日の夜には桂花茶を出そうかしら)
昨年摘んで乾燥させておいたものがあったはずだ。
あの香りを楽しめば、寝苦しい夜も少しはましになるかもしれない。
そんなことを考えながら、雪花は歩き慣れた庭をのんびり進む。
雪花が兄である普剣帝の命により焔家に降嫁して、早いもので一年と半分が過ぎていた。
その嫁入りは、雪花を後宮の外に逃がすための仮初めのものだった。
夫となった蓮はあくまでも保護者として雪花に接していたし、雪花も蓮を兄と思おうとした。
だが、いつしか雪花は蓮に惹かれ、恋い慕うようになっていた。
そして蓮もまた、雪花を愛しく想ってくれた。
想いが通じ、ふたりが正式な夫婦となったのは昨年の冬のこと。
今では、この焔家が雪花の居場所となっている。
焔家に集められた資料や道具が収められた龍厘堂。その前に立つと、半開きになった扉の中からわいわいと活気のよい声が聞こえてきた。
「おはようみんな」
大きく扉を開いて声をかけると、いくつもの目が雪花に向いた。
そこにいるのは子どもだったり老人だったり、あるいは笛に手足が生えた者や、大きな猫の姿をした者たち。
彼らは、この龍厘堂にある数多の道具に宿った精霊が実体化したり、人へと姿を変えた存在だ。
「雪花!」
満面の笑みを浮かべながら駆け寄ってくる少女は、自分の身体よりも大きな火鉢を抱きかかえていた。
「小鈴、おはよう。走ると危ないわよ」
「平気だよ。こんなの軽い軽い」
小鈴は可愛らしく笑いながら、火鉢をひょいっと持ち上げて見せる。
彼女は一見すると少女だが、その正体は真鍮の鈴だ。蓮の母がこの焔家に嫁ぐときに持ってきた飾りのひとつで、この焔家を守護する龍の力によって、人の姿に転じている。
「片づけは順調?」
「うん。だいぶ進んだよ。必要な道具もいっぱい見つかった」
「助かるわ」
小鈴の頭を撫でながら龍厘堂の中に入る。床の上にはたくさんの箱や書物が並べられていた。
それらにぶつからないようにゆっくり歩みを進めると、精霊たちの中央で小鈴と同じ年ごろの少年が腕組みをして、周りの精霊たちに指示を飛ばしている姿が目に入る。
「ああ、雪花か」
「おはよう、琥珀。すごい状態ね」
「まあな。皆、張り切っているぞ」
「琥珀もね」
「うるさいぞ、小鈴」
この琥珀もまた見た目は少年だが、その正体は月琴の精霊である。
二百年ほど前の名工が作った一品で、本当に美しい音色を奏でてくれる。この龍厘堂に納められた道具の中でも古参ということもあり、道具たちからの信頼も厚く、とても慕われている頼もしい存在だ。
「清彩節をきちんと祝うのは、久しぶりだと言っていたものね」
「そうだな……略式的なものは毎年やっていたが、正式なものとなると十年ぶりくらいか」
「十年も」
過去を懐かしむような琥珀を見つめながら、雪花は己の胸を押さえた。
「では、なおのこと今年の清彩節は成功させなくてはいけませんね」
「ああ」
「小鈴も手伝うよ」
涼やかな音を鳴らしながら駆け寄ってきた小鈴が、自分もと言わんばかりの笑顔を浮かべる。
ほかの精霊たちも口々に声を上げ、張り切りを伝えてきた。
その温かな光景に、雪花は頬をゆるめる。
「ずいぶん張り切っていますね」
「蓮」
蓮が雪花の後ろから顔を覗かせるようにして現れた。
いつの季節も変わらぬ墨色の衣に身を包み、長く艶やかな黒髪を高い位置で結んだ蓮は、汗ひとつかいていない。
どんなときだって涼しげで凛々しい夫の顔を間近で見てしまい、雪花はぽっと頬を赤く染める。
「いつ来たのですか」
「つい先ほど」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、蓮は雪花の肩を掴み、優しく引き寄せてくる。
「愛しい妻が張り切って清彩節の準備をしてくれているのですから、俺も手伝わなければと思って」
「ふふ。ありがとうございます」
たくましい胸板にもたれるようにして身体を預け、雪花は素直に感謝の言葉を告げた。
優しくて温かくて、幸せな場所。
後宮にいたときからは考えられないほどに、満たされた日々。
「しかし、案外手間がかかるものなのですね」
「阿呆。毎年やっていればそこまでではない。これまで略式で済ませていたせいで、大事な道具が奥へ追いやられているから手間がかかるのだ」
どこか怒ったような琥珀の声に、蓮が苦笑いを浮かべる。
「手厳しいな」
「清彩節の祈祷は心をこめて取り組むように」
清彩節とは、先祖の霊を祀る大切な行事だ。
三年に一度、秋の入りにはどんな小さな家でも先祖の祭壇を飾り、特別な食事を供え、家族と宴を開くのが習わしだった。
清彩節の期間は、この世と冥府の境目が曖昧になるらしい。
精霊たちの力も強まる期間であることから、彼らにとっても大切で意味のある行事だという。
今年の清彩節まであと二ヶ月ほどしかない。
本来ならば何ヶ月もかけて準備をするものなのだから、ここ数日は毎日とても忙しい。
嫁入りしてはじめてのことだし、これまで蓮がひとりだったころ同様に略式的なものでよいと言われていたのだが、焔家の正式な嫁になった以上、きちんとした手順で取り組みたいと雪花は訴えたのだ。
最初は渋っていた連も、雪花の熱意に折れ、清彩節の準備をしようとうなずいてくれたのだった。
「すみません、なんだか大事になってしまって」
「気にしないでくれ。道具たちの整理をしようとも考えていたし、いい機会だったんだ」
蓮はどこか懐かしそうに目を細め、龍厘堂の中を見回した。数々の道具や精霊たちがせっせと動きまわる姿からは活気が感じられる。
「あなたが嫁いでくるまでの間、ここは時が止まっていた」
「蓮さま」
「だが、今は皆の時間が動き出したようだ。ありがとう、雪花。すべてあなたのおかげだ」
「そんな……」
自分はただ、蓮という存在を生み出してくれた先祖たちに感謝したいだけだ。
蓮に出会えたからこそ、雪花は自分を得られたのだから。
「夫婦で見つめ合うのはそれくらいにしてくれ。早く片づけねば日が暮れるぞ」
見つめ合うふたりに、琥珀が呆れた様子で声をかけてきた。
気恥ずかしくなってさっと視線を逸らすと、隣にいた小鈴がにこにこと嬉しそうに笑っている。
「雪花、幸せそう」
「……ええ、幸せよ」
噛みしめるように呟くと、隣にいる蓮の体温が少し上がった気がした。
蓮も手伝って道具の片づけを進めたが、清彩節の準備に必要な道具のいくつかがどうしても見つからない。
かつてはあったと言うから、代替わりの騒動でなくなったか、それともここではない場所にしまわれているのか。
「琥珀たちにもわからないのですか? そうだ、古い道具なら声を聞けるのでは?」
「神事に使う道具というのは、少し特別なんだ。特に我が家では、意図的に空っぽの状態を維持するように作られた品を使っている。だから、琥珀たちのように意志を持つことはない」
受け皿として作られる道具は、どんなに使いこんでも魂を保てぬような術をかけながら作るのだという。
同じ道具なのに不思議だと雪花が首を傾げるが、琥珀たちはなんの違和感も抱いていないようだった。人と精霊では考え方が違うのだろう。
「どうしましょうか」
「新しく揃えてもいいが、今から手に入るかどうか。それに、中途半端な品では精霊化してしまうかもしれない」
「ああ……」
並の道具では、すぐに自我を持ってしまうのがこの家だ。
かつてこの土地を荒らした龍神の血を引く一族、焔家。彼らが生きてきたこの土地そのものが、龍神の加護を受けている。
「とにかく今日はここまでにしよう。小鈴は見つかった道具を霊廟に運んでおいてくれ」
「はーい」
元気よく返事をした小鈴が、ひょいひょいと道具を抱え軽快に走り出す。見た目は幼女なのに、自分よりも大きな道具を軽々運んでいくさまというのは何度も見ても驚きだ。
「俺たちは残りの品を片づけてしまおう」
「はい」
広げた道具たちを、手分けしながら片づけていく。長くしまわれたままだった道具たちも多く、言葉を発するものたちは久しぶりに人間を相手にできるからと興奮した様子で必死に喋りかけてくる。
その様子があまりに愛しくて、雪花はついつい返事をしてしまい、琥珀に無駄話をするなと叱られることになったのだった。
ようやくほとんどの道具を片づけ終わったところで、窓の外に目を向けた蓮が「あ」と珍しく声を上げた。
「しまった」
「どうしました?」
「仕事があったのを思い出した。もう出なければ」
雪花との生活のため、蓮はこれまで控えていた道士としての仕事を増やすようになっていた。簡単な加持祈祷や、呪いの解呪、精霊の仕業と思われる道具の回収など、いろいろな仕事を受けるようになったのだ。
「まあ。間に合いますか?」
「そう遠くではないから大丈夫だ。夕食までには戻るので待っていてくれ」
「わかりました」
慌ただしく龍厘堂を出ていく蓮を見送りながら、雪花はふうとため息を零す。
最近、こんな風に蓮が仕事のために出かけることが増えた。彼が積極的に他者と関わるようになったのは嬉しいが、家に残される雪花としては少し切ないものがある。
すでに蓮の背中が消えた入口をじっと見つめていると、琥珀が喉を鳴らして笑うのが聞こえた。
「まるで捨てられた仔猫のようだな」
「琥珀?」
意地悪な言葉に拗ねた気持ちで唇を尖らせると、琥珀はますます楽しそうに笑う。
「よい顔ができるようになった。その顔を蓮に見せてやれ。仕事など放り出して帰ってくるに違いないぞ」
「蓮はそのような無責任なことはしません」
「まあそうだろうな。雪花、あやつも必死なのだ。お前にふさわしい男であろうとな」
ふさわしいもなにも、蓮のように素晴らしい男性はこの世にふたりといないのに。
むしろ雪花のほうが蓮になにも与えられていないのではないかと、今でも不安になるくらいだ。
「思ったことは素直に口にしたほうがいい。人の生は短いのだからな」
気持ちを読んだような琥珀の言葉に、雪花は大きく目を開く。
「蓮と蓮の父も、本心で語らうことなく死に別れた。些細なすれ違いが永遠の決別を生むのだ。年寄りの言葉は聞いておけ」
「その見た目で言われても困るわ」
「確かにな」
ははと笑う琥珀は、見た目はあどけない少年そのものだった。
雪花はほとんど片づいた龍厘堂の中を見回す。あとは簡単な掃除をすれば大丈夫だろうと思っていると、壁に備え付けられた階段が目に入った。
そういえばこの上にはまだ部屋があり、いわくつきの道具がしまわれていると聞かされたことがある。
「見つからない道具は上階にあるのではないですか?」
「上にか? ふむ……ありえなくはないか。ここに置ききれなかった道具をいくつか持って上がっていった記憶がある」
上の階にはいくつかの部屋があり、いわくつきの品を封じているのとは別に、古い道具や壊れた道具を置いてある部屋もあるのだという。
「今日、蓮が戻ってきたらそこを探してみるように相談してみます」
「それがいい。上には厄介な連中が多いからな。お前は行かぬほうがいい」
天井を睨みつける琥珀の表情はとても険しい。純粋な怒りや悲しみとは違う、複雑な感情が幼い横顔に滲んでいた。
それは小鈴やほかの精霊たちに向ける表情とはまるで違うもので、雪花は思わず問いかけた。
「……どんな道具がしまわれているのですか?」
声に出してすぐにしまったと口を押さえるが、琥珀は特に気を悪くした様子はない。
ううんと悩ましげな声を上げて腕組みをすると、困ったように眉を下げた。
「憐れな連中ばかりだな。本来ならば我らのように存在できたはずなのに、人を憎んだがゆえに歪んでしまった。粗末に扱われたり、持ち主の負の心をすべて吸い尽くして生まれたりなど、経緯はそれぞれに異なるが……悲しいことだ」
絞り出すような琥珀の声に、雪花は目を伏せる。
(負の心)
注がれたのが愛でなかったがゆえに、歪んでしまった道具たち。
(もし、ひとつ間違えば私も……)
焔家に嫁ぐことなく、あのまま後宮で暮らし続けていたら、雪花の悲しみが歪んだ道具を生み出していたかもしれない。そんな想像が心をよぎる。
「どうにかして癒やしてはやれないのですか」
「難しいだろうな。連中のほとんどは、生まれが歪んでいる」
切なげに首を振る琥珀に、雪花が目を伏せる。
そのときだった。
「――またくだらぬ話をしておるな」
突然、聞いたことのない声が広間に響き渡る。
「え?」
「水鏡!」
鋭い声を上げた琥珀が、さっと雪花を庇うように両手を広げる。
(水鏡? どこかで……)
聞き覚えのある名前に雪花は瞬きながら琥珀の先に目を向けた。
すると、階段の上から人の形をしたなにかがするすると下りてくるのが見えた。
「お前、また勝手に出てきたな」
「妾は自由な水鏡だからな。封印など無意味よ」
からからと笑い声を上げるそれは、雪花とそう年ごろの変わらぬ娘くらいの大きさをしていた。しかしその身体のすべては水でできており、ゆらゆらと揺れながら向こう側を透けて見せている。
「すぐに戻れ。さもなくばお前の本体を叩き割るぞ」
「おお怖い。そう邪険にするな。妾は小僧の伴侶を見に来ただけじゃ」
再び身体を揺らしながら笑ったそれが、真っ直ぐに雪花を見つめた。正確には、見つめているように見える。水でできた顔に明確な目はなく、目があるであろう場所がわずかにくぼんでいるだけで、その視線がどこに向けられているのか計り知れない。
「ふうむ。なるほどなるほど。ずいぶんと稀有な運命を背負った娘じゃなぁ」
声音は美しいのに、ひどく不愉快な口調だった。
「あの、あなたは……」
「ん? 妾か? 妾は水鏡。憐れな呪師が作った未来視の鏡じゃ」
「未来視……? あ」
ようやく思い出したのは、かつて小鈴から聞かされた話。
――水鏡は未来を読む道具なの。
――時々出てきてね、嫌な予言をしていくの。
かつて蓮と雪花に危険が迫っていると予言した道具ではないだろうか。
そしてその予言を聞いた直後、呪われた刀が届き、大変な騒動が起きたのだ。
うなじの毛がぞわりと逆立つのを感じた。
「妾のことを知っているのかえ? なんじゃつまらぬ……おや?」
水鏡が語尾を上げ、どこか嬉しそうに身体をくねらせる。
「ほうほう、なんとまぁ……」
ずいずいとこちらに近づいてくる水鏡に、雪花は思わず後ろに下がる。
「やめよ! 雪花になにかすれば、蓮に本当に壊されるぞ」
「妾はなにもせぬ。ただ告げるだけじゃ」
今でも瞼に焼き付いているのは、真っ暗で狭い箱の中。
箱から絶対に出ないよう、膝を抱き、目を閉じ、身体を丸め、息をひそめていた。
そうしていなければ、この命すら消えてしまうから。
泣いても叫んでも喚いても、誰も助けてはくれないと。
必要のない存在だと、生まれてこなければよかったのだと言われた。
どこにも居場所なんてないし、誰も手をさしのべてはくれない。
愛してくれる人などこの世にはいない。
そう教えられた。
でも。
もしも誰かが手を取ってくれる日が来たら。
それはきっと、夢のように幸せなことだろう。
一章 平穏な日々
「今日もいい天気ね」
肌を焼くような夏の日差しを手のひらで遮りながら、雪花は目を細めた。
夏の初めに仕立てた明るい水色の衣は風を通す生地なので、日陰にいれば心地いいが、日差しの下を歩いているとうっすら汗をかいてしまう。
長く伸ばした髪は邪魔にならぬように軽くひとつにまとめているが、後れ毛が肌に貼りつくのはどうにもならない。
(今日の夜には桂花茶を出そうかしら)
昨年摘んで乾燥させておいたものがあったはずだ。
あの香りを楽しめば、寝苦しい夜も少しはましになるかもしれない。
そんなことを考えながら、雪花は歩き慣れた庭をのんびり進む。
雪花が兄である普剣帝の命により焔家に降嫁して、早いもので一年と半分が過ぎていた。
その嫁入りは、雪花を後宮の外に逃がすための仮初めのものだった。
夫となった蓮はあくまでも保護者として雪花に接していたし、雪花も蓮を兄と思おうとした。
だが、いつしか雪花は蓮に惹かれ、恋い慕うようになっていた。
そして蓮もまた、雪花を愛しく想ってくれた。
想いが通じ、ふたりが正式な夫婦となったのは昨年の冬のこと。
今では、この焔家が雪花の居場所となっている。
焔家に集められた資料や道具が収められた龍厘堂。その前に立つと、半開きになった扉の中からわいわいと活気のよい声が聞こえてきた。
「おはようみんな」
大きく扉を開いて声をかけると、いくつもの目が雪花に向いた。
そこにいるのは子どもだったり老人だったり、あるいは笛に手足が生えた者や、大きな猫の姿をした者たち。
彼らは、この龍厘堂にある数多の道具に宿った精霊が実体化したり、人へと姿を変えた存在だ。
「雪花!」
満面の笑みを浮かべながら駆け寄ってくる少女は、自分の身体よりも大きな火鉢を抱きかかえていた。
「小鈴、おはよう。走ると危ないわよ」
「平気だよ。こんなの軽い軽い」
小鈴は可愛らしく笑いながら、火鉢をひょいっと持ち上げて見せる。
彼女は一見すると少女だが、その正体は真鍮の鈴だ。蓮の母がこの焔家に嫁ぐときに持ってきた飾りのひとつで、この焔家を守護する龍の力によって、人の姿に転じている。
「片づけは順調?」
「うん。だいぶ進んだよ。必要な道具もいっぱい見つかった」
「助かるわ」
小鈴の頭を撫でながら龍厘堂の中に入る。床の上にはたくさんの箱や書物が並べられていた。
それらにぶつからないようにゆっくり歩みを進めると、精霊たちの中央で小鈴と同じ年ごろの少年が腕組みをして、周りの精霊たちに指示を飛ばしている姿が目に入る。
「ああ、雪花か」
「おはよう、琥珀。すごい状態ね」
「まあな。皆、張り切っているぞ」
「琥珀もね」
「うるさいぞ、小鈴」
この琥珀もまた見た目は少年だが、その正体は月琴の精霊である。
二百年ほど前の名工が作った一品で、本当に美しい音色を奏でてくれる。この龍厘堂に納められた道具の中でも古参ということもあり、道具たちからの信頼も厚く、とても慕われている頼もしい存在だ。
「清彩節をきちんと祝うのは、久しぶりだと言っていたものね」
「そうだな……略式的なものは毎年やっていたが、正式なものとなると十年ぶりくらいか」
「十年も」
過去を懐かしむような琥珀を見つめながら、雪花は己の胸を押さえた。
「では、なおのこと今年の清彩節は成功させなくてはいけませんね」
「ああ」
「小鈴も手伝うよ」
涼やかな音を鳴らしながら駆け寄ってきた小鈴が、自分もと言わんばかりの笑顔を浮かべる。
ほかの精霊たちも口々に声を上げ、張り切りを伝えてきた。
その温かな光景に、雪花は頬をゆるめる。
「ずいぶん張り切っていますね」
「蓮」
蓮が雪花の後ろから顔を覗かせるようにして現れた。
いつの季節も変わらぬ墨色の衣に身を包み、長く艶やかな黒髪を高い位置で結んだ蓮は、汗ひとつかいていない。
どんなときだって涼しげで凛々しい夫の顔を間近で見てしまい、雪花はぽっと頬を赤く染める。
「いつ来たのですか」
「つい先ほど」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、蓮は雪花の肩を掴み、優しく引き寄せてくる。
「愛しい妻が張り切って清彩節の準備をしてくれているのですから、俺も手伝わなければと思って」
「ふふ。ありがとうございます」
たくましい胸板にもたれるようにして身体を預け、雪花は素直に感謝の言葉を告げた。
優しくて温かくて、幸せな場所。
後宮にいたときからは考えられないほどに、満たされた日々。
「しかし、案外手間がかかるものなのですね」
「阿呆。毎年やっていればそこまでではない。これまで略式で済ませていたせいで、大事な道具が奥へ追いやられているから手間がかかるのだ」
どこか怒ったような琥珀の声に、蓮が苦笑いを浮かべる。
「手厳しいな」
「清彩節の祈祷は心をこめて取り組むように」
清彩節とは、先祖の霊を祀る大切な行事だ。
三年に一度、秋の入りにはどんな小さな家でも先祖の祭壇を飾り、特別な食事を供え、家族と宴を開くのが習わしだった。
清彩節の期間は、この世と冥府の境目が曖昧になるらしい。
精霊たちの力も強まる期間であることから、彼らにとっても大切で意味のある行事だという。
今年の清彩節まであと二ヶ月ほどしかない。
本来ならば何ヶ月もかけて準備をするものなのだから、ここ数日は毎日とても忙しい。
嫁入りしてはじめてのことだし、これまで蓮がひとりだったころ同様に略式的なものでよいと言われていたのだが、焔家の正式な嫁になった以上、きちんとした手順で取り組みたいと雪花は訴えたのだ。
最初は渋っていた連も、雪花の熱意に折れ、清彩節の準備をしようとうなずいてくれたのだった。
「すみません、なんだか大事になってしまって」
「気にしないでくれ。道具たちの整理をしようとも考えていたし、いい機会だったんだ」
蓮はどこか懐かしそうに目を細め、龍厘堂の中を見回した。数々の道具や精霊たちがせっせと動きまわる姿からは活気が感じられる。
「あなたが嫁いでくるまでの間、ここは時が止まっていた」
「蓮さま」
「だが、今は皆の時間が動き出したようだ。ありがとう、雪花。すべてあなたのおかげだ」
「そんな……」
自分はただ、蓮という存在を生み出してくれた先祖たちに感謝したいだけだ。
蓮に出会えたからこそ、雪花は自分を得られたのだから。
「夫婦で見つめ合うのはそれくらいにしてくれ。早く片づけねば日が暮れるぞ」
見つめ合うふたりに、琥珀が呆れた様子で声をかけてきた。
気恥ずかしくなってさっと視線を逸らすと、隣にいた小鈴がにこにこと嬉しそうに笑っている。
「雪花、幸せそう」
「……ええ、幸せよ」
噛みしめるように呟くと、隣にいる蓮の体温が少し上がった気がした。
蓮も手伝って道具の片づけを進めたが、清彩節の準備に必要な道具のいくつかがどうしても見つからない。
かつてはあったと言うから、代替わりの騒動でなくなったか、それともここではない場所にしまわれているのか。
「琥珀たちにもわからないのですか? そうだ、古い道具なら声を聞けるのでは?」
「神事に使う道具というのは、少し特別なんだ。特に我が家では、意図的に空っぽの状態を維持するように作られた品を使っている。だから、琥珀たちのように意志を持つことはない」
受け皿として作られる道具は、どんなに使いこんでも魂を保てぬような術をかけながら作るのだという。
同じ道具なのに不思議だと雪花が首を傾げるが、琥珀たちはなんの違和感も抱いていないようだった。人と精霊では考え方が違うのだろう。
「どうしましょうか」
「新しく揃えてもいいが、今から手に入るかどうか。それに、中途半端な品では精霊化してしまうかもしれない」
「ああ……」
並の道具では、すぐに自我を持ってしまうのがこの家だ。
かつてこの土地を荒らした龍神の血を引く一族、焔家。彼らが生きてきたこの土地そのものが、龍神の加護を受けている。
「とにかく今日はここまでにしよう。小鈴は見つかった道具を霊廟に運んでおいてくれ」
「はーい」
元気よく返事をした小鈴が、ひょいひょいと道具を抱え軽快に走り出す。見た目は幼女なのに、自分よりも大きな道具を軽々運んでいくさまというのは何度も見ても驚きだ。
「俺たちは残りの品を片づけてしまおう」
「はい」
広げた道具たちを、手分けしながら片づけていく。長くしまわれたままだった道具たちも多く、言葉を発するものたちは久しぶりに人間を相手にできるからと興奮した様子で必死に喋りかけてくる。
その様子があまりに愛しくて、雪花はついつい返事をしてしまい、琥珀に無駄話をするなと叱られることになったのだった。
ようやくほとんどの道具を片づけ終わったところで、窓の外に目を向けた蓮が「あ」と珍しく声を上げた。
「しまった」
「どうしました?」
「仕事があったのを思い出した。もう出なければ」
雪花との生活のため、蓮はこれまで控えていた道士としての仕事を増やすようになっていた。簡単な加持祈祷や、呪いの解呪、精霊の仕業と思われる道具の回収など、いろいろな仕事を受けるようになったのだ。
「まあ。間に合いますか?」
「そう遠くではないから大丈夫だ。夕食までには戻るので待っていてくれ」
「わかりました」
慌ただしく龍厘堂を出ていく蓮を見送りながら、雪花はふうとため息を零す。
最近、こんな風に蓮が仕事のために出かけることが増えた。彼が積極的に他者と関わるようになったのは嬉しいが、家に残される雪花としては少し切ないものがある。
すでに蓮の背中が消えた入口をじっと見つめていると、琥珀が喉を鳴らして笑うのが聞こえた。
「まるで捨てられた仔猫のようだな」
「琥珀?」
意地悪な言葉に拗ねた気持ちで唇を尖らせると、琥珀はますます楽しそうに笑う。
「よい顔ができるようになった。その顔を蓮に見せてやれ。仕事など放り出して帰ってくるに違いないぞ」
「蓮はそのような無責任なことはしません」
「まあそうだろうな。雪花、あやつも必死なのだ。お前にふさわしい男であろうとな」
ふさわしいもなにも、蓮のように素晴らしい男性はこの世にふたりといないのに。
むしろ雪花のほうが蓮になにも与えられていないのではないかと、今でも不安になるくらいだ。
「思ったことは素直に口にしたほうがいい。人の生は短いのだからな」
気持ちを読んだような琥珀の言葉に、雪花は大きく目を開く。
「蓮と蓮の父も、本心で語らうことなく死に別れた。些細なすれ違いが永遠の決別を生むのだ。年寄りの言葉は聞いておけ」
「その見た目で言われても困るわ」
「確かにな」
ははと笑う琥珀は、見た目はあどけない少年そのものだった。
雪花はほとんど片づいた龍厘堂の中を見回す。あとは簡単な掃除をすれば大丈夫だろうと思っていると、壁に備え付けられた階段が目に入った。
そういえばこの上にはまだ部屋があり、いわくつきの道具がしまわれていると聞かされたことがある。
「見つからない道具は上階にあるのではないですか?」
「上にか? ふむ……ありえなくはないか。ここに置ききれなかった道具をいくつか持って上がっていった記憶がある」
上の階にはいくつかの部屋があり、いわくつきの品を封じているのとは別に、古い道具や壊れた道具を置いてある部屋もあるのだという。
「今日、蓮が戻ってきたらそこを探してみるように相談してみます」
「それがいい。上には厄介な連中が多いからな。お前は行かぬほうがいい」
天井を睨みつける琥珀の表情はとても険しい。純粋な怒りや悲しみとは違う、複雑な感情が幼い横顔に滲んでいた。
それは小鈴やほかの精霊たちに向ける表情とはまるで違うもので、雪花は思わず問いかけた。
「……どんな道具がしまわれているのですか?」
声に出してすぐにしまったと口を押さえるが、琥珀は特に気を悪くした様子はない。
ううんと悩ましげな声を上げて腕組みをすると、困ったように眉を下げた。
「憐れな連中ばかりだな。本来ならば我らのように存在できたはずなのに、人を憎んだがゆえに歪んでしまった。粗末に扱われたり、持ち主の負の心をすべて吸い尽くして生まれたりなど、経緯はそれぞれに異なるが……悲しいことだ」
絞り出すような琥珀の声に、雪花は目を伏せる。
(負の心)
注がれたのが愛でなかったがゆえに、歪んでしまった道具たち。
(もし、ひとつ間違えば私も……)
焔家に嫁ぐことなく、あのまま後宮で暮らし続けていたら、雪花の悲しみが歪んだ道具を生み出していたかもしれない。そんな想像が心をよぎる。
「どうにかして癒やしてはやれないのですか」
「難しいだろうな。連中のほとんどは、生まれが歪んでいる」
切なげに首を振る琥珀に、雪花が目を伏せる。
そのときだった。
「――またくだらぬ話をしておるな」
突然、聞いたことのない声が広間に響き渡る。
「え?」
「水鏡!」
鋭い声を上げた琥珀が、さっと雪花を庇うように両手を広げる。
(水鏡? どこかで……)
聞き覚えのある名前に雪花は瞬きながら琥珀の先に目を向けた。
すると、階段の上から人の形をしたなにかがするすると下りてくるのが見えた。
「お前、また勝手に出てきたな」
「妾は自由な水鏡だからな。封印など無意味よ」
からからと笑い声を上げるそれは、雪花とそう年ごろの変わらぬ娘くらいの大きさをしていた。しかしその身体のすべては水でできており、ゆらゆらと揺れながら向こう側を透けて見せている。
「すぐに戻れ。さもなくばお前の本体を叩き割るぞ」
「おお怖い。そう邪険にするな。妾は小僧の伴侶を見に来ただけじゃ」
再び身体を揺らしながら笑ったそれが、真っ直ぐに雪花を見つめた。正確には、見つめているように見える。水でできた顔に明確な目はなく、目があるであろう場所がわずかにくぼんでいるだけで、その視線がどこに向けられているのか計り知れない。
「ふうむ。なるほどなるほど。ずいぶんと稀有な運命を背負った娘じゃなぁ」
声音は美しいのに、ひどく不愉快な口調だった。
「あの、あなたは……」
「ん? 妾か? 妾は水鏡。憐れな呪師が作った未来視の鏡じゃ」
「未来視……? あ」
ようやく思い出したのは、かつて小鈴から聞かされた話。
――水鏡は未来を読む道具なの。
――時々出てきてね、嫌な予言をしていくの。
かつて蓮と雪花に危険が迫っていると予言した道具ではないだろうか。
そしてその予言を聞いた直後、呪われた刀が届き、大変な騒動が起きたのだ。
うなじの毛がぞわりと逆立つのを感じた。
「妾のことを知っているのかえ? なんじゃつまらぬ……おや?」
水鏡が語尾を上げ、どこか嬉しそうに身体をくねらせる。
「ほうほう、なんとまぁ……」
ずいずいとこちらに近づいてくる水鏡に、雪花は思わず後ろに下がる。
「やめよ! 雪花になにかすれば、蓮に本当に壊されるぞ」
「妾はなにもせぬ。ただ告げるだけじゃ」
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