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3巻 雪解けは枯木に愛の花咲かす
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序章
風に混じる新緑の匂いが心地いい。
この頃は一日を通して過ごしやすくなってきたし、そろそろ夏用の衣を仕立てるべきだろうかと考えながら手巾を洗っていた雪花は、隣の部屋から聞こえてきたか細い泣き声に手を止めた。
「あらあら」
ふにゃふにゃとした仔猫のような声はだんだん強さを増している。
慌てて水から上げた手を乾いた布で拭いてから駆けつけると、籐づくりのゆりかごがゆらゆらと揺れていた。
「母上、林杏が」
困り果てた顔でゆりかごを覗き込んでいるのは翠だ。今年の春で九つになり顔立ちからは幼さが抜けたものの、その横顔はまだあどけない。
「もう、お昼寝から起きてしまったのね。翠、ありがとう」
翠の頭をひと撫でしてから、雪花はゆりかごの中へ両手を入れて小さな身体を優しく抱き上げる。
「泣かないで林杏。母が来ましたよ」
顔を真っ赤にしてぐずっているのは、昨秋に生まれた蓮と雪花の娘である林杏だ。
真っ白な肌と小さな唇は雪花に、黒曜石のような黒い瞳は蓮によく似ている。
生まれたときはあまりに小さくてちゃんと育つか不安だったが、半年を過ぎた今では赤子らしくふっくらして可愛いばかりだ。
「よしよし、林杏。よいこ、よいこ」
とんとんと背中を叩きながら揺らしてやると泣き声が弱まり、強ばっていた頬が緩む。
最近では家族の見分けがつくようになったのか、雪花や蓮が抱き上げると反応することが増えてきた。
「僕では泣き止まなかったのに」
しゅんとした声を上げる翠の表情が今度は曇る。翠は林杏をとても可愛がってくれている。
林杏を身籠もったとき、本当は少しだけ不安もあった。
複雑な生い立ちの翠は、雪花と蓮の間に生まれる子どもに対してどんな気持ちを抱くのだろうと。
だが、身籠もったことを告げたその日から今日まで翠はずっとそれを喜んでくれたし、雪花や林杏を慈しんでくれた。
あまりにも聞き分けがよすぎて、逆に心配になるくらいだ。
「きっと抱っこしてほしかったのよ。翠にはまだちょっと難しいから」
「僕、早く大きくなりたい。そしたら母上の代わりに林杏をいっぱい抱っこしてあげるね」
「ふふ、ありがとう」
まだまだ小さな頭を撫でると翠は嬉しそうに目を細める。
「おや、もう泣き止んだのか」
「父上!」
翠が嬉しそうな声を上げ、子ども部屋に入ってきた蓮に飛びつく。
「泣き声が聞こえたから勇んで来たのに残念だ」
「まあ」
おどけて肩をすくめてみせる蓮に、雪花は声を上げて笑った。腕の中の林杏はきょときょととせわしなく目を動かしている。
「ほらほら、父さまが来ましたよ」
娘の心を察して、雪花は蓮の腕に林杏をそっと受け渡した。すると小さな顔をくしゃりとさせた林杏が両手をぱたぱたと動かした。
どういうわけか林杏は、母である雪花よりも父である蓮が好きなようで、夜でさえ蓮が抱くだけで泣き止むことが多くあった。
「よしよし。また重たくなったか」
蓮もまた自分を好いてくれる娘が可愛くて仕方がないのだろう。愛しげに目を細め、小さな身体を上下に優しく揺らしてやっている。
「今朝も抱いていたではありませんか」
「子どもは瞬きする間に育つと言うからわからないぞ」
どこまで本気かわからない口調の蓮に、雪花は翠と顔を見合わせ、それから笑った。
宗国・先帝の公主だった雪花が道士である焔蓮のもとに嫁いでから、早いもので四年の月日が流れた。
雪花を後宮から逃がすためのいつわりの婚姻だったはずなのに、ともに過ごす中で想いを通わせ合い本当の夫婦となり、今に至る。
人の縁とはつくづくわからないものだと思う。
奇妙な縁でふたりの養子となった翠は、焔家に来たときは幼児に見えるほど痩せ細っていたのに、今では年相応の少年らしい体格になった。
蓮と雪花を父母と慕ってくれる姿にはなんの憂いも感じられず、林杏を愛でる表情には深い情が見える。
健やかに育つ姿を目にするたびに、雪花の胸の奥はじわりと熱を持った。
焔家の精霊たちも、翠や林杏を大切にして愛してくれている。
誰ひとり欠けることなど許されないほど満ち足りた日々だった。
***
「ふう……」
子どもたちを寝かしつけ、夫婦の寝室で髪をほどいた雪花は愁いを帯びた溜息をこぼした。
鏡台の上には一通の文が置かれていた。
「どうした……ああ」
心配そうに近づいてきた蓮が、雪花の視線の先にあった文を見て、困ったように眉根を寄せる。
「そろそろ返事をするべきだな」
「……行くべきなのはわかっているのです」
雪花はわずかに目を伏せる。
その文は、ひと月ほど前に届いた。皇城に里帰りをしないかという普剣帝からの誘いがしたためられている。
発端は、宗国を治める普剣帝が、新年の祝いを機に後宮に妃を迎え入れたことだ。
父である先帝が享楽に耽り政をおろそかにしたことを嘆いた普剣帝は、己の治政が安定するまでは妃を迎えないと宣言していたのだ。即位から数年。ようやくそのときが来てくれたことに、家臣や国民たちは胸を撫で下ろしていることだろう。
雪花もまた、やっと妃を迎えた普剣帝の決断に安堵し、喜んでいた。
(お父さまにはどうか幸せになってほしい)
ふたりと蓮以外誰も知らないことだが、普剣帝は雪花の実の父親だ。
先帝の女官だった雪花の母とまだ皇子だった普剣帝は恋に落ちたが、先帝の寵妃だった麗貴妃の策略により、母は先帝の手に落ちてしまったのだ。
すでにその身に宿っていた雪花もまた先帝の娘として生まれ、雪花の母は後宮で虐げられながら命を落とした。
終ぞ、家族として過ごすことが許されなかったが、雪花は普剣帝が母と自分をなにより大切にしてくれたことを知っている。
そして、普剣帝が今でも雪花の母だけを深く愛していることも。
一度だけ、普剣帝から雪花を正式に娘にしたいと提案されたことがあった。
『お父さま。私が最初の公主とわかれば、またいらぬ争いが生まれます。どうか、このままで。母さまもきっとそれを望んでいます』
事実がつまびらかになれば、雪花は現帝の公主としての地位を得るが、母はまた辱めを受けることになる。
普剣帝は悲しげではあったが雪花の意思を汲んでくれ、今でもふたりは兄妹のままだ。
本来、嫁入りした公主がわざわざ後宮に里帰りすることは珍しい。だが。
「陛下にしてみれば林杏は初孫だからな。早く顔が見たいのだろう」
妃を迎えるまでは頻繁に焔家に足を運んでいた普剣帝だが、妃を迎えることが決まってからはなにかと慌ただしく、林杏の顔をまだ見られていないのだった。
可愛い盛りである林杏の姿を見たいと願うのは当然だとは思う。
難しいことはなにもない。皇城に上がり、普剣帝に謁見すればいいだけなのに、ぐずぐずと返事を先延ばしにしたまま今日まで来てしまっていた。
「後宮は、君がいた頃からずいぶんと様変わりした。俺や翠もともに行くのだ。なにも恐れることはない」
蓮の口調からすると、彼は雪花が後宮への恐怖から里帰りを迷っていると思ったのだろう。
仕事で皇城に足を運ぶことが多い蓮は、今の後宮を知っている。言葉を尽くして不安を取り除こうと考えているらしい。
「それに、君も母上に挨拶をしたいだろう?」
蓮の言葉に、雪花は目を伏せる。
雪花の母は皇帝を恨んだ男の手により命を奪われ、いくつかの位を与えられて後宮の奥にある位の低い妃たちが眠る霊廟に祀られていた。だが普剣帝は、雪花が正式に蓮の妻になった祝いにと、密かに月花宮に祭壇を作り雪花の母だけを祀ってくれているという。
一度は里帰りして手を合わせたい。
ずっとそう願ってはいたが、やはり後宮での日々を思い出すとずんと心が重くなってしまう。
「あの場所には良い思い出も悪い思い出もあります。子どもたちの前で、自分が冷静でいられるのか自信がないのです」
雪花が生まれ育った月花宮。
母との幸せな日々と、ひとりで生きていた孤独な日々。あの場所にはそのふたつが詰まっている。
公主だった頃の全てが残る月花宮に、今の雪花の全てである蓮や子どもたちを招いたとき、一体自分がどう振る舞えばいいのか想像ができないのだ。
「……雪花」
蓮の大きな手が雪花を優しく抱き寄せる。
なだめるように髪や背中を撫でられ、ざらついていた心が落ち着きを取り戻していく。
たくましい胸板にもたれながら目を閉じていると、蓮が優しい声で語りかけてくる。
「君は変わった。出会った頃は、いつ消えてしまうか心配でたまらなくなるほどに弱々しくて……」
当時を思い出しているのだろう。噛み締めるような口調に昔の自分を思い出し、苦笑いが浮かんでしまう。
「でも、俺を救い、翠を救った君は、もう立派な大人の女性だ。かつての住み処に戻ったくらいで、揺らぐようなことはないさ」
「蓮……」
どうして蓮はいつも欲しい言葉をくれるのだろうか。
よりどころのなかった雪花に恋を教えてくれて、愛を与えてくれた大切な人。
「俺が一番大切にしたのは雪花だが、利普も大切な友ではある。皇帝という地位で苦しむあいつの願いを叶えてはやりたい」
それは雪花とて同じだ。
これまで雪花は与えられるばかりで、なにも返せていない。孫を見たいというささやかな願いくらいは聞くべきだと頭ではわかっている。
ただ、その一歩を踏み出す勇気が持てない。蓮は変わったと言ってくれるが、雪花の内面には弱い部分がたくさん残っているらしい。
恥ずかしくなってぐずるように蓮の身体に額を擦りつけると、頭上からくすぐったそうな声が聞こえた。
「それに、林杏を自慢したい思いもある」
「まあ」
「本気だぞ。俺は俺の自慢の家族を国中に知らしめたい」
その声があまりにも優しくて泣きたくなった。
蓮が隣にいてくれるなら大丈夫。そんな確信が湧き上がる。
「……も」
「ん?」
「私も、自慢したい」
口に出せたことで、不安な思いが消えていく。
「明日にでも返事を出します。みんなで一緒に行きましょう」
「ああ」
行くと決めてしまえば、それまで悩んでいたのが嘘のように気持ちが軽くなっていく。
「小鈴も連れていきましょう。きっと喜ぶわ」
「そうだな。本性のまま連れて歩けるように術をかけてやろう。翠にやらせてもいい」
「翠に?」
「ああ。君が想像しているよりも筋がいい。今日もひとつ、精霊との対話に成功していた」
蓮の声は珍しく弾んでおり、どこか嬉しそうだ。
翠は今、蓮に師事して道士の術を学んでいる。翠に道士の才はないと思われていたが、その身体に焔家の術を核とした呪いを宿したことがきっかけで、道士としての才能に目覚めたのだ。
蓮曰く、雪花同様にこの焔家で呪いを受けたことが影響しているのではないかということだった。
翠がその身にかけられた呪いは、焔家全てが対象だった。
呪いの発動時、蓮だけではなくこの焔家の精霊たちと一時的に魂が繋がったことで道士の力が目覚めたのではないか、と。
そんな不思議なことがあるのかと思ったが、実際に雪花自身も呪いに対し常人ではありえないほどの強い耐性をこの身に宿している。
潜在的な力だけなら、翠は龍の加護を持つ蓮と同等かそれ以上だというから驚きだ。
この焔家に数多いる精霊たちもそれは認めているらしく、翠は将来この焔家を背負って立つ立派な存在になるだろうと雪花に聞かせてくれていた。
特に、雪花の愛用している月琴の精霊である琥珀などは翠の才能に一目置いているらしく、蓮に続いてせっせといろいろなことを教えているらしい。
「翠も道士になるための努力は惜しまないと言ってくれている。それがこんなに嬉しいことだとは思わなかったよ」
かつて蓮は焔家を閉じてしまおうとさえ考えていたのに、自分の持つ知識を翠に引き継げることに深い喜びを感じているらしい。
蓮を父としてだけではなく、師として慕う翠の姿は雪花から見ていても愛らしい限りだ。
「あの子は精霊を扱う力に長けている。小鈴のように外では自力で実体化できぬ精霊とも心を通わせることができるようになれば、きっとたくさんの道が開けるはずだ」
「楽しみですね」
「ああ。そのためには小鈴に実験台になってもらわなければな」
小鈴が聞いたら怒りそうなことをさらりと言う蓮に、雪花は小さく笑ったのだった。
***
翌日、雪花は普剣帝へ、家族とともに挨拶に向かう旨を伝える手紙を書いた。
歓迎するという返事がすぐに届き、雪花たちは春の終わりの数日間を後宮で過ごすことが決まったのだった。
「私もお伴していいのですか?」
朝餉の片づけをしていた夕嵐は、目をまんまるにして驚いている。
焔家唯一の人間の使用人である彼は、呪いどころか精霊の気配すら感じることができないという特異体質である。
元々は他家に仕えていたが、その家が使用人たちを手放すと聞いて蓮が焔家に迎えたのだ。
家事の大半をこなす精霊たちと意思疎通が取れないはずなのに、なぜかそれなりにうまくやっている不思議な人物だ。蓮と雪花を主として信頼し、翠や林杏の面倒もよく見てくれる優秀な人材ということもあり、今では焔家に欠かすことができない存在となっている。
今回の後宮行きに同行させようと蓮と話し合って決めたのだ。
「ええ、お願い」
「でも、私は一応男ですよ? 翠坊ちゃんはわかるのですが、宦官でもない男の使用人が後宮に入れるのでしょうか?」
首を捻りつつも、夕嵐はどこか嬉しそうに頬を紅潮させていた。
確かに夕嵐の言う通り、後宮は女の園。
皇帝のほかには、皇族か官吏、宦官以外の男性は基本的に立ち入りを禁じられている。
「後宮は今人手不足だから、あちらで私たちの世話を焼いてくれる人がいたほうがいいだろうからと陛下が許してくださったの」
長く妃が不在だった今の後宮は、人手がいくらあっても足りない状況だという。
複雑な立場である自分に人をつけてもらうのは憚られると、雪花は蓮と相談して夕嵐を連れていくことしたのだった。
「建前上、お前は俺の弟子扱いになる」
「へぇ旦那さまの! ってことは、私は道士見習いですか?」
さすがに使用人という名目では難しいが、蓮の弟子として伴うことで許可が出た。
「それは光栄です! そういうことでしたら喜んで」
ほくほくとうなずく夕嵐に、翠が胡乱な視線を向ける。
「夕嵐は、綺麗な女官に会えるのが楽しみなんだろう?」
「おや坊ちゃん。人聞きの悪いことを言わないでください。確かに後宮というのは女の園ですからそりゃあ多少は期待しますが後宮の女性たちはすべからく皇帝陛下の花ですからね。下心などございません」
妙に早口なのが気にかかるが、夕嵐の人となりを知っている雪花に不安はなかった。
明るく裏表のない性格の夕嵐に翠はよく懐いているし、後宮の息苦しい空気の中でも雪花たちを支えてくれるだろう。
「出立は明後日だ。数日は滞在する予定だから、そのつもりで準備をするように」
「承知しました。坊ちゃん、荷造りを手伝ってくださいね」
「いいよ」
「ふたりともよろしくね」
「はい」
「お任せください」
まるで年の離れた兄弟のような気安さで会話をするふたりを見つめながら、雪花は笑みを深くする。
「蓮もありがとうございます。私のわがままに付き合ってくれて。お仕事は大丈夫でしたか?」
「気にしないでくれ。急ぎの用はない。休暇と思って、あちらではゆっくりさせてもらおう」
一時期、あらゆる依頼をこなしていたからか、道士・焔蓮の名前は今ではずいぶんと有名になった。知り合いの紹介がなければ依頼を受けないようにしているのに、絶えずなにかしらの仕事が持ち込まれている。
おかげで暮らしぶりは安定しているものの、あまり無理をしてほしくないのも本音だ。
雪花の不安をぬぐうように蓮は微笑み、何度も大丈夫だと言ってくれた。
「小鈴も! 小鈴も行く!」
そこに顔を覗かせたのは鈴の精霊である小鈴だ。
翠よりも一回り小柄な少女の姿でぴょんぴょんとちいさく跳ねながら、雪花の手を掴んでくる。
「お留守番なんてやだ。小鈴もついてきたい」
小鈴は、雪花がこの焔家に嫁いで来たときからずっとそばにいてくれた大切な家族だ。蓮の母親の輿入れ道具だった彼女は、焔家を加護する龍神の力により、人の姿を得ている。
「小鈴は雪花や翠のそばにいる」
ぷうと頬を膨らませる姿は出会ったときからなにも変わらない。
まっすぐな気性と飾らない言葉に、何度救われてきたかわからない。
翠も小鈴を友のように慕っているし、まだ喋れぬ林杏も小鈴の音色を聞くと機嫌がいい。
「もちろんよ。小鈴もついてきてくれると嬉しいわ。私の帯飾りになってくれる?」
小さな頭を撫でると、小鈴は目を輝かせて歓喜の声を上げた。
「いいの? やったあ!」
「陛下も小鈴のことは知っているでしょう? 私も小鈴が常にそばにいてくれるなら心強いわ」
自分にはこんなに愛しい家族がたくさんいる。そのことがどこまでも誇らしく、心を強くしてくれた。
きっと大丈夫。
雪花はかつて暮らした後宮へ思いを馳せたのだった。
風に混じる新緑の匂いが心地いい。
この頃は一日を通して過ごしやすくなってきたし、そろそろ夏用の衣を仕立てるべきだろうかと考えながら手巾を洗っていた雪花は、隣の部屋から聞こえてきたか細い泣き声に手を止めた。
「あらあら」
ふにゃふにゃとした仔猫のような声はだんだん強さを増している。
慌てて水から上げた手を乾いた布で拭いてから駆けつけると、籐づくりのゆりかごがゆらゆらと揺れていた。
「母上、林杏が」
困り果てた顔でゆりかごを覗き込んでいるのは翠だ。今年の春で九つになり顔立ちからは幼さが抜けたものの、その横顔はまだあどけない。
「もう、お昼寝から起きてしまったのね。翠、ありがとう」
翠の頭をひと撫でしてから、雪花はゆりかごの中へ両手を入れて小さな身体を優しく抱き上げる。
「泣かないで林杏。母が来ましたよ」
顔を真っ赤にしてぐずっているのは、昨秋に生まれた蓮と雪花の娘である林杏だ。
真っ白な肌と小さな唇は雪花に、黒曜石のような黒い瞳は蓮によく似ている。
生まれたときはあまりに小さくてちゃんと育つか不安だったが、半年を過ぎた今では赤子らしくふっくらして可愛いばかりだ。
「よしよし、林杏。よいこ、よいこ」
とんとんと背中を叩きながら揺らしてやると泣き声が弱まり、強ばっていた頬が緩む。
最近では家族の見分けがつくようになったのか、雪花や蓮が抱き上げると反応することが増えてきた。
「僕では泣き止まなかったのに」
しゅんとした声を上げる翠の表情が今度は曇る。翠は林杏をとても可愛がってくれている。
林杏を身籠もったとき、本当は少しだけ不安もあった。
複雑な生い立ちの翠は、雪花と蓮の間に生まれる子どもに対してどんな気持ちを抱くのだろうと。
だが、身籠もったことを告げたその日から今日まで翠はずっとそれを喜んでくれたし、雪花や林杏を慈しんでくれた。
あまりにも聞き分けがよすぎて、逆に心配になるくらいだ。
「きっと抱っこしてほしかったのよ。翠にはまだちょっと難しいから」
「僕、早く大きくなりたい。そしたら母上の代わりに林杏をいっぱい抱っこしてあげるね」
「ふふ、ありがとう」
まだまだ小さな頭を撫でると翠は嬉しそうに目を細める。
「おや、もう泣き止んだのか」
「父上!」
翠が嬉しそうな声を上げ、子ども部屋に入ってきた蓮に飛びつく。
「泣き声が聞こえたから勇んで来たのに残念だ」
「まあ」
おどけて肩をすくめてみせる蓮に、雪花は声を上げて笑った。腕の中の林杏はきょときょととせわしなく目を動かしている。
「ほらほら、父さまが来ましたよ」
娘の心を察して、雪花は蓮の腕に林杏をそっと受け渡した。すると小さな顔をくしゃりとさせた林杏が両手をぱたぱたと動かした。
どういうわけか林杏は、母である雪花よりも父である蓮が好きなようで、夜でさえ蓮が抱くだけで泣き止むことが多くあった。
「よしよし。また重たくなったか」
蓮もまた自分を好いてくれる娘が可愛くて仕方がないのだろう。愛しげに目を細め、小さな身体を上下に優しく揺らしてやっている。
「今朝も抱いていたではありませんか」
「子どもは瞬きする間に育つと言うからわからないぞ」
どこまで本気かわからない口調の蓮に、雪花は翠と顔を見合わせ、それから笑った。
宗国・先帝の公主だった雪花が道士である焔蓮のもとに嫁いでから、早いもので四年の月日が流れた。
雪花を後宮から逃がすためのいつわりの婚姻だったはずなのに、ともに過ごす中で想いを通わせ合い本当の夫婦となり、今に至る。
人の縁とはつくづくわからないものだと思う。
奇妙な縁でふたりの養子となった翠は、焔家に来たときは幼児に見えるほど痩せ細っていたのに、今では年相応の少年らしい体格になった。
蓮と雪花を父母と慕ってくれる姿にはなんの憂いも感じられず、林杏を愛でる表情には深い情が見える。
健やかに育つ姿を目にするたびに、雪花の胸の奥はじわりと熱を持った。
焔家の精霊たちも、翠や林杏を大切にして愛してくれている。
誰ひとり欠けることなど許されないほど満ち足りた日々だった。
***
「ふう……」
子どもたちを寝かしつけ、夫婦の寝室で髪をほどいた雪花は愁いを帯びた溜息をこぼした。
鏡台の上には一通の文が置かれていた。
「どうした……ああ」
心配そうに近づいてきた蓮が、雪花の視線の先にあった文を見て、困ったように眉根を寄せる。
「そろそろ返事をするべきだな」
「……行くべきなのはわかっているのです」
雪花はわずかに目を伏せる。
その文は、ひと月ほど前に届いた。皇城に里帰りをしないかという普剣帝からの誘いがしたためられている。
発端は、宗国を治める普剣帝が、新年の祝いを機に後宮に妃を迎え入れたことだ。
父である先帝が享楽に耽り政をおろそかにしたことを嘆いた普剣帝は、己の治政が安定するまでは妃を迎えないと宣言していたのだ。即位から数年。ようやくそのときが来てくれたことに、家臣や国民たちは胸を撫で下ろしていることだろう。
雪花もまた、やっと妃を迎えた普剣帝の決断に安堵し、喜んでいた。
(お父さまにはどうか幸せになってほしい)
ふたりと蓮以外誰も知らないことだが、普剣帝は雪花の実の父親だ。
先帝の女官だった雪花の母とまだ皇子だった普剣帝は恋に落ちたが、先帝の寵妃だった麗貴妃の策略により、母は先帝の手に落ちてしまったのだ。
すでにその身に宿っていた雪花もまた先帝の娘として生まれ、雪花の母は後宮で虐げられながら命を落とした。
終ぞ、家族として過ごすことが許されなかったが、雪花は普剣帝が母と自分をなにより大切にしてくれたことを知っている。
そして、普剣帝が今でも雪花の母だけを深く愛していることも。
一度だけ、普剣帝から雪花を正式に娘にしたいと提案されたことがあった。
『お父さま。私が最初の公主とわかれば、またいらぬ争いが生まれます。どうか、このままで。母さまもきっとそれを望んでいます』
事実がつまびらかになれば、雪花は現帝の公主としての地位を得るが、母はまた辱めを受けることになる。
普剣帝は悲しげではあったが雪花の意思を汲んでくれ、今でもふたりは兄妹のままだ。
本来、嫁入りした公主がわざわざ後宮に里帰りすることは珍しい。だが。
「陛下にしてみれば林杏は初孫だからな。早く顔が見たいのだろう」
妃を迎えるまでは頻繁に焔家に足を運んでいた普剣帝だが、妃を迎えることが決まってからはなにかと慌ただしく、林杏の顔をまだ見られていないのだった。
可愛い盛りである林杏の姿を見たいと願うのは当然だとは思う。
難しいことはなにもない。皇城に上がり、普剣帝に謁見すればいいだけなのに、ぐずぐずと返事を先延ばしにしたまま今日まで来てしまっていた。
「後宮は、君がいた頃からずいぶんと様変わりした。俺や翠もともに行くのだ。なにも恐れることはない」
蓮の口調からすると、彼は雪花が後宮への恐怖から里帰りを迷っていると思ったのだろう。
仕事で皇城に足を運ぶことが多い蓮は、今の後宮を知っている。言葉を尽くして不安を取り除こうと考えているらしい。
「それに、君も母上に挨拶をしたいだろう?」
蓮の言葉に、雪花は目を伏せる。
雪花の母は皇帝を恨んだ男の手により命を奪われ、いくつかの位を与えられて後宮の奥にある位の低い妃たちが眠る霊廟に祀られていた。だが普剣帝は、雪花が正式に蓮の妻になった祝いにと、密かに月花宮に祭壇を作り雪花の母だけを祀ってくれているという。
一度は里帰りして手を合わせたい。
ずっとそう願ってはいたが、やはり後宮での日々を思い出すとずんと心が重くなってしまう。
「あの場所には良い思い出も悪い思い出もあります。子どもたちの前で、自分が冷静でいられるのか自信がないのです」
雪花が生まれ育った月花宮。
母との幸せな日々と、ひとりで生きていた孤独な日々。あの場所にはそのふたつが詰まっている。
公主だった頃の全てが残る月花宮に、今の雪花の全てである蓮や子どもたちを招いたとき、一体自分がどう振る舞えばいいのか想像ができないのだ。
「……雪花」
蓮の大きな手が雪花を優しく抱き寄せる。
なだめるように髪や背中を撫でられ、ざらついていた心が落ち着きを取り戻していく。
たくましい胸板にもたれながら目を閉じていると、蓮が優しい声で語りかけてくる。
「君は変わった。出会った頃は、いつ消えてしまうか心配でたまらなくなるほどに弱々しくて……」
当時を思い出しているのだろう。噛み締めるような口調に昔の自分を思い出し、苦笑いが浮かんでしまう。
「でも、俺を救い、翠を救った君は、もう立派な大人の女性だ。かつての住み処に戻ったくらいで、揺らぐようなことはないさ」
「蓮……」
どうして蓮はいつも欲しい言葉をくれるのだろうか。
よりどころのなかった雪花に恋を教えてくれて、愛を与えてくれた大切な人。
「俺が一番大切にしたのは雪花だが、利普も大切な友ではある。皇帝という地位で苦しむあいつの願いを叶えてはやりたい」
それは雪花とて同じだ。
これまで雪花は与えられるばかりで、なにも返せていない。孫を見たいというささやかな願いくらいは聞くべきだと頭ではわかっている。
ただ、その一歩を踏み出す勇気が持てない。蓮は変わったと言ってくれるが、雪花の内面には弱い部分がたくさん残っているらしい。
恥ずかしくなってぐずるように蓮の身体に額を擦りつけると、頭上からくすぐったそうな声が聞こえた。
「それに、林杏を自慢したい思いもある」
「まあ」
「本気だぞ。俺は俺の自慢の家族を国中に知らしめたい」
その声があまりにも優しくて泣きたくなった。
蓮が隣にいてくれるなら大丈夫。そんな確信が湧き上がる。
「……も」
「ん?」
「私も、自慢したい」
口に出せたことで、不安な思いが消えていく。
「明日にでも返事を出します。みんなで一緒に行きましょう」
「ああ」
行くと決めてしまえば、それまで悩んでいたのが嘘のように気持ちが軽くなっていく。
「小鈴も連れていきましょう。きっと喜ぶわ」
「そうだな。本性のまま連れて歩けるように術をかけてやろう。翠にやらせてもいい」
「翠に?」
「ああ。君が想像しているよりも筋がいい。今日もひとつ、精霊との対話に成功していた」
蓮の声は珍しく弾んでおり、どこか嬉しそうだ。
翠は今、蓮に師事して道士の術を学んでいる。翠に道士の才はないと思われていたが、その身体に焔家の術を核とした呪いを宿したことがきっかけで、道士としての才能に目覚めたのだ。
蓮曰く、雪花同様にこの焔家で呪いを受けたことが影響しているのではないかということだった。
翠がその身にかけられた呪いは、焔家全てが対象だった。
呪いの発動時、蓮だけではなくこの焔家の精霊たちと一時的に魂が繋がったことで道士の力が目覚めたのではないか、と。
そんな不思議なことがあるのかと思ったが、実際に雪花自身も呪いに対し常人ではありえないほどの強い耐性をこの身に宿している。
潜在的な力だけなら、翠は龍の加護を持つ蓮と同等かそれ以上だというから驚きだ。
この焔家に数多いる精霊たちもそれは認めているらしく、翠は将来この焔家を背負って立つ立派な存在になるだろうと雪花に聞かせてくれていた。
特に、雪花の愛用している月琴の精霊である琥珀などは翠の才能に一目置いているらしく、蓮に続いてせっせといろいろなことを教えているらしい。
「翠も道士になるための努力は惜しまないと言ってくれている。それがこんなに嬉しいことだとは思わなかったよ」
かつて蓮は焔家を閉じてしまおうとさえ考えていたのに、自分の持つ知識を翠に引き継げることに深い喜びを感じているらしい。
蓮を父としてだけではなく、師として慕う翠の姿は雪花から見ていても愛らしい限りだ。
「あの子は精霊を扱う力に長けている。小鈴のように外では自力で実体化できぬ精霊とも心を通わせることができるようになれば、きっとたくさんの道が開けるはずだ」
「楽しみですね」
「ああ。そのためには小鈴に実験台になってもらわなければな」
小鈴が聞いたら怒りそうなことをさらりと言う蓮に、雪花は小さく笑ったのだった。
***
翌日、雪花は普剣帝へ、家族とともに挨拶に向かう旨を伝える手紙を書いた。
歓迎するという返事がすぐに届き、雪花たちは春の終わりの数日間を後宮で過ごすことが決まったのだった。
「私もお伴していいのですか?」
朝餉の片づけをしていた夕嵐は、目をまんまるにして驚いている。
焔家唯一の人間の使用人である彼は、呪いどころか精霊の気配すら感じることができないという特異体質である。
元々は他家に仕えていたが、その家が使用人たちを手放すと聞いて蓮が焔家に迎えたのだ。
家事の大半をこなす精霊たちと意思疎通が取れないはずなのに、なぜかそれなりにうまくやっている不思議な人物だ。蓮と雪花を主として信頼し、翠や林杏の面倒もよく見てくれる優秀な人材ということもあり、今では焔家に欠かすことができない存在となっている。
今回の後宮行きに同行させようと蓮と話し合って決めたのだ。
「ええ、お願い」
「でも、私は一応男ですよ? 翠坊ちゃんはわかるのですが、宦官でもない男の使用人が後宮に入れるのでしょうか?」
首を捻りつつも、夕嵐はどこか嬉しそうに頬を紅潮させていた。
確かに夕嵐の言う通り、後宮は女の園。
皇帝のほかには、皇族か官吏、宦官以外の男性は基本的に立ち入りを禁じられている。
「後宮は今人手不足だから、あちらで私たちの世話を焼いてくれる人がいたほうがいいだろうからと陛下が許してくださったの」
長く妃が不在だった今の後宮は、人手がいくらあっても足りない状況だという。
複雑な立場である自分に人をつけてもらうのは憚られると、雪花は蓮と相談して夕嵐を連れていくことしたのだった。
「建前上、お前は俺の弟子扱いになる」
「へぇ旦那さまの! ってことは、私は道士見習いですか?」
さすがに使用人という名目では難しいが、蓮の弟子として伴うことで許可が出た。
「それは光栄です! そういうことでしたら喜んで」
ほくほくとうなずく夕嵐に、翠が胡乱な視線を向ける。
「夕嵐は、綺麗な女官に会えるのが楽しみなんだろう?」
「おや坊ちゃん。人聞きの悪いことを言わないでください。確かに後宮というのは女の園ですからそりゃあ多少は期待しますが後宮の女性たちはすべからく皇帝陛下の花ですからね。下心などございません」
妙に早口なのが気にかかるが、夕嵐の人となりを知っている雪花に不安はなかった。
明るく裏表のない性格の夕嵐に翠はよく懐いているし、後宮の息苦しい空気の中でも雪花たちを支えてくれるだろう。
「出立は明後日だ。数日は滞在する予定だから、そのつもりで準備をするように」
「承知しました。坊ちゃん、荷造りを手伝ってくださいね」
「いいよ」
「ふたりともよろしくね」
「はい」
「お任せください」
まるで年の離れた兄弟のような気安さで会話をするふたりを見つめながら、雪花は笑みを深くする。
「蓮もありがとうございます。私のわがままに付き合ってくれて。お仕事は大丈夫でしたか?」
「気にしないでくれ。急ぎの用はない。休暇と思って、あちらではゆっくりさせてもらおう」
一時期、あらゆる依頼をこなしていたからか、道士・焔蓮の名前は今ではずいぶんと有名になった。知り合いの紹介がなければ依頼を受けないようにしているのに、絶えずなにかしらの仕事が持ち込まれている。
おかげで暮らしぶりは安定しているものの、あまり無理をしてほしくないのも本音だ。
雪花の不安をぬぐうように蓮は微笑み、何度も大丈夫だと言ってくれた。
「小鈴も! 小鈴も行く!」
そこに顔を覗かせたのは鈴の精霊である小鈴だ。
翠よりも一回り小柄な少女の姿でぴょんぴょんとちいさく跳ねながら、雪花の手を掴んでくる。
「お留守番なんてやだ。小鈴もついてきたい」
小鈴は、雪花がこの焔家に嫁いで来たときからずっとそばにいてくれた大切な家族だ。蓮の母親の輿入れ道具だった彼女は、焔家を加護する龍神の力により、人の姿を得ている。
「小鈴は雪花や翠のそばにいる」
ぷうと頬を膨らませる姿は出会ったときからなにも変わらない。
まっすぐな気性と飾らない言葉に、何度救われてきたかわからない。
翠も小鈴を友のように慕っているし、まだ喋れぬ林杏も小鈴の音色を聞くと機嫌がいい。
「もちろんよ。小鈴もついてきてくれると嬉しいわ。私の帯飾りになってくれる?」
小さな頭を撫でると、小鈴は目を輝かせて歓喜の声を上げた。
「いいの? やったあ!」
「陛下も小鈴のことは知っているでしょう? 私も小鈴が常にそばにいてくれるなら心強いわ」
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きっと大丈夫。
雪花はかつて暮らした後宮へ思いを馳せたのだった。
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