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3巻 雪解けは枯木に愛の花咲かす
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すると、ずっと眠っていたはずの林杏がぱちりと目を開け、その大きな瞳で普剣帝を見つめた。
「あ……」
初めて顔を合わせる相手に泣いてしまうのではないかと、雪花たちの間に一瞬緊張が走る。だが、それは杞憂に終わった。
林杏がまるで普剣帝に会えたことを喜ぶように声を上げて笑ったのだ。
「おお、朕がわかるか。そうか、そうか」
心から嬉しそうに笑い、普剣帝が林杏を見つめる。
「抱いてやってください」
「よいのか?」
「もちろんでございます」
だって、あなたの孫娘ですから。
口には出さずそう瞳で訴えると、普剣帝は一瞬だけ顔をくしゃりと歪め、蓮の腕から林杏を受け取った。
「なんと小さい。しかし温かく、とても力強い。この子はきっと雪花に似て美人になるぞ」
林杏をあやすように器用に抱きながら、普剣帝が頬を緩ませる。
心から林杏の存在を喜んでいることが伝わってきて、雪花まで嬉しくなってしまう。
しばらく林杏を腕から離さなかった普剣帝だが、周囲からの視線に恥ずかしくなったのか、しぶしぶという様子で蓮にその小さな身体を返した。
「呼び寄せてすまなかったな。月花宮では事足りているか」
「ええ。皆さま気を配ってくださってとても過ごしやすいです」
「なによりだ」
満足げにうなずく普剣帝の表情は穏やかだ。
「挨拶をしたか」
「……ええ」
誰に、とは聞かなくてもわかった。
「陛下のお心遣いには深く感謝しております。母も報われることでしょう」
「ああ」
噛み締めるようにうなずく普剣帝の表情から、彼がまだ母を想っていることを雪花は悟る。
麗貴妃の策略により、先帝の妃となってしまった母を普剣帝は今でも愛おしんでいる。
そのことが嬉しいと同時に、やはり少し申し訳なかった。
「……そういえば、ようやく妃を迎えられたとのこと、お慶び申し上げます」
妃という言葉に普剣帝の表情があからさまに陰った。
「朕もよい年だからな。そろそろ後継についても考えねばならぬ」
「皆さまにご挨拶してもよろしいでしょうか」
「……そうだな。ああ、ぜひそうしてくれ」
一瞬だけなにか考えた様子の普剣帝だったが、すぐに了承した。
(どうしたのかしら)
伝え聞いた話では、妃となった三名は皆、名家の出身で見目麗しいと聞く。
てっきり良好な関係を築いていると思っていたのが、違うのだろうか。
一抹の不安を抱えながら、雪花は皇太后にも挨拶に行くことを伝えた。
こちらはすぐに是と返事をしてくれる。
「母上も雪花のことを気にしていた。どうか仲良くしてくれ」
「かしこまりました」
「もっと話していたいのだが、あとが詰まっていてな。すまないが、また訪ねてきてくれ。しばらくはこちらにいるのだろう」
「お言葉に甘えて数日は滞在しようかと」
「そうか。朕も月花宮に顔を出そう。なにかあれば、すぐに拍に伝えよ」
「はい」
久しぶりの再会はあまりにも短かったが、お互いに健勝な姿を確かめられたので満足だった。
翠はまだ話したげだったが、手を引けば大人しくついてくる。
「陛下はお忙しいのですか?」
「そうね。この国をよくするためにいつもお忙しくしていらっしゃるのよ」
先帝の御代はあまりよい政治をしていたとは言えなかった。
力こそあったが、国民に圧政を強い、自分は後宮で大勢の妃をはべらせていたのだ。心証もあまりよくない。
代替わりした当初から、普剣帝には多くの期待が寄せられていたと聞く。
「陛下はとても立派な方なんだ。都だけではなく、辺境地の治水事業まで進められている。ここ数年、雨が降らずとも農作物の生産量が落ちなかったのは陛下の尽力と言えよう」
国境近くの運河付近を整備し、大きな水路を作ったことで農地の水不足はかなり解消された。
昨年は夏の暑さが厳しかったが、秋に出回った野菜や穀物の価格があまり高騰せずに済んだのはそのおかげだろう。
「すごいんですね! さすが陛下だ!」
普剣帝を慕う翠が、我が事のように誇らしげに頬を赤くさせる。
そのやりとりに周囲に控えていた文官や官吏たちまでもが嬉しそうに笑っていた。
ここは変わった。きっとこの国はもっとよくなる。
雪花は心からそう信じられた。
月花宮に戻ると、すっかり女官たちと打ち解けたらしい夕嵐が出迎えてくれた。
「夕食の食材、すごいですよ。今夜は宴です」
どうやら雪花たちが謁見をしている間に、普剣帝がいろいろと届けてくれたらしい。
「坊ちゃんの好きな花餅もありますよ」
「ほんとか」
子どもらしい歓声を上げた翠は、女官に手を引かれて奥の間へ案内されていった。
「おふたりもお休みになってください。今、お茶を持ってまいります」
「お嬢さまはこちらでお預かりしますね」
もうひとりの女官が再び寝入ってしまった林杏を蓮から受け取り、ゆりかごへ運んでくれた。
蓮と雪花は庭にある小さな石机を囲むように腰を下ろす。
間を置かず、夕嵐が茶を運んできた。
「頂き物の茶葉です。菓子を持ってきますのでお待ちくださいね」
机に置かれた湯飲みから立ち上る爽やかな香りに自然と息がこぼれる。
そんな雪花の背を、蓮が気遣わしげに撫でてくれた。
「疲れましたか?」
「少し。緊張してしまって……ああいった場でお会いすると、やはり皇帝陛下なのだな、と思います」
こっそり焔家を訪ねてくるときはもっと気安い姿だし、伴っているのも護衛の武官数名だけだ。
しかし今日は皇帝の執務室でたくさんの官吏たちに囲まれての挨拶だった。
どうしても気疲れしてしまう。
「そうですね。俺も時々忘れてしまいますが、彼は偉いんでした」
「ふふ」
芝居がかった口調に雪花は思わず笑ってしまう。
すると帯につけた小鈴も嬉しそうな音色を立てた。
「小鈴はなんと?」
「陛下が人に囲まれて偉そうで不思議だった、と」
「まあ」
精霊には人の世の理は関係がない。
地位や名誉や財産に精霊はなにも感じないのだ。
だから普剣帝が焔家を訪ねてくるとき、精霊たちはいつも気安く話しかけていた。
きっとそんな場所だからこそ普剣帝は足繁く通っていたのだろうと、おぼろげながらに思う。
「陛下に、林杏を会わせることができて本当によかった」
林杏を抱いて幸せそうに目尻に皺を作る普剣帝の姿を思い出すだけで、雪花は泣きたい気持ちになる。
自分に命を与えてくれた普剣帝に次代の姿を見せることができた誇らしさと、叶うならどうか我が子を抱いてほしいという切なる願いが綯い交ぜになる。
ようやく新たな妃を迎えたのだから、普剣帝が我が子を慈しめる日もきっと近いはずだ。
明るい未来に思いを馳せていると、夕嵐が鼻歌交じりにお茶菓子を運んできた。
「さすがに後宮ですね、頂く菓子まで高級品です」
「綺麗な月餅ね」
「はい。女官の皆さまが、持ってきてくれたんですよ」
自慢げに皿を並べる夕嵐の様子から、雪花たちが宮を空けている間にずいぶんと女官たちと打ち解けたことが伝わってくる。
明るく人好きする性格の夕嵐に女官たちもほだされたのだろう。
皇城に勤める人々は良くも悪くも、俗世とは隔絶された暮らしをしているので、夕嵐のような性格の人間は珍しいのだ。
「いろいろとためになるお話も聞きました。今、後宮では新しく入った妃のどなたが寵姫の座を射止めるかという話題で持ちきりだそうです」
「まあ」
もうそんな話まで聞き出したのかと感心していると、夕嵐は仕入れたばかりの話を自慢げに披露してくれた。
「まずおひとり目は貝天霞さま。この方は貝将軍のひとり娘で、先の戦で貝将軍が功績を挙げたことへの褒賞として後宮入りが決まったそうです。妃の中では最も若く、とても天真爛漫だそうです。お住まいは百々花宮」
百々花宮はこの月花宮からそう離れていない場所にある宮だ。庭園が最も広く、開けた明るい宮だったと記憶している。
貝将軍は、若くして軍を率いる名将で、様々な戦で活躍している人物だ。
国民からの信頼も厚く、彼がいれば宗国は安泰だと言われているほどだ。
そんな貝将軍の娘ともなれば、後宮妃になるにふさわしい身分だと言えよう。
「おふたり目は蘇水紅さま。こちらは蘇丞相のお嬢さまで、蛮族との交渉で活躍された蘇丞相への褒賞として後宮入りが決まったそうですよ。芙蓉宮にお住まいです」
「あら……貝天霞さまと理由は同じね」
「そうなんですよ」
よくぞ聞いてくれたと言うように、夕嵐が胸を反らす。
「なんでも先に功績を認められたのは蘇丞相が先だったそうなのです。水紅さまは二十五と後宮妃としては年齢が高くありますが、穏やかで聡明な方だそうで。御本人は恐れ多いと辞退したがったそうなのですが、陛下と釣り合うという数多くの後押しから後宮入りが決まったそうです。しかし、水紅さまおひとりを後宮入りさせたのでは反発が起きるからと、天霞さまも、と」
そういった力関係の絡む妃選びは昔からあった話だ。
片方だけに力が偏らぬように複数の妃を同時に入宮させることで、表向きは平等に扱っていると示すことができる。
特に軍部と政治の関係はどちらかが強くなれば、バランスが崩れてしまう。
天霞と水紅を同時に入宮させたのは英断と言えよう。
「では、もうひとりはどなたなの?」
「郭春碧さまです」
「郭……聞いたことのないお名前ね?」
国内の有力貴族の中に、郭という家門があったという記憶はない。焔家で読んだ歴史書にも出てこなかったように思う。
「郭家は隣国に本家を構える一族で、二代ほど前に宗国にやってきました。歴史は浅いですが、今は飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している豪商です」
「商家の方なのね」
「はい。私もかつては仕事をしたことがありますが、それはもうやり手ですよ」
「俺も聞いたことがある。都に大きな店をいくつも構えているな」
蓮も記憶にあるらしく、そういえばと大きくうなずく。
「以前、仕事でその店のひとつに行ったことがあるが、確かに繁盛していた」
「すごいですね」
「今の当主……春碧さまの父上が娘を後宮に入れたいと以前から嘆願していたそうなのです。なのでいっそのこと、この機会に後宮に迎えてはどうかとなったそうです。お住まいは竜胆宮になります」
なるほど、と雪花は納得する。
それほどの勢いがある豪商ともなれば、取り込んでおきたいのが本心だろう。
軍部に文官、そして豪商の娘。なんと煌びやかな妃たちだろうか。
「皆さまそれぞれに美しく、一体誰が最初に陛下のお手つきになるかと女官たちは騒いでいるそうです」
「え……」
夕嵐がこぼした言葉に、雪花が動きを止める。
なにかとんでもないことを聞いてしまった気がするし、それを頭が理解できなかった。
「待って。陛下はまだどなたのところにも足を運んでいないの?」
「そうなんですよ。もちろん挨拶は済ませてますし、昼間にお訪ねになることはあるそうなのですが、これまで一度も陛下は後宮で夜を明かしたことがないそうなんです」
思わずくらりと目眩がしそうだった。
ようやく普剣帝が妃を迎えたと安心していたのに。
「実際お忙しいようですが、そろそろ半年ですからね。皆さまずいぶんとやきもきされているようでした」
それはそうだろう。
後宮に皇帝が来ないなど、一大事だ。
誰もが世継ぎを望んでいるのに、肝心の普剣帝が動かないのであればなにも進まない。
「まあ男女の仲は人が口を出しても仕方ありませんからね。陛下にもお好みがあるのでしょう」
「知ったような口を……喋りすぎだぞ」
蓮にじろりと睨まれ、夕嵐が慌てて背筋を伸ばす。
「すみません。つい、面白くて」
「お前な……」
「後宮は女の園とは聞いてましたが、予想以上にいろいろあって面白いですね。後宮にいる間に、ひと目でもお姿を見てみたいものです」
怒られているというのに悪びれない夕嵐の態度に和みつつも、雪花はなんともいえない不安を抱えた。
(先ほど、お父さまの様子がどこかおかしかったのはそのせいなのね)
妃について話を振ったときに見せた一瞬の動揺の正体が、ぼんやりとだが見えてくる。あれは、後ろめたさから来るものだったのだ。
(お父さま……)
本来ならば早く三人の妃との間に子どもを作らなければならない。愛情ではなく、皇帝としての急務である。
普剣帝は一体なにを考えているのだろうか。
後宮に来たことで晴れたはずだった心に、わずかな雲がかかったような気がした。
***
そんな憂鬱な気持ちに拍車をかけるような出来事が起きたのは、翌日のことだった。
朝早く、蓮宛てに手紙が届いた。
真剣な表情でそれに目を通していた蓮は、手紙を畳むと長く息を吐いた。
隣でそれを見守っていた雪花は、嫌な予感がして蓮の顔をじっと見つめる。
「蓮? どうしたのですか?」
「……すまない雪花。急な仕事が入った」
ひどく申し訳なさそうな顔をする蓮に、雪花は首を振る。
道士という仕事柄、蓮でなくてはならない仕事が突然舞い込んでくることがある。
後宮に来ることが決まったときも、その可能性については話し合っていたから驚いてはいない。
だが、気にかかるのは蓮の態度だ。
「仕事なら仕方ありませんよ。なにがあったのですか?」
「少々ややこしい事態が起きた」
深刻な口調に、雪花は息を呑む。
「実は、国から命を受けて焔家が管理を任されている祠があるんだ」
そんな話は聞いたことがないと驚くと、蓮が苦いものを噛んだような顔をした。
「命を受けたのは建国の頃で、俺も話を聞いたことがある程度で詳しいことは知らないが、とても危険な道具を封印しているそうだ」
ずっと昔。もっと精霊と人が近かった時代には、今以上に強力な力を秘めた道具が存在していたという。
当時の焔家当主は時の皇帝の命を受け、その道具たちを祠に封印した。
人の手に余る道具は、破滅を呼ぶ。この国を守るために必要な措置だったと蓮は語った。
「そんなに危険なものなのですか?」
「朱柿がかつて俺たちを呪ったようなことがたやすくできるようなものもある、といえばわかるだろうか」
血が凍るような恐怖に襲われた。
あのとき、焔家の精霊たちは消滅しかけたし、蓮や翠も命を落とす寸前だった。
あんな恐ろしいことがまた起きたらと考えるだけで、身体が震える。
「この手紙は、その封印の一部が消滅したという知らせだ」
「……!」
それはとんでもないことではと青ざめると、蓮が暗い顔でうなずいた。
「祠は別の道士一族が管理していて、人が立ち入らぬように何重にも結界を張っていると聞いていたが……どういうわけか祠の内側にある封印が破壊されたらしい」
「なにがあったのでしょうか」
「警備に関わるから手紙には書けないようで、とにかく来てほしいと。それに……」
「それに?」
まだなにか悪い知らせがあるのかと雪花が表情を曇らせると、蓮が迷うように何度か口を動かしたあと、意を決したように言葉を発した。
「どうやら、道具の一部が消えているらしい」
「……!」
「封印の消滅と道具が消えたことが関連しているかは、この手紙からではわからない。だが、無関係とは思えない」
消えた道具が封印を破壊したのか、それとも何者かが道具を奪うために封印を破壊したのか。
どちらにしても恐ろしい事態だということはわかった。
「一体なにが消えたのですか」
蓮が疲れたように首を振る。
「わかりません。わかっていないのか、手紙に書けないのか……とにかく、急ぎ現地に行く必要がある。俺が聞いている限りでも、あの場所に封印されている道具は使い方次第では国を滅ぼしかねない」
いつも冷静な蓮から余裕が感じられない。
その場の空気が冷えていくような恐怖に、雪花は唾を呑み込む。
「雪花。俺は林杏たちが生きる時代を守りたい。今すぐ行かねば」
「蓮……」
決意を秘めたその横顔に、蓮の意志の固さを悟る。
「君はここに残るべきだ。俺抜きで屋敷に戻るのは危険だし、屋敷に君と子どもたちだけとなれば陛下も心配する」
「そう、ですね……」
不安がないと言えば嘘になる。
だが蓮が言うように、城の外よりも後宮内に留まっていたほうが安全だ。
以前は雪花を疎んだ麗貴妃がいたが、今の後宮は普剣帝の管理下にある。安心できることも間違いない。
「もしものときのために、小鈴に術をかけておこう」
「術、ですか?」
「会話をできるようにするのと、一度だけ人の姿に転じることができる力を込めておく。危険を感じたら小鈴に念じてくれ」
言いながら、蓮が帯飾りについた小鈴を優しく撫でた。
りん、と涼しげな音がして小鈴の本体が淡く光った。同時に、鈴の音に交ざって可愛らしい声が耳に届く。
「雪花、雪花!」
嬉しそうな声音にこちらまで気持ちが弾みそうだった。
「小鈴」
「やっとお喋りできる。嬉しいなぁ」
蓮がいなくなる寂しさがほんの少しだけ和らいだ。
優しく小鈴の本体を撫でると、蓮がその手を柔く包む。
「あ……」
初めて顔を合わせる相手に泣いてしまうのではないかと、雪花たちの間に一瞬緊張が走る。だが、それは杞憂に終わった。
林杏がまるで普剣帝に会えたことを喜ぶように声を上げて笑ったのだ。
「おお、朕がわかるか。そうか、そうか」
心から嬉しそうに笑い、普剣帝が林杏を見つめる。
「抱いてやってください」
「よいのか?」
「もちろんでございます」
だって、あなたの孫娘ですから。
口には出さずそう瞳で訴えると、普剣帝は一瞬だけ顔をくしゃりと歪め、蓮の腕から林杏を受け取った。
「なんと小さい。しかし温かく、とても力強い。この子はきっと雪花に似て美人になるぞ」
林杏をあやすように器用に抱きながら、普剣帝が頬を緩ませる。
心から林杏の存在を喜んでいることが伝わってきて、雪花まで嬉しくなってしまう。
しばらく林杏を腕から離さなかった普剣帝だが、周囲からの視線に恥ずかしくなったのか、しぶしぶという様子で蓮にその小さな身体を返した。
「呼び寄せてすまなかったな。月花宮では事足りているか」
「ええ。皆さま気を配ってくださってとても過ごしやすいです」
「なによりだ」
満足げにうなずく普剣帝の表情は穏やかだ。
「挨拶をしたか」
「……ええ」
誰に、とは聞かなくてもわかった。
「陛下のお心遣いには深く感謝しております。母も報われることでしょう」
「ああ」
噛み締めるようにうなずく普剣帝の表情から、彼がまだ母を想っていることを雪花は悟る。
麗貴妃の策略により、先帝の妃となってしまった母を普剣帝は今でも愛おしんでいる。
そのことが嬉しいと同時に、やはり少し申し訳なかった。
「……そういえば、ようやく妃を迎えられたとのこと、お慶び申し上げます」
妃という言葉に普剣帝の表情があからさまに陰った。
「朕もよい年だからな。そろそろ後継についても考えねばならぬ」
「皆さまにご挨拶してもよろしいでしょうか」
「……そうだな。ああ、ぜひそうしてくれ」
一瞬だけなにか考えた様子の普剣帝だったが、すぐに了承した。
(どうしたのかしら)
伝え聞いた話では、妃となった三名は皆、名家の出身で見目麗しいと聞く。
てっきり良好な関係を築いていると思っていたのが、違うのだろうか。
一抹の不安を抱えながら、雪花は皇太后にも挨拶に行くことを伝えた。
こちらはすぐに是と返事をしてくれる。
「母上も雪花のことを気にしていた。どうか仲良くしてくれ」
「かしこまりました」
「もっと話していたいのだが、あとが詰まっていてな。すまないが、また訪ねてきてくれ。しばらくはこちらにいるのだろう」
「お言葉に甘えて数日は滞在しようかと」
「そうか。朕も月花宮に顔を出そう。なにかあれば、すぐに拍に伝えよ」
「はい」
久しぶりの再会はあまりにも短かったが、お互いに健勝な姿を確かめられたので満足だった。
翠はまだ話したげだったが、手を引けば大人しくついてくる。
「陛下はお忙しいのですか?」
「そうね。この国をよくするためにいつもお忙しくしていらっしゃるのよ」
先帝の御代はあまりよい政治をしていたとは言えなかった。
力こそあったが、国民に圧政を強い、自分は後宮で大勢の妃をはべらせていたのだ。心証もあまりよくない。
代替わりした当初から、普剣帝には多くの期待が寄せられていたと聞く。
「陛下はとても立派な方なんだ。都だけではなく、辺境地の治水事業まで進められている。ここ数年、雨が降らずとも農作物の生産量が落ちなかったのは陛下の尽力と言えよう」
国境近くの運河付近を整備し、大きな水路を作ったことで農地の水不足はかなり解消された。
昨年は夏の暑さが厳しかったが、秋に出回った野菜や穀物の価格があまり高騰せずに済んだのはそのおかげだろう。
「すごいんですね! さすが陛下だ!」
普剣帝を慕う翠が、我が事のように誇らしげに頬を赤くさせる。
そのやりとりに周囲に控えていた文官や官吏たちまでもが嬉しそうに笑っていた。
ここは変わった。きっとこの国はもっとよくなる。
雪花は心からそう信じられた。
月花宮に戻ると、すっかり女官たちと打ち解けたらしい夕嵐が出迎えてくれた。
「夕食の食材、すごいですよ。今夜は宴です」
どうやら雪花たちが謁見をしている間に、普剣帝がいろいろと届けてくれたらしい。
「坊ちゃんの好きな花餅もありますよ」
「ほんとか」
子どもらしい歓声を上げた翠は、女官に手を引かれて奥の間へ案内されていった。
「おふたりもお休みになってください。今、お茶を持ってまいります」
「お嬢さまはこちらでお預かりしますね」
もうひとりの女官が再び寝入ってしまった林杏を蓮から受け取り、ゆりかごへ運んでくれた。
蓮と雪花は庭にある小さな石机を囲むように腰を下ろす。
間を置かず、夕嵐が茶を運んできた。
「頂き物の茶葉です。菓子を持ってきますのでお待ちくださいね」
机に置かれた湯飲みから立ち上る爽やかな香りに自然と息がこぼれる。
そんな雪花の背を、蓮が気遣わしげに撫でてくれた。
「疲れましたか?」
「少し。緊張してしまって……ああいった場でお会いすると、やはり皇帝陛下なのだな、と思います」
こっそり焔家を訪ねてくるときはもっと気安い姿だし、伴っているのも護衛の武官数名だけだ。
しかし今日は皇帝の執務室でたくさんの官吏たちに囲まれての挨拶だった。
どうしても気疲れしてしまう。
「そうですね。俺も時々忘れてしまいますが、彼は偉いんでした」
「ふふ」
芝居がかった口調に雪花は思わず笑ってしまう。
すると帯につけた小鈴も嬉しそうな音色を立てた。
「小鈴はなんと?」
「陛下が人に囲まれて偉そうで不思議だった、と」
「まあ」
精霊には人の世の理は関係がない。
地位や名誉や財産に精霊はなにも感じないのだ。
だから普剣帝が焔家を訪ねてくるとき、精霊たちはいつも気安く話しかけていた。
きっとそんな場所だからこそ普剣帝は足繁く通っていたのだろうと、おぼろげながらに思う。
「陛下に、林杏を会わせることができて本当によかった」
林杏を抱いて幸せそうに目尻に皺を作る普剣帝の姿を思い出すだけで、雪花は泣きたい気持ちになる。
自分に命を与えてくれた普剣帝に次代の姿を見せることができた誇らしさと、叶うならどうか我が子を抱いてほしいという切なる願いが綯い交ぜになる。
ようやく新たな妃を迎えたのだから、普剣帝が我が子を慈しめる日もきっと近いはずだ。
明るい未来に思いを馳せていると、夕嵐が鼻歌交じりにお茶菓子を運んできた。
「さすがに後宮ですね、頂く菓子まで高級品です」
「綺麗な月餅ね」
「はい。女官の皆さまが、持ってきてくれたんですよ」
自慢げに皿を並べる夕嵐の様子から、雪花たちが宮を空けている間にずいぶんと女官たちと打ち解けたことが伝わってくる。
明るく人好きする性格の夕嵐に女官たちもほだされたのだろう。
皇城に勤める人々は良くも悪くも、俗世とは隔絶された暮らしをしているので、夕嵐のような性格の人間は珍しいのだ。
「いろいろとためになるお話も聞きました。今、後宮では新しく入った妃のどなたが寵姫の座を射止めるかという話題で持ちきりだそうです」
「まあ」
もうそんな話まで聞き出したのかと感心していると、夕嵐は仕入れたばかりの話を自慢げに披露してくれた。
「まずおひとり目は貝天霞さま。この方は貝将軍のひとり娘で、先の戦で貝将軍が功績を挙げたことへの褒賞として後宮入りが決まったそうです。妃の中では最も若く、とても天真爛漫だそうです。お住まいは百々花宮」
百々花宮はこの月花宮からそう離れていない場所にある宮だ。庭園が最も広く、開けた明るい宮だったと記憶している。
貝将軍は、若くして軍を率いる名将で、様々な戦で活躍している人物だ。
国民からの信頼も厚く、彼がいれば宗国は安泰だと言われているほどだ。
そんな貝将軍の娘ともなれば、後宮妃になるにふさわしい身分だと言えよう。
「おふたり目は蘇水紅さま。こちらは蘇丞相のお嬢さまで、蛮族との交渉で活躍された蘇丞相への褒賞として後宮入りが決まったそうですよ。芙蓉宮にお住まいです」
「あら……貝天霞さまと理由は同じね」
「そうなんですよ」
よくぞ聞いてくれたと言うように、夕嵐が胸を反らす。
「なんでも先に功績を認められたのは蘇丞相が先だったそうなのです。水紅さまは二十五と後宮妃としては年齢が高くありますが、穏やかで聡明な方だそうで。御本人は恐れ多いと辞退したがったそうなのですが、陛下と釣り合うという数多くの後押しから後宮入りが決まったそうです。しかし、水紅さまおひとりを後宮入りさせたのでは反発が起きるからと、天霞さまも、と」
そういった力関係の絡む妃選びは昔からあった話だ。
片方だけに力が偏らぬように複数の妃を同時に入宮させることで、表向きは平等に扱っていると示すことができる。
特に軍部と政治の関係はどちらかが強くなれば、バランスが崩れてしまう。
天霞と水紅を同時に入宮させたのは英断と言えよう。
「では、もうひとりはどなたなの?」
「郭春碧さまです」
「郭……聞いたことのないお名前ね?」
国内の有力貴族の中に、郭という家門があったという記憶はない。焔家で読んだ歴史書にも出てこなかったように思う。
「郭家は隣国に本家を構える一族で、二代ほど前に宗国にやってきました。歴史は浅いですが、今は飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している豪商です」
「商家の方なのね」
「はい。私もかつては仕事をしたことがありますが、それはもうやり手ですよ」
「俺も聞いたことがある。都に大きな店をいくつも構えているな」
蓮も記憶にあるらしく、そういえばと大きくうなずく。
「以前、仕事でその店のひとつに行ったことがあるが、確かに繁盛していた」
「すごいですね」
「今の当主……春碧さまの父上が娘を後宮に入れたいと以前から嘆願していたそうなのです。なのでいっそのこと、この機会に後宮に迎えてはどうかとなったそうです。お住まいは竜胆宮になります」
なるほど、と雪花は納得する。
それほどの勢いがある豪商ともなれば、取り込んでおきたいのが本心だろう。
軍部に文官、そして豪商の娘。なんと煌びやかな妃たちだろうか。
「皆さまそれぞれに美しく、一体誰が最初に陛下のお手つきになるかと女官たちは騒いでいるそうです」
「え……」
夕嵐がこぼした言葉に、雪花が動きを止める。
なにかとんでもないことを聞いてしまった気がするし、それを頭が理解できなかった。
「待って。陛下はまだどなたのところにも足を運んでいないの?」
「そうなんですよ。もちろん挨拶は済ませてますし、昼間にお訪ねになることはあるそうなのですが、これまで一度も陛下は後宮で夜を明かしたことがないそうなんです」
思わずくらりと目眩がしそうだった。
ようやく普剣帝が妃を迎えたと安心していたのに。
「実際お忙しいようですが、そろそろ半年ですからね。皆さまずいぶんとやきもきされているようでした」
それはそうだろう。
後宮に皇帝が来ないなど、一大事だ。
誰もが世継ぎを望んでいるのに、肝心の普剣帝が動かないのであればなにも進まない。
「まあ男女の仲は人が口を出しても仕方ありませんからね。陛下にもお好みがあるのでしょう」
「知ったような口を……喋りすぎだぞ」
蓮にじろりと睨まれ、夕嵐が慌てて背筋を伸ばす。
「すみません。つい、面白くて」
「お前な……」
「後宮は女の園とは聞いてましたが、予想以上にいろいろあって面白いですね。後宮にいる間に、ひと目でもお姿を見てみたいものです」
怒られているというのに悪びれない夕嵐の態度に和みつつも、雪花はなんともいえない不安を抱えた。
(先ほど、お父さまの様子がどこかおかしかったのはそのせいなのね)
妃について話を振ったときに見せた一瞬の動揺の正体が、ぼんやりとだが見えてくる。あれは、後ろめたさから来るものだったのだ。
(お父さま……)
本来ならば早く三人の妃との間に子どもを作らなければならない。愛情ではなく、皇帝としての急務である。
普剣帝は一体なにを考えているのだろうか。
後宮に来たことで晴れたはずだった心に、わずかな雲がかかったような気がした。
***
そんな憂鬱な気持ちに拍車をかけるような出来事が起きたのは、翌日のことだった。
朝早く、蓮宛てに手紙が届いた。
真剣な表情でそれに目を通していた蓮は、手紙を畳むと長く息を吐いた。
隣でそれを見守っていた雪花は、嫌な予感がして蓮の顔をじっと見つめる。
「蓮? どうしたのですか?」
「……すまない雪花。急な仕事が入った」
ひどく申し訳なさそうな顔をする蓮に、雪花は首を振る。
道士という仕事柄、蓮でなくてはならない仕事が突然舞い込んでくることがある。
後宮に来ることが決まったときも、その可能性については話し合っていたから驚いてはいない。
だが、気にかかるのは蓮の態度だ。
「仕事なら仕方ありませんよ。なにがあったのですか?」
「少々ややこしい事態が起きた」
深刻な口調に、雪花は息を呑む。
「実は、国から命を受けて焔家が管理を任されている祠があるんだ」
そんな話は聞いたことがないと驚くと、蓮が苦いものを噛んだような顔をした。
「命を受けたのは建国の頃で、俺も話を聞いたことがある程度で詳しいことは知らないが、とても危険な道具を封印しているそうだ」
ずっと昔。もっと精霊と人が近かった時代には、今以上に強力な力を秘めた道具が存在していたという。
当時の焔家当主は時の皇帝の命を受け、その道具たちを祠に封印した。
人の手に余る道具は、破滅を呼ぶ。この国を守るために必要な措置だったと蓮は語った。
「そんなに危険なものなのですか?」
「朱柿がかつて俺たちを呪ったようなことがたやすくできるようなものもある、といえばわかるだろうか」
血が凍るような恐怖に襲われた。
あのとき、焔家の精霊たちは消滅しかけたし、蓮や翠も命を落とす寸前だった。
あんな恐ろしいことがまた起きたらと考えるだけで、身体が震える。
「この手紙は、その封印の一部が消滅したという知らせだ」
「……!」
それはとんでもないことではと青ざめると、蓮が暗い顔でうなずいた。
「祠は別の道士一族が管理していて、人が立ち入らぬように何重にも結界を張っていると聞いていたが……どういうわけか祠の内側にある封印が破壊されたらしい」
「なにがあったのでしょうか」
「警備に関わるから手紙には書けないようで、とにかく来てほしいと。それに……」
「それに?」
まだなにか悪い知らせがあるのかと雪花が表情を曇らせると、蓮が迷うように何度か口を動かしたあと、意を決したように言葉を発した。
「どうやら、道具の一部が消えているらしい」
「……!」
「封印の消滅と道具が消えたことが関連しているかは、この手紙からではわからない。だが、無関係とは思えない」
消えた道具が封印を破壊したのか、それとも何者かが道具を奪うために封印を破壊したのか。
どちらにしても恐ろしい事態だということはわかった。
「一体なにが消えたのですか」
蓮が疲れたように首を振る。
「わかりません。わかっていないのか、手紙に書けないのか……とにかく、急ぎ現地に行く必要がある。俺が聞いている限りでも、あの場所に封印されている道具は使い方次第では国を滅ぼしかねない」
いつも冷静な蓮から余裕が感じられない。
その場の空気が冷えていくような恐怖に、雪花は唾を呑み込む。
「雪花。俺は林杏たちが生きる時代を守りたい。今すぐ行かねば」
「蓮……」
決意を秘めたその横顔に、蓮の意志の固さを悟る。
「君はここに残るべきだ。俺抜きで屋敷に戻るのは危険だし、屋敷に君と子どもたちだけとなれば陛下も心配する」
「そう、ですね……」
不安がないと言えば嘘になる。
だが蓮が言うように、城の外よりも後宮内に留まっていたほうが安全だ。
以前は雪花を疎んだ麗貴妃がいたが、今の後宮は普剣帝の管理下にある。安心できることも間違いない。
「もしものときのために、小鈴に術をかけておこう」
「術、ですか?」
「会話をできるようにするのと、一度だけ人の姿に転じることができる力を込めておく。危険を感じたら小鈴に念じてくれ」
言いながら、蓮が帯飾りについた小鈴を優しく撫でた。
りん、と涼しげな音がして小鈴の本体が淡く光った。同時に、鈴の音に交ざって可愛らしい声が耳に届く。
「雪花、雪花!」
嬉しそうな声音にこちらまで気持ちが弾みそうだった。
「小鈴」
「やっとお喋りできる。嬉しいなぁ」
蓮がいなくなる寂しさがほんの少しだけ和らいだ。
優しく小鈴の本体を撫でると、蓮がその手を柔く包む。
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