天織灯(あまおりあかり)のあくまな怪盗生活〜敵の成分を奪うが何故か出会った女性の心も奪ってしまった〜

麻莉

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1章 4月~5月 新米怪盗は1歩を進む

1話 貴方の願いは何ですか?

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 ————————生きたい。



 でなければ、何のために生まれたのか分からない。
 必ず、復讐する。アイツらを1人残らず......


 S県 とある樹海


「待て!」

「逃がすな!」

 追っ手は私達を執拗しつように追い回した。
 深い深い闇の中ともいえる木々が生い茂る樹海。

 山の森、木々を分けながらひたすら逃げ続けた。
 逃亡しながらも私の心の中ではこの10年もの研究所での出来事を思い返していく。

 ある日、私達の教室に7人の黒ずくめが現れ31人の生徒が誘拐された。目を開けるとそこは白い空間だった。窓も入り口もない四角い空間。100人が入っても十分に余裕がある広さだった。
 そして、7歳も満たない子どもが突然、変な部屋に連れられたのだ。泣きじゃくる子、白い壁を叩く子が大勢居た。
 不意に壁だった場所に扉が2つ浮き彫りになり、左右に両開きになる。外から何人もの白服の人達が中に入ってくる。
 先頭に髪の毛が無い白衣を着た男、その後ろには大勢の白衣の人達。先頭の男以外は口にマスク、髪の毛1本出ないようにキャップを被っている。先頭の男は私達を見ながら、笑みを溢し大声で話した。
「おめでとう!! 私の世紀の発明の実験体に君達は選ばれた!! 光栄に思うが良い」
 この言葉を皮切りに私達は10年間、人体実験を強制的に受けさせられる。
 人間を今以上の人間に。



    『新人類計画』



 それがこの組織アイズの理念。

 ここには色々な可能性を実現できる科学者にとっては最高の環境。
 別の所では先天的に遺伝子を操作して優秀な人を育成したり、自然的・超神秘的な事象を人間に発動させる研究がされている。そして、私達が関わる研究は後天的に動植物の細胞を植え付けることでその能力を獲得できるものだった。来る日も来る日も実験の毎日。最初に植え付けられた動植物は私以外のクラスメイトは見事、様々な能力だけを受け継ぐことができた。欲をかいた博士は、2体目の細胞をクラスメイトに植え付けた。その結果一緒にいたクラスメイトは1人、また1人と化け物に成り果て、身体が耐えられなくなり突然、蒸発し人形が誕生した。1人につき2つの人形が生まれた。最初に蒸発したクラスメイトの人形を調べた結果、人形の中に植え付けた生物の魂が保有されているのが判明した。
 保有しているだけではなく、唯の人間が人形を心臓部分に押し当てることで中に入っている生物の姿に変身可能になった。
 研究員達は快挙だと喜んだが、この研究の筆頭を務めていた髪の無い博士は違った。

「違う。私が描いているものはこんなものではない。私が望んでいるのは......」

 そこから博士はクラスメイトを化け物にせずに2体目の能力だけを受け継ぎ、研究を始めた。

 しかし、どんなに実験を繰り返しても最後には化け物になり、蒸発し始め2体分の人形が誕生してしまった。

 それを何年も見てきた私を含めた残りのクラスメイトは次は自分なのかと恐怖しながら残っている者、絶望している者、渇いた者などさまざまな感情を剥き出していた。




 そして、10年後。
 60体の人形が誕生し、最後に残った私の前にこいつが現れた。

 こいつの手を取り、こいつの誘導の下、樹海と走る。

 私は息を切らしながら森を駆けていた。何処へ逃げても周りは木々に囲まれた樹海。

 鳥や虫たちの声がかき消され、1人と1体が叫びながら、走っていた。

「ちょっと、いつまで、走ればいぃいぃの......」
 私は、苦しそうに走り、隣で優雅に走っているそいつに呟いた。

「もうすぐよ。すぐそこに私の召喚主がいるわ」
 こいつは、冷静に淡々と答えた。

 黒絹のような髪。人間離れした美貌を持ち、女の私でも、息をのむ美しさ。
 肩まである髪は風に流れる度に、真夜中なのに、非常にきれいで光るような黒が周囲の風景に映えた、

 逆に、対照的に雪のような白い肌をもっていた。
 赤く、いや、もっと深い深紅のような眼が、走っている私を見ていた。大きくため息をついた。

「ハァ~ 本当に不便ね。人間の身体って......」


 そう、こいつは、人間ではない。悪魔だ。

 今、私が見ているその容姿も本来の姿ではなく、男も女も子どもも老人も何もかも自由自在らしい。
 服も魔力?なるもので変更可能とのこと。

「仕方ぁ、はぁはぁ......ないでしょう」

「まぁ、いいわ。そこを右に曲がって」

 いわれた通り、右に曲がると、「えぇ......?」
 そこには道がなく


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ」 

 私は少し急な坂から落ちる。
 運よく下に葉っぱのクッションがあり擦り傷ですんだ。

 しかし、体力も意識も限界がきており、葉っぱの中で倒れ込んだ。

「ねぇ、起きて」
 顔を上げ、ゆっくり目を開けるとそこには黒髪の女が立っている。

「追っ手は何処かに行ったわ。油断できないけどひとまず危機は去ったようね」

私達は急いで移動することにした。
「こっちよ。さぁ、行きましょう!」

「待ってよ......あぁ!?」

「どうしたの?」

「月が......」

「月? そういえば、今日は満月ね。特別珍しくもないわ」

 貴方にとっては特別じゃなくても私には違う。


「やっと......見られた......」

 私は空に向かって手を伸ばし目からは涙を流していた。

「ねぇ~」


「うん? 何?」

 私の前に透き通るような白い手が出された。

「あの部屋でも言ったけど、あなたは何を望む?」

 私は一回深呼吸して、悪魔の手を取り言った。

「決まってる————私は————」

 この日、私はこの悪魔と契約をした......



 例え、何を犠牲にしても......必ず......
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