選び取り

苺姫 木苺

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選び取りの儀式

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「わたしはなんにもない」

6年前に戻りたい。選び取りの儀式に戻りたい。戻れたら白紙なんて選ばなかった。

「ロア様は何にもなくなんかありませんよ。ちゃんと優しさや人を思いやることを持っておいでです。」

私の専属メイドのセンシアはこんな私にとても優しい。私なんて何の能力も持っていないのに。

「セシィ…私お兄様やミリーが羨ましい。お父様とお母様に愛されて…私も愛されたいの」

「ロア様…」

妹のミリーは皆から愛されてる。私もお兄様の妹、お母様とお父様の娘なのに…

「ごめんね。なんでもない」

ロアーナ・フォンハマナ公爵第1令嬢。セシィしかロアと言ってくれない。愛称を家族に呼ばれたい。無理な願いなのかな。

「ロア様!庭園にお散歩に行かれませんか?本日はとても天気が良いですし」

「ええ。そうね。いこうかな」

お散歩をして気分転換しましょう。



庭園では家族が仲良さそうにお茶会をしていた。

「………」

「あ、ロアーナ」

「どうしてここにいる?」

「珍しいね。ロアーナが庭園にいるなんて」

「お姉様?」

何にもない私はお邪魔みたいね。お兄様の剣やミリーの魔法が羨ましい。私にも何かあればこんなことになっていなかったのかな。

「どうやら私はお邪魔みたいですね。では、御機嫌よう…」

こんなことなら部屋の外に出るのではなかった。


「ロア様すみません!!私がちゃんと確認をしていれば…」

「いいのよ。セシィのせいではないわ。ただ、運がなかっただけ…運があれば、なぁ」

運を願った時体がほんわりと温かくなった気がした。




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