増幅使いは支援ができない

aaa

文字の大きさ
42 / 100
旅立ち

しおりを挟む
向き直り、樹の方へ向かう。


取りあえずなんとかなってよかったが、これはゴブリンだったからだ。


もっと強い敵であれば、無事ですまなかっただろうし、今回を教訓にして油断はもうしない……そう誓おう。


震える手を押さえながら、スタッフを背中に戻す。


一気に7匹……か、流石にキツいな。


精神的にかなりきているが、この緊張はコルナダに着くまで保たなくては。


「樹、さっきは助かったよ。ありが……」


言い終える前に、樹に手を握られる。


震える冷たい俺の手は、暖かい樹の手に包まれた。


同時に橙色の光が手を伝い、暖かい感覚が俺の体を覆う。


これは……小さい時に母親に抱き締められ

ていた時のような、そんな感覚。


幼くも暖かい記憶が宿っていきながら、体が、心が癒されていく。


気付けば手の震えも、精神の疲労も消えていた。


……無意識に、涙も一緒に流れていたのに気付いたのは少ししてからだ。


「っ!ご、ごめんな。ありがとう」


気付いた俺は手を樹の手から離し、涙を拭う。


樹の回復魔法?は凄い、『精神』まで回復出来るとはな……ちょっと強すぎるけど。


「……」


横に頭を振る樹。


「い、行こうか。今度こそゴールだ」


俺ははぐらかすようにそう言い、樹の手を引いて強引に進む。


もちろんだが、油断はしない。


それは……多分、樹もわかっているだろう。


しかし、ゴブリンの襲撃が終えると、先ほどまであった気配はなくなっていた。


森って恐ろしい……そうメモしておこう。

―――――――――――――


あれから歩いてすぐ、無事に森の出口へと出た。


その光景は、王都を出た時と同じ。


急に眩しくなり驚いたが、同時に喜びも感じる。


やっと外に出れたからな、ここからはまた普通の道だ。


地図を見れば、もうこの先を真っ直ぐいけば良いらしい。


「あー!やっと出た……残りコルナダまであともうちょっとだな、大丈夫か?」


「……」


頷く樹。中々元気そうだな。


うん、俺も負けてられない、頑張ろう!



……くるか?


おー、と樹は控えめに片腕を上へ。


「おー!」


タイミングを合わせ、俺も声を出して片腕を上げる。


読みが外れれば俺一人だけ上げて変な感じになってたが……合っていたようだ。


同時に上げて意味あるのかと言われれば困るが……士気が上がるだろう!こういうのは。


「……」


……ん?


見れば、恥ずかしそうに顔を赤くしていた。


そんな樹は、俺の手を取って前に強引に進む。


はは、ついさっきと立場が逆になってるな。



――――――――――――――――


しばらく歩いて間もなく、大きな壁、それに門が見えてくる。あと門番。


「着いた……か」


「……」


うん、樹も嬉しそうだ。


『コルナダ』。


王都に一番近い都市なだけあり、流石に王都には負けるが、大きく発展を遂げているらしい。


この街の特徴は特にないが、俺達の旅路で初めてのゴールと言っても間違いはないだろう。


うん、色々あったな……


ふと空を見れば、もう夕に染め初めていた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...