増幅使いは支援ができない

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夕の、死闘

夕の戦闘、三

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アルスは、俺へゆっくり迫り来る。

大胆不敵、この男にこれ程似合う言葉はないだろう。


「っ!」


剣が俺に迫ってくるのをなんとか弾いて、離れた。

重みが、さっきと違いすぎだ。



……駄目だろ?これじゃ。



攻めろ。防御はいらない。


スタッフで殴り付けた後、剣で防がれたスタッフを離し、顔面に蒼炎を纏った右の拳で殴りかかる。


「ぐっ!」


アルスの蹴りにより、拳を逸らされ激痛が拳を襲うが、耐える。


「らあ!」


さっき離した落下していくスタッフを左手で拾い、下から掬い上げるように叩き付ける。



――入ったか?



「そんな柔な攻撃、食らわねーよ」


俺の攻撃は、軽くあしらわれる様に弾き返される。


流石に見破られたか、まあそう上手くいくとも思ってない。



「そうでしたね」



俺は、上段へとスタッフを掲げるように構える。


俺が、一番力を入れて振れる構え。




「あ?……ははっ誘ってんのか?いいぜ、のってやる」




アルスがそう言うと、こちらへ一直線に向かって来た。


視覚を全て、剣へ注がなければ。



アルスの剣は横凪ぎに真っ直ぐ。

剣の軌道は……俺の首に向かって描かれた。





――その剣、叩き落としてやるさ。





俺はタイミングを計り、スタッフを渾身の力を込めて降り下ろした。


蒼の軌跡はアルスの刀身へ向かっていく。



「やるじゃねーの」



鈍い金属の音が響く。手ごたえありだ。



アルスの剣は、叩き落とすまでにはいかなかったが……

今僅かに、衝撃を食らって体勢を崩していた。



――ここで決める!



俺は、スタッフをもう一度上段に上げ、降り下ろす。

剣で防ぐアルス。まだまだ!

上段からの降り下ろしを繰り返す。

隙を見せない連打。流石に――



「がっ……!」



アルスは体勢を崩しているにも関わらず、剣で防いだ後に一瞬で蹴りを放ってきた。

上段に両手で掲げているため、空いている腹への直撃。

空気が逆流し、崩れ落ちそうになる。



「ほー、耐えたか」



俺の制服がアーマーとなったのか、威力が減ったのは確かだろう、直撃すれば恐らく死んでいる。

しかし服は破け、もうアーマーとしては見込めない。




だが……それがどうした?攻めるには支障はゼロだ。



俺はもう一度、剣を上段に。



「……まだやんのか、いいぜ」



誘われるように下段から切り込むアルス。


それを降り下ろしで相打つ。


片腕を離し殴る。避けられるが、片腕のスタッフを振るう。




「柔だって言ってんだろ?」




剣で弾かれたそのスタッフは、手から離れ勢いのまま遥か、上空へ。





ああ……そう来ると思ってたさ!




――俺の使えるものは、全て使う。




靴に蒼炎を付加。そのまま、『スタッフ』の元へ。



ジャンプした俺の身体は、ビルの五階程まで飛ぶ。

飛んでいくスタッフを手に取り、落下。


「ははっ、本当に面白れえ。受けてやるよ、お前の一撃」


そう告げたアルスは、剣を腰に差し腰を低く構える。

これは……居合いのような。






「『炎化』」






アルスの体が、炎に纏われる。

その炎は、腰に存在する剣へと移動し、赤く赤く燃え上がっていった。





「来いよ」





そう上空に告げた後。さらに腰を低くし、顔も下へ向ける。

何か、とてつもない攻撃が来るってのは直感で感じた。






正真正銘、これが最後。

魔力はもうないってのは、感覚で分かっているんだ。

だから、だからこそ。




――この一撃に、全てをかける!
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