地下街

阿房宗児

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作家

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執筆は順調だ。しかしなにかが足りないと感じている。そもそも作品とはなんだろうか?自分が書き連ねているもの。それは本来フィクションなもの。自分の頭のなかで考えたことを文字を用いて形にしていく。そもそも映画ワンポイイントオーとはなんなのか?単なるB級映画、単なる娯楽、自分の作品と同じくフィクション。椅子の背もたれに体を預ける。部屋の中はごみが散乱していて、嫌でも目につく。スーパーのレジ袋にごみを入れていき、壁に取り付けられたゴミ箱の蓋を開ける。蓋を開けると強力なモーター作動してレジ袋は吸引されていった。なんでもここから、地上のゴミ焼却所に直結しているらしい。
扉を叩く音。突然の訪問者。ここが黒色の区なら新型の強盗を警戒する。ドアスコープを覗く。一人の男だ。たしかこのアパートでも何度かすれちがったし、例のスーパーでも見かけたことがある。ドアを開ける。自分の口が僅かに開くが、こういうときなんて言えば忘れてしまっている。
「なんです?」
ようやく自分の口から声が出た。自分は昔から突然喋るときの声量の調整が下手だ。こういう時に出てくる声は、ひび割れていたり、不自然に声が大きいか、小さいかだ。自分はスムーズに喋れないことに狼狽を感じるが、相手はそんな自分の狼狽などおかまいなしに、小さな声で謝りながら喋り始めた。
要するにこの男は、自分がよく行くスーパーで働いているらしいが、飽きたので代わりに働いてくれないか?ということらしかった。そして自分はなぜか承諾してしまった。すると男はそのままの足で、自分をスーパーに連れていき、裏手の従業員入り口から自分を招き入れ、事務所前の壁にかけられているディスプレイのスイッチを入れて、キーボードでなにかを入力している。すると画面に一人の中年の男が映る。髪の毛は剃っており、メガネをかけ、白いシャツを着た男、画面下にヘップファムとローマ字で表記されている。うん。どうやら映画に出てきたヘップファムそのものらしい。今では転職してスーパーの本部勤務になったのだろうか?ヘップファムは男の説明を聞いていたが頷いただけだった。ヘップファムも自分もなにも言わなかった。その後簡単な引き継ぎを終えて別れた。明日から自分はここで働くらしい。

なにはともあれ、執筆という理由は持ち続けていたが、それ以外の理由があっても悪くない。だから自分はたまに働きに出掛ける。職場は近くのスーパー。あの男に紹介されたのは朝からの仕事だったが、自分の希望で夜間の管理人にしてもらった。そして後に自分はレジャー担当を専門的に行うことになる。夜間は常に一人で気分がよかった。管理人という名目だがやっているのはひたすら品出し。だがこれは、本来の仕事じゃないので、自分はよく勤務中に外出する。メモを持って、向かうのは大体バーだ。どこでもいい。白でも灰色でも黒でも。別に酔いたいわけじゃない。思案しながらメモを書き続ける。あとバーにいる住人の話も盗み聞きしながらメモにする。ここでの住人との出会いは一度っきりなことが多い。住人は流動的だし、街は広いし、それに住人の間でよく話題にされる裁判所に行ってしまう人間もいる。なかには死ぬ人もいる。一度路地で一人の人間が血を流し痙攣していた。、その上に一メートルほどの大きな猫が乗っかっていた。自分はすぐに逃げたが、その途中猫のかわいらしい咆哮を聞いた。あれじゃあ、外見は猫だが、やっていることは危険な大型動物だ。豹とかチーターとか、ライオンとか。ともかく自分は人の話を盗み聞きする。スーパーの上司であるヘップファムに話を聞きたいが、ヘップファムは自分の働きに不満を持っているようで、自分は嫌われている。こんな場所でも労働に生き甲斐を感じる人もいるのだ。ヘップファムのように。労働の根幹を失った街だというのに。大体出勤すると、他の従業員がいなくなった、がらんとした店舗の事務所で、ディスプレイにヘップファムの顔が映り、一方的な業務連絡を言い渡される。文章でもいいと思うが、ヘップファムは必ず口頭で伝えてくる。口頭の中身に前回の自分の仕事のサボり具合に関する感想も含まれている。初めて職場に来たときは指示通りに働いた。しかし自分はヘップファムのような人間じゃない。人間は生活のために、お金のために働いていたのであって、それ以外の目的で働く人間の歴史というのは、特殊な分野以外ではあまり発展していない。むしろこれからの時代は必要となる分野の話だが、いかんせん自分には興味が湧かない。テーマとしては哲学的に、教育的にこのテーマを取り扱わなければならないだろうが、自分は旧世界の頭のままだ。お金という幻想に、この街のグロテスクな光があたり、結果お金は陽光のなかで漂う幽霊、白昼の幽霊のように存在意義をなくしてしまう。だからこの街では年に一度紙幣祭というのが行われるらしい。聞いた話では世界中から集められた、様々な紙幣や硬貨によって装飾された、いくつもの山車が街を闊歩し、最後は裁判所の前に集められ、互いに思いっきり衝突しあい、最後は回転台に乗せられて火をつけられるらしい。もちろん山車を担ぐのはメデア達だ。一度見てみたいと思う。

ディスプレイにヘップファムの顔が映る。業務連絡。優先されているのは食品。食品の倉庫で必要なものを台車に乗せて補充をする。そして終わると優先順位に沿って商品の補充をする。例えば、レジャー売り場に積まれている木炭とか。木炭は3キロ、5キロ、10キロと三種類ある。毎日ちまちま補充するのは面倒なので、よく夜間に回される。売り場を確認すると、人の背丈ほどに積まれていた木炭が、子供が作る砂の山のような状態になっている。この街で木炭を必要とする目的はなんだろう?BBQ?放火?偽の聖火作り?空の台車に3キロを何十箱、5キロを何十箱、10キロを何箱。さすがに一台の台車に載らないので、台車を複数用意する。3キロの木炭なら一つの箱に六つ入っているから、一箱で24キロ、それを12箱台車に載せる。合計288キロになる。同様に5キロと10キロの木炭を載せる台車もあるから、合計0・5トンぐらいの重量になる。これを運ぶときほど台車という原始的な発明に感動する。とてもじゃないが0・5トンもの重さを持つのは人力では無理だ。半分でも無理だ。しかし一つの合板と四つの車輪と持ち手だけで、不可能なことが可能になる。そしてこれを売り場まで運んで、自分一人で陳列する。最初は食品のほうをやってからの仕事だったので、正直クタクタになった。しかし自分一人で0・5トンもの仕事量をこなしたと思うと達成感はあった。それから自分はレジャー担当になることを決めて、ヘップファムに言った。もちろんヘップファムは自分のワガママを承諾しなかったが、気に食わないなら辞めると脅した。好感を持たれるはずがない。しかしレジャー用品と一口でいっても、担当のなかにはカー用品と釣具もそこには含まれているので、結構な仕事量なのである。釣具にも興味が出てきた。もちろん釣りそのものには興味がないが、魚を相手にした商品を作る会社と、魚を釣ることに快感を覚える釣り人。そこに魚への純粋な愛情は感じられないが、魚を釣ることを子供のように楽しんでいるのだろう。しかし地下街に魚を釣る場所があるかどうかは知らない。とにかく自分は釣具用品が売れていたので、在庫を増やした。

自分の毎日は執筆とたまの出勤による労働。たまに食品売り場から酒を取ってきて一人で酒を飲んでいることもある。酒を片手に商品の手直し(ラベルを前向きにするとか)ついでに商品を見て回る。カート遊び。しかし年も年だし、一人なのでカート遊びは長くは続かない。結局自己満足できる仕事量をこなすと職場をあとにしてしまう。
自分はヘップファムを画面越しに見たときから、ある仮説を立てている。映画ワンポイントオーは、実際にここで起きたことを元に作られているのではないかと思う。ヘップファムに聞けば分かることだが、ヘップファムに直接会うのが今のところ出来ていない。ヘップファムに直接聞いても教えてくれないし、違う時間帯に他の従業員に聞いてもダメだった。ちなみに自分をここのスーパーに紹介してくれた男も、もうアパートでも見なくなった。自分は仮説を証明するために、街を歩き回り、バーに来ている酔っぱらいの話を盗み聞きする以外にも、取材をすることにしている。取材と言ってもたった一言聞くだけでいい。「ファーム社のことを知らないか?」もちろん酔っぱらいは他のことで、頭が一杯なのでほとんど収穫がない。黒い区や白い区にいる連中は、あのグロテスクな建物のなかで、白い区なら合成沈鬱剤と完全には相殺されない程度の分量の興奮剤を、混ぜて空調から流し込んでいる。ちなみに自分は、あの偽物の沈鬱剤が嫌いだ。まるであれは人工的な憂鬱で、気持ちが悪いだけなのだ。白い区の連中の言い分によると、これを吸っていたら理性的で落ち着くらしい。白い区のバーでは、ガスマスクを天井から吊るし、客はそれを着用して、直接ジャンキーのように吸い込んでいる。黒い区は沈鬱剤の代わりに数種類の興奮剤だけを利用している。もちろん地上では出回っていない薬品、違法な薬品、認可されていない薬品が中心に使われて、それぞれが好き勝手にやっている。黒い区の連中は悪いことばかり考えている。そのなかでは未来の絶叫マシーンと題された、悪趣味な遊園地の構想を練っている奴もいた。灰色の区では新ビジネスを考案しているか、商談中か、単調なルーチンワークに悦びを見出だしているか、あとは芸術家がいるかだ。ある意味始末が悪いのは、白い区の連中だ。世界を良くするために頭をしぼって考え、疲労困憊し、嘆き、落ち込んで、一人体調を悪くしている。またその中でも、過激的な連中は、議論の最中や集会、考えに没頭しすぎて、思い込みと衝動から、世界を良くするために平気で人殺しや、テロ行為を計画、実行してしまう。ある日、白い区で集会が行われていた。壇上の男がマイクに向かって喋っている。
「…つまりは私がここに手にしている「世界の常識」という本がありますが、そもそも常識というのは一体なんでしょうか?それは我々が平和に暮らしていくために、守るべきものであります。この本にはどこの地域のページをめくっても、犯罪は犯すべからずと書いてあります。しかし我々教育者が、犯罪そのものを体感、体験せずに、本の受け売りだけを、子供達に聞かせるだけで良いのでしょうか?そうです。ある意味常識というのは理想論の塊でもあります。現実に対応されていないという点については、虚構的であり、保守的なのです。最近地上の子供達に人気の科目があるようで、そこには「上手な嘘のつきかた」から「ライバルの個人情報 How to  Hacking」「相手の価値を瞬時に測る測定器の作成方法」彼等は盗撮犯が自らの衣類に隠しカメラを仕込むように、この小型化された装置を仕込み、携帯に受信し常に相手の価値を確認しながら、顔面や体を動かして、毎日生活しているようなのであります。ちょっと失礼」
男が壇上に置かれているコップの液体を飲み干す。
「つまりは、我々は常識や、その上位の良識にという殻に閉じ籠るだけではなく、この殻が禁止している事案、つまり犯罪というものを、体感、体験して、こられの長所、短所を分かりやすく、生徒に教えていくべきではないでしょうか。例えばバイク。バイクを禁止されている学校などでは、一度教員全員が私生活も含め一年間、バイクで通勤する。そのバイクも数ヵ月毎に車体を変えるべきですな。バイクと言っても、レプリカ、カスタム、ツアラー、アメリカン、オフロード、トライアル、旧車、暴走族スタイルなどと、色々ありますからな。それ以外にも…万引き、暴行、暴走、殺人、詐欺、空き巣、依存するほどの飲酒、賭博、強盗…etc…とりあえず、常識を越えてこそ、教育者の道が開かれるべきなのだと思うのです。」
会場からは拍手が鳴り、一部の過激な集団は集会所を出ていった。多分黒い区に向かうのだろう。もし運が悪ければ、全員猫にやられるだろう。もしくは化け物に。この街の創始者であり、神に忘れられた存在。それは人間も同じだ。



近頃、どこかから憂鬱の足音が聞こえる。
つまり今回の出来事は憂鬱の誘拐などではなく、単純に家出だったのだろうか?
執筆は完了した。作品は出来上がった。しかしなんのために書いたのだろうか?
嫌な夢を見た。多分、街の連中の影響を受けたからだろう。作家も街から出荷されるっていう夢。作家が意気揚々と書き終わった作品と共に裁判所に向かう。裁判所では作品と作家を、ミンチにする特殊な機械を使用して製本する。製本された本は地上に出荷される前に、二匹の化け物と所長に回し読みされる。気に入られなければ捨てられる。気に入られた作品はレールに乗せられ出荷される。レールは妊婦の腹に直結している。腹のなかで作家は推敲や校正に余念がない。しかしそれらの類いが罠となり、自らの整った形が崩れる。ノイローゼになってしまう。ようやく腹の中から出られたのに、終始ぶすっとしている。


酔っぱらって部屋に帰ってきたのは朝だった。しかしひどい頭痛がしている。冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して、ガブ飲みするが、喉っていうやつは、呼吸するみたいに開っけぱなしというわけにはいかない。水を飲んでいる最中に喉が閉じてしまう。そして水がこぼれる。口から水が伝う冷たさが気持ちよい。冷蔵庫に入りたいと思うが無理だ。風呂に服のまま入り、水をどんどん貯めればいい。しかし自分は服を着たままベッドに倒れる。服を着たまま眠るのは最低な気持ちになる。パジャマとかルームウェアは別だ。そう分かっていても服は脱げない。頭痛がしているからだ。体を丸める。気持ちが悪い。こうなってまで、どうして飲んでしまうのだろう?しかもそんな大量には飲めないのに。

今日はようやく収穫があった。それはついさっきのこと。この街の朝焼け、見ているだけで手がかじかんできそうな、薄い氷のような空が広がっている朝焼け。しかし、かじかむっていうのはイメージだ。そんなに寒くない。ここの温度は一定に保たれている。そのことについては考えたくない。なぜなら、その前に、ここは地下にあるのに、太陽が昇り、夜には月も出てる。おかしいじゃないか。だから温度のことも季節のことも考えない。話を戻そう。灰色の区で店を開けて騒いでいる連中がいた。平屋の横長の店。店名の看板はない。自分は店に入る。なかはたくさんの人が溢れ乱れている。ミラーボールがいくつもついていて、光の洪水となっていた。店のBGMはクラシック。自分はカウンターに座り、適当に注文をする。注文と言っても、なにが出来るかを聞いて、それをお願いするだけだ。店員はすらっとした、腰まで髪がある黒人。カクテルグラスが差し出される。何色かわからない液体が入っており、親切にチェリーがついている。一口飲んでみるが、既に何杯か違う店で飲んでいる自分にとっては、味とか色々分からなくなっている。両隣の客が話し込んでいた。自分は毎度のごとく盗み聞きをしている。

「なぁこんな歌って、本当にあると思うか?本に書いてあったんだ。」
「どんな歌?」
「…キュウリがあるよ。僕のズボンのなか…」
「卑猥だな。別にナスでもいいな。」
「ヘチマはやりすぎだけどな。」
「その続きは?」
「書いてない。」
「卑猥だよ。キュウリか。」


「この本の装置って一体なんだろうな?」
「粘着質な自我を持保ち、またはその殻に閉じこもることに対して、もしくは逆に、人生という私的な時間の積み重ねに対する皮肉。風刺?」
「そうかもしれない。でも最後には死ぬんだぜ」
「俺は無理だ。手術も無理だ。注射も嫌だ。」
「自殺する勇気がなかったから、こんな装置を作ったのかな?」
「そうかもしれないけど、違うと思うな。」
「どっちだよ。」
「作者じゃないと分かんないし、俺達は頭が悪いから、それくらいの理解しかできないけど、頭のいい奴なら、もっと理解できるかもな。でもそういうのが、ベラベラと得意気に喋ってたら、イライラするだろうな。」
「…俺の兄貴なら、俺達みたいなのを、理解力がない可哀想な奴等って言うんだろうな」
「お前の兄貴も得意気に喋る奴と、一緒にぶん殴ってやるよ。」
「俺は殴れないけど、邪魔もしないよ」
「弟だろ。かばってやれよ」
「嫌だよ」

カウンターから離れて店内を回ってみるが、どうにもいつものように、収穫がなく諦めようと思っていた。ここの店は珍しく沢山の女が踊っていた。そろいも揃って濃い化粧の連中だ。多分なにかのパーティーなのだろう。元のカウンターに戻る。酒というよりは、チェリーだけが食べたかった。それを店主に伝えると、店主の口から、低音の男の笑い声が聞こえてきて、オカマだと分かった。そうなると他の女も全員男かもしれない。自分はこのオカマにファーム社のことを聞いた。
「私は知らないけど、そういうことに詳しい人を知っていたわ。まぁ長いこと見てないけど。」
「どこに行けば会える?」
「本人の研究室ね。まだあればだけど。」
「教えてくれないか」 
するとどこかから、大量のオカマが「ジョゼフィーヌママー」と野太い声を出して、カウンターの向こうになだれ込んで、黒人をさらっていった。それからしばらく待ったが、ジョゼフィーヌは帰ってこないし、他の客も帰り始めたので、自分も一旦帰ることにした。

翌日さっそくバーに行ってみると、バーは閉まっていたし、ジョゼフィーヌではない男がぶつぶつ言いながら、店内から派手な装飾やミラーボールを外して、店の前に捨てていた。
「どうしたんですか?」
「俺が留守の間に、誰かが勝手に俺の店を使ったんだよ。」
「その使ってた人って誰ですかね?」
「俺が知るわけないだろ。」

せっかく手に入れた手がかりもどこへやら。自分は職場に出るのが面倒になり、もう一週間行っていない。既に求人の貼り紙がしてあるだろう。自分を紹介してくれた男のように、誰かを探すべきなのかもしれないが、自分の足はそっちには向かない。

そんなある日、黒いバーにて客が軍隊で使用する新兵器について語っていた。
「核弾頭を小型の弾頭にして、歩兵に持たせるのはどうだろう?それでテロリストの街を簡単に一掃できる。」
「バカ。その歩兵の部隊もろとも死んじゃうし…それってフォールアウトに出てきたヌカランチャーじゃん。」
「フォールアウトってなに?」
こんな簡単に核兵器の話をするのは、アメリカ人だろうと思っていたら、運悪く店内にいた日本兵の古い軍服を着た、頑固そうな爺さんがそれを聞いて激怒して、連中に決闘を申し込んでしまった。自分は成り行きで証人を頼まれ、翌日、裁判所前の広場で決闘が始まった。爺さんは旧日本軍の制服から、袴に着替えて真剣を差し、顔には白粉をぬりたくっている。人だかりができていたが、勝負は初めから見えていた。老人が刀を抜いて飛びかかったが、拳銃の凶弾の前では無力だった。自分はすぐに老人を病院に運んだが手遅れで、そのとき、急患が入ってきた。一人の黒人が担架に乗せられながら叫んでいる。「陣痛が始まったのよ。助けてちょうだい。早くどうにかして。私のベイビーを」だが、この黒人は五分も経たないうちに医者と看護婦から、緊急手術室から追い出されていた。
医者「人騒がせなオカマめ。」
オカマ「あんた、医者のくせにオカマの想像妊娠を認めないの?」
医者「うるさい。」
それはジョゼフィーヌだった。
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