約定の骸

スウ

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第一項

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ーー雨上がりの土の匂いがした。

期待に胸を膨らませて、薄ら目を開……暗い。
あれ?  バグ?
体を起こそうとして、勢いよく額をぶつけた。
痛っ……くはないか。痛覚カットされてるもんね。衝撃だけがあるってなんか変な感じ。

周りをぺたぺた触ってみる。
ゴツゴツしてる。岩肌っぽいけど、そんなに冷たくはないし、ザラザラしてる。爪で簡単に崩れる。
断定はできないけど土の中……なの?
もしかして生き埋め状態?

さっぱりわからん。

「A」

うわ! 声出したら私の声じゃない声が出た!
めっちゃしわがれた声だ。
初めてログインしたから、声帯が慣れてないだけなのかな。

「A、AAA」

ギリギリ「ア」の音に聞こえなくもない音しか出ない。
練習すれば、話せるようになるはず。何事にも根気が大事だ。
喉を絞ったり、口の形を変えてみたり。
いいよいいよ、少しずつ声が変わってきてる気がするよ私。
もう少しで話せるかも……。

「AA、A? AAA、A」

はい、アウト。30分頑張ったけど、成果はなし。
話せるかも、だなんて思った私が馬鹿でした。
自分の意思で疑問符を表現できるだけで、全く喋れない。「A」でどうやって会話すれば?
声帯死んでるよこれ。意思疎通は身振り手振りで頑張ろうね。

「AA……Aッ!?」

大きく口を開いてみたら、顎が外れた。
あばばば、ガコッていったよ今!?
私の体脆すぎ……?
なんか口の中ジャリジャリする。
それにこの舌の上に転がってる固形物ってもしかしなくても歯じゃん。
どうなってるの私。ドン引きよ。

僅かな隙間で身をよじる。
うーん狭い。それになんか息苦しい。

【酸素が少なくなっています。脱出しましょう】

び、びびびびっくりしたぁ!
急に脳内アナウンスが鳴ったから心臓が口から飛び出そうになった!
変に近未来なのやめてよね……私の豆粒な心臓にキュッてくるからさ……。

って、それよりも酸素が少なくなってるってことは、かなりマズイ状態なんじゃない?
だから息苦しかったんだ。

よし、脱出しよう。時間制限は、酸素が尽きて私が死ぬまで。死にたくないから頑張ろう。
エイ、エイ、オー。
で、脱出といってもどう脱出するの?
掘ればいい感じ?

まってまって。
そもそもどっちが上?
……。

「AAA……」

考えろ。初歩的なことだ私よ。重力だ。手を上げて、落ちた方が下。
落ち着け、落ち着け。落ち着いて土ほじろうね。

ガリガリ。
降ってきた土は横にどけて、猫の爪とぎみたいに削る。
ガリガリガリ。
お、なんか上が明るい。赤い。もう少しで地上だ!

右手を突き上げると、土壁を貫通した。
やった! 外だ! 自由だー!

せっせせっせと穴を広げて顔を出す。
うぉー! 新っ鮮な空気……だ……?

「AA……」

まず目に飛び込んできたのは徘徊するアンデッド種。肌で感じるは異様な冷気。長年放置されてきたのであろう無数に転がる欧米風な墓石。

墓場じゃん。

人が寄り付かない忘れ去られた系の。
そして私がいるのは墓の中だったのね。どうりで土臭かったわけだ。

ちょっと待てよ……墓の中ってことは……私の下敷きになってる仏様がいる……!?
それはマズイ! 祟られるぞ!
這いだせ私!

うわ、おしり引っかかった!
削れ削れ! 
今気づいたけど手の色悪くない……? 気の所為? 気の所為かも。

ふぅ……なんとか出れた。
いい汗かいたぜ。
お墓の中に顔を突っ込んで仏様の状態を確認。
あれ、いない。このお墓空っぽじゃん。焦って損したぜ。

安心したら喉乾いてきた。
どこかに飲み水ないかなぁ。湧き水とか。
キョロキョロと見渡す限り、水源地はなし。ふむ。

おもむろに、私が這い出てきたお墓に供えられていたカップを手に取る。
欠けていてかつ錆びてるけど、まあ、溜まってる水は飲めないこともなさそうな色。
枯葉は沈殿してるし、まぁ、大丈夫っしょ!
恨む仏様もいないみたいだし、グイッといっちゃえ!

一気にゴクリと行く前に、水面に私が映っているのに気がついた。
デッドってどんな見た目してるんだろ。
キャラクリの時、モンスターって見た目表示されなかったもんなぁ。
名前だけで選んだアンデッド種のお姿、ここにて、拝見いたす。

わぁ、ゾンビじゃないですか。ヤダー。
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