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104.わたくし、多分マリッジピンクでしたわ
しおりを挟む主上からの衝撃の告白を受けたわたくしは、とにかく決意致しました。
『とにかく早く入内しなければ!!!』と。
主上の御為にも、絶対に、香散見さんには御所へ戻って頂かなければならないわ。嫌な話だけれども、万が一に備えなければならないということよ。心が冷たく冷え切っていくのを感じながらも、わたくしは、とにかく、入内を早めるように必死で動くことに致しました。
そうして、わたくしと香散見さんの結婚の話は、それはもう、眩暈がするほどの速さで進んでいきましたわよ。
基本的に結婚は、夜に行うので、父上の直廬で最終的な仕度を調えてから(お化粧直しとか、諸々ですわ)、梅壺まで向かって、香散見さんと一緒の寝所で過ごして……というのが基本的な流れだ。
普通の貴族の場合だと、三日かよって三日目の朝に一緒にお餅を食べるとか色々あるのだけれど、その場合、わたくしが三日、自分のこのお邸から梅壺まで通わなくてはならない―――と思ったら、あくまで東宮や主上の場合は、その後宮に妃を迎えると言うことなので、一度入ったらそれまでと言う感じ。
なんだか、いろいろと成り行きでここまで来てしまったし、今となっては、ちゃんと香散見さんのことを愛しているので問題はないけれども、実敦親王のことも気に掛かる。
ずっと、わたくしに、心を砕いて下さったかただから。
たくさんお和歌も頂いたし、本当に愛して下さったのは、よく解っている。
あの方にだけは、婚礼のことをお教えした方が良いかしら。わたくしのことは忘れて、わたくしにして下さったように、どなたか良き女性と縁付いてくれることを、わたくしは願っている。
だから、わたくしは、祈るような気持ちで、あの方に文をしたためた。
あとになって、この時のわたくしは、正直、婚礼の仕度で浮かれていたのだった。まさか、この時に書いたこの文のせいで、あんな騒ぎになるなんて、思ってもみなかったのだから……。
とはいえ、この時のわたくしは、いままでの実敦親王の思いやりや、愛情に感謝したい……という、とても無神経なお文を、寄にもよってあの方の所へ遣わしてしまったのです。
でも、仕方がないことでしたのよ!
望まぬ形での結婚と言うことにはなりましたけれども、わたくしだって、女の子ですもの。結婚には色々と夢を見てきましたの。まさか、夫となる方が、ああいう方とは思いませんでしたけれど。
主上のご様子の大変さは、別としても、調度や衣装を整えさせて、あれやこれやと仕度をしているだけで、わたくしは、楽しくて仕方がなかったのです。
だって、一生に一度のことですもの!
そして、わたくしは、八枚襲の五衣(本来は、薄衣を五枚位重ねるので五衣というのですけれど、婚礼の時だけ、末広がりの八枚を重ねるのです)を見遣りながら、香散見さんの妃の一人になるのだと……そう言う実感がこみ上げてきて、多分、一人で盛り上がっておりました。
―――父様の直廬で、夜に入内するはずの、愛しき夫の姿を見るまでは。
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