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77.わたくしの、初めての朝ですわ

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 目が覚めたとき、わたくしは、香散見かざみさんの腕の中だった。

「良く寝てたみたいね」

 香散見さんが、割合、にやにやしているのは、わたくしの寝顔を眺めていたせいだろう。

 わたくし、そんなに、変な寝顔だったかしら。

 思わず、顔に手をやって確認するけど、わかるはずがない。

「ホント、アンタ可愛いわよね~」

 香散見さんが、わたくしの頬に口付ける。

 昨晩は、本当に、身体中、沢山の口付けを受けたのだけど、まだ、慣れない。

 恥ずかしがって身をよじると、香散見さんは、また、クスクス笑う。

「そこが、可愛いのよ」

 わたくしのうなじに顔を埋めながら、香散見さんが、言う。

「今だからいうけど、アタシ、アンタのこと、初めて見たときから、可愛い姫がいるもんだわって思ってたのよね」

「中宮さまのところへ、御挨拶に伺った時のことですか?」

 わたくしが聞くと、香散見さんは、少しばつが悪そうに、

「この邸で、花見の宴やったときよ。実質、アンタとあのバカの、お見合いみたいなもんだったから、アタシは、かなり、ふてくされてたのよ?」

 そんな話、初めて聞いたわよ!

 恥ずかしくて、でも、なんだか嬉しくて、思わず、口元が緩んで落ち着かない。

「香散見さんって、ずっとわたくしが好きでしたの?」

 わたくしは、問う。なんだか、自分の声が、妙に甘ったるい。

「んふふ、さあて、どうでしょ」

 香散見さんは、余裕の表情で笑ってから、わたくしの、耳許に、そっとささやいた。

「いま、アンタが一番好きなの。それじゃあダメ?」

 存外、低いこわね。わたくしは、昨夜囁かれた言葉を思い出して、顔が熱くなるのを感じる。

 本当に、口に出来ないくらい、いろんな、卑猥な言葉を囁かれたのよ。

 香散見さんは、手慣れてるから、良いでしょうけど!

 わたくしなんかだと、思い出しただけで、顔から火が出そうよ!

「香散見さんは、ズルい」

 わたくしは、呟いて、香散見さんの胸に、顔を埋める。

「アタシが、ズルい? 聞き捨てならないわねぇ」

 香散見さんは、ズルいもの。だって、今のことしか、教えてくれないもの。

 わたくしは、今、香散見さんに愛されているけど。

 それは、過去じゃない。

 未来じゃない。

 わたくしは、もっと、確かなものが欲しいのに。
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