1 / 13
色鉛筆と恋の話
しおりを挟む
ビビは大きな目をした赤い髪の女の子です。目は大きいけれど、顔にはそばかすがあって、髪は少し縮れていて、彼女はそれが少し残念でした。
彼女はお小遣いの入った鞄を持って村の道具屋さんへ向かいます。
お道具箱の色鉛筆の一本がかなり短くなったので、新しい物を買うことにしたのです。
本当はたくさんの色を買いそろえたいけれど、お小遣いが少ないので贅沢はできません。
お店の片隅に並べられた色とりどりの鉛筆を、ビビはうっとりと眺めました。
街で売られているような立派な色鉛筆はたくさんの種類があって、ビビの知らない名前の色もあります。
ビビが欲しいのは、少し青みがかった緑色の色鉛筆です。
ビビの憧れの人の瞳の色によく似ているからです。
ビビは、短くなった一本の他に、珍しい緑色の色鉛筆を購入しました。
ビビの憧れの彼は、街からやって来た年上の男の人です。
時々村の通りですれ違う彼は、いつも忙しそうに荷物を運んでいます。
ズボンは汚れていて、シャツはシワが寄っていて、悲しそうな困り果てたような顔をしています。
ビビは学校が終わるとスケッチブックを持って散歩に出かけます。遠くを眺めたり絵を描いている時に、彼が仕事をする様子を見かける事がありました。
一度だけ誰かに怒られているのも見たことがあります。
その時ビビは落ち込む彼を慰めてあげたいと思ったのでした。
でも彼女は子供で、まだ彼の視界には入っていません。
私がもう少し大きくなったら、お話してみたいな、とビビは思っていました。
彼女の目には、世界はとてもきらきらしていて美しく映ります。
彼の緑色の瞳には、世界がどんな風に見えているのか聞いてみたかったのです。
ビビは買ったばかりの色鉛筆を持って、村の広場に出かけました。
村の絵をスケッチしようと木の椅子に腰掛けた時、彼の姿を見かけました。
いつもと様子が違います。荷物も運んでいません。手には小さな花を持っていました。
ビビはスケッチブックを片手に彼を追いかけました。
幸い、彼は角を曲がったすぐ傍の小さな家の前で立ち止まりました。
お花の咲いた小さな庭がある可愛い家です。
彼が呼び鈴を鳴らすと、中から女の人が出てきました。まっすぐな髪をリボンで結わえた優しそうな大人の女性です。
彼はいつもの困り顔で、たどたどしく彼女にお花を渡しました。彼女はそれを受け取ります。
お花の香りをうっとりとかいだ彼女は彼を見つめ、二人はそっとキスをしました。
そして二人で小さな家の中に入ってしまいました。
彼を慰めてあげられるのは、私じゃなかったんだ、とビビは思いました。
不思議な胸の痛みがありました。彼のことは好きだったけれど、キスをしている二人はとても美しくて、まるで一枚の絵のように見えたのです。
村の広場に戻ってきたビビは、木の椅子に腰掛けてスケッチブックを開きました。
描かれているのは村の広場と家と山々、行き交う村人達。
その中に描きかけの彼の姿もありました。
ビビは、それ以上彼を描くのは止めておきました。この先も彼の目を彼女の持つ緑色で彩ることはないでしょう。
ビビがもう少し大きくなった時、赤い縮れた髪とそばかすのある顔は彼女の魅力になって、彼女に焦がれる人が現れるのですが、彼女はまだそれを知りません。
涙でにじんだスケッチブックを閉じ、彼女は帰路につきました。
それでも彼女の目にはまだ、世界はきらきらと色鮮やかに美しく輝いているのでした。
彼女はお小遣いの入った鞄を持って村の道具屋さんへ向かいます。
お道具箱の色鉛筆の一本がかなり短くなったので、新しい物を買うことにしたのです。
本当はたくさんの色を買いそろえたいけれど、お小遣いが少ないので贅沢はできません。
お店の片隅に並べられた色とりどりの鉛筆を、ビビはうっとりと眺めました。
街で売られているような立派な色鉛筆はたくさんの種類があって、ビビの知らない名前の色もあります。
ビビが欲しいのは、少し青みがかった緑色の色鉛筆です。
ビビの憧れの人の瞳の色によく似ているからです。
ビビは、短くなった一本の他に、珍しい緑色の色鉛筆を購入しました。
ビビの憧れの彼は、街からやって来た年上の男の人です。
時々村の通りですれ違う彼は、いつも忙しそうに荷物を運んでいます。
ズボンは汚れていて、シャツはシワが寄っていて、悲しそうな困り果てたような顔をしています。
ビビは学校が終わるとスケッチブックを持って散歩に出かけます。遠くを眺めたり絵を描いている時に、彼が仕事をする様子を見かける事がありました。
一度だけ誰かに怒られているのも見たことがあります。
その時ビビは落ち込む彼を慰めてあげたいと思ったのでした。
でも彼女は子供で、まだ彼の視界には入っていません。
私がもう少し大きくなったら、お話してみたいな、とビビは思っていました。
彼女の目には、世界はとてもきらきらしていて美しく映ります。
彼の緑色の瞳には、世界がどんな風に見えているのか聞いてみたかったのです。
ビビは買ったばかりの色鉛筆を持って、村の広場に出かけました。
村の絵をスケッチしようと木の椅子に腰掛けた時、彼の姿を見かけました。
いつもと様子が違います。荷物も運んでいません。手には小さな花を持っていました。
ビビはスケッチブックを片手に彼を追いかけました。
幸い、彼は角を曲がったすぐ傍の小さな家の前で立ち止まりました。
お花の咲いた小さな庭がある可愛い家です。
彼が呼び鈴を鳴らすと、中から女の人が出てきました。まっすぐな髪をリボンで結わえた優しそうな大人の女性です。
彼はいつもの困り顔で、たどたどしく彼女にお花を渡しました。彼女はそれを受け取ります。
お花の香りをうっとりとかいだ彼女は彼を見つめ、二人はそっとキスをしました。
そして二人で小さな家の中に入ってしまいました。
彼を慰めてあげられるのは、私じゃなかったんだ、とビビは思いました。
不思議な胸の痛みがありました。彼のことは好きだったけれど、キスをしている二人はとても美しくて、まるで一枚の絵のように見えたのです。
村の広場に戻ってきたビビは、木の椅子に腰掛けてスケッチブックを開きました。
描かれているのは村の広場と家と山々、行き交う村人達。
その中に描きかけの彼の姿もありました。
ビビは、それ以上彼を描くのは止めておきました。この先も彼の目を彼女の持つ緑色で彩ることはないでしょう。
ビビがもう少し大きくなった時、赤い縮れた髪とそばかすのある顔は彼女の魅力になって、彼女に焦がれる人が現れるのですが、彼女はまだそれを知りません。
涙でにじんだスケッチブックを閉じ、彼女は帰路につきました。
それでも彼女の目にはまだ、世界はきらきらと色鮮やかに美しく輝いているのでした。
0
あなたにおすすめの小説
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる