20 / 20
20
しおりを挟む
それからしばらくの間、穏やかな日々が続いた。
大学に行き、バイトをして、休みは以前のように康哉と遊びに出かける。前と違う所はそれにエロがくっついてくるようになったことだ。
もともと友人だからか、ためておくのが苦手だからなのか、俺は言いたいことは全部康哉に言うことに決めた。
例えば、翌日が学校だから腰が痛いのは困るから今日はエロ無しとか。そういう時も、康哉は怒らずにちょっとエロいマッサージ程度にとどめてくれたし、お前に遠慮せず他の男友達と会うと言った時は、その後相当激しく抱かれたけど、無理強いとか痛みを伴う行為は無かったし、友達に会っても何も言われなかった。
それに休みで一緒に遊ぶときは本当に楽しかった。動物園に行ってラクダやタヌキを見たり、異世界の地図を眺めて行ったことのない場所の話を聞いたり、真夜中にドライブに行ったり。
不思議なのは、康哉と一緒にいると心霊現象に遭遇しないということだ。俺が怖い目に会うのは決まって一人でいるときで、康哉と一緒にいればなんの現象も起きなかった。
***
康哉が海外移住の話を切り出したのは大学も一年が過ぎようとした時だった。
「移住!?」
「そうなんだ」
「ええ? どこに?」
話を聞けば康哉は、大学を卒業したら海外に移住しようと思っていたらしい。それもアジアだ。
「希望はタイかシンガポール、その辺りならどこでもいいな」
「何で?」
潔癖性の康哉が? それとも俺が思っているだけで、タイってかなり綺麗な国なのか?
「似てるんだ。俺が異世界で過ごした風景と。だから移住しようと思ってる。希少動物を保護する仕事に就きたい」
俺の知らない間に、康哉はいろいろと考えていたらしい。
「だからさ、修平」
「え?」
「一緒についてきてくれ。俺の人生の……パートナーになって欲しい」
康哉に言われて呆然とした。
「お前の、結婚して幸せなサラリーマンになるっていう夢は叶えてやれそうもないけど。考えておいてくれよな」
康哉は返事は急がないと言った。
それで二人でその年の正月休みに、タイとシンガポールに旅行に行くことにした。
初めてのタイは暑くて、異世界の気温とは違っていたけど、それでも桃花村近くの森で巨大植物を眺めていた時の気持ちを思い出した。夜のシンガポールはかなり楽しかったし、タイの遺跡や大きな河を見ていると不思議と癒された。
康哉もずっと何かを考えているみたいだった。それは王宮で別れた半獣達の事だろうか。
「康哉……」
夜中に誰も知り合いのいない国の通りを歩きながら、康哉の名前を呼ぶと、いつもと変わらない笑顔で振り向いてくれる。
「どうした? 修平」
返事の代わりにキスをする。
性格はいろいろあれだけど、それは俺も同じだ。そんな俺でも一緒にいたいと康哉が言ってくれるんだから、それに応えたい。
大学を卒業したら、一緒に海外についていこう。まだ話すのはもう少し後にしようと思うけど、多分この先もどこまでも一緒だ。
さようなら、異世界のみんな。もう会えないと思うとどうしようもなくさみしいけれど、どうか元気で。
俺は康哉の手を握り、二人で賑やかな雑踏に紛れこんだ。
おわり
大学に行き、バイトをして、休みは以前のように康哉と遊びに出かける。前と違う所はそれにエロがくっついてくるようになったことだ。
もともと友人だからか、ためておくのが苦手だからなのか、俺は言いたいことは全部康哉に言うことに決めた。
例えば、翌日が学校だから腰が痛いのは困るから今日はエロ無しとか。そういう時も、康哉は怒らずにちょっとエロいマッサージ程度にとどめてくれたし、お前に遠慮せず他の男友達と会うと言った時は、その後相当激しく抱かれたけど、無理強いとか痛みを伴う行為は無かったし、友達に会っても何も言われなかった。
それに休みで一緒に遊ぶときは本当に楽しかった。動物園に行ってラクダやタヌキを見たり、異世界の地図を眺めて行ったことのない場所の話を聞いたり、真夜中にドライブに行ったり。
不思議なのは、康哉と一緒にいると心霊現象に遭遇しないということだ。俺が怖い目に会うのは決まって一人でいるときで、康哉と一緒にいればなんの現象も起きなかった。
***
康哉が海外移住の話を切り出したのは大学も一年が過ぎようとした時だった。
「移住!?」
「そうなんだ」
「ええ? どこに?」
話を聞けば康哉は、大学を卒業したら海外に移住しようと思っていたらしい。それもアジアだ。
「希望はタイかシンガポール、その辺りならどこでもいいな」
「何で?」
潔癖性の康哉が? それとも俺が思っているだけで、タイってかなり綺麗な国なのか?
「似てるんだ。俺が異世界で過ごした風景と。だから移住しようと思ってる。希少動物を保護する仕事に就きたい」
俺の知らない間に、康哉はいろいろと考えていたらしい。
「だからさ、修平」
「え?」
「一緒についてきてくれ。俺の人生の……パートナーになって欲しい」
康哉に言われて呆然とした。
「お前の、結婚して幸せなサラリーマンになるっていう夢は叶えてやれそうもないけど。考えておいてくれよな」
康哉は返事は急がないと言った。
それで二人でその年の正月休みに、タイとシンガポールに旅行に行くことにした。
初めてのタイは暑くて、異世界の気温とは違っていたけど、それでも桃花村近くの森で巨大植物を眺めていた時の気持ちを思い出した。夜のシンガポールはかなり楽しかったし、タイの遺跡や大きな河を見ていると不思議と癒された。
康哉もずっと何かを考えているみたいだった。それは王宮で別れた半獣達の事だろうか。
「康哉……」
夜中に誰も知り合いのいない国の通りを歩きながら、康哉の名前を呼ぶと、いつもと変わらない笑顔で振り向いてくれる。
「どうした? 修平」
返事の代わりにキスをする。
性格はいろいろあれだけど、それは俺も同じだ。そんな俺でも一緒にいたいと康哉が言ってくれるんだから、それに応えたい。
大学を卒業したら、一緒に海外についていこう。まだ話すのはもう少し後にしようと思うけど、多分この先もどこまでも一緒だ。
さようなら、異世界のみんな。もう会えないと思うとどうしようもなくさみしいけれど、どうか元気で。
俺は康哉の手を握り、二人で賑やかな雑踏に紛れこんだ。
おわり
47
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―
たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。
以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。
「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」
トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。
しかし、千秋はまだ知らない。
レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
とあるΩ達の試練
如月圭
BL
吉住クレハは私立成城学園に通う中学三年生の男のオメガだった。同じ学園に通う男のオメガの月城真とは、転校して初めてできた同じオメガの友達だった。そんな真には、番のアルファが居て、クレハはうらやましいと思う。しかし、ベータの女子にとある事で目をつけられてしまい……。
この話はフィクションです。更新は、不定期です。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
marukoさんお久しぶりです!元気ですか?
この短編は私にしては早い速度で(三日くらい?)で書いたので、わりと最近まで書いたことを忘れてました!
でも読み返してみたら、康哉の気持ちも修平の気持ちもよく分かって楽しくて、自分がご褒美をもらった気分になりました。
康哉はいつも不憫なキャラだったので、幸せにしてあげられて良かった(でも半獣バージョンのハッピーエンドは完結してないですが…)
こんなエンドももしかしたらあったかも、と感慨深いお話です。いつも読んでくださってありがとうございました。
最後までお読みいただきありがとうございます😊
異世界転生前にくっついていたら切なさのないエンディングになると思い、転生前のエンディングも少し考えてんですが、結局こっちになりました。不憫な康哉を幸せにできて良かったです。ありがとうございました。
本編も、アニキ編も好きで何度も読み返して楽しませていただいてます( *´꒳`* )
帰ってきてからの喪失感と切なさが…それでも日常を送らなくちゃいけない複雑な気持ちですね( ´ㅁ` ; )
幸せになって!!
ありがとうございます😊
本編を書く時は康哉が苦手だったんですが、この番外編を書いて好きなキャラになりました。アニキ編も(ちょっと止まってますが)頑張ります!