好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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一年ぶりの異世界

7 俺も出してたよ

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 飛竜は上空を旋回して、王宮の高層階に消えていった。
 今なら会えないかな。無理か。

 異世界に来た直後の楽しい気持ちが、急速にしぼんでいくのを感じていた。
 一人でいるのは少しも苦じゃない俺のはずなのに。……さみしい。

 俺はため息をつくと、噴水広場を後にした。

***

 王宮の2階部分にはたくさんの店が並んでいた。王宮の3階までは、一般の観光客も入れるからか、お土産を買う観光客で賑わっている。
 ファン達が買った飛行部隊グッズや観光ガイドブックの異世界語バージョンもある。こういう売り上げもラキ王国の資金になっているんだろうな。
 ルーシェンも稼ぐな。
 俺もちょっとだけルーシェンのイラスト欲しくなってきた。部屋にはってたら引くかな。いや、王子様なんだから大丈夫だろ。忠誠心の現れだ。

 それから夕方まで王宮をぶらついて、飛竜の石像の位置も把握した。
 実際に下から見上げるとかなり大きい。
 先客がいなかったので、尻尾によじ登って寝転がってみた。太い尻尾は程よく平らで、カーブしていて、人一人寝ても充分な大きさがある。
 眺めも最高だ。
 夕暮れに染まる王都の風景が目の前に広がっている。石像の飛竜なら酔わないからいいな。

 そのまま俺は眠ってしまったらしい。
 気がつくと辺りはすっかり暗くなっていた。寝過ぎた。ちょっと体が痛い。

 体を起こすと、近くでボソボソと誰かが話している声が聞こえる。

「……あっ、ダメだって……こんな所じゃ」
「いいだろ?お前だって見られている方が興奮するって」

 声のする方(竜の翼の辺り)で人影が二つ、何だかゴソゴソと動いているのが見えた。これはまさか。

「でもっ、人が……」
「大丈夫、寝てるよ」
「あ、んっ」

 起きてますよー。

 俺はいたたまれなくなって、竜の尻尾から飛び降りた。
 一瞬声が聞こえなくなったけど、俺の行動が二人の何かに火を付けたのか、前より激しくなって再開された。

『お邪魔しました!』

 逃げるようにしてその場を離れる。
 一年間禁欲生活を続けていた俺にはキツイ現場だった。恥ずかしすぎる。男なのに、よくあんな甘ったるい声が出せるよな。

「……あ、っっ!」

 魔法エレベーターが来るのを待っていたら、いきなり通りすがりの男にお尻を掴まれた。ぎょっとして振り向くと、短いマントを羽織った男が
「お疲れさま」
とにやけた笑顔で去っていった。

 出たよ、甘ったるい声が。……俺も出してたよ。


 途中の階で夜食になりそうな軽食とおやつを買ってから、15階の自分の部屋に戻る。
 おばちゃんの言った通り、身分証明のカードがあれば王宮の中の店は料理を分けてくれた。でも、もしかしたら後で給料から引かれるかもしれないから買い物は最小限ですませた。
 この豪華な部屋も、無料なのか怪しい所だ。タダほど高い物はないって言うし、結局俺が払わなくても別の誰かが支払っているんだよな。

 部屋のドアを開けておやつをテーブルに置き、違和感に気づいた。

 部屋の外に何かいる。

 まさか、真っ黒オバケか……?震えながら庭に面した窓に近づいた。

「え……?」

 俺の想像よりでかい生き物が、庭に寝そべっていた。
 よく見ると、ちゃんと庭の小屋の中に身体をおさめている。首と前足は出ているけど。

 庭に出て、おそるおそる近づいてみると、そいつはちらりと目だけを俺に向けた。

 庭の小さな灯りの下でも、その竜の体が白い事は理解できた。名前……なんて言ったっけ?

 その時、後ろから伸びてきた手が、俺を羽交い締めにした。
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