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引っ越し
12 怒られました
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フィオネさんが怒っている。
いや、短い付き合いでも俺には分かる。滅多に怒らない人だけど。
お風呂でさんざんイチャイチャしてしまった俺は、軽く気を失っていたらしい。気づけば寝室のベッドに寝かされていた。もしかしたら寝ていただけかもしれないけど。
目を覚ました時に隣にルーシェンはいなかった。でも下のフロアから王子とフィオネさんの話し声が聞こえてきた。
「……残りの者は引き続き調査いたしますが、先の五名は明日から仕事に戻らせます。異世界担当課から二人参りますが、護衛はいかがいたしますか?国王陛下から部下を派遣しても良いとのお言葉がございましたが」
「それは俺が断っておこう。護衛は飛行部隊から選ぶ」
俺はベッドにゆっくり起き上がろうとして断念した。お尻が痛い。腰も痛い。身体がだるくて熱っぽい。重力が変化したのかと思うくらいだ。
「……フィオネ、そう睨むな」
「私は王子のなさる事に反対できる立場ではございません。貴方様が全てを考慮に入れた上で行動なさっている事もよく存じております。ですが……ミサキ殿は今日治療室から出られたばかりです」
あ、これもしかして、ルーシェンが俺との事で怒られてる?
まずい、フォローしないと。俺から誘いましたって。
「分かっている。次からは無理はさせない」
「分かればよろしいのですが……」
「それよりアークはどうしている?」
「先ほどから控えの間でお待ちです」
「分かった。留守の間シュウヘイを頼む」
「畏まりました」
ルーシェンはばっさり会話を打ち切った。さすが王子様だ。
そのまま二人の足音と会話が遠ざかる。そういえば夕方から飛行部隊と打ち合わせって言ってたよな。
ルーシェン、忙しいのにイチャイチャに付き合わせて悪かったな。せめて夜まで待てば良かった。怒られないといけないのは多分俺の方だ。
ベッドの上で寝ていると、寝室にフィオネさんがワゴンを持って戻ってきた。
慌てて起き上がろうと力を入れる。腰も身体も痛いけど自業自得だ。何も着ていなかったから、シーツを身体に巻きつけベッドに腰掛ける。フィオネさんには事後をいろいろ目撃されてるから今さらだけど、好きでもない男の裸ばかり見せて申し訳ない気分になった。
「お目覚めでしたか。身体の具合はいかがですか?」
フィオネさんが俺の額に手を起き、熱や顔色をチェックする。
「少し熱がありますね。起き上がって辛くはごさいませんか?寒ければおっしゃってください」
『大丈夫です』
「こちらにお薬と食事を用意しております。それを召し上がって、今日は大人しくお休みくださいませ」
『はい』
フィオネさんが用意してくれたワゴンには、お粥みたいな料理が少しと、不味そうな薬が大量に積まれていた。仕方ない。我慢して飲むか。
『あの……すみません。病み上がりなのにいろいろ』
お粥を口に運びながら言うと、フィオネさんは少し眉をつり上げた。
「謝って済む問題ではありません。貴方の身体は、貴方だけのものではありません。王子のものなのはもちろんですが、結婚なさって次期王妃になれば、部下や国民の為にも生きなければなりません。もう少しご自分の体調を考えて行動なさってください」
フィオネさんのすごくもっともな意見に、反省しないといけないはずなのに、王子のもの、という言葉に赤面してしまった。
傍目に分かるほど赤くなった俺を見て、フィオネさんの怒りが少し緩んだらしい。
「……そうは言っても、お二人とも若いですから無理もないかもしれませんね」
ため息と共にそう言うと、俺に向かって深々と頭を下げた。
王宮のマナー講座でならった所によると、フィオネさんの礼は王族に対する礼儀作法でかなり堅苦しい形式のものだ。
『フィオネさん?』
「ミサキ殿、王子との婚約おめでとうございます。微力ですが全力でお仕えいたしますので、これからよろしくお願い致します」
うわ……。
思ったよりぐっときた。
『ありがとうございます!頑張ります』
意気込んで言うと、フィオネさんの目が細められた。
「ミサキ殿、王子の婚約者というのは生易しいものではありませんよ。私達の王子は、ああ見えてかなり厳しいお方です。貴方にも次期王妃としてそれなりのレベルを要求してきます。今のうちに覚悟なさっておかれた方がよろしいでしょう」
う……なんだか怖いんですが。
フィオネさんが怒っている。
いや、短い付き合いでも俺には分かる。滅多に怒らない人だけど。
お風呂でさんざんイチャイチャしてしまった俺は、軽く気を失っていたらしい。気づけば寝室のベッドに寝かされていた。もしかしたら寝ていただけかもしれないけど。
目を覚ました時に隣にルーシェンはいなかった。でも下のフロアから王子とフィオネさんの話し声が聞こえてきた。
「……残りの者は引き続き調査いたしますが、先の五名は明日から仕事に戻らせます。異世界担当課から二人参りますが、護衛はいかがいたしますか?国王陛下から部下を派遣しても良いとのお言葉がございましたが」
「それは俺が断っておこう。護衛は飛行部隊から選ぶ」
俺はベッドにゆっくり起き上がろうとして断念した。お尻が痛い。腰も痛い。身体がだるくて熱っぽい。重力が変化したのかと思うくらいだ。
「……フィオネ、そう睨むな」
「私は王子のなさる事に反対できる立場ではございません。貴方様が全てを考慮に入れた上で行動なさっている事もよく存じております。ですが……ミサキ殿は今日治療室から出られたばかりです」
あ、これもしかして、ルーシェンが俺との事で怒られてる?
まずい、フォローしないと。俺から誘いましたって。
「分かっている。次からは無理はさせない」
「分かればよろしいのですが……」
「それよりアークはどうしている?」
「先ほどから控えの間でお待ちです」
「分かった。留守の間シュウヘイを頼む」
「畏まりました」
ルーシェンはばっさり会話を打ち切った。さすが王子様だ。
そのまま二人の足音と会話が遠ざかる。そういえば夕方から飛行部隊と打ち合わせって言ってたよな。
ルーシェン、忙しいのにイチャイチャに付き合わせて悪かったな。せめて夜まで待てば良かった。怒られないといけないのは多分俺の方だ。
ベッドの上で寝ていると、寝室にフィオネさんがワゴンを持って戻ってきた。
慌てて起き上がろうと力を入れる。腰も身体も痛いけど自業自得だ。何も着ていなかったから、シーツを身体に巻きつけベッドに腰掛ける。フィオネさんには事後をいろいろ目撃されてるから今さらだけど、好きでもない男の裸ばかり見せて申し訳ない気分になった。
「お目覚めでしたか。身体の具合はいかがですか?」
フィオネさんが俺の額に手を起き、熱や顔色をチェックする。
「少し熱がありますね。起き上がって辛くはごさいませんか?寒ければおっしゃってください」
『大丈夫です』
「こちらにお薬と食事を用意しております。それを召し上がって、今日は大人しくお休みくださいませ」
『はい』
フィオネさんが用意してくれたワゴンには、お粥みたいな料理が少しと、不味そうな薬が大量に積まれていた。仕方ない。我慢して飲むか。
『あの……すみません。病み上がりなのにいろいろ』
お粥を口に運びながら言うと、フィオネさんは少し眉をつり上げた。
「謝って済む問題ではありません。貴方の身体は、貴方だけのものではありません。王子のものなのはもちろんですが、結婚なさって次期王妃になれば、部下や国民の為にも生きなければなりません。もう少しご自分の体調を考えて行動なさってください」
フィオネさんのすごくもっともな意見に、反省しないといけないはずなのに、王子のもの、という言葉に赤面してしまった。
傍目に分かるほど赤くなった俺を見て、フィオネさんの怒りが少し緩んだらしい。
「……そうは言っても、お二人とも若いですから無理もないかもしれませんね」
ため息と共にそう言うと、俺に向かって深々と頭を下げた。
王宮のマナー講座でならった所によると、フィオネさんの礼は王族に対する礼儀作法でかなり堅苦しい形式のものだ。
『フィオネさん?』
「ミサキ殿、王子との婚約おめでとうございます。微力ですが全力でお仕えいたしますので、これからよろしくお願い致します」
うわ……。
思ったよりぐっときた。
『ありがとうございます!頑張ります』
意気込んで言うと、フィオネさんの目が細められた。
「ミサキ殿、王子の婚約者というのは生易しいものではありませんよ。私達の王子は、ああ見えてかなり厳しいお方です。貴方にも次期王妃としてそれなりのレベルを要求してきます。今のうちに覚悟なさっておかれた方がよろしいでしょう」
う……なんだか怖いんですが。
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