好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

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雲の谷へ

11 ルーシェンの代わりは無理だな

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 飼育舎を出て再び大広間に戻る。

「短時間に二度転移魔法陣に魔力を込めるのはちょっとキツイですね」

 如月はぶつぶつ言っていたけど、大広間にはすでに荷物を抱えた従者達が準備万端という雰囲気で待っていた。

「こんな事になって、心配してたけどようやく家に帰れるわ」
「ミサキ様は寛大なお方ね」
「そうだな。こんな状況でまさか帰還が許されるなんて思わなかったよ」

 みんなでわいわい話していたけど、戻って来た俺たちを見て慌てて姿勢を正した。

「ミサキ様、先に戻ることになり申し訳ありません」

『いえ、こちらこそここまで私に着いてきてくれてありがとうございました。誰も怪我がなくて良かったです。王都に戻ったらゆっくり休んでください』

 ペコリと頭を下げると何故か拍手が巻き起こった。

「盛り上がっているところ申し訳ありませんが、皆さん準備出来ましたよ」

 如月が言う通り、大広間の転移魔法陣も光を放ちはじめていた。みんな俺に一礼をして次々と魔法陣に入っていく。

 荷物をたくさん抱えたジョシュが挨拶にやって来た。

「ミサキ様、無事でいてくださいね。王子様と仲良く帰ってきてください」
『ジョシュも元気で。一緒に旅ができて良かったです』

 そう言うと、ジョシュは荷物を下ろして俺にぎゅっと抱きついた。

『ジョシュ?』
「今は王子様もフィオネ様もいないので」

 ジョシュはにっこり笑ってそう続けた。

『そうですね』

 笑ってぎゅっと抱きしめ返すと、相変わらず柔らかくてお菓子みたいないい匂いがした。
 それからジョシュも魔法陣に入って手を振る。光が消えてしまうと、今度こそ広い浮島はがらんと静かになってしまった。
 転移魔法陣は切ない気持ちになる。異世界から日本へ戻って来た時の、あの寂しさに通じるものがあるからかな。

「ミサキ様、元気を出してください。私たちがついてます」

 ポリムがそう言って俺を慰めてくれた。泣きそうな気持ちになってた事がバレてたのか。でもポリムはジョシュやフィオネさんと違って抱きつきにくい。胸が大きいからな……。


 「ミサキ様、夜があければ出発ですから今のうちに少し仮眠をとってはいかがですか?」

 魔法陣の光が消えても如月がまだ残ってるので、ちょっと不思議に思った。確か如月も王都に戻るんだよな。

『如月はいつ帰るんですか?』

「まあ、お茶くらい飲ませてください。ミサキ様達もおそらく朝までは出発しませんよね? それまでこの浮島に防御魔法をかける人間が必要です。私一人ならいつでも移動できますから」
 
「ハルバート様は魔力を消費されてますから私が防御魔法をかけましょうか?」

「大丈夫です、ポリムさん。雲の谷へ向かうチームで一番回復魔法が得意なのはあなたですから、魔力は温存してください」

「はいっ」

 如月の言葉に甘えて、夜明けまで仮眠を取る事になった。めちゃくちゃになった部屋のベッドを大急ぎでポリムが整えてくれる。

『ロベルトさん達を見かけませんでしたけど、みんな仮眠はとってるんでしょうか?』

「飛行部隊の方々は、浮島周辺の見張りをしているみたいですけど、ハルバート様が防御魔法をかけてくださるので少し休憩ができると思います」

『そうですか。みんな働いているんですね』
「ミサキ様は何も心配せずにお休みくださいね」
『ポリムも休憩をとってください』
「はい」

 ポリムが部屋を出て行っても、俺はなかなか寝付けなかった。
 一度幽体離脱した時、ルーシェンが魔物の討伐をしているところを見たことがあったけど、あの時ルーシェンは眠らずにずっと指示を出したり働いたりしてた。同じような立場なのに俺に出来ることが少なくて嫌になる。もちろん、俺にルーシェンの代わりは無理だけど。俺に出来ることといえば、みんなの足を引っ張らないようにすることくらいかな。
 雲の谷へ少人数で向かわなきゃいけない時点で、十分足を引っ張ってるけど。
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