好きになったのは異世界の王子様でした(ルーシェン編)

カム

文字の大きさ
147 / 209
雲の谷へ

13 飛竜の旅②

しおりを挟む
 ロベルトさんの岩みたいな飛竜を先頭に、五頭の飛竜が並んで飛行していく。俺の乗った譲二さんの飛竜は先頭から三番目だ。ルーシェンの飛竜はいつも先頭だったから不思議な感じだな。

「ミサキ様、飛竜の周辺に防御魔法をかけていますので安心してください。そんなにかたくならなくても大丈夫ですよ」

 譲二さんに言われるまで、自分ががっちり手綱を握りしめていたことに気づかなかった。多分緊張してるんだろうな。魔法のおかげで寒くもないし、風もほとんど感じないけど。
 ルーシェンは二人乗りをするとき、ぎゅっと抱きしめてくるから安心感がある。逆にへんな気持ちになって困るけど。譲二さんはさすがにそこまで力を入れたりしなくて、腕を添えるだけって感じだ。

 朝日がのぼり、飛行する飛竜とすぐ下に広がる森、それに壁のように左手に続く山脈を照らし出してる。あの山脈をずっと辿っていけば、そのうち雲の谷に着くらしい。ラキ王国は広いな。普段は賑やかな王都しか見ていなかったし、旅をしていた時にもそれなりにいろいろな景色を見ていたつもりだったけど、こんなに険しい山脈がずっと続いていることや、赤砂の街の近くに広い砂漠が存在してるなんてことも知らなかった。

 飛竜はずっと順調に飛行を続けた。
 一度黒い妖鳥が集団で襲いかかってきたけど、飛竜の方が速く、難なく振り切る事ができた。飛竜より速く飛べる魔物は少なく、空を飛んでいる時が一番安全かもしれないと譲二さんが言った。

 途中で一度狭い岩場に降り、休憩をとる。飛竜たちに水を飲ませて、人間たちも集まって軽い朝食を取ることになった。

「ミサキ様、初めての長時間の飛行は大丈夫ですか?」

 飛竜から降りたポリムも俺とおなじくらいふらついてる。

『ポリムこそ、飛竜乗ったことないんですよね。大丈夫ですか?』

 そう言うと、ポリムは小声になった。

「正直言うとおしりと足が痛いです。でもこの程度で魔法は使えませんし、テレサの飛行技術が高いからなんとか耐えてます。それに違う部署の方と話すのは久しぶりだから、ずっとおしゃべりしてましたの」

『楽しそうですね』

「テレサとは気が合いますわ。ミサキ様のことを可愛らしいっていってましたもの」

 うっ……。かっこいいじゃなくて、かわいい、か。なんだか複雑だ。昔からかっこいいって言われたことないけど。

「少し遅くなりましたけど朝食にしましょう」

 朝食は固くてまるいパンに瓶入りのジャムを塗った物だった。あとは持ち運びしやすく加工されたお肉。小刀で少しずつ切り分けて食べるみたいだ。パンもお肉も硬いけど、お腹が空いていておいしかった。それにこのメンバーで円になって黙々と食べているのもなんだか面白かった。飛行部隊の遠征中はこんな感じなんだろうな。

「このような食事で申し訳ありません」
『いえ、とても美味しいです』

 とてもは言い過ぎだけど、別に不味くない。

「もう少し飛行した先に、無人の集落があります。次はそこで休憩を取ろうと思います」
『分かりました』

 一時間くらい休憩をとったら出発だ。次はロベルトさんの岩みたいな飛竜に乗せてもらうことになった。ポリムはテレサさんと一緒に別の飛竜に乗るらしい。テレサさんはトレーナーだから、どんな飛竜でも扱えるという話だ。かっこいいな。
 そしてロベルトさんと二人乗りか、話すこと無さすぎて気まずい。寝たふりでもしようかな。

 ロベルトさんの岩のような飛竜によじ登り、再び出発する。ロベルトさんの飛竜に乗せてもらうのは二度目だけど、一度目の時はそれどころじゃなくてあまり覚えてない。短時間だったし。
 そしてロベルトさんは終始無言だった。時々振り向いて顔を見ても表情が変わらない。さすが無表情ロベルトと呼ばれるだけあるな。譲二さんみたいに手を添える事もないから、バランスを取るのが上手になった。たまに急降下したり急旋回する時も、ジェットコースターみたいに楽しめるようになってきた。慣れってすごいな。

 昼近くなると、急激に天気が悪化しはじめた。空一面に黒い雲が広がり、風も強くなる。

『雨が降りそうですね』
「濡れますが、少々ご辛抱を。このまま集落まで進みます」

 ロベルトさんはそう言うと、自分の身につけていたマントを俺にもすっぽり被せてくれた。すぐにパラパラと雨が落ちてくる。防水だから中までは濡れない。

『ありがとう』
「いえ、王子のマントを濡らすわけにはいきません」

 俺じゃなくてマント?
 そういえばロベルトさんは忠誠心の塊で、ルーシェンのこと大好きだった。
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。 ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります! ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

【16+4話完結】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

最弱オレが、最強魔法騎士様のパートナーになった件

竜也りく
BL
「最悪だ……」 その日イールはめちゃくちゃ落ち込んでいた。 イールが通う魔術学校の卒業試験は制限時間72時間の中でどれだけ強い魔物を討伐できるかで審査される上、二人ひと組のチーム選だからだ。 入学してからこのかた常にダントツ最下位を取り続けてきたイールと組むなんて誰だってイヤだろうと思うと気が重いのに、パートナーを見てさらにため息を深くした。 イールのパートナーは、入学以来ダントツで首席な上に、代々騎士の家系に生まれたせいか剣の腕にも定評がある。その上人を寄せ付けない雰囲気ではあるものの顔もいいという、非の打ちどころのない完璧さを誇る男だった。 しかも彼はとんでもないSランクの魔物を仕留めるだなんて言いだして……。

生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。 貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。 毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。 この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。 その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。 その瞬間に思い出したんだ。 僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。

処理中です...