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旅行編 お墓参り〜赤砂の街
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『こんなに薬もらって良かったんでしょうか』
お爺さん医者は袋いっぱいに薬を入れてくれていた。薬が高いのはどこの世界でも同じだ。もちろん安い薬もあるけど、気休め程度の効果しかない。多分だけど、これは高い方の部類に入ると思う。
『旅行のお金無くなったんじゃないですか』
「そうだな。だが、最初から少ない金しか用意出来ていないからな。この街で少し稼ぐ」
『え?』
何かヤバイ事でもするんだろうか。
「心配するな。稼ぐのは俺だけだ。ジジイも言っただろう、お前はのんびりしていればいい」
『ええっ!?』
アニキが優しい……! ちょっと怖い。
「なんだその顔は」
『ヤバイ事するわけじゃないですよね! 強盗とか』
心配して言ったのに、アニキに頭を拳骨でグリグリされた。痛い。
「投獄されたらお前の面倒を見る奴がいなくなるからな」
『捕まるような事は絶対にしないでくださいね。約束です』
しつこくそう言うと、アニキは鼻で笑った。
それから二人で大通りをぶらぶらして、繁華街の中にある宿屋にやって来た。
宿は小さいけど儲かっているみたいだ。一階に大衆食堂のような食事をするスペースがあって、二階から先は宿屋になってる。
アニキが宿屋のカウンターに向かうと、奥にいた女の人が顔を出した。ウェーブのかかった茶色の髪を綺麗にまとめた、かなり色っぽい女の人だ。年は三十くらいだと思うけど、スタイルが良くて胸が大きい。
「いらっしゃい。お食事? それとも……」
笑顔で迎えてくれた女の人は、アニキを見て目を見開く。
「……レヴィン! 生きていたのね」
アニキの知り合いがこんな所にもいた。何故だろう、孤独だと思ってたアニキに知り合いがいるのは嬉しい事のはずなのに、ちょっとだけ胸がざわつく。このお姉さんが美人でセクシーだからだろうか。アニキを見て目に涙を浮かべているからだろうか。
「久しぶりだな」
「二年前に、飛行部隊が盗賊を一斉に討伐したと聞いて……諦めてたわ。無事だったならどうして連絡をくれなかったのよ」
アニキはそれには答えず、店内を見回した。
「相変わらず儲かっているな」
「まあね。レヴィン、泊まっていくんでしょう?」
女の人は、カウンターから出てきてアニキの腕に腕を絡めた。そこで初めて俺の存在に気づく。
「あら、この子は? もしかして……」
『岬修平と言います』
「ちょっとレヴィン! あなたまだ盗賊を続けてるわけじゃないわよね? お頭は捕まったんでしょう? もう奴隷の面倒を見るのは勘弁して欲しいわ」
『奴隷じゃありません』
「え? そうなの。ごめんなさい。私はてっきり……」
奴隷に見えるのか。ショックだ。
「俺がこの街で金を稼ぐ間泊めてほしい。一部屋くらい空いてるだろ」
「ええ、いいけど。一部屋でいいの?」
「それでいい。あと、働いている間こいつに何か栄養のつくものを食わせてやってくれ」
アニキがそう言ったので、お姉さんは目をまるくした。
『アニキ、どこかに行くんですか?』
「仕事を探してくる。夕方には戻るから部屋で休んでろ」
アニキはカウンターにお金の入った袋を置くと出て行った。相変わらず行動が早いな。まさか俺、捨てられたんじゃないよな。
残された俺とお姉さんは顔を見合わせた。
「私はルイーズよ。ミサキ君だったかしら。よろしくね」
お爺さん医者は袋いっぱいに薬を入れてくれていた。薬が高いのはどこの世界でも同じだ。もちろん安い薬もあるけど、気休め程度の効果しかない。多分だけど、これは高い方の部類に入ると思う。
『旅行のお金無くなったんじゃないですか』
「そうだな。だが、最初から少ない金しか用意出来ていないからな。この街で少し稼ぐ」
『え?』
何かヤバイ事でもするんだろうか。
「心配するな。稼ぐのは俺だけだ。ジジイも言っただろう、お前はのんびりしていればいい」
『ええっ!?』
アニキが優しい……! ちょっと怖い。
「なんだその顔は」
『ヤバイ事するわけじゃないですよね! 強盗とか』
心配して言ったのに、アニキに頭を拳骨でグリグリされた。痛い。
「投獄されたらお前の面倒を見る奴がいなくなるからな」
『捕まるような事は絶対にしないでくださいね。約束です』
しつこくそう言うと、アニキは鼻で笑った。
それから二人で大通りをぶらぶらして、繁華街の中にある宿屋にやって来た。
宿は小さいけど儲かっているみたいだ。一階に大衆食堂のような食事をするスペースがあって、二階から先は宿屋になってる。
アニキが宿屋のカウンターに向かうと、奥にいた女の人が顔を出した。ウェーブのかかった茶色の髪を綺麗にまとめた、かなり色っぽい女の人だ。年は三十くらいだと思うけど、スタイルが良くて胸が大きい。
「いらっしゃい。お食事? それとも……」
笑顔で迎えてくれた女の人は、アニキを見て目を見開く。
「……レヴィン! 生きていたのね」
アニキの知り合いがこんな所にもいた。何故だろう、孤独だと思ってたアニキに知り合いがいるのは嬉しい事のはずなのに、ちょっとだけ胸がざわつく。このお姉さんが美人でセクシーだからだろうか。アニキを見て目に涙を浮かべているからだろうか。
「久しぶりだな」
「二年前に、飛行部隊が盗賊を一斉に討伐したと聞いて……諦めてたわ。無事だったならどうして連絡をくれなかったのよ」
アニキはそれには答えず、店内を見回した。
「相変わらず儲かっているな」
「まあね。レヴィン、泊まっていくんでしょう?」
女の人は、カウンターから出てきてアニキの腕に腕を絡めた。そこで初めて俺の存在に気づく。
「あら、この子は? もしかして……」
『岬修平と言います』
「ちょっとレヴィン! あなたまだ盗賊を続けてるわけじゃないわよね? お頭は捕まったんでしょう? もう奴隷の面倒を見るのは勘弁して欲しいわ」
『奴隷じゃありません』
「え? そうなの。ごめんなさい。私はてっきり……」
奴隷に見えるのか。ショックだ。
「俺がこの街で金を稼ぐ間泊めてほしい。一部屋くらい空いてるだろ」
「ええ、いいけど。一部屋でいいの?」
「それでいい。あと、働いている間こいつに何か栄養のつくものを食わせてやってくれ」
アニキがそう言ったので、お姉さんは目をまるくした。
『アニキ、どこかに行くんですか?』
「仕事を探してくる。夕方には戻るから部屋で休んでろ」
アニキはカウンターにお金の入った袋を置くと出て行った。相変わらず行動が早いな。まさか俺、捨てられたんじゃないよな。
残された俺とお姉さんは顔を見合わせた。
「私はルイーズよ。ミサキ君だったかしら。よろしくね」
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