ちびドラゴンは王子様に恋をする

カム

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人間じゃなかった

2 トカゲか鳥

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 あれから毎日順調にぬくぬくと暮らしている。毎日といっても時間の感覚はない。でも、俺を拾った子供が俺に話しかけるから、それでなんとなく時間の経過を察していた。

(お前は何の卵なんだ?)
(はやく生まれてこいよ)
(今日習ったとっておきの回復魔法かけてやるから)

 そんなことを毎日話してくる。そしてこのとっておきの回復魔法がすごく気持ちいいんだ。

 「かけてかけて!」
 
 卵の中で返事をするけど、当然卵の外の子供には伝わってない。返事といってもぬるま湯に包まれて声が出せるわけじゃないから、口だと思われる部分をぱくぱく動かして話した気になってるだけだけど。でも、卵の中の唯一の楽しみだから、会話には全部返事をした。

(なにが生まれるんだろうな)
「俺もよくわからない」
(ジェイソンが、多分トカゲか鳥だろうって)
「トカゲか鳥の二択か」
(でもいいんだ。可愛がってやるからな)
「ありがとう! お前のこと大好き」
(はやく生まれてこないかな)
「俺も会いたいよ」

 卵の外の世界はどんな感じなんだろう。異世界だから、きっと全く知らない風景のはずだ。はやく見たい。
 もう一つ見たいのは、俺を暖めている子供の顔。きっと可愛い子だと思うな。でも異世界だから目が一つとか、動物みたいな顔とか、想像とはかけ離れた容姿かも。それでも全然問題ない。この子はすごく優しいからどんな顔でも可愛く見えると思う。そもそも俺だってトカゲか鳥なんだし。

 たまに振り回されて気持ち悪くなるけど、そこは子供だから仕方ない。俺も前世では子供の頃、虫とか魚とか捕まえて遊んでたからな。それにこの感じだと、卵から孵っても食べられたりすることもなさそうだ。

 
 それからまた日にちが過ぎて、卵の中がだんだんきつくなって来た。あったかぬるま湯も残り少ない。ますます身体を動かすのがキツくなって、そろそろ卵の中の世界ともお別れだと感じる。どこかに出口がないかと、ツンツン突いていたら、外の世界から反応があった。

(ジェイソン、卵から音がする)
(ヒース様、そろそろ生まれるのでは?)

 子供の名前はヒースっていうのか。返事をしながら中からつついてみた。

「おーい、ヒース!」

(返事したぞ。生まれるって)

 おお、初めて意思疎通できたぞ。ちょっと楽しいな。
 だけど俺がいくらつついても卵の殻はヒビ一つ入らなかった。これはけっこう外に出るのは大変だな。フルパワーで立ち向かっても殻はびくともしない。疲れたのでもう少し卵の中で力を蓄える事にした。


 



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