ちびドラゴンは王子様に恋をする

カム

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別れ?

9 矢の雨

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 さて、あんなでかい鳥と戦うにはこっちもそれなりの大きさになる必要がある。牢屋から出る時どうやって小さくなった? あれと逆をやればいいんだ。

「カル!」
「いけません。ヒース様!」

 魔力を込めて息を吐く。大きくなった姿をイメージする。鳥が再び嘴を開けようとしたので、飛んでその喉元に噛みついた。視界が変わる。巨大鳥がさっきよりずっと小さくなった。身体はさっきより重く、翼は大きくなり、全身に力がみなぎるのを感じる。

 よし、成功だ。いや待てよ。そんなに大きくないぞ。それでも最初よりはずっと大きいし、人間の大人くらいのサイズにはなれた。巨大鳥よりは小型だけど、これで充分だ。

「か、カルが……」

 周囲が騒めいている。いきなり俺が現れたように見えたんだろうな。

「何だあれは……!」
「ドラゴン⁉︎   新しい魔物か?」

 力を込めてそのまま鳥を薙ぎ倒す。相手は殺意のこもったギラギラした目でこちらを睨みつけてきた。嘴から漏れる風の魔法のせいで皮膚に痛みが走る。怒り狂ってる。説得も逃がすのも無理そうだな。

 口を開き炎の魔法をイメージする。大きな爆発音と共に巨大鳥は炎に包まれた。一つ気づいたのは、自分の出す炎は自分を燃やさないって事だ。熱いだけで痛くも何ともない。

 ヒース、逃げ切れたかな? 振り返ると遠くにジェイソンに抱えられてこっちに手を伸ばすヒースが見えた。良かった。ちゃんと守れた。

「カルーーーー‼︎」

 どうしてヒースが叫んでいるのかすぐに理解した。後方にいた弓兵部隊が、こっちに向かって一斉に矢を雨のように放ったからだ。

 俺は一応、みんなを助けたんだけど。

 さっき見た牛と人間との戦いの場面を思い出す。結局は人間が勝利するようにできているらしい。

 小さくなって避けないと、とか防御や燃やす魔法を、とか考えたけど。お腹が空いたし疲れたし咄嗟には何も出てこなかった。

 矢の雨が、身体に深く刺さる。恐ろしいことにこれは全部毒矢だ。解毒魔法……それとも回復魔法かな。ヒースの、あのとっておきの回復魔法をかけてもらいたいな。

 不思議と痛みは感じなかった。ただ辺りが暗くなって、底のない闇に意識が沈んでいく。ずっと暖かく燃えていた身体は冷えてそのうち動かなくなった。



 
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