ちびドラゴンは王子様に恋をする

カム

文字の大きさ
46 / 129
学園潜入

2 学園潜入

しおりを挟む
 町の人に学園の場所を聞いて、お昼前にはたどり着いた。
 学園も町の外壁のようなしっかりした壁で囲まれてる。これじゃ中が見えないな。青い門の横には小屋がくっついていて、小窓から守衛のようなおじさんが外を見ていた。

「こんにちは。ここはケセルジュの魔法学園ですか?」
「そうだが、何だお前は」
「中に入りたいけどいいですか」
「知り合いでもいるのか?」
「はい。ヒース王子と知り合いです」

 そういうと、おじさんはじろじろと俺の格好を上から下まで眺めた。

「帰れ帰れ。ここは庶民には縁のない所だ」
「ちょっと入るだけでいいんですけど」
「子供だから最初は勘弁してやるが、しつこくするなら警備兵に引き渡すぞ」

 冷たくあしらわれたので、諦めて門の前から撤退する。警備兵には捕まりたくない。前回も牢屋から出るのには苦労したし。何か他の方法を探そう。

 作戦を練るため、学園の前にある小さなお店『喫茶ねこの手』に入ると、パン生地にお肉が挟まれた料理を注文した。それからトロッとしたミルク風味のスープも。ジークさんには大きくなれないと言われたけど、赤ちゃんの頃からご飯としてもらっていたパンやミルクがいまだに大好きでやめられない。

 ゆっくりパンを食べ、お店の窓から学園の門を眺める。誰も出てくる気配がない。門はかたく閉ざされ、馬車の一台も通らなかった。

「この町は初めてかい?」

 ぼんやりしていると猫の刺繍のエプロンをした店員さんに話しかけられた。

「あ、はい」
「そうか。ここはいい町だよ。王都には近いし、北の方ほど雪が降るわけでもない。商売が盛んで治安も悪くない。大きな建物がたくさんあるだろう? 豪華だから見てまわるだけで楽しいと思うよ」
「あの、あそこに見える建物は」
「あれはケセルジュの魔法学園さ。学園といっても王族や貴族の御子息や御令嬢が通う特別な学校だ。庶民は一握りの金持ちしか通えない」

 店員さんはこの小さな店のマスターらしく、お店に俺しかお客がいないからいろいろなことを教えてくれた。

「知り合いがいるんだけど、入れてもらえないんだ。どうしたらいいかな」
「知り合いって、従業員かい? それなら住み込みで働いているから休みの日しか外には出られないと思うよ。仕事によっては半年に一度しか休みがないというから、どうしても会いたいなら、職業斡旋所に行ってみたらどうかな。学園内で働く人を募集していると思うよ」

 そうか、学生として入るのが無理なら従業員として入ればいいのか。

「そうします! ありがとう」

 お礼を言うと、マスターの表情が少しくもった。

「ただ、聞いた話だけど、せっかく仕事が決まってもすぐに辞める人が多いらしいよ。仕事内容が過酷なのかも。斡旋所の人に詳しく聞いてごらん」

「分かったよ」

 俺は火竜だから、過酷な仕事内容なんてヒースに会えることを考えたらなんてことないな。
 マスターにお礼を言って職業斡旋所に向かう事にした。

 





 

 
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜

キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」 平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。 そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。 彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。 「お前だけが、俺の世界に色をくれた」 蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。 甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

処理中です...