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学園潜入
4 力仕事
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「何だお前、仕事しに来たのか?」
目を閉じて周囲を探っていると、光が一つ近づいて来た。目を開けると腰に剣と鞭を装備したいかつい男が俺を見下ろしていた。
「そうです」
「やれやれ。力のなさそうなガキばかり送りやがって」
「力仕事には自信が」
「ふん。見た目も平凡だから付き人も無理そうだな。本来なら掃除をさせる所だが、力に自信があるなら庭園に来い。人手が足りないんだ」
ヒースを探そうと思ったのに、いかつい親父に連れられて宮殿の奥の方にある庭へ行く事になった。そこでは複数の人間が荷車や鍬を使って土砂や岩を運んでいた。庭園に植えられていた大木は折れ曲がって、地面はでこぼこになり、近くの壁には亀裂が入っている。ここだけ嵐が通り過ぎた跡みたいだ。
「おい、新入りだ。後で部屋と着替えと食事を用意してやれ」
近くで土砂を運んでいた男がちらっとこっちを見る。
「修復が遅れている。いいか、明日の朝までに終わらせろ。分かったな!」
いかつい親父はそれだけ言うと庭から出て行った。
「明日の朝って……無理に決まってんだろ。徹夜でやれってのか」
いかつい親父がいなくなると、みんな愚痴のようなぼやきを言い始めた。年が同じくらいの若い人間の男がその場に座り込んだので、近づいていって挨拶する。
「こんにちは。俺、カルって言うんだ。何したらいい? 土をこっちに移動させるの?」
「お前、チビだし見るからに弱そうだけど、監督官に嫌な態度でもとったのか? もっといい仕事あっただろ? ここの仕事キツいし給料安いし最悪だぞ」
「力仕事には自信あるよ。背は今から伸びるんだ」
「ふーん……俺はトム。最初は掃除の仕事してたけど、ヘマしてこっちに送られた。身体中痛いし、全然休ませてもらえないしもう最悪だよ……」
トムがぐちぐち言ってると、荷車を押していた別の男から怒声が飛んできた。
「おい、トム! お前いつまでもサボってんじゃねえよ。間に合わないと連帯責任なんだぞ!」
「俺がやるよ」
荷車を押している男のもとへ行って代わりに押す。どこに持っていったらいいか聞いて違う場所に運んだ。それを何往復かすると、今度は大きな岩をみんなで運び出していたので、そっちを手伝う。正直言って楽勝だな。
「お前、本当に力強いな……」
いや、俺火竜だから。
身体くらいある岩をひょいっと肩に担いで運んでいると、体格のいい男が俺を二度見した。よく見るとみんな手を止めて俺を見てる。あんまり本気出して仕事するとみんながざわつくので少しだけセーブすることにした。これでもジークおじさんよりずっと力は弱いんだけど、火竜ってバレたらやばいからな。
でも今日中に終わらせろって監督官が言っていたから、それなりのスピードで岩を運び、大木を分解して庭から出す。仕事は夕方までには終わってしまった。
経過を見に来た監督官が、庭の様子を見て驚いている。
「本当に終わったのか」
「監督官、今日はもう休んでいいか?」
「ああ……」
「やった!」
「終わった!」
みんな徹夜覚悟だったから喜んでる。良かった。
俺は仕事が楽しすぎてヒースを探せなかったから、終わったら学園を一周しようと思ってたのに、何故か一緒に働いていた人たちに囲まれた。
「新入り! お前はすげえ!」
「おかげで仕事が速く終わった! 歓迎するから食事にしようぜ」
「あ、ありがとう」
ヒースを探しに行きたいけど、明日にするしかないかも。
目を閉じて周囲を探っていると、光が一つ近づいて来た。目を開けると腰に剣と鞭を装備したいかつい男が俺を見下ろしていた。
「そうです」
「やれやれ。力のなさそうなガキばかり送りやがって」
「力仕事には自信が」
「ふん。見た目も平凡だから付き人も無理そうだな。本来なら掃除をさせる所だが、力に自信があるなら庭園に来い。人手が足りないんだ」
ヒースを探そうと思ったのに、いかつい親父に連れられて宮殿の奥の方にある庭へ行く事になった。そこでは複数の人間が荷車や鍬を使って土砂や岩を運んでいた。庭園に植えられていた大木は折れ曲がって、地面はでこぼこになり、近くの壁には亀裂が入っている。ここだけ嵐が通り過ぎた跡みたいだ。
「おい、新入りだ。後で部屋と着替えと食事を用意してやれ」
近くで土砂を運んでいた男がちらっとこっちを見る。
「修復が遅れている。いいか、明日の朝までに終わらせろ。分かったな!」
いかつい親父はそれだけ言うと庭から出て行った。
「明日の朝って……無理に決まってんだろ。徹夜でやれってのか」
いかつい親父がいなくなると、みんな愚痴のようなぼやきを言い始めた。年が同じくらいの若い人間の男がその場に座り込んだので、近づいていって挨拶する。
「こんにちは。俺、カルって言うんだ。何したらいい? 土をこっちに移動させるの?」
「お前、チビだし見るからに弱そうだけど、監督官に嫌な態度でもとったのか? もっといい仕事あっただろ? ここの仕事キツいし給料安いし最悪だぞ」
「力仕事には自信あるよ。背は今から伸びるんだ」
「ふーん……俺はトム。最初は掃除の仕事してたけど、ヘマしてこっちに送られた。身体中痛いし、全然休ませてもらえないしもう最悪だよ……」
トムがぐちぐち言ってると、荷車を押していた別の男から怒声が飛んできた。
「おい、トム! お前いつまでもサボってんじゃねえよ。間に合わないと連帯責任なんだぞ!」
「俺がやるよ」
荷車を押している男のもとへ行って代わりに押す。どこに持っていったらいいか聞いて違う場所に運んだ。それを何往復かすると、今度は大きな岩をみんなで運び出していたので、そっちを手伝う。正直言って楽勝だな。
「お前、本当に力強いな……」
いや、俺火竜だから。
身体くらいある岩をひょいっと肩に担いで運んでいると、体格のいい男が俺を二度見した。よく見るとみんな手を止めて俺を見てる。あんまり本気出して仕事するとみんながざわつくので少しだけセーブすることにした。これでもジークおじさんよりずっと力は弱いんだけど、火竜ってバレたらやばいからな。
でも今日中に終わらせろって監督官が言っていたから、それなりのスピードで岩を運び、大木を分解して庭から出す。仕事は夕方までには終わってしまった。
経過を見に来た監督官が、庭の様子を見て驚いている。
「本当に終わったのか」
「監督官、今日はもう休んでいいか?」
「ああ……」
「やった!」
「終わった!」
みんな徹夜覚悟だったから喜んでる。良かった。
俺は仕事が楽しすぎてヒースを探せなかったから、終わったら学園を一周しようと思ってたのに、何故か一緒に働いていた人たちに囲まれた。
「新入り! お前はすげえ!」
「おかげで仕事が速く終わった! 歓迎するから食事にしようぜ」
「あ、ありがとう」
ヒースを探しに行きたいけど、明日にするしかないかも。
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