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王族の付き人
10 お使い
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「午後の授業が終わるまでの間に、町に出て行って買い出ししてこい。揃えた方がいいものはリストアップしておいた。お金はヒースから預かっている。文字が読めなくてもこの紙を店の人に読んでもらえばいい」
ヴィクターがお金の入った袋と買い物リストを渡してくれた。
「ありがとう」
喜んで受け取ると、ヴィクターは俺をしみじみと見た。
「ヴィクター?」
「君は恵まれてるな。身分や家柄にもとらわれていないし羨ましいよ」
俺って恵まれてるのかな。ヒースとの間には、とても高い壁があるような気がするんだけど。家柄や身分以前に生物としての種類が違うんだ。寿命だって違う。でも、竜と人間なのにそばにいて意思疎通ができるんだから、恵まれているのかも。
「行ってきます」
ヴィクターに手を振って教室のある建物から外に出る。中庭では知っている従業員が数人、岩や泥を運んでいた。
「カル! お前、今何やってんだ?」
「付き人になったんだ。今からお使いに街へ出るところだよ」
「すげえなぁ」
「変わってくれ」
「それは無理だけど、力仕事があれば手伝うよ」
付き人のことを話すとみんな羨ましそうな顔をした。俺は泥運びもけっこう好きなんだけどな。遠くに庭を掃除しているトムが見えたので手を振った。
久々に学園の外に出る。町は相変わらず賑やかだけど、ペシルの町のような騒々しさはなくて、町行く人も馬車も建物もどこか上品だ。
大通りで買い物リストを開くと、紙には揃える下着や靴の数と普段使う道具、それにお店の名前が書かれていた。余白には学園とヒースの名前が添えられている。それに注意書きも。俺が文字が読めなくても王子様のお使いだからお金を多く受け取ったり違う商品を渡すなという事が書いてあった。文字が読めないと騙される人が多いんだろうな。さすがヒースだ、頼りになる。それともヴィクターが書いてくれたのかな。
お店は学園の近くに揃っていたのですぐに見つけられた。靴を買う時も下着を買う時も、以前みたいに変身がとけないかドキドキすることもなくなった。俺、すっかり人間社会に慣れてきたな。住み込みで働いた経験のおかげだ。
落ち着いて購入できたけど、唯一びっくりしたのは服の値段だ。俺が持っている服よりずっと高い。生地の肌触りがよくて装飾まである。もっと安い服でいいと言ったけど、そのお店には安い服は無いのだそうだ。靴も本来なら上質な革でオーダーメイドで作りたいと言われたけど、既製品でいいと断った。
お使いを終えて学園に戻ったのは午後を過ぎてからだ。学園の前にある喫茶『ねこの手』に寄ってパンを食べようかと思ったけど、ヒースのお金を自分のお昼にまわすわけにはいかない。今度ヒースと一緒に町に出た時にお店に寄ろう。そう思うと楽しみがいっぱいだ。
荷物を抱えてヒースの教室のある階に戻ったら廊下に人だかりが出来ていた。人が多くてよく見えないから目を閉じてヒースの気配を探す。教室にいるみたいだ。あと複数の人間が教室にいる。
「まずいんじゃないか?」
「誰かシエラ王女にお知らせしろ」
そんな声が聞こえてくる。どうしたのかと人混みをかき分けて教室を覗くと、ムッとした顔のヒースと、取り巻きを大勢連れたエリオットの姿が見えた。
ヴィクターがお金の入った袋と買い物リストを渡してくれた。
「ありがとう」
喜んで受け取ると、ヴィクターは俺をしみじみと見た。
「ヴィクター?」
「君は恵まれてるな。身分や家柄にもとらわれていないし羨ましいよ」
俺って恵まれてるのかな。ヒースとの間には、とても高い壁があるような気がするんだけど。家柄や身分以前に生物としての種類が違うんだ。寿命だって違う。でも、竜と人間なのにそばにいて意思疎通ができるんだから、恵まれているのかも。
「行ってきます」
ヴィクターに手を振って教室のある建物から外に出る。中庭では知っている従業員が数人、岩や泥を運んでいた。
「カル! お前、今何やってんだ?」
「付き人になったんだ。今からお使いに街へ出るところだよ」
「すげえなぁ」
「変わってくれ」
「それは無理だけど、力仕事があれば手伝うよ」
付き人のことを話すとみんな羨ましそうな顔をした。俺は泥運びもけっこう好きなんだけどな。遠くに庭を掃除しているトムが見えたので手を振った。
久々に学園の外に出る。町は相変わらず賑やかだけど、ペシルの町のような騒々しさはなくて、町行く人も馬車も建物もどこか上品だ。
大通りで買い物リストを開くと、紙には揃える下着や靴の数と普段使う道具、それにお店の名前が書かれていた。余白には学園とヒースの名前が添えられている。それに注意書きも。俺が文字が読めなくても王子様のお使いだからお金を多く受け取ったり違う商品を渡すなという事が書いてあった。文字が読めないと騙される人が多いんだろうな。さすがヒースだ、頼りになる。それともヴィクターが書いてくれたのかな。
お店は学園の近くに揃っていたのですぐに見つけられた。靴を買う時も下着を買う時も、以前みたいに変身がとけないかドキドキすることもなくなった。俺、すっかり人間社会に慣れてきたな。住み込みで働いた経験のおかげだ。
落ち着いて購入できたけど、唯一びっくりしたのは服の値段だ。俺が持っている服よりずっと高い。生地の肌触りがよくて装飾まである。もっと安い服でいいと言ったけど、そのお店には安い服は無いのだそうだ。靴も本来なら上質な革でオーダーメイドで作りたいと言われたけど、既製品でいいと断った。
お使いを終えて学園に戻ったのは午後を過ぎてからだ。学園の前にある喫茶『ねこの手』に寄ってパンを食べようかと思ったけど、ヒースのお金を自分のお昼にまわすわけにはいかない。今度ヒースと一緒に町に出た時にお店に寄ろう。そう思うと楽しみがいっぱいだ。
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「まずいんじゃないか?」
「誰かシエラ王女にお知らせしろ」
そんな声が聞こえてくる。どうしたのかと人混みをかき分けて教室を覗くと、ムッとした顔のヒースと、取り巻きを大勢連れたエリオットの姿が見えた。
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