72 / 129
王族の付き人
11 挑発
「付き人は雇わないんじゃなかったのか?」
「誰だって気が変わることはある。用がそれだけなら次の講義を受けに行ったらどうですか? 兄上」
ヒースの兄上、という言葉にはたっぷりの皮肉が混じっているような気がした。二人が一緒にいるところを見たのはお墓で目覚めて以来だけど、相変わらずだな。
「どうしても弟の付き人の顔が見てみたくてな。噂では山から拾ってきたそうじゃないか。たしかにお前の城の周りは山ばかりだけどな」
エリオットが言うと周りにいた取り巻きたちが一斉に笑った。今の話のどこに笑う要素があるんだ? 山は楽しいぞ。
近づこうとしたら誰かに腕を取られた。振り向くとヴィクターがいた。
「今、君が出て行くのはまずい」
「どうして?」
「エリオット王子はヒース王子を挑発するためなら何でもやる。弟には手は出さないが、君は危険だ。付き人の事なんてなんとも思っていない」
「大丈夫」
笑って手を振りほどく。主人を守るのは付き人の役目だ。エリオットを恐れてなのか、ヒースの周りには誰もいない。それならなおさら俺が守らないと。
「ヒース、買い物して来たよ」
買い物袋を振って近づくと、ヒースが驚いた顔でこっちを見た。
「あっ、エリオット王子様、こんにちは。ヒース王子の付き人です」
エリオットとの間に入って盾になろうと思ったのに、ヒースが俺を庇うように前に出た。同時にエリオットに肩を掴まれる。
「お前……あの時の」
げっ。やっぱり覚えてた。意外と記憶力いいな。それとも王子だから魔法耐性があるのかな。
「兄上、私の付き人から手を離してくれませんか?」
「ヒース、お前俺の付き人を横取りしたな」
「カルはここの従業員で、誰かの付き人だった訳じゃない」
「カル? どこかで聞いたような名前だな。それよりお前、ヒースより俺の所に来い」
「ヒース王子の付き人になったので無理です」
「カル、もう行こう」
エリオットが手を離したので、その隙にヒースが俺を連れて部屋を出ようとした。
「……そうだ。思い出したぞ。カルといえば、お前が昔飼ってた不細工なトカゲと同じ名前じゃないか。トカゲじゃなくて竜だったか」
隣にいた俺にも、ヒースがイラついたのが分かった。雰囲気が変わる。
「竜とは思えないほど弱かったよな。あの竜、どうやって死んだんだったか。確か全身に毒矢を受けてハリネズミみたいになったんだよな。あれには笑ったぜ。毒のせいで生肝も皮も肉も使えなくて、死んでも何の役にも立たなかった。そいつも竜と同じようにペットにするつもりか? お前といるとまた死ぬんじゃないか?」
「黙れ」
ヒースの両手に魔力が収束する。部屋が真冬みたいに急激に冷える。
「ヒース!」
「ヒース王子!」
「おやめください!」
「相手は兄君です!」
廊下で見ていた人たちがヒースを止めようと一斉に声をかける。エリオットの取り巻きたちもみんな焦っているのに、唯一エリオットだけは嬉しそうだ。
「ヒース、俺を攻撃するつもりか? お前にそんな根性があるのかよ!」
「誰だって気が変わることはある。用がそれだけなら次の講義を受けに行ったらどうですか? 兄上」
ヒースの兄上、という言葉にはたっぷりの皮肉が混じっているような気がした。二人が一緒にいるところを見たのはお墓で目覚めて以来だけど、相変わらずだな。
「どうしても弟の付き人の顔が見てみたくてな。噂では山から拾ってきたそうじゃないか。たしかにお前の城の周りは山ばかりだけどな」
エリオットが言うと周りにいた取り巻きたちが一斉に笑った。今の話のどこに笑う要素があるんだ? 山は楽しいぞ。
近づこうとしたら誰かに腕を取られた。振り向くとヴィクターがいた。
「今、君が出て行くのはまずい」
「どうして?」
「エリオット王子はヒース王子を挑発するためなら何でもやる。弟には手は出さないが、君は危険だ。付き人の事なんてなんとも思っていない」
「大丈夫」
笑って手を振りほどく。主人を守るのは付き人の役目だ。エリオットを恐れてなのか、ヒースの周りには誰もいない。それならなおさら俺が守らないと。
「ヒース、買い物して来たよ」
買い物袋を振って近づくと、ヒースが驚いた顔でこっちを見た。
「あっ、エリオット王子様、こんにちは。ヒース王子の付き人です」
エリオットとの間に入って盾になろうと思ったのに、ヒースが俺を庇うように前に出た。同時にエリオットに肩を掴まれる。
「お前……あの時の」
げっ。やっぱり覚えてた。意外と記憶力いいな。それとも王子だから魔法耐性があるのかな。
「兄上、私の付き人から手を離してくれませんか?」
「ヒース、お前俺の付き人を横取りしたな」
「カルはここの従業員で、誰かの付き人だった訳じゃない」
「カル? どこかで聞いたような名前だな。それよりお前、ヒースより俺の所に来い」
「ヒース王子の付き人になったので無理です」
「カル、もう行こう」
エリオットが手を離したので、その隙にヒースが俺を連れて部屋を出ようとした。
「……そうだ。思い出したぞ。カルといえば、お前が昔飼ってた不細工なトカゲと同じ名前じゃないか。トカゲじゃなくて竜だったか」
隣にいた俺にも、ヒースがイラついたのが分かった。雰囲気が変わる。
「竜とは思えないほど弱かったよな。あの竜、どうやって死んだんだったか。確か全身に毒矢を受けてハリネズミみたいになったんだよな。あれには笑ったぜ。毒のせいで生肝も皮も肉も使えなくて、死んでも何の役にも立たなかった。そいつも竜と同じようにペットにするつもりか? お前といるとまた死ぬんじゃないか?」
「黙れ」
ヒースの両手に魔力が収束する。部屋が真冬みたいに急激に冷える。
「ヒース!」
「ヒース王子!」
「おやめください!」
「相手は兄君です!」
廊下で見ていた人たちがヒースを止めようと一斉に声をかける。エリオットの取り巻きたちもみんな焦っているのに、唯一エリオットだけは嬉しそうだ。
「ヒース、俺を攻撃するつもりか? お前にそんな根性があるのかよ!」
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結】双子の兄が主人公で、困る
* ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……!
表紙は、Pexelsさまより、Julia Kuzenkovさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
転生したら最強辺境伯に拾われました
マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。
死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。