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誓約
14 何しに来たんだ
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「いいから開けろと言っているだろ!」
「兄上、おかえりください!」
「おはよう。エリオット、何か用?」
扉越しに争う二人に声をかけたら、ヒースが驚いて振り返った。その隙にエリオットが扉を開け、部屋にずかずかと入ってくる。俺の前まで来て立ち止まると、頭から足までじろじろ見られたのでちょっと焦った。急いで変身したから変なところがあるかも。
「なんだ、やはり毒は抜けたみたいだな」
「ヒースが治してくれたんだ」
エリオットはなぜか舌打ちして俺の方に袋に入った包みを投げた。なんだろう、これ。
「そいつは毒消しだ。後遺症が出たら使え」
「ありがとう」
変な匂いもしないし、本当に薬っぽいからもらっておくか。
薬に気を取られていると、エリオットがいきなり俺が着ていた服をまくりあげた。その腕をヒースが掴む。
「⁉︎」
竜ってバレたのか?
「兄上、何のつもりですか」
「傷が嘘みたいに治ってるな。恐ろしい奴だ。お前、ヒースの付き人なんてやめて俺の方に来いよ」
「やだ」
「手を離さないと兄上でも容赦しない」
「なんだ、俺に対しては強気だな。ケネスには誓約書を書こうとしていた奴が」
「ケネス兄上は、第一位王位継承者で、俺たちより年長だ。父をずっと補佐していた。それに思慮深くて病弱で……」
ヒースが言うとエリオットは笑いだした。俺の服を離したからホッとしてヒースの背中に隠れる。全力でやれば勝てるけど、今は魔力が少ないから無茶しないでおこう。エリオットはなんとなく苦手だし。
「ヒース、お前も少しは現実を見たほうがいい。思慮深くて病弱? 確かに腹黒いし、身体が弱いから生への執着はすさまじいな。だがあんな男が国王になったら、真っ先にお前は消されるぞ。もちろん俺も狙われるだろうが。
五年前の魔物の暴走で死にかけた時に気づかなかったのか? あれはケネスの命令だ。俺たちがのうのうと学園にいられたのは、国王が存命だったからさ。あんなクソ親父でも、息子殺しはしたくなかったらしいからな」
「……」
「俺は殺されるくらいなら王位を狙う。お前の付き人はお前が思っているよりずっと戦力になる。俺の手元に置いたほうが国のためだ」
「だからやだって言ってるだろ」
「……まあいい。とにかく俺の邪魔はするな」
エリオットはそれだけ言うと、部屋を出て行った。何しに来たんだ。
エリオットがいなくなったあと、ヒースがまくり上げられた俺の服を丁寧に直してくれた。変身してあわてて服を着たからボタンもかけ違ってる。
「カル」
「何?」
「いや……その、ベッドのそばで小さな竜を見なかったか?」
「え?」
ヒースは俺をベッドに座らせて、シーツを持ち上げたり、ベッドの下を覗いたり、カーテンの裏を確認してる。
「夢だったのか……? いや、確かにいたんだ。さっきまで、ここに」
もしかして、竜の俺を探してる? 俺が竜のカルだってことに気づいてないのかな。
「兄上、おかえりください!」
「おはよう。エリオット、何か用?」
扉越しに争う二人に声をかけたら、ヒースが驚いて振り返った。その隙にエリオットが扉を開け、部屋にずかずかと入ってくる。俺の前まで来て立ち止まると、頭から足までじろじろ見られたのでちょっと焦った。急いで変身したから変なところがあるかも。
「なんだ、やはり毒は抜けたみたいだな」
「ヒースが治してくれたんだ」
エリオットはなぜか舌打ちして俺の方に袋に入った包みを投げた。なんだろう、これ。
「そいつは毒消しだ。後遺症が出たら使え」
「ありがとう」
変な匂いもしないし、本当に薬っぽいからもらっておくか。
薬に気を取られていると、エリオットがいきなり俺が着ていた服をまくりあげた。その腕をヒースが掴む。
「⁉︎」
竜ってバレたのか?
「兄上、何のつもりですか」
「傷が嘘みたいに治ってるな。恐ろしい奴だ。お前、ヒースの付き人なんてやめて俺の方に来いよ」
「やだ」
「手を離さないと兄上でも容赦しない」
「なんだ、俺に対しては強気だな。ケネスには誓約書を書こうとしていた奴が」
「ケネス兄上は、第一位王位継承者で、俺たちより年長だ。父をずっと補佐していた。それに思慮深くて病弱で……」
ヒースが言うとエリオットは笑いだした。俺の服を離したからホッとしてヒースの背中に隠れる。全力でやれば勝てるけど、今は魔力が少ないから無茶しないでおこう。エリオットはなんとなく苦手だし。
「ヒース、お前も少しは現実を見たほうがいい。思慮深くて病弱? 確かに腹黒いし、身体が弱いから生への執着はすさまじいな。だがあんな男が国王になったら、真っ先にお前は消されるぞ。もちろん俺も狙われるだろうが。
五年前の魔物の暴走で死にかけた時に気づかなかったのか? あれはケネスの命令だ。俺たちがのうのうと学園にいられたのは、国王が存命だったからさ。あんなクソ親父でも、息子殺しはしたくなかったらしいからな」
「……」
「俺は殺されるくらいなら王位を狙う。お前の付き人はお前が思っているよりずっと戦力になる。俺の手元に置いたほうが国のためだ」
「だからやだって言ってるだろ」
「……まあいい。とにかく俺の邪魔はするな」
エリオットはそれだけ言うと、部屋を出て行った。何しに来たんだ。
エリオットがいなくなったあと、ヒースがまくり上げられた俺の服を丁寧に直してくれた。変身してあわてて服を着たからボタンもかけ違ってる。
「カル」
「何?」
「いや……その、ベッドのそばで小さな竜を見なかったか?」
「え?」
ヒースは俺をベッドに座らせて、シーツを持ち上げたり、ベッドの下を覗いたり、カーテンの裏を確認してる。
「夢だったのか……? いや、確かにいたんだ。さっきまで、ここに」
もしかして、竜の俺を探してる? 俺が竜のカルだってことに気づいてないのかな。
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