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誓約
16 男同士の約束
「エリオット、何しに来たんだろうね」
「お前が心配なんじゃないか」
「昔は動物をいじめてたのに」
そう言うと、ヒースがベッドの俺の隣に座った。
「そういえば、卵を割ったのはエリオットだったな。最初にエリオットを見ていたら、俺じゃなくエリオットに懐いていたかもな」
「それはないよ。卵を暖めてるのはヒースだって知ってたから。ヒースの声も聞こえてたし、心音も体温も分かってた」
「そうか。お前は本当に竜のカルなんだな」
「うん」
「人間の姿で人間の生活をしていて辛くないか? 毒を受けたり刺されたり……学園では洗濯や掃除もやっていただろう?」
「少しも辛くないよ。俺、力持ちだし魔力もあるし、ヒースのそばにいられるならなんでもいいんだ」
「そうか。ありがとう」
話をしていたら扉がノックされた。
「ヒース王子、失礼してもよろしいですか?」
「ああ」
入ってきたのはジェイソンだ。ベッドに座る俺たちを見て目を丸くする。
「完全に毒が抜けたように見えますが……王子、何か無茶な回復魔法でもかけましたか?」
「思ったより弱い毒だったみたいだ」
「それは良かった。念のため後ほど治療師を呼びましょう」
「大丈夫だよ」
「ところで私が外している間にエリオット様がいらっしゃったとか」
「薬持ってきた」
「薬ですか。怪しいのでそれは回収します」
本当に薬だと思うけど、エリオットに信用がないから仕方がないよな。
「ヒース王子、ケネス王太子の件ですが」
ジェイソンはチラリとこっちを見た。
「ジェイソン、カルは俺の味方だから気にせず話してくれ」
「分かりました。ケネスの配下からこちらの巻物と、解毒薬を預かっています」
巻物は昨日見た誓約書にそっくりに見える。ヒースはため息を吐いた。
「兄上は俺にどうしても誓約書を書かせたいらしいな」
「古城周辺のカヴィレの森に国王軍の兵士を配置しているということです。表向きは隣国の監視と魔物の討伐ですが」
「俺への牽制だろうな」
「エリオット様の城のあるエルモラにも複数の兵士が配置されているとの情報です。おそらく事前に準備されていたのでしょう。国王の崩御と同時に、いつでも制圧できるように。
誓約書の期限はケネス王太子が王位を継承する九日後まで。それまでに返事が欲しいとのことです」
「俺が誓約書に署名しないと、城を攻め落とすということか」
「……そのようですね。それから国王の崩御は毒殺だとの噂があります」
「エリオットもそう言っていたな」
「この城の身分のある人間は、ほぼ毒に犯されていると言う者も」
「お前はどう思う? ジェイソン」
「対抗するにはエリオット様と手を組むのがはやいとは思いますが、お二方の今の兵力ではケネス様の持つ兵力、魔力、財力に劣ります。一度誓約書に署名するのも一つの方法かと」
「駄目だよ!」
誓約書には魔法がかかってる。一度署名したら命令に逆らえなくなる。
「もちろん一生ではありません。今の危機を回避したら、誓約書を取り返して消滅させるのです。誓約書のない表向きの忠誠などケネス王太子は信用しないでしょうが、逆に誓約書に署名さえしていれば無駄に血が流れることは避けられます。ヒース王子は国民の人気が高いので、利用価値があるうちは殺されたりはしないでしょう」
「そうだな、城に攻め込まれたり……皆が傷つくのを止められるなら、それもいいかもしれない」
「ヒース! そんなの駄目だ。俺が守るからやめて」
「カル、もう他の誰かが傷つくのを見るのは嫌なんだ」
「ヒース……」
俺の肩にジェイソンがポンと手を置いた。
「誓約書に署名して、ヒース王子を安全に城に帰し、城の守りを固めた後で誓約書を偽物と変更する。場合によってはヒース様を国外に逃亡させる。俺とお前でヒース様をお守りするんだ。わかるな」
俺はジェイソンの手の上に自分の手を重ねた。
「……分かったよ。ジェイソン、男同士の約束だったよな」
「お前が心配なんじゃないか」
「昔は動物をいじめてたのに」
そう言うと、ヒースがベッドの俺の隣に座った。
「そういえば、卵を割ったのはエリオットだったな。最初にエリオットを見ていたら、俺じゃなくエリオットに懐いていたかもな」
「それはないよ。卵を暖めてるのはヒースだって知ってたから。ヒースの声も聞こえてたし、心音も体温も分かってた」
「そうか。お前は本当に竜のカルなんだな」
「うん」
「人間の姿で人間の生活をしていて辛くないか? 毒を受けたり刺されたり……学園では洗濯や掃除もやっていただろう?」
「少しも辛くないよ。俺、力持ちだし魔力もあるし、ヒースのそばにいられるならなんでもいいんだ」
「そうか。ありがとう」
話をしていたら扉がノックされた。
「ヒース王子、失礼してもよろしいですか?」
「ああ」
入ってきたのはジェイソンだ。ベッドに座る俺たちを見て目を丸くする。
「完全に毒が抜けたように見えますが……王子、何か無茶な回復魔法でもかけましたか?」
「思ったより弱い毒だったみたいだ」
「それは良かった。念のため後ほど治療師を呼びましょう」
「大丈夫だよ」
「ところで私が外している間にエリオット様がいらっしゃったとか」
「薬持ってきた」
「薬ですか。怪しいのでそれは回収します」
本当に薬だと思うけど、エリオットに信用がないから仕方がないよな。
「ヒース王子、ケネス王太子の件ですが」
ジェイソンはチラリとこっちを見た。
「ジェイソン、カルは俺の味方だから気にせず話してくれ」
「分かりました。ケネスの配下からこちらの巻物と、解毒薬を預かっています」
巻物は昨日見た誓約書にそっくりに見える。ヒースはため息を吐いた。
「兄上は俺にどうしても誓約書を書かせたいらしいな」
「古城周辺のカヴィレの森に国王軍の兵士を配置しているということです。表向きは隣国の監視と魔物の討伐ですが」
「俺への牽制だろうな」
「エリオット様の城のあるエルモラにも複数の兵士が配置されているとの情報です。おそらく事前に準備されていたのでしょう。国王の崩御と同時に、いつでも制圧できるように。
誓約書の期限はケネス王太子が王位を継承する九日後まで。それまでに返事が欲しいとのことです」
「俺が誓約書に署名しないと、城を攻め落とすということか」
「……そのようですね。それから国王の崩御は毒殺だとの噂があります」
「エリオットもそう言っていたな」
「この城の身分のある人間は、ほぼ毒に犯されていると言う者も」
「お前はどう思う? ジェイソン」
「対抗するにはエリオット様と手を組むのがはやいとは思いますが、お二方の今の兵力ではケネス様の持つ兵力、魔力、財力に劣ります。一度誓約書に署名するのも一つの方法かと」
「駄目だよ!」
誓約書には魔法がかかってる。一度署名したら命令に逆らえなくなる。
「もちろん一生ではありません。今の危機を回避したら、誓約書を取り返して消滅させるのです。誓約書のない表向きの忠誠などケネス王太子は信用しないでしょうが、逆に誓約書に署名さえしていれば無駄に血が流れることは避けられます。ヒース王子は国民の人気が高いので、利用価値があるうちは殺されたりはしないでしょう」
「そうだな、城に攻め込まれたり……皆が傷つくのを止められるなら、それもいいかもしれない」
「ヒース! そんなの駄目だ。俺が守るからやめて」
「カル、もう他の誰かが傷つくのを見るのは嫌なんだ」
「ヒース……」
俺の肩にジェイソンがポンと手を置いた。
「誓約書に署名して、ヒース王子を安全に城に帰し、城の守りを固めた後で誓約書を偽物と変更する。場合によってはヒース様を国外に逃亡させる。俺とお前でヒース様をお守りするんだ。わかるな」
俺はジェイソンの手の上に自分の手を重ねた。
「……分かったよ。ジェイソン、男同士の約束だったよな」
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