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王族と竜
5 空に浮かぶ竜
ヒースの領地も?
ということはつまりエリオットの領地は焼いたってことか。それならエリオットが怒るのも無理はない。もしかしたら、もうすでにヒースのお城が攻撃されているのかも。
「ヒース、城を守りに行こう!」
振り返ってヒースの手を取る。
「この城から出られると思っているのか」
ケネスは余裕の表情だ。あの宮廷魔道士はたしかに厄介だけど、全力で飛行すれば大丈夫な気がする。今はエリオットの方に集中してるし。エリオットの命は保証できないけど。
「無理だ、カル。王城にはまだ兵士が何万といる。ここからは出られない。俺は……」
言いながらヒースが床に座り込んだ。
「兄上、領地の者はお許しください。エリオット兄上にもどうか慈悲を」
ケネスは床に落ちた誓約書を拾い上げ、ヒースに突きつけた。
「そう思うならこれに名前を書け。お前は見た目がいいから、私に忠誠を誓うなら生かしておいてやる。領地など気にするな。どうせお前と一緒に隣国の金持ちにくれてやるつもりだ。魔物の多い生産性のない土地だからな」
顔を上げたヒースの前で誓約書が炎に包まれた。魔法の誓約書が焼けるほどの高温にケネスが慌てて手を引っ込める。
「逆らうのか」
「ヒース、こんな奴の言うこと聞かなくていいよ」
「カル」
「ジェイソン、ヒースを頼むよ。俺がこいつをぶん殴る。よくも俺の大好きなヒースを傷つけたな」
誓約書を燃やしたのは俺。ヒースに恨まれてもケネスは絶対にボコボコにしてやる。
慌てて後退りするケネスとその周りを守ろうと取り囲む兵士たち。邪魔だ。襲ってきた全員の手足や鎧を掴んで壁際に投げ飛ばした。怒っているから手加減できない。
「ダリ! こいつらを先に殺せ!」
護衛がいなくなって慌てたケネスは宮廷魔道士を呼んだ。ケネスはともかくあの宮廷魔道士は強い。防御魔法を唱えて身構えるけど、大聖堂の中には姿が見えなかった。エリオットたちを追って外に出たのか? 目を閉じて気配を探る。
「ダリ! どこに行った? 戻ってこい!」
目を閉じると、王城の上に強い魔力を持つ光を感じた。それに中庭にも。この気配は覚えがある。でもまさか。
大聖堂の天井が爆風で吹き飛び、空から人が降ってきた。
「ダリ!」
黒焦げだけど、たしかに宮廷魔道士だ。まだ息がある。じわじわと回復してる。
穴の空いた天井から雷雲の立ち込める空が見えた。そこに翼を広げて浮かぶ真っ白い竜。それほど大きくはないけど、鱗の一部がキラキラと黄金に輝いていてとても美しい。
クラウスだ。五百年生きている竜。人間の姿も綺麗だけど、ドラゴンの姿もすごく煌びやかだ。
「ド、ドラゴン……」
「竜だ……」
「なんで竜が」
宮廷魔道士が回復魔法をかけ続けながらゆらりと立ち上がった。頭の中に声が響く。
(チビすけ、宮廷魔道士は俺に任せて王子を連れて城を出ろ。お前が受けた借りは俺が返しとくから)
(うん。ありがとう、クラウス)
「ヒース、ジェイソン、今のうちに出よう。ヒースの城へ」
「竜が……あれもお前の仲間なのか?」
「そうだよ」
呆然としている二人の手を引っ張って大聖堂をでる。兵士たちは気絶しているか驚いているかで誰も追いかけてこない。
大聖堂を出ると同時に響く、落雷のような音。それにケネスの叫び声。すごく嫌なやつだし自業自得だけど、ケネスが宮廷魔道士を呼ぶ声は悲痛でいつまでも耳に残った。
ということはつまりエリオットの領地は焼いたってことか。それならエリオットが怒るのも無理はない。もしかしたら、もうすでにヒースのお城が攻撃されているのかも。
「ヒース、城を守りに行こう!」
振り返ってヒースの手を取る。
「この城から出られると思っているのか」
ケネスは余裕の表情だ。あの宮廷魔道士はたしかに厄介だけど、全力で飛行すれば大丈夫な気がする。今はエリオットの方に集中してるし。エリオットの命は保証できないけど。
「無理だ、カル。王城にはまだ兵士が何万といる。ここからは出られない。俺は……」
言いながらヒースが床に座り込んだ。
「兄上、領地の者はお許しください。エリオット兄上にもどうか慈悲を」
ケネスは床に落ちた誓約書を拾い上げ、ヒースに突きつけた。
「そう思うならこれに名前を書け。お前は見た目がいいから、私に忠誠を誓うなら生かしておいてやる。領地など気にするな。どうせお前と一緒に隣国の金持ちにくれてやるつもりだ。魔物の多い生産性のない土地だからな」
顔を上げたヒースの前で誓約書が炎に包まれた。魔法の誓約書が焼けるほどの高温にケネスが慌てて手を引っ込める。
「逆らうのか」
「ヒース、こんな奴の言うこと聞かなくていいよ」
「カル」
「ジェイソン、ヒースを頼むよ。俺がこいつをぶん殴る。よくも俺の大好きなヒースを傷つけたな」
誓約書を燃やしたのは俺。ヒースに恨まれてもケネスは絶対にボコボコにしてやる。
慌てて後退りするケネスとその周りを守ろうと取り囲む兵士たち。邪魔だ。襲ってきた全員の手足や鎧を掴んで壁際に投げ飛ばした。怒っているから手加減できない。
「ダリ! こいつらを先に殺せ!」
護衛がいなくなって慌てたケネスは宮廷魔道士を呼んだ。ケネスはともかくあの宮廷魔道士は強い。防御魔法を唱えて身構えるけど、大聖堂の中には姿が見えなかった。エリオットたちを追って外に出たのか? 目を閉じて気配を探る。
「ダリ! どこに行った? 戻ってこい!」
目を閉じると、王城の上に強い魔力を持つ光を感じた。それに中庭にも。この気配は覚えがある。でもまさか。
大聖堂の天井が爆風で吹き飛び、空から人が降ってきた。
「ダリ!」
黒焦げだけど、たしかに宮廷魔道士だ。まだ息がある。じわじわと回復してる。
穴の空いた天井から雷雲の立ち込める空が見えた。そこに翼を広げて浮かぶ真っ白い竜。それほど大きくはないけど、鱗の一部がキラキラと黄金に輝いていてとても美しい。
クラウスだ。五百年生きている竜。人間の姿も綺麗だけど、ドラゴンの姿もすごく煌びやかだ。
「ド、ドラゴン……」
「竜だ……」
「なんで竜が」
宮廷魔道士が回復魔法をかけ続けながらゆらりと立ち上がった。頭の中に声が響く。
(チビすけ、宮廷魔道士は俺に任せて王子を連れて城を出ろ。お前が受けた借りは俺が返しとくから)
(うん。ありがとう、クラウス)
「ヒース、ジェイソン、今のうちに出よう。ヒースの城へ」
「竜が……あれもお前の仲間なのか?」
「そうだよ」
呆然としている二人の手を引っ張って大聖堂をでる。兵士たちは気絶しているか驚いているかで誰も追いかけてこない。
大聖堂を出ると同時に響く、落雷のような音。それにケネスの叫び声。すごく嫌なやつだし自業自得だけど、ケネスが宮廷魔道士を呼ぶ声は悲痛でいつまでも耳に残った。
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