125 / 129
王族と竜
7 懐かしい場所
スピードを上げて飛行する。ヒースはずっと俺の背中にもたれかかっていたから、途中から魔法の息を吐き回復魔法を唱えた。少しでも元気になって欲しい。
「カル、お前の育った城覚えてるか?」
「キュー」
「北の方の、寒い場所にあるんだ。近くには魔物の住む森や湖しかない辺境だけど、俺には懐かしい故郷なんだ」
「キュー」
「焼け野原にはさせたくない」
分かってるよ。ヒース。全力で飛べばもう少しで到着できる。着いたらケネスの部下たちなんて全部俺が追い払ってやる。
半年以上働いたケセルジュの魔法学園が見えてきた。懐かしいな。トムや洗濯場のみんな元気で働いているかな。ハロルドやヴィクターは相変わらずかな。付き人になれて本当に楽しかった。
さらに進むとペシルの町がある。人間に変身する練習のため、宿に泊まったり買い物したりしたよな。ペシルを過ぎると大きな山があって、ジークさんの小屋や谷がある。進路は少しずれるけど、北に進めばヒースのお城がある小さな町が見えてくるはずだ。
「キュー」
「お城だ」
兵士がいる。複数の兵士と馬がいて、町と城を取り囲んでいる。豆粒みたいな大きさでもその光景が見えた。まだ焼け野原にはなってなくてほっとする。囲まれてはいるけど、攻撃は受けていないみたいだ。
「キュイ!」
「分かった。カル、行こう!」
「キュイーーー!」
ジークさんのように咆哮とはいかなかったけど、スピードを上げて高度を下げ村の上空を旋回する。空から現れた竜の襲撃に驚いた馬のいななきと兵士たちの悲鳴が響く。火竜らしく口から魔法の息を吐き、燃えない程度に炎を降らせたら、城を取り囲んでいた兵士たちは全員慌てふためいて逃げて行った。
***
「ただいま。みんな無事か?」
腰を抜かしていた村人たちも、クワや鎌を持って城に籠城していた従者たちも、竜からおりてきたのがヒースだと気づくと、わっと駆け寄ってきた。
「ヒース王子様!」
「ぼっちゃま!」
「おかえりなさい!」
「よくご無事で!」
村人のみんなに囲まれてるヒース。本当に領地のみんなに愛されてるんだな。俺は子供たちに遠巻きに棒でつつかれながらその様子を眺めていた。草むらにこっそり入って変身しようか考えていると、女の人に声をかけられた。
「もしかして、カルなの……?」
「キュイ?」
振り向くと、赤ちゃんの頃お世話をしてくれたおばちゃんが立っていた。目に涙を浮かべてる。
「お城から冷たくなって帰ってきて……私たちみんなお前は死んだと思ってたんだよ」
「キュイ!」
飛びついておばちゃんの涙をペロペロ舐めると
「大きくなったね」
と言いながら笑ってくれた。
ジェイソンさんがゲイルに乗って帰ってきたのはその日の真夜中だ。疲れてボロボロになっていたけど、大きな怪我もなくヒースと再会を喜び合う。ヒースは村の人たちを全員お城に入れて、王城からの攻撃に備えたけど、再び攻撃を受けることはなかった。
懐かしいお城は少し小さく、古くなっていたけど、ひさびさに戻ってきた主人を優しく出迎えてくれた。竜の姿だと何も出来ないので、変身してみんなの前に姿を見せると従者たちにものすごく驚かれた。
事態が落ち着いたのはそれから一ヶ月程度先だ。エリオットが次期国王として王位を継承した。エリオットが王位を継げたのは、伝説の竜を召喚できたからという噂が王都の住民の間で広がっているらしい。竜の恩恵にあずかりたいと、貴族たちはこぞってエリオットを国王に推薦したらしい。
宮廷魔道士は亡くなり、ケネスは抜け殻のようになって王城のどこかで軟禁されているそうだ。そんな話を少しだけ悲しそうな表情のヒースから教えてもらった。
「カル、お前の育った城覚えてるか?」
「キュー」
「北の方の、寒い場所にあるんだ。近くには魔物の住む森や湖しかない辺境だけど、俺には懐かしい故郷なんだ」
「キュー」
「焼け野原にはさせたくない」
分かってるよ。ヒース。全力で飛べばもう少しで到着できる。着いたらケネスの部下たちなんて全部俺が追い払ってやる。
半年以上働いたケセルジュの魔法学園が見えてきた。懐かしいな。トムや洗濯場のみんな元気で働いているかな。ハロルドやヴィクターは相変わらずかな。付き人になれて本当に楽しかった。
さらに進むとペシルの町がある。人間に変身する練習のため、宿に泊まったり買い物したりしたよな。ペシルを過ぎると大きな山があって、ジークさんの小屋や谷がある。進路は少しずれるけど、北に進めばヒースのお城がある小さな町が見えてくるはずだ。
「キュー」
「お城だ」
兵士がいる。複数の兵士と馬がいて、町と城を取り囲んでいる。豆粒みたいな大きさでもその光景が見えた。まだ焼け野原にはなってなくてほっとする。囲まれてはいるけど、攻撃は受けていないみたいだ。
「キュイ!」
「分かった。カル、行こう!」
「キュイーーー!」
ジークさんのように咆哮とはいかなかったけど、スピードを上げて高度を下げ村の上空を旋回する。空から現れた竜の襲撃に驚いた馬のいななきと兵士たちの悲鳴が響く。火竜らしく口から魔法の息を吐き、燃えない程度に炎を降らせたら、城を取り囲んでいた兵士たちは全員慌てふためいて逃げて行った。
***
「ただいま。みんな無事か?」
腰を抜かしていた村人たちも、クワや鎌を持って城に籠城していた従者たちも、竜からおりてきたのがヒースだと気づくと、わっと駆け寄ってきた。
「ヒース王子様!」
「ぼっちゃま!」
「おかえりなさい!」
「よくご無事で!」
村人のみんなに囲まれてるヒース。本当に領地のみんなに愛されてるんだな。俺は子供たちに遠巻きに棒でつつかれながらその様子を眺めていた。草むらにこっそり入って変身しようか考えていると、女の人に声をかけられた。
「もしかして、カルなの……?」
「キュイ?」
振り向くと、赤ちゃんの頃お世話をしてくれたおばちゃんが立っていた。目に涙を浮かべてる。
「お城から冷たくなって帰ってきて……私たちみんなお前は死んだと思ってたんだよ」
「キュイ!」
飛びついておばちゃんの涙をペロペロ舐めると
「大きくなったね」
と言いながら笑ってくれた。
ジェイソンさんがゲイルに乗って帰ってきたのはその日の真夜中だ。疲れてボロボロになっていたけど、大きな怪我もなくヒースと再会を喜び合う。ヒースは村の人たちを全員お城に入れて、王城からの攻撃に備えたけど、再び攻撃を受けることはなかった。
懐かしいお城は少し小さく、古くなっていたけど、ひさびさに戻ってきた主人を優しく出迎えてくれた。竜の姿だと何も出来ないので、変身してみんなの前に姿を見せると従者たちにものすごく驚かれた。
事態が落ち着いたのはそれから一ヶ月程度先だ。エリオットが次期国王として王位を継承した。エリオットが王位を継げたのは、伝説の竜を召喚できたからという噂が王都の住民の間で広がっているらしい。竜の恩恵にあずかりたいと、貴族たちはこぞってエリオットを国王に推薦したらしい。
宮廷魔道士は亡くなり、ケネスは抜け殻のようになって王城のどこかで軟禁されているそうだ。そんな話を少しだけ悲しそうな表情のヒースから教えてもらった。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結】双子の兄が主人公で、困る
* ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……!
表紙は、Pexelsさまより、Julia Kuzenkovさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
転生したら最強辺境伯に拾われました
マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。
死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。