ちびドラゴンは王子様に恋をする

カム

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王族と竜

7 懐かしい場所

 スピードを上げて飛行する。ヒースはずっと俺の背中にもたれかかっていたから、途中から魔法の息を吐き回復魔法を唱えた。少しでも元気になって欲しい。

「カル、お前の育った城覚えてるか?」
「キュー」
「北の方の、寒い場所にあるんだ。近くには魔物の住む森や湖しかない辺境だけど、俺には懐かしい故郷なんだ」
「キュー」
「焼け野原にはさせたくない」

 分かってるよ。ヒース。全力で飛べばもう少しで到着できる。着いたらケネスの部下たちなんて全部俺が追い払ってやる。

 半年以上働いたケセルジュの魔法学園が見えてきた。懐かしいな。トムや洗濯場のみんな元気で働いているかな。ハロルドやヴィクターは相変わらずかな。付き人になれて本当に楽しかった。

 さらに進むとペシルの町がある。人間に変身する練習のため、宿に泊まったり買い物したりしたよな。ペシルを過ぎると大きな山があって、ジークさんの小屋や谷がある。進路は少しずれるけど、北に進めばヒースのお城がある小さな町が見えてくるはずだ。

「キュー」
「お城だ」

 兵士がいる。複数の兵士と馬がいて、町と城を取り囲んでいる。豆粒みたいな大きさでもその光景が見えた。まだ焼け野原にはなってなくてほっとする。囲まれてはいるけど、攻撃は受けていないみたいだ。

「キュイ!」
「分かった。カル、行こう!」
「キュイーーー!」

 ジークさんのように咆哮とはいかなかったけど、スピードを上げて高度を下げ村の上空を旋回する。空から現れた竜の襲撃に驚いた馬のいななきと兵士たちの悲鳴が響く。火竜らしく口から魔法の息を吐き、燃えない程度に炎を降らせたら、城を取り囲んでいた兵士たちは全員慌てふためいて逃げて行った。

***

「ただいま。みんな無事か?」

 腰を抜かしていた村人たちも、クワや鎌を持って城に籠城していた従者たちも、竜からおりてきたのがヒースだと気づくと、わっと駆け寄ってきた。

「ヒース王子様!」
「ぼっちゃま!」
「おかえりなさい!」
「よくご無事で!」

 村人のみんなに囲まれてるヒース。本当に領地のみんなに愛されてるんだな。俺は子供たちに遠巻きに棒でつつかれながらその様子を眺めていた。草むらにこっそり入って変身しようか考えていると、女の人に声をかけられた。

「もしかして、カルなの……?」
「キュイ?」

 振り向くと、赤ちゃんの頃お世話をしてくれたおばちゃんが立っていた。目に涙を浮かべてる。

「お城から冷たくなって帰ってきて……私たちみんなお前は死んだと思ってたんだよ」
「キュイ!」

 飛びついておばちゃんの涙をペロペロ舐めると
「大きくなったね」
と言いながら笑ってくれた。


 ジェイソンさんがゲイルに乗って帰ってきたのはその日の真夜中だ。疲れてボロボロになっていたけど、大きな怪我もなくヒースと再会を喜び合う。ヒースは村の人たちを全員お城に入れて、王城からの攻撃に備えたけど、再び攻撃を受けることはなかった。

 懐かしいお城は少し小さく、古くなっていたけど、ひさびさに戻ってきた主人を優しく出迎えてくれた。竜の姿だと何も出来ないので、変身してみんなの前に姿を見せると従者たちにものすごく驚かれた。


 事態が落ち着いたのはそれから一ヶ月程度先だ。エリオットが次期国王として王位を継承した。エリオットが王位を継げたのは、伝説の竜を召喚できたからという噂が王都の住民の間で広がっているらしい。竜の恩恵にあずかりたいと、貴族たちはこぞってエリオットを国王に推薦したらしい。
 宮廷魔道士は亡くなり、ケネスは抜け殻のようになって王城のどこかで軟禁されているそうだ。そんな話を少しだけ悲しそうな表情のヒースから教えてもらった。
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