ポメラニアン魔王

カム

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三 タケルの話

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地下牢のある通路で倉庫を探していたら、さっきまで俺を見張っていた牢番の兵士が声をかけてきた。

「あんた何やってるんだ?」

正直に話すのはまずいだろうな。

「落し物をしたみたいなので探してます」
「ここは村人がうろつくところじゃないんだが……。何落としたんだ?大事な物か」
「ええと……」
「そういえば飾り紐が落ちていたな。倉庫に行ってみろ。見つけたらすぐ戻れよ」
「倉庫ってどこですか?」
「この廊下を曲がって奥から二番めの部屋だ。ほれ、鍵。見つけたら返せよ。あと、倉庫には魔物関係の道具もあるから下手に触るなよ。危険なものもあるからな」
「ありがとうございます」

いい人ばかりだなぁ。
ちょっと良心が咎めるけど。

鍵をもらって倉庫まで行き中に入ると、部屋には荷物がぎっしりと詰め込まれていた。
思ったより広い。
出入り口付近にはアンティーク風の机や椅子や家具が置かれてる。
その奥にはたくさんの箱が積み上げられていて、種類分けされていた。
異国の古道具屋に来たみたいだ。何となく用途が分かる道具も変わった装飾や形だし、全然何に使うのか分からない物もあって楽しい。時間があったら一つ一つ見て回りたいな。

積み上げてある箱とは別の場所に、明らかに他とは区別されたロープの張られたスペースがあった。
ロープには読めない文字の書かれた紙が貼り付けてある。
読めない文字……のはずなのに、何となく理解できて、思わず目をこすった。
文字の横にふりがなが浮かんでいるような気がする。もやもやとした何かが見える。

『危険。魔法道具や魔物関連の道具があります。触ってはいけません』

そんな感じの日本語が、異国の文字の横にゆらゆらと浮かんでいる。
何て都合のいい夢だろう。

ロープをくぐって、極力いろいろな道具に触らないようにしながら見て回っていると、ゼブが入れられた瓶のような物がいくつか並んでいるのが見えた。
小さい瓶が五つ、中位が三つ、大きい瓶が二つ。
ゼブが入れられたのは大きな瓶だったから、二つのうちどちらかだな。

「ゼブ!聞こえるか?」

瓶に小声で話しかけてみるけど、返事は無かった。違うのかな。
とりあえず両方開けてみよう。

瓶の蓋には紙が貼り付けてあり
『開封厳禁』の文字があったけど、無視して剥がす。
それからコルクみたいな栓を抜いて瓶を逆さまにした。

「あれ?」

間違えたみたいだ。
中から出てきたのは小さな丸い卵みたいな物だった。
卵はどこかに転がっていってしまったので、次の瓶を開ける。

こっちは当たりだ。
瓶を逆さまにすると、中から水と一緒にぽろっと小さな虫が出てきた。
さっきの蜂みたいな姿ではなく、さなぎみたいになってる。でもゼブだよな。

「ゼブ、大丈夫か?」

さなぎは全く変化無しだ。
仕方なくポケットに入れる。明日森の中に返してあげよう。
賢者さんに見つからないようにしないとな。あの人にはバレそうだ。

瓶の栓を元どおりにすると、倉庫から出て牢番の人に鍵を返しに行った。

「見つかったかい?」
「いえ、無かったです」
「そうか。残念だな」

牢番の兵士はそれ以外何も言ってこなかった。
ここの人達は、本当に疑う事を知らないみたいだ。

階段を上がって屋敷の一階に戻ると、村人達が騒いでいるのが目に入った。
勇者様の魔物退治に何か進展があったんだろうか。

「何があったんですか?」

みんな興奮している。
酔っ払ってるみたいだ。
ヒゲを生やした兵士みたいなおじさんが上気した顔で教えてくれた。

「魔王が捕まったんだ!勇者様がやってくれたらしい!」
「勇者様万歳!」

大喜びしている村人達を眺めながら、何故か急にポメの事が心配でたまらなくなった。
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