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永遠に溝は埋まらないばかり
温かな寄り添い
扉が閉まってからどれくらいの時間が経ったか
分からなかった。
静まり返った部屋の中でリリアーナは椅子に座っているが動けない状態であった。
身体が鉛のように重い、頭が痛い
息もいつもよりも浅い感覚がする。
「はぁ…。」
小さく息を吐く。
息を吐くことすらも疲れてしまうほど
心も身体も消耗していた。
とりあえず立ち上がろうとしていた時
コンコンと扉からノックの音がした。
「失礼します。」
聞き覚えのある声がする。
「ロロナ…?」
力の抜けた声で言うと、ゆっくりと扉が開いた。
部屋へ入ってきたロロナは
疲労困憊状態のリリアーナを見て
微かに表情を曇らせた。
静かにこちらへと近づいてくるロロナに
リリアーナは安堵した表情を浮かべる。
ロロナは、リリアーナの前にしゃがみ込むと
そっと顔を覗き込む。
「…随分とお疲れの様子ですね。」
「…少しだけね。」
そう言って笑みを浮かべようとするものの
疲労しているからかその笑みはどこかぎこちない。
そんなリリアーナを見てロロナは
優しく両手を肩に置く。
ビクリと身体が揺れる。
けれど、その手は、無理矢理でもなく冷たくもなくただ静かに寄り添うような温もりだった。
「…大変でしたね。」
たったその一言で
リリアーナの張り詰めていたものが一気に緩む。
「…っ」
何かを言おうとするものの言葉が出ない
その代わりにリリアーナの視界が滲む。
「ロロナ…っ私…っ」
震えながら何かを言おうとするリリアーナ
するとロロナは
そっとリリアーナの手に頭を添え
自分の方へと優しく引き寄せた。
「…大丈夫ですよリリアーナ様。」
「今は、リリアーナ様に害のある人達はいません。」
その言葉はとても強く優しく
守られているような感覚になった。
リリアーナは無意識にそのままロロナに身を預ける。
「もう少しだけ、このままでいていい?」
震えながらロロナに尋ねる。
そんなリリアーナにロロナは拒むことなく
「いいですよ。」
即答した。迷いなどなく。
「…ありがとう。」
ポツリと呟いた後、リリアーナは
ロロナの肩に寄りかかり静かに目を閉じた。
ロロナはただ優しく、リリアーナの背中を
子供を寝かせるように優しくトントンと叩いた。
先程の喧騒も、冷めた空気も
今、この瞬間だけ遮断された。
疲労困憊の状態であるリリアーナを見て
すぐに湧いたのは怒り。
リリアーナの言うことを聞かず
一方的に責め立て、あまつさえ自分の娘に冷酷だと言ったあの女。
(どの口が言ってるのよ…!)
思わず指先に力がこもる
けれどリリアーナに触れている手は
変わらず優しい。
リリアーナの前では絶対に出さない。
その変わり裏では冷たい思考が流れる。
(あれのどこが母親よ。)
ついているはずの頭を使わず、
自分に似た娘の言うことを信じる。
あんな母親がいてたまるか。
何度も、同じようなことを起こし
その度に傷つくリリアーナを忘れたことなどない。
何度も、自分を恨んだし
何度、あの女とあの娘を
ぶん殴ってやろうかと考えたことか。
(危ないわ…。)
イラついてあまりつい自我を忘れてしまっていた。
すぐに思考を変えて
リリアーナの方に視線を落とす。
自分に寄りかかるリリアーナ。
小さくて、細くて、
必死に耐えている少女。
何度、理不尽に叱られこのような状態になっていったか
ロロナの視線が冷たくなる。
(もし、またリリアーナ様がこうなった場合。)
(もうあいつらに容赦はしない。)
どす黒い感情が湧いたが
すぐに消した。
いつものリリアーナの侍女である
ロロナに戻る。
「リリアーナ様。」
小さく呼びかける
するとピクリとこちらへと反応するリリアーナ。
「もう少しだけお休みになりますか?」
リリアーナは、小さく微笑みながらも
ゆっくりと頷いた。
分からなかった。
静まり返った部屋の中でリリアーナは椅子に座っているが動けない状態であった。
身体が鉛のように重い、頭が痛い
息もいつもよりも浅い感覚がする。
「はぁ…。」
小さく息を吐く。
息を吐くことすらも疲れてしまうほど
心も身体も消耗していた。
とりあえず立ち上がろうとしていた時
コンコンと扉からノックの音がした。
「失礼します。」
聞き覚えのある声がする。
「ロロナ…?」
力の抜けた声で言うと、ゆっくりと扉が開いた。
部屋へ入ってきたロロナは
疲労困憊状態のリリアーナを見て
微かに表情を曇らせた。
静かにこちらへと近づいてくるロロナに
リリアーナは安堵した表情を浮かべる。
ロロナは、リリアーナの前にしゃがみ込むと
そっと顔を覗き込む。
「…随分とお疲れの様子ですね。」
「…少しだけね。」
そう言って笑みを浮かべようとするものの
疲労しているからかその笑みはどこかぎこちない。
そんなリリアーナを見てロロナは
優しく両手を肩に置く。
ビクリと身体が揺れる。
けれど、その手は、無理矢理でもなく冷たくもなくただ静かに寄り添うような温もりだった。
「…大変でしたね。」
たったその一言で
リリアーナの張り詰めていたものが一気に緩む。
「…っ」
何かを言おうとするものの言葉が出ない
その代わりにリリアーナの視界が滲む。
「ロロナ…っ私…っ」
震えながら何かを言おうとするリリアーナ
するとロロナは
そっとリリアーナの手に頭を添え
自分の方へと優しく引き寄せた。
「…大丈夫ですよリリアーナ様。」
「今は、リリアーナ様に害のある人達はいません。」
その言葉はとても強く優しく
守られているような感覚になった。
リリアーナは無意識にそのままロロナに身を預ける。
「もう少しだけ、このままでいていい?」
震えながらロロナに尋ねる。
そんなリリアーナにロロナは拒むことなく
「いいですよ。」
即答した。迷いなどなく。
「…ありがとう。」
ポツリと呟いた後、リリアーナは
ロロナの肩に寄りかかり静かに目を閉じた。
ロロナはただ優しく、リリアーナの背中を
子供を寝かせるように優しくトントンと叩いた。
先程の喧騒も、冷めた空気も
今、この瞬間だけ遮断された。
疲労困憊の状態であるリリアーナを見て
すぐに湧いたのは怒り。
リリアーナの言うことを聞かず
一方的に責め立て、あまつさえ自分の娘に冷酷だと言ったあの女。
(どの口が言ってるのよ…!)
思わず指先に力がこもる
けれどリリアーナに触れている手は
変わらず優しい。
リリアーナの前では絶対に出さない。
その変わり裏では冷たい思考が流れる。
(あれのどこが母親よ。)
ついているはずの頭を使わず、
自分に似た娘の言うことを信じる。
あんな母親がいてたまるか。
何度も、同じようなことを起こし
その度に傷つくリリアーナを忘れたことなどない。
何度も、自分を恨んだし
何度、あの女とあの娘を
ぶん殴ってやろうかと考えたことか。
(危ないわ…。)
イラついてあまりつい自我を忘れてしまっていた。
すぐに思考を変えて
リリアーナの方に視線を落とす。
自分に寄りかかるリリアーナ。
小さくて、細くて、
必死に耐えている少女。
何度、理不尽に叱られこのような状態になっていったか
ロロナの視線が冷たくなる。
(もし、またリリアーナ様がこうなった場合。)
(もうあいつらに容赦はしない。)
どす黒い感情が湧いたが
すぐに消した。
いつものリリアーナの侍女である
ロロナに戻る。
「リリアーナ様。」
小さく呼びかける
するとピクリとこちらへと反応するリリアーナ。
「もう少しだけお休みになりますか?」
リリアーナは、小さく微笑みながらも
ゆっくりと頷いた。
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