魔王降臨!勇者を討伐に行ってきます!

韋駄天

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魔王の決意

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とある剣と魔法の異世界では人族と魔族が戦争をしていた。
何百年も続いたこの戦は突如とした事を切っ掛けに幕を引いた。
人族が異界より勇者を召喚したのである。
それから数ヶ月後、魔族を統べる魔王は劇的な成長を遂げた勇者に討たれ、戦争は終わり、魔族はほぼ根絶やしにされ、ほんの僅かな残党達は世界の端にある小さな島で細々とした生活を強いられることになった。
そして、勇者達の奮戦で命を落とした魔王はその島に避難していた魔族の子孫に転生した。
これはそんな魔王の、魔族の栄光を取り戻すための冒険譚。

「不死身の魔王、再誕!!!」
「再誕している時点で一度死んでいるのでは?」
「マジレスやめてくれません!?今折角感動的な場面だったのに!」
「それを最初に超ハイテンションでぶち壊したのは陛下では?」
「確かに!」
このコント染みた会話を交わしているのは何を隠そう、異界の勇者にやられ、復活した魔王とそこで待機していた生き残りの部下である。
部下、その名もシュムトは旧魔王軍の参謀だった。
魔王に雑用を命じられたりする苦労人でもあり、今回も魔王陛下の戯れで大人数の旅行の為に世界の最北端に在るこの孤島に来ていた。
なのに、いざ帰還の為に本国へ連絡したら、国王は死に、国が壊滅しているのである。
そこから人間達が知らないこの島にいる国民達と共にこの島で隠遁生活を送る事になり、暮らしていた。
そして遂に魔王陛下が数年かけ、復活したのである。
取り敢えずそういう事で今魔王は大量の人形を召喚している。
「シュムト~、ちょい皆連れて来て~。」
今二人は島の奥の洞穴にいる。
ここに魔王があらかじめ用意しておいた転生用の依り代に移り込み、復活したのである。
「了解しました。」
そしてシュムトは洞窟を出て、集落の方へと向かって行った。
一方魔王の方は、
「ヤッベ!そういや依り代に入る魔族達の魂呼び戻すの忘れてた!」
そして魔王は速やかに霊魂召喚魔法陣を構築する。
並の魔法使いなら百人がかりで数日はかけてこの魔法陣を発現させるものを彼の不死身の魔王はものの数分で構築を完了させる。
そして魔法陣は眩い漆黒と明るい菖蒲色の光を放ち、そしてそこにはーーー薄い空色の鬼火が洞窟の暗闇を覆うように浮かんでいた。
「さぁ魔国の民よ!自分に合った器を見出し、この世界に再度顕現せよ!」
そして鬼火の群れはその言霊を合図に四方に散らばる人形の中へと溶け込んでいく。
そしてほんの数秒後には魔族の民が全員生き返り、魔王陛下の御前に跪いていた。

もう一方、シュムトと島に在住していた魔族達は今魔王の洞へと歩みを進めていた。
険しい道程を踏破する事数十分、彼等は島の奥の洞穴に着いた。
そこに居たのは満足そうにふんぞりかえる魔王陛下と死んだと思われていた仲間達だった。
そこかしこから悲鳴と歓声が響き、両陣営が津波のように相手にのしかかる。
再会を喜ぶ声、感動の泣き声、早速軽口を叩き合う笑い声が洞窟の中と外を埋め尽くす。
そしてその様子にシュムトが急いで消音結界を張り、外へ音が漏れないようにする。

「全員救えて良かったな!」
「そうですね。でも次回からはもうちょっと抗戦してください。貴方様の魔法は万能ではないので。」
実はこの光景は少し特殊である。
何故なら本来死者の蘇生等ありえないからだ。
だがこれは不死身の魔王。
彼が不死身と謳われる理由は彼が霊魂魔法の天才だからである。
彼は自分の霊魂に結界を張っており、ほぼ死ぬ事は出来ない。
無論、殺される等以ての外。
この世界には存在しない、魔王レベルの霊魂魔法の天賦の持ち主でなければ彼を殺す事等不可能だ。
魔国では全ての人間がこの偉大なる王に霊魂を保護されており、仮に死んでも魔王が生きていれば復活して貰える。
つまり、ある意味魔国はゾンビの蔓延る土地なのである。
しかしこの魔法にも穴があり、魔王が死んでいる時に死んでしまうと霊魂を回収して貰えない。
故に今回人族が攻めてきた時は魔王はなるべく逃げ回り魔族達が一人残らず死に、魂を回収してから勇者と相対したのである。
人は言うだろう、民をわざと死なせる国王が何処にいると。
しかしそれに対して魔王はこう答える。
「霊魂には痛覚無効化の術がかかってるから問題無い!それに国民は全員一度は死んでる(死なせてある)から慣れてる!」との事だ。

「しかし人族には一杯食わされたな。あの勇者も完全にあのペテン教皇と人王に騙されてたし。こうなりゃ全員ぶっ倒すしかねぇな!」
魔王様は気楽である。
「陛下、もうちょっと真剣に言ってください。遠足気分じゃないんですから。ですがまぁお供しましょう。」

こうして、魔王の勇者討伐の旅は始まった。

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