1 / 44
魔王の決意
しおりを挟むとある剣と魔法の異世界では人族と魔族が戦争をしていた。
何百年も続いたこの戦は突如とした事を切っ掛けに幕を引いた。
人族が異界より勇者を召喚したのである。
それから数ヶ月後、魔族を統べる魔王は劇的な成長を遂げた勇者に討たれ、戦争は終わり、魔族はほぼ根絶やしにされ、ほんの僅かな残党達は世界の端にある小さな島で細々とした生活を強いられることになった。
そして、勇者達の奮戦で命を落とした魔王はその島に避難していた魔族の子孫に転生した。
これはそんな魔王の、魔族の栄光を取り戻すための冒険譚。
「不死身の魔王、再誕!!!」
「再誕している時点で一度死んでいるのでは?」
「マジレスやめてくれません!?今折角感動的な場面だったのに!」
「それを最初に超ハイテンションでぶち壊したのは陛下では?」
「確かに!」
このコント染みた会話を交わしているのは何を隠そう、異界の勇者にやられ、復活した魔王とそこで待機していた生き残りの部下である。
部下、その名もシュムトは旧魔王軍の参謀だった。
魔王に雑用を命じられたりする苦労人でもあり、今回も魔王陛下の戯れで大人数の旅行の為に世界の最北端に在るこの孤島に来ていた。
なのに、いざ帰還の為に本国へ連絡したら、国王は死に、国が壊滅しているのである。
そこから人間達が知らないこの島にいる国民達と共にこの島で隠遁生活を送る事になり、暮らしていた。
そして遂に魔王陛下が数年かけ、復活したのである。
取り敢えずそういう事で今魔王は大量の人形を召喚している。
「シュムト~、ちょい皆連れて来て~。」
今二人は島の奥の洞穴にいる。
ここに魔王があらかじめ用意しておいた転生用の依り代に移り込み、復活したのである。
「了解しました。」
そしてシュムトは洞窟を出て、集落の方へと向かって行った。
一方魔王の方は、
「ヤッベ!そういや依り代に入る魔族達の魂呼び戻すの忘れてた!」
そして魔王は速やかに霊魂召喚魔法陣を構築する。
並の魔法使いなら百人がかりで数日はかけてこの魔法陣を発現させるものを彼の不死身の魔王はものの数分で構築を完了させる。
そして魔法陣は眩い漆黒と明るい菖蒲色の光を放ち、そしてそこにはーーー薄い空色の鬼火が洞窟の暗闇を覆うように浮かんでいた。
「さぁ魔国の民よ!自分に合った器を見出し、この世界に再度顕現せよ!」
そして鬼火の群れはその言霊を合図に四方に散らばる人形の中へと溶け込んでいく。
そしてほんの数秒後には魔族の民が全員生き返り、魔王陛下の御前に跪いていた。
もう一方、シュムトと島に在住していた魔族達は今魔王の洞へと歩みを進めていた。
険しい道程を踏破する事数十分、彼等は島の奥の洞穴に着いた。
そこに居たのは満足そうにふんぞりかえる魔王陛下と死んだと思われていた仲間達だった。
そこかしこから悲鳴と歓声が響き、両陣営が津波のように相手にのしかかる。
再会を喜ぶ声、感動の泣き声、早速軽口を叩き合う笑い声が洞窟の中と外を埋め尽くす。
そしてその様子にシュムトが急いで消音結界を張り、外へ音が漏れないようにする。
「全員救えて良かったな!」
「そうですね。でも次回からはもうちょっと抗戦してください。貴方様の魔法は万能ではないので。」
実はこの光景は少し特殊である。
何故なら本来死者の蘇生等ありえないからだ。
だがこれは不死身の魔王。
彼が不死身と謳われる理由は彼が霊魂魔法の天才だからである。
彼は自分の霊魂に結界を張っており、ほぼ死ぬ事は出来ない。
無論、殺される等以ての外。
この世界には存在しない、魔王レベルの霊魂魔法の天賦の持ち主でなければ彼を殺す事等不可能だ。
魔国では全ての人間がこの偉大なる王に霊魂を保護されており、仮に死んでも魔王が生きていれば復活して貰える。
つまり、ある意味魔国はゾンビの蔓延る土地なのである。
しかしこの魔法にも穴があり、魔王が死んでいる時に死んでしまうと霊魂を回収して貰えない。
故に今回人族が攻めてきた時は魔王はなるべく逃げ回り魔族達が一人残らず死に、魂を回収してから勇者と相対したのである。
人は言うだろう、民をわざと死なせる国王が何処にいると。
しかしそれに対して魔王はこう答える。
「霊魂には痛覚無効化の術がかかってるから問題無い!それに国民は全員一度は死んでる(死なせてある)から慣れてる!」との事だ。
「しかし人族には一杯食わされたな。あの勇者も完全にあのペテン教皇と人王に騙されてたし。こうなりゃ全員ぶっ倒すしかねぇな!」
魔王様は気楽である。
「陛下、もうちょっと真剣に言ってください。遠足気分じゃないんですから。ですがまぁお供しましょう。」
こうして、魔王の勇者討伐の旅は始まった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【アイテム分解】しかできないと追放された僕、実は物質の概念を書き換える最強スキルホルダーだった
黒崎隼人
ファンタジー
貴族の次男アッシュは、ゴミを素材に戻すだけのハズレスキル【アイテム分解】を授かり、家と国から追放される。しかし、そのスキルの本質は、物質や魔法、果ては世界の理すら書き換える神の力【概念再構築】だった!
辺境で出会った、心優しき元女騎士エルフや、好奇心旺盛な天才獣人少女。過去に傷を持つ彼女たちと共に、アッシュは忘れられた土地を理想の楽園へと創り変えていく。
一方、アッシュを追放した王国は謎の厄災に蝕まれ、滅亡の危機に瀕していた。彼を見捨てた幼馴染の聖女が助けを求めてきた時、アッシュが下す決断とは――。
追放から始まる、爽快な逆転建国ファンタジー、ここに開幕!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる