5 / 71
第1章 氷河期と少年時代
その3 部活でも挫折しよう!
しおりを挟むさて、今回は都市化についてじゃ
都市化って?
田舎から都市に移住して、都市に住む人口の割合が増える事じゃ。
就職列車とか金の卵とか聞いた事があるじゃろ。
ああ、田舎での農業から都市部の工場で働くようになったのね。
そう、都市には団地がバンバン建ち、社員家族寮もバンバン建ったのじゃ。
今は、その団地が団塊の老人団地となっておる。
どれくらい都市化が進んだの?
比較データとして、日本の人口の30万以上の都市に住む割合(都市化率)を出してみたぞい。
※ここでの都市化率とは作者が定義した内容です。
こっちが割合で
こっちが人口数じゃ
※出典:統計局「人口階級別市町村数及び人口」より作者作成
氷河期世代の人数は団塊世代の人数に比べ8割に減っておるが、都市への人口の集中度は1.5~2倍以上じゃ。
数も4000万人を超えておる。
総人口も増えているけど、30万以上の都市人口が同じくらい増えているわね。
要するに、増えた人はほとんど都市に住んでいたって事ね。
そうじゃ、そして増えた人というのは当然子供たちじゃ。
====================
日本人が増えすぎた人口を都市部に移民させるようになって、既に四半世紀が過ぎていた。
東京の周りの巨大な首都圏都市は団塊の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。
====================
とまあ、こんな感じじゃな。
ちなみに、中学校数の推移はこうじゃ。
※文部科学省「学校基本調査より作者作成」
中学校数は減っているけど、世代人口の減少ほどは減ってないのね。
そうじゃ団塊に比べ団塊Jrの時の中学校数は約85%じゃ。
世代人口比は約80%じゃから、人口の分布が変わらなければ学校の生徒数に余裕が出た事になるな。
でも、現実はそうじゃなかったんだ……
そうじゃ、現実は人口の分布は大幅に都市部に偏ったのじゃ。
結果、1学年が500人を超すマンモス校が誕生する事もあった。
通ってた公立中の中1の教室はプレハブ校舎でした。
あっ、俺たちといっしょ
団塊の時にも学校の増設が間に合わずプレハブとなる問題が発生したが、団塊Jrの時もそれは発生したんじゃ。
都市化の進行により、都市部では学校あたりの生徒数が増加してしまったんじゃ。
団塊の少年時代に対策を立て、増設したのにも関わらずプレハブを余儀なくされたんじゃ。
うわぁ……ギチギチだぁ
これが氷河期の中学時代に不幸を呼んだんじゃ。
例えば学校に野球部やサッカー部はひとつじゃろ。
うん
生徒数が多くなると、当然、その部活の部員数も増える。
この時代の人気の部活は部員100名もざらじゃ。
ああ、それは競争が激しいわね
競争が激しい?
そんなもんじゃないぞ、さっきのミニ四駆の話を忘れたのかい。
あっ……
そうじゃ、現実として1年生はずっと球拾い、2年になってもまともに練習出来るのは3年が引退した後じゃ。
競争する機会が与えられなかったんだ。
そうじゃ、特に男子中学生は二次性徴の時期にあたっての、二次性徴を超えないと体格的に絶対勝てん。
身長差が10cm以上あったらスポーツではまず勝てないわね。
じゃから中1は最初から問題外として同じ土俵に上がれない事が多かったんじゃ。
しかも競争が始まっても、それは熾烈じゃ。
野球部での思い出が球拾いと基礎トレと中3で練習試合の代打1打席だけ。
そんな部員も多かったんじゃ。
あー、あるある
同じ話は団塊の時もあったが、都市化によりその比率が増えたのじゃよ。
指導者も生徒は余るくらいやって来るので、個人個人に合わせた指導なんて出来ん。
最初から才能が開花した連中に注力して、残りは十把一絡げじゃ。
勝利至上主義の時代じゃったので、指導者もレギュラー陣を中心に指導したのじゃ。
そして、十分な指導を受けられず、褒められる事もなく、ただスポーツを楽しみたいという環境も与えられなかった子は、スポーツに嫌気がさすようになったのじゃ。
『辞めたきゃ辞めろ。お前の代わりはいくらでもいるぞ』は氷河期の中学時代から始まったのね。
そうじゃ、実は才能があったかもしれない、ちょっと二次性徴が遅いだけだったかもしれない。
そんな大器晩成型は容赦なく振り落とされたんじゃ。
今でも、プロ野球選手に早生まれが少ないっていう統計が出てるわね。
少なくともスポーツの分野では、最初から戦いの場にたどり着けず脱落した者が多かったんじゃ。
最近は生徒数が少ない上に、スポーツ指導は、その楽しさを教える方向にシフトしているって話を聞くわね。
指導法については、失敗を怒る指導より、褒めて伸ばした方が効果があるという論文もあるぞい。
じゃが、それが周知されるようになるのは21世紀以降じゃ。
※未だに前時代的な指導が残っている所もあります。
正直うらやましい。
負けてもいいから試合に出たかった。
部内の対抗試合でいいから出たかった。
じゃが、それを叶える練習時間もグラウンドの空きもなかったのが現実じゃ。
今は部員が足りず廃部になる部活も多いのにね。
中学時代の十分な指導と成功体験はその後の人生に大きく影響する。
じゃが、氷河期世代はそれが充分に与えられなかった世代なのじゃ。
ああ、俺の可能性はこんなんじゃない、もっと、もっと、チャンスさえあれば!
博士、こんな事を言っているけど?
まあ、コテンパンに負けるのが関の山じゃろうて。
じゃが、負ける機会すら与えられなかったのには少し同情するぞい。
ああ……勝利も、敗北すらも手に入らないならばもう……
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる